第4章 微分法の応用

極値の判定(第2次導関数テスト)
─ $f''(a)$ の符号で極大・極小を見分ける

前記事では $f'(x)$ の符号変化(第1次導関数テスト)で極値を判定しました。本記事では、第2次導関数 $f''(x)$ を用いたもう一つの判定法を学びます。$f'(a) = 0$ かつ $f''(a) \neq 0$ のとき、$f''(a)$ の符号だけで極大・極小を判定できるため、計算の手間が減ることがあります。ただし $f''(a) = 0$ の場合は判定不能となる点に注意が必要です。

1第2次導関数テストの定理

$f'(a) = 0$ を満たす臨界点 $x = a$ において、$f''(a)$ の値を調べるだけで極大・極小を判定できます。

第2次導関数テスト

$f(x)$ が $x = a$ の近くで2回微分可能で、$f'(a) = 0$ とする。このとき:

(1) $f''(a) < 0$ ならば、$f(a)$ は極大値

(2) $f''(a) > 0$ ならば、$f(a)$ は極小値

(3) $f''(a) = 0$ ならば、この方法では判定できない

(2) の証明

$f'(a) = 0$ かつ $f''(a) > 0$ とする。$f''(a) > 0$ の定義より:

$$f''(a) = \lim_{h \to 0} \frac{f'(a+h) - f'(a)}{h} = \lim_{h \to 0} \frac{f'(a+h)}{h} > 0$$

$h \to 0$ でこの極限が正なので、十分小さい $|h|$ に対して $\dfrac{f'(a+h)}{h} > 0$ が成り立つ。

$h < 0$ のとき $f'(a+h) < 0$(分子と分母が異符号)、$h > 0$ のとき $f'(a+h) > 0$(分子と分母が同符号)。

すなわち $x = a$ の前後で $f'(x)$ は負 $\to$ 正に変化するので、第1次導関数テストより $f(a)$ は極小値。 $\square$

覚え方のコツ

$f''(a) > 0$(下に凸)$\to$ グラフがお椀型 $\to$ 極小

$f''(a) < 0$(上に凸)$\to$ グラフが山型 $\to$ 極大

$f''$ の符号と「凸」の方向を結びつけて覚えると間違えにくくなります。

2第2次導関数テストの直観的理解

第2次導関数テストはなぜ成り立つのでしょうか。$f''(x)$ の意味から直観的に理解しましょう。

$f'(a) = 0$ とは、$x = a$ での接線が水平であることを意味します。ここで $f''(a) > 0$ ならば、$f'(x)$ は $x = a$ の近くで増加しています。$f'(a) = 0$ から増加するということは:

  • $x < a$ では $f'(x) < 0$($f$ は減少中)
  • $x > a$ では $f'(x) > 0$($f$ は増加中)

つまり、$f(x)$ は $x = a$ で減少から増加に転じるので、極小値をとるのです。

$f''(x)$ は「$f'(x)$ の変化率」

$f''(a) > 0$ は「$f'(x)$ が $x = a$ 付近で増加中」ということです。$f'(a) = 0$ を通過して負から正に変化するので、極小値になります。

$f''(a) < 0$ は「$f'(x)$ が $x = a$ 付近で減少中」ということです。$f'(a) = 0$ を通過して正から負に変化するので、極大値になります。

グラフの凸性との関係

$f''(a) > 0$ のとき曲線は下に凸(concave up)、$f''(a) < 0$ のとき曲線は上に凸(concave down)です。水平な接線のところで下に凸ならお椀の底(極小)、上に凸なら山の頂上(極大)という直観に一致します。凸性については次記事で詳しく学びます。

3第2次導関数テストの適用例

例題1:$f(x) = x^3 - 3x + 1$ の極値

$f'(x) = 3x^2 - 3 = 3(x+1)(x-1)$。$f'(x) = 0$ のとき $x = -1, 1$。

$f''(x) = 6x$ より:

$f''(-1) = -6 < 0$ $\Rightarrow$ $x = -1$ で極大値 $f(-1) = -1+3+1 = 3$

$f''(1) = 6 > 0$ $\Rightarrow$ $x = 1$ で極小値 $f(1) = 1-3+1 = -1$

例題2:$f(x) = e^x - ex$ の極値

$f'(x) = e^x - e$。$f'(x) = 0$ のとき $e^x = e$、すなわち $x = 1$。

$f''(x) = e^x$ より:

