第6章 積分法の応用

体積(回転体の基本)
─ 断面を積み上げて立体を捉える

面積が「短冊の積み上げ」であったように、体積は「断面の積み上げ」です。曲線を $x$ 軸のまわりに回転してできる立体(回転体)の体積を、断面積の積分として求める方法を学びます。公式の意味を正しく理解すれば、さまざまな回転体の体積を統一的に計算できます。

1回転体の体積公式 ─ なぜ $\pi\{f(x)\}^2$ なのか

曲線 $y = f(x)$($a \le x \le b$)と $x$ 軸で囲まれた部分を $x$ 軸のまわりに1回転させてできる立体を回転体といいます。

この回転体を $x = c$($a \le c \le b$)で切ると、切り口は半径 $|f(c)|$ の円です。つまり断面積は $\pi\{f(c)\}^2$ です。

体積は「断面積を $x$ 方向に積み上げる」ことで得られます。微小幅 $dx$ の薄い円板の体積は $\pi\{f(x)\}^2\,dx$ であり、これを $a$ から $b$ まで積分すれば体積が求まります。

📐 $x$ 軸まわりの回転体の体積

$$V = \pi\int_a^b \{f(x)\}^2\,dx$$

※ $\{f(x)\}^2$ は常に非負なので、$f(x)$ の符号を気にする必要はありません。面積のときと違い、絶対値は不要です。

💡 体積計算の本質:断面積の積分

体積の計算は、面積の計算の1次元上の一般化です。

面積:微小幅 $dx$ の短冊(高さ $f(x)$)を積み上げる → $\displaystyle\int f(x)\,dx$

体積:微小幅 $dx$ の円板(断面積 $S(x)$)を積み上げる → $\displaystyle\int S(x)\,dx$

回転体の場合 $S(x) = \pi\{f(x)\}^2$ ですが、断面が円でなくても $S(x)$ さえわかれば体積は $\displaystyle\int_a^b S(x)\,dx$ で求まります。

⚠️ 落とし穴:$\pi$ を忘れる、または $f(x)$ を2乗し忘れる

✗ 誤1:$V = \displaystyle\int_a^b \{f(x)\}^2\,dx$($\pi$ がない)

✗ 誤2:$V = \pi\displaystyle\int_a^b f(x)\,dx$(2乗していない → これは面積に $\pi$ をかけただけ)

○ 正:$V = \pi\displaystyle\int_a^b \{f(x)\}^2\,dx$

断面が半径 $|f(x)|$ のであることを意識すれば、$\pi r^2 = \pi\{f(x)\}^2$ と自然に出てきます。

2公式の導出 ─ 円板の積み上げ

回転体の体積公式を、区分求積法の考え方で厳密に導出しましょう。

▷ 回転体の体積公式の導出

区間 $[a, b]$ を $n$ 等分し、$\Delta x = \dfrac{b-a}{n}$、$x_k = a + k\Delta x$ とする。

各小区間 $[x_k, x_{k+1}]$ で回転体を薄い円板で近似する。この円板の半径は $|f(x_k)|$、厚さは $\Delta x$ なので、体積は:

$$\Delta V_k = \pi\{f(x_k)\}^2\,\Delta x$$

全体の体積は:

$$V \approx \sum_{k=0}^{n-1}\pi\{f(x_k)\}^2\,\Delta x$$

$n \to \infty$ とすると、この和はリーマン積分に収束し:

$$V = \lim_{n \to \infty}\sum_{k=0}^{n-1}\pi\{f(x_k)\}^2\,\Delta x = \pi\int_a^b\{f(x)\}^2\,dx$$

この導出から、回転体の体積公式の本質がわかります。薄い円板(ディスク)の体積を無限に積み上げたものが、回転体の体積なのです。この方法はディスク法(円板法)と呼ばれます。

💡 面積と体積の対比

面積と体積の公式には美しい対応関係があります:

面積:$S = \displaystyle\int_a^b |f(x)|\,dx$ … 高さ $|f(x)|$ の短冊を積み上げ

体積:$V = \pi\displaystyle\int_a^b \{f(x)\}^2\,dx$ … 半径 $|f(x)|$ の円板を積み上げ

面積で「高さ」だった $f(x)$ が、体積では「円板の半径」になります。円の面積 $\pi r^2$ が公式に $\pi$ と2乗をもたらしています。

🔬 深掘り:カヴァリエリの原理

「2つの立体を、どの高さで切っても断面積が等しければ、体積は等しい」── これはカヴァリエリの原理と呼ばれ、積分なしに体積を比較できる強力な原理です。例えば、底面積と高さが等しい円柱と、斜めに切った円柱(楕円柱)は同じ体積をもちます。大学数学ではフビニの定理からこの原理が厳密に導かれます。

