極値の理論を実際の最適化問題に応用します。相加相乗平均と微分法の使い分け、パラメータを含む関数の極値条件、ちょうど $k$ 個の極値をもつための条件など、入試で頻出の発展的テーマを扱います。
正の実数に関する最大最小問題では、相加相乗平均の不等式(AM-GM不等式)と微分法のどちらを使うかが重要な判断ポイントです。
$a > 0,\; b > 0$ のとき
$$\frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab} \quad (\text{等号:} a = b)$$
3変数版:$a > 0,\; b > 0,\; c > 0$ のとき
$$\frac{a + b + c}{3} \geq \sqrt[3]{abc} \quad (\text{等号:} a = b = c)$$
※ 積が一定のとき和の最小値、和が一定のとき積の最大値を求められる。
問題:$x > 0$ のとき、$f(x) = x + \dfrac{4}{x}$ の最小値を求めよ。
解法1(AM-GM):相加相乗平均の不等式より
$$x + \frac{4}{x} \geq 2\sqrt{x \cdot \frac{4}{x}} = 2\sqrt{4} = 4$$
等号条件:$x = \dfrac{4}{x}$、すなわち $x = 2$($x > 0$)。よって最小値は $4$。
解法2(微分法):$f'(x) = 1 - \dfrac{4}{x^2} = \dfrac{x^2 - 4}{x^2}$
$f'(x) = 0$ より $x = 2$($x > 0$)。$f''(2) = \dfrac{8}{8} = 1 > 0$ より極小値。$f(2) = 4$。
AM-GMが有効な場合:
・積や和が一定の制約がある場合($xy = k$ のもとで $x + y$ の最小値など)
・式が $x + \dfrac{a}{x}$ の形をしている場合
微分法が必要な場合:
・AM-GMの等号条件を満たせない場合(定義域の端で最大最小をとるなど)
・三角関数・指数関数・対数関数を含む場合
・極値が複数あり得る場合
問題:$0 < x < 1$ のとき、$g(x) = x(1-x)^2$ の最大値を求めよ。
解:$g'(x) = (1-x)^2 + x \cdot 2(1-x)(-1) = (1-x)(1-x-2x) = (1-x)(1-3x)$
$g'(x) = 0$ より $x = \dfrac{1}{3}$($0 < x < 1$)。
$x = \dfrac{1}{3}$ の前後で $g'(x)$ は正から負に変わるので極大値。
$$g\!\left(\frac{1}{3}\right) = \frac{1}{3}\left(\frac{2}{3}\right)^2 = \frac{4}{27}$$
※ AM-GMで $x + (1-x) = 1$ は一定だが、$x(1-x)^2$ は2変数の積でないため直接適用しにくい。$x + \frac{1-x}{2} + \frac{1-x}{2} = 1$ と3分割すると $x \cdot \frac{1-x}{2} \cdot \frac{1-x}{2} \leq \left(\frac{1}{3}\right)^3 = \frac{1}{27}$ より $x(1-x)^2 \leq \frac{4}{27}$ と求まるが、テクニカルな分割が必要で微分法の方が自然。
✗ 等号条件を確認せずに「最小値は...」と結論する
✓ 等号が成立する点が定義域内に存在することを必ず確認する
例:$1 \leq x \leq 2$ で $x + \dfrac{9}{x}$ の最小値。$x = 3$ で等号だが定義域外なので、端点 $x = 2$ で最小値 $\dfrac{13}{2}$。
図形に関する最適化問題は、まず変数を1つに絞り、微分法で極値を求めるのが基本です。
問題:半径 $r$ の球に内接する直円柱の体積の最大値を求めよ。
解:円柱の底面の半径を $a$、高さを $2h$ とする。球に内接する条件は $a^2 + h^2 = r^2$。
体積 $V = \pi a^2 \cdot 2h = 2\pi(r^2 - h^2)h = 2\pi(r^2 h - h^3)$ ($0 < h < r$)
$\dfrac{dV}{dh} = 2\pi(r^2 - 3h^2) = 0$ より $h = \dfrac{r}{\sqrt{3}}$
$\dfrac{d^2V}{dh^2} = -12\pi h < 0$ より、これは極大値。
$$V_{\max} = 2\pi\left(r^2 \cdot \frac{r}{\sqrt{3}} - \frac{r^3}{3\sqrt{3}}\right) = 2\pi \cdot \frac{2r^3}{3\sqrt{3}} = \frac{4\pi r^3}{3\sqrt{3}} = \frac{4\sqrt{3}\,\pi r^3}{9}$$
Step 1. 求めたい量(体積・面積・長さなど)を文字で表す。
Step 2. 制約条件を使って変数を1つに絞る。
Step 3. 定義域を確認する($0 < h < r$ など)。
Step 4. 微分して増減表を作り、極値と端点の値を比較する。
問題:曲線 $y = e^{-x}$($x \geq 0$)と $x$ 軸および $y$ 軸で囲まれた領域に内接する長方形の面積の最大値を求めよ。ただし長方形の一辺は $x$ 軸上、対辺は曲線上にあるとする。
解:長方形の右上の頂点を $(t,\, e^{-t})$($t > 0$)とすると、面積は $S(t) = t \cdot e^{-t}$。
$S'(t) = e^{-t} - te^{-t} = (1-t)e^{-t}$
$S'(t) = 0$ より $t = 1$。$t < 1$ で $S' > 0$、$t > 1$ で $S' < 0$ なので極大値。
$$S(1) = 1 \cdot e^{-1} = \frac{1}{e}$$
$S(0) = 0$、$\displaystyle\lim_{t \to \infty} S(t) = 0$ より、最大値は $\dfrac{1}{e}$。
入試では定数 $a$ を含む関数の極値を求める問題、あるいは