$f''(1) = e > 0$ $\Rightarrow$ $x = 1$ で極小値 $f(1) = e - e = 0$

例題3:$f(x) = \sin x + \dfrac{1}{2}\sin 2x$($0 < x < 2\pi$)の極値

$f'(x) = \cos x + \cos 2x = \cos x + 2\cos^2 x - 1 = (2\cos x - 1)(\cos x + 1)$

$f'(x) = 0$ のとき:$\cos x = \dfrac{1}{2}$ すなわち $x = \dfrac{\pi}{3}, \dfrac{5\pi}{3}$、または $\cos x = -1$ すなわち $x = \pi$。

$f''(x) = -\sin x - 2\sin 2x = -\sin x - 4\sin x \cos x = -\sin x(1 + 4\cos x)$

$x = \dfrac{\pi}{3}$:$f''\!\left(\dfrac{\pi}{3}\right) = -\dfrac{\sqrt{3}}{2}(1+2) = -\dfrac{3\sqrt{3}}{2} < 0$ $\Rightarrow$ 極大値

$f\!\left(\dfrac{\pi}{3}\right) = \dfrac{\sqrt{3}}{2} + \dfrac{1}{2} \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2} = \dfrac{3\sqrt{3}}{4}$

$x = \pi$:$f''(\pi) = -0 \cdot (1-4) = 0$ $\Rightarrow$ 判定不能(第1次テストが必要)

$x = \pi$ の前後で $f'(x)$ の符号を調べると、$f'(x)$ は負 $\to$ 負で符号変化しない。よって $x = \pi$ は極値ではない。

$x = \dfrac{5\pi}{3}$:$f''\!\left(\dfrac{5\pi}{3}\right) = \dfrac{\sqrt{3}}{2}(1+2) = \dfrac{3\sqrt{3}}{2} > 0$ $\Rightarrow$ 極小値

$f\!\left(\dfrac{5\pi}{3}\right) = -\dfrac{\sqrt{3}}{2} + \dfrac{1}{2} \cdot \left(-\dfrac{\sqrt{3}}{2}\right) = -\dfrac{3\sqrt{3}}{4}$

第2次導関数テストが判定不能になったとき

誤:$f''(a) = 0$ なので極値ではない

正:$f''(a) = 0$ は「この方法では判定できない」という意味。第1次導関数テスト(符号変化の確認)に切り替える

例題3の $x = \pi$ のように、実際に極値でない場合もあれば、$f(x) = x^4$ の $x = 0$ のように極小値をとる場合もあります。

4$f''(a) = 0$ のとき ─ 判定不能の場合

第2次導関数テストが使えない場合を具体例で理解しましょう。

$f''(a) = 0$ で極値をとる場合

例:$f(x) = x^4$

$f'(x) = 4x^3$, $f''(x) = 12x^2$

$f'(0) = 0$, $f''(0) = 0$ $\Rightarrow$ 第2次導関数テストでは判定不能

しかし $f'(x) = 4x^3$ は $x = 0$ の前後で負 $\to$ 正に変化するので、$x = 0$ で極小値 $0$ をとる。

$f''(a) = 0$ で極値をとらない場合

例:$f(x) = x^3$

$f'(x) = 3x^2$, $f''(x) = 6x$

$f'(0) = 0$, $f''(0) = 0$ $\Rightarrow$ 判定不能

$f'(x) = 3x^2 \geq 0$ で $x = 0$ の前後で符号変化なし。$x = 0$ は極値ではない

$f''(a) = 0$ の場合のまとめ

$f'(a) = 0$ かつ $f''(a) = 0$ の場合、極大にも極小にも、あるいは極値でないこともあります。必ず第1次導関数テスト($f'(x)$ の符号変化)で判定してください。

なお、高階導関数を用いた一般的な判定法もあります。$f'(a) = f''(a) = \cdots = f^{(n-1)}(a) = 0$, $f^{(n)}(a) \neq 0$ のとき、$n$ が偶数なら極値をとり($f^{(n)}(a) > 0$ で極小、$f^{(n)}(a) < 0$ で極大)、$n$ が奇数なら極値をとりません。

例:$f(x) = x^6$ での高階導関数テスト

$f'(0) = f''(0) = f'''(0) = f^{(4)}(0) = f^{(5)}(0) = 0$, $f^{(6)}(0) = 720 > 0$

$n = 6$(偶数)かつ $f^{(6)}(0) > 0$ なので、$x = 0$ で極小値 $0$ をとる。

5第1次テストと第2次テストの使い分け

2つの判定法にはそれぞれ長所と短所があります。状況に応じて適切に使い分けましょう。

第1次導関数テスト 第2次導関数テスト
方法 $f'(x)$ の符号変化を調べる $f''(a)$ の値を計算する
長所 常に判定可能。増減表で全体像がわかる 1点の値の計算で済む。手早い
短所 各区間の符号調べがやや手間 $f''(a) = 0$ のとき判定不能
適する場面 グラフの概形を描くとき。確実性重視 $f''$ が簡単に計算できるとき。速度重視
入試答案での使い分け