3基本的な回転体の計算

体積公式を、よく知られた立体の体積を求めることで確認しましょう。

円錐の体積

直線 $y = \dfrac{r}{h}x$($0 \le x \le h$)を $x$ 軸のまわりに回転させると、底面の半径 $r$、高さ $h$ の円錐ができます。

$$V = \pi\int_0^h\left(\frac{r}{h}x\right)^2 dx = \pi\frac{r^2}{h^2}\int_0^h x^2\,dx = \pi\frac{r^2}{h^2} \cdot \frac{h^3}{3} = \frac{1}{3}\pi r^2 h$$

これは既知の円錐の体積公式 $V = \dfrac{1}{3}\pi r^2 h$ に一致します。

球の体積

半円 $y = \sqrt{r^2 - x^2}$($-r \le x \le r$)を $x$ 軸のまわりに回転させると、半径 $r$ の球ができます。

$$V = \pi\int_{-r}^{r}(r^2 - x^2)\,dx = \pi\left[r^2 x - \frac{x^3}{3}\right]_{-r}^{r} = \pi\left(r^3 - \frac{r^3}{3}\right) - \pi\left(-r^3 + \frac{r^3}{3}\right) = \frac{4}{3}\pi r^3$$

これも既知の球の体積公式に一致します。

⚠️ 落とし穴:$y = \sqrt{r^2 - x^2}$ を2乗するとき根号が消えることを見落とす

✗ 誤:$\{f(x)\}^2 = \left(\sqrt{r^2-x^2}\right)^2$ の計算で $\sqrt{\ }$ を残したまま積分しようとする

○ 正:$\left(\sqrt{r^2-x^2}\right)^2 = r^2 - x^2$(根号が消える!)

回転体の体積では $\{f(x)\}^2$ を計算するため、$f(x)$ に根号が含まれていても2乗で消えることが多いです。これが面積の計算(根号のまま積分する必要がある場合がある)より体積の方が楽になる理由の一つです。

基本回転体の体積一覧

回転させる曲線回転体体積
$y = \dfrac{r}{h}x$($0 \le x \le h$)円錐$\dfrac{1}{3}\pi r^2 h$
$y = \sqrt{r^2-x^2}$($-r \le x \le r$)$\dfrac{4}{3}\pi r^3$
$y = r$($0 \le x \le h$)円柱$\pi r^2 h$
$y = \sqrt{x}$($0 \le x \le a$)放物面$\dfrac{\pi a^2}{2}$

4$x$ 軸まわりの回転体 ─ 典型パターン

入試で出題される $x$ 軸まわりの回転体の体積問題は、いくつかの典型パターンに分類できます。

パターン1:1つの曲線と $x$ 軸で囲まれた部分の回転

$y = x - x^2$($0 \le x \le 1$)と $x$ 軸で囲まれた部分を $x$ 軸のまわりに回転させた体積を求めましょう。

$$V = \pi\int_0^1(x-x^2)^2\,dx = \pi\int_0^1(x^2 - 2x^3 + x^4)\,dx$$

$$= \pi\left[\frac{x^3}{3} - \frac{x^4}{2} + \frac{x^5}{5}\right]_0^1 = \pi\left(\frac{1}{3} - \frac{1}{2} + \frac{1}{5}\right) = \frac{\pi}{30}$$

パターン2:2曲線で囲まれた部分の回転(くり抜き型)

$y = f(x)$ と $y = g(x)$($f(x) \ge g(x) \ge 0$)で囲まれた部分を $x$ 軸のまわりに回転させると、外側の回転体から内側の回転体をくり抜いた形になります。

📐 くり抜き型(ワッシャー法)の体積

$f(x) \ge g(x) \ge 0$ のとき:

$$V = \pi\int_a^b\left[\{f(x)\}^2 - \{g(x)\}^2\right]dx$$

※ 断面は半径 $f(x)$ の円から半径 $g(x)$ の円をくり抜いた「ワッシャー」(環状)の形です。

⚠️ 落とし穴:$\{f(x)\}^2 - \{g(x)\}^2$ と $\{f(x) - g(x)\}^2$ を混同する

✗ 誤:$V = \pi\displaystyle\int_a^b\{f(x) - g(x)\}^2\,dx$(差を2乗している)

○ 正:$V = \pi\displaystyle\int_a^b\left[\{f(x)\}^2 - \{g(x)\}^2\right]dx$(各々を2乗してから引く)

$(a^2 - b^2) \neq (a - b)^2$ です。断面はドーナツ状であり、外側の円の面積から内側の円の面積を引きます。差を先にとってから2乗するのではありません。