入試では増減表を用いた第1次テストが最も標準的です。グラフの概形を描く問題では増減表が必須なので、第1次テストをベースにしましょう。

第2次テストは「極値をもつ条件を求める」問題や、臨界点の個数が多く個別に判定したいときに有効です。

いずれの方法でも、答案に判定の根拠を明記することが大切です。

例題4:2つの方法の比較 ─ $f(x) = \dfrac{x}{1+x^2}$

第1次テスト:

$f'(x) = \dfrac{(1+x^2) - x \cdot 2x}{(1+x^2)^2} = \dfrac{1-x^2}{(1+x^2)^2}$

$f'(x) = 0$ のとき $x = \pm 1$。$(1+x^2)^2 > 0$ なので $f'(x)$ の符号は $1-x^2$ で決まる。

$x$$\cdots$$-1$$\cdots$$1$$\cdots$
$f'(x)$$-$$0$$+$$0$$-$
$f(x)$$\searrow$$-\dfrac{1}{2}$$\nearrow$$\dfrac{1}{2}$$\searrow$

$x = -1$ で極小値 $-\dfrac{1}{2}$、$x = 1$ で極大値 $\dfrac{1}{2}$。

第2次テスト:

$f''(x) = \dfrac{-2x(1+x^2)^2 - (1-x^2) \cdot 2(1+x^2) \cdot 2x}{(1+x^2)^4} = \dfrac{2x(x^2-3)}{(1+x^2)^3}$

$f''(-1) = \dfrac{2(-1)(1-3)}{(2)^3} = \dfrac{4}{8} = \dfrac{1}{2} > 0$ $\Rightarrow$ 極小値。$f''(1) = \dfrac{2(1)(1-3)}{8} = -\dfrac{1}{2} < 0$ $\Rightarrow$ 極大値。

この問題では $f''$ の計算がやや複雑なので、第1次テストの方が効率的です。

第2次テストの結論の向きに注意

誤:$f''(a) > 0$ だから極大(「大きい」と混同)

正:$f''(a) > 0$ は下に凸(お椀型)なので極小値

$f''$ の正負と極大・極小の対応は直観に反しやすいので、「凸の向き」で覚えましょう。

まとめ

  • 第2次導関数テスト ─ $f'(a) = 0$ のとき、$f''(a) < 0$ なら極大、$f''(a) > 0$ なら極小
  • 判定不能 ─ $f''(a) = 0$ の場合はこの方法で判定できない。第1次導関数テストを用いる
  • 直観 ─ $f''(a) > 0$ は下に凸(お椀型)、$f''(a) < 0$ は上に凸(山型)と対応する
  • 第1次テスト ─ 常に判定可能で確実。増減表でグラフの全体像もわかる
  • 使い分け ─ グラフ描画には第1次テスト、条件問題や速度重視のときは第2次テストが有効

確認テスト

Q1. $f'(a) = 0$, $f''(a) > 0$ のとき、$f(a)$ は極大値か極小値か。

▶ クリックして解答を表示 極小値。$f''(a) > 0$ は下に凸(お椀型)を意味し、お椀の底が極小値となる。

Q2. $f(x) = x^4$ で $f'(0) = 0$, $f''(0) = 0$ のとき、$x = 0$ は極値か。

▶ クリックして解答を表示 極小値 $0$ をとる。$f'(x) = 4x^3$ の符号が $x = 0$ の前後で負$\to$正に変化するので極小。第2次テストでは判定不能だが、第1次テストで判定できる。

Q3. $f(x) = e^x - ex$ が極小値をとる $x$ を、第2次導関数テストを用いて求めよ。

▶ クリックして解答を表示 $f'(x) = e^x - e = 0$ より $x = 1$。$f''(x) = e^x$ なので $f''(1) = e > 0$。よって $x = 1$ で極小値 $0$。

Q4. 第2次導関数テストで $f''(a) = 0$ のとき、次に行うべきことは何か。

▶ クリックして解答を表示 第1次導関数テストに切り替える。すなわち $x = a$ の前後で $f'(x)$ の符号変化を調べて、極大・極小・極値でないのいずれかを判定する。

Q5. 第1次テストと第2次テストの最大の違いは何か。

▶ クリックして解答を表示 第1次テストは常に判定可能だが各区間の符号調べが必要。第2次テストは $f''(a)$ の1点の計算で済むが、$f''(a) = 0$ のときは判定できない。

入試問題演習

問題 1 A 基礎 第2次テスト

第2次導関数テストを用いて、$f(x) = x^3 - 12x + 5$ の極値を求めよ。

解答

$f'(x) = 3x^2 - 12 = 3(x+2)(x-2)$。$f'(x) = 0$ のとき $x = -2, 2$。

$f''(x) = 6x$ より:

$f''(-2) = -12 < 0$ $\Rightarrow$ $x = -2$ で極大値 $f(-2) = -8+24+5 = 21$

$f''(2) = 12 > 0$ $\Rightarrow$ $x = 2$ で極小値 $f(2) = 8-24+5 = -11$

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問題 2 B 標準 対数関数

$f(x) = x^2 \log x$($x > 0$)の極値を第2次導関数テストで求めよ。

解答

$f'(x) = 2x\log x + x^2 \cdot \dfrac{1}{x} = 2x\log x + x = x(2\log x + 1)$

$x > 0$ なので $f'(x) = 0$ のとき $2\log x + 1 = 0$、$\log x = -\dfrac{1}{2}$、$x = \dfrac{1}{\sqrt{e}} = e^{-1/2}$。

$f''(x) = 2\log x + 1 + 2x \cdot \dfrac{1}{x} = 2\log x + 3$

$f''(e^{-1/2}) = 2 \cdot \left(-\dfrac{1}{2}\right) + 3 = 2 > 0$

$\Rightarrow$ $x = e^{-1/2}$ で極小値 $f(e^{-1/2}) = e^{-1} \cdot \left(-\dfrac{1}{2}\right) = -\dfrac{1}{2e}$

解説

$f''(e^{-1/2}) = 2 > 0$ なので第2次テストが適用でき、確かに極小値と判定できます。

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問題 3 B 標準 判定不能

$f(x) = x^5 - 5x^4$ の臨界点をすべて求め、各臨界点で極値をとるか判定せよ。

解答

$f'(x) = 5x^4 - 20x^3 = 5x^3(x-4)$。$f'(x) = 0$ のとき $x = 0, 4$。

$f''(x) = 20x^3 - 60x^2 = 20x^2(x-3)$

$x = 4$:$f''(4) = 20 \cdot 16 \cdot 1 = 320 > 0$ $\Rightarrow$ 極小値 $f(4) = 1024 - 1280 = -256$

$x = 0$:$f''(0) = 0$ $\Rightarrow$ 判定不能。第1次テストに切り替える。

$f'(x) = 5x^3(x-4)$:$x < 0$ で $f'(x) > 0$、$0 < x < 4$ で $f'(x) < 0$。

$x = 0$ の前後で正 $\to$ 負なので、$x = 0$ で極大値 $f(0) = 0$。

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問題 4 C 発展 極値条件

$a$ を正の定数とする。関数 $f(x) = x^2 e^{-ax}$ の極大値と極小値を求め、極大値を $M(a)$ とおくとき $\displaystyle\lim_{a \to \infty} M(a)$ を求めよ。

解答

$f'(x) = 2xe^{-ax} + x^2 \cdot (-a)e^{-ax} = xe^{-ax}(2-ax)$

$e^{-ax} > 0$ なので $f'(x) = 0$ のとき $x = 0$ または $x = \dfrac{2}{a}$。

$f''(x) = e^{-ax}[(2-ax) + x(-a)] + xe^{-ax}(-a)(2-ax) = e^{-ax}(a^2x^2 - 4ax + 2)$

$f''(0) = e^0 \cdot 2 = 2 > 0$ $\Rightarrow$ $x = 0$ で極小値 $f(0) = 0$

$f''\!\left(\dfrac{2}{a}\right) = e^{-2}(4 - 8 + 2) = -2e^{-2} < 0$ $\Rightarrow$ $x = \dfrac{2}{a}$ で極大値

$M(a) = f\!\left(\dfrac{2}{a}\right) = \dfrac{4}{a^2} \cdot e^{-2} = \dfrac{4}{a^2 e^2}$

$$\lim_{a \to \infty} M(a) = \lim_{a \to \infty} \frac{4}{a^2 e^2} = 0$$

解説

$a$ が大きくなると臨界点 $x = \dfrac{2}{a}$ が原点に近づき、極大値も $0$ に近づきます。$e^{-ax}$ の減衰が強くなるため、$x^2$ の増加を抑え込む効果が大きくなることを反映しています。

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