パターン3:指数・対数関数の回転体

$y = e^x$($0 \le x \le 1$)と $x$ 軸で囲まれた部分を $x$ 軸のまわりに回転させた体積を求めましょう。

$$V = \pi\int_0^1(e^x)^2\,dx = \pi\int_0^1 e^{2x}\,dx = \pi\left[\frac{e^{2x}}{2}\right]_0^1 = \frac{\pi}{2}(e^2 - 1)$$

⚠️ 落とし穴:$(e^x)^2 = e^{2x}$ の処理

✗ 誤:$(e^x)^2 = e^{x^2}$

○ 正:$(e^x)^2 = e^{x} \cdot e^{x} = e^{2x}$

指数法則 $(e^a)^b = e^{ab}$ より $(e^x)^2 = e^{2x}$ です。$e^{x^2}$ とは全く異なる関数なので注意しましょう。

5断面積による体積の一般公式

回転体に限らず、「$x$ 座標が $c$ である平面で切った断面積 $S(x)$」がわかれば、立体の体積は次の公式で求まります。

📐 断面積による体積の一般公式

$$V = \int_a^b S(x)\,dx$$

※ 回転体の場合は $S(x) = \pi\{f(x)\}^2$ ですが、この公式は回転体でない立体にも適用できます。

この公式は「断面積がわかる任意の立体」に使えます。回転体以外の例として、底面が放物線で高さが一定の立体、正方形断面の立体なども、この公式で体積を求めることができます。

💡 積分による体積計算の統一原理

「体積 $= \displaystyle\int S(x)\,dx$」は、あらゆる体積計算の出発点です。回転体の公式はこの特殊な場合にすぎません。

入試で「断面が正三角形」「断面が半円」などと指定される問題は、この一般公式を直接使います。回転体の公式だけ覚えても不十分で、「断面積を $x$ の関数で表して積分する」という原理を理解しておきましょう。

断面が正方形の立体

$xy$ 平面上の領域 $0 \le x \le 1$, $0 \le y \le \sqrt{x}$ を底面とし、各 $x$ での断面が一辺 $\sqrt{x}$ の正方形である立体の体積を求めましょう。

断面積は $S(x) = (\sqrt{x})^2 = x$ なので:

$$V = \int_0^1 x\,dx = \frac{1}{2}$$

🔬 深掘り:パップス・ギュルダンの定理

平面図形の重心の位置がわかっていれば、回転体の体積を積分なしに求める方法があります。パップス・ギュルダンの定理は「平面図形を回転させた体積 $=$ 図形の面積 $\times$ 重心の移動距離」を主張します。例えば、半径 $r$ の円板の中心が距離 $R$($R > r$)にあるとき、$x$ 軸まわりに回転させるとトーラス(ドーナツ体)ができ、その体積は $\pi r^2 \times 2\pi R = 2\pi^2 r^2 R$ です。

まとめ

✅ 確認テスト

Q1. 回転体の体積公式 $V = \pi\displaystyle\int_a^b\{f(x)\}^2\,dx$ で、$\{f(x)\}^2$ は何の面積を表すか($\pi$ をかける前)。

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半径 $|f(x)|$ の円の面積の $\dfrac{1}{\pi}$ 倍、つまり $\{f(x)\}^2$ は半径の2乗。$\pi\{f(x)\}^2$ で円の面積($= $ 断面積)になります。

Q2. $y = x$($0 \le x \le 2$)を $x$ 軸まわりに回転してできる回転体は何か。また、その体積を求めよ。

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底面の半径 $2$、高さ $2$ の円錐。$V = \pi\displaystyle\int_0^2 x^2\,dx = \pi\left[\dfrac{x^3}{3}\right]_0^2 = \dfrac{8\pi}{3}$。公式 $\dfrac{1}{3}\pi \cdot 4 \cdot 2 = \dfrac{8\pi}{3}$ と一致。

Q3. $(e^x)^2$ を簡単にせよ。

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$(e^x)^2 = e^{2x}$(指数法則 $(e^a)^b = e^{ab}$)。$e^{x^2}$ ではないので注意。

Q4. 2曲線 $f(x) \ge g(x) \ge 0$ の回転体の体積の被積分関数は $\{f(x)\}^2 - \{g(x)\}^2$ と $\{f(x)-g(x)\}^2$ のどちらか。

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$\{f(x)\}^2 - \{g(x)\}^2$ が正しい。断面がワッシャー形(環状)であり、外側の円の面積から内側の円の面積を引きます。

Q5. 断面積が $S(x)$ の立体の体積を求める一般公式は?

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$V = \displaystyle\int_a^b S(x)\,dx$

入試問題演習

問題 1 LEVEL A 基本回転体

曲線 $y = \sqrt{x}$($0 \le x \le 4$)と $x$ 軸で囲まれた部分を $x$ 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めよ。

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解答

$$V = \pi\int_0^4(\sqrt{x})^2\,dx = \pi\int_0^4 x\,dx = \pi\left[\frac{x^2}{2}\right]_0^4 = 8\pi$$

採点ポイント
  • $(\sqrt{x})^2 = x$ の処理 … 3点
  • 正しい積分計算 … 4点
  • 最終結果 $8\pi$ … 3点
問題 2 LEVEL B 2曲線の回転体

曲線 $y = x^2$ と直線 $y = x$ で囲まれた部分を $x$ 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めよ。

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解答

交点:$x^2 = x$ より $x = 0, 1$。$0 \le x \le 1$ で $x \ge x^2 \ge 0$(直線が外側)。

ワッシャー法を用いる:

$$V = \pi\int_0^1\left\{x^2 - (x^2)^2\right\}dx = \pi\int_0^1(x^2 - x^4)\,dx$$

$$= \pi\left[\frac{x^3}{3} - \frac{x^5}{5}\right]_0^1 = \pi\left(\frac{1}{3} - \frac{1}{5}\right) = \frac{2\pi}{15}$$

採点ポイント
  • 交点と内外関係の判定 … 2点
  • $x^2 - (x^2)^2 = x^2 - x^4$ の立式 … 3点
  • 正しい積分計算 … 3点
  • 最終結果 $\dfrac{2\pi}{15}$ … 2点
問題 3 LEVEL B 三角関数の回転体

曲線 $y = \sin x$($0 \le x \le \pi$)と $x$ 軸で囲まれた部分を $x$ 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めよ。

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解答

$$V = \pi\int_0^{\pi}\sin^2 x\,dx = \pi\int_0^{\pi}\frac{1-\cos 2x}{2}\,dx$$

$$= \frac{\pi}{2}\left[x - \frac{\sin 2x}{2}\right]_0^{\pi} = \frac{\pi}{2} \cdot \pi = \frac{\pi^2}{2}$$

採点ポイント
  • $\sin^2 x = \dfrac{1-\cos 2x}{2}$ の半角公式の使用 … 3点
  • 積分計算の正確な実行 … 4点
  • 最終結果 $\dfrac{\pi^2}{2}$ … 3点
問題 4 LEVEL C 回転体と部分積分

曲線 $y = x\,e^{-x}$($x \ge 0$)と $x$ 軸で囲まれた部分を $x$ 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めよ。すなわち $\displaystyle\lim_{t \to \infty}\pi\int_0^t x^2 e^{-2x}\,dx$ を計算せよ。

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解答

$\displaystyle\int_0^t x^2 e^{-2x}\,dx$ を部分積分で計算する。

$$\int x^2 e^{-2x}\,dx = x^2 \cdot \left(-\frac{e^{-2x}}{2}\right) - \int 2x \cdot \left(-\frac{e^{-2x}}{2}\right)dx = -\frac{x^2 e^{-2x}}{2} + \int x\,e^{-2x}\,dx$$

$$\int x\,e^{-2x}\,dx = -\frac{x\,e^{-2x}}{2} + \int \frac{e^{-2x}}{2}\,dx = -\frac{x\,e^{-2x}}{2} - \frac{e^{-2x}}{4}$$

よって:

$$\int x^2 e^{-2x}\,dx = -\frac{x^2 e^{-2x}}{2} - \frac{x\,e^{-2x}}{2} - \frac{e^{-2x}}{4} + C$$

$$= -\frac{e^{-2x}}{4}(2x^2 + 2x + 1) + C$$

$$\int_0^t x^2 e^{-2x}\,dx = \left[-\frac{e^{-2x}}{4}(2x^2+2x+1)\right]_0^t = -\frac{e^{-2t}}{4}(2t^2+2t+1) + \frac{1}{4}$$

$t \to \infty$ で $e^{-2t}(2t^2+2t+1) \to 0$ なので:

$$V = \pi \cdot \frac{1}{4} = \frac{\pi}{4}$$

解説

$y = xe^{-x}$ は面積の記事(III-6-1)でも扱った曲線です。面積は $1$、回転体の体積は $\dfrac{\pi}{4}$ です。$e^{-2x}$ の急速な減衰により、無限に広がる立体でも体積が有限値に収束します。部分積分を2回繰り返す必要があり、計算力が問われる問題です。

採点ポイント
  • $\{f(x)\}^2 = x^2 e^{-2x}$ の正しい立式 … 2点
  • 1回目の部分積分 … 2点
  • 2回目の部分積分 … 2点
  • $e^{-2t}(\cdots) \to 0$ の極限評価 … 2点
  • 最終結果 $\dfrac{\pi}{4}$ … 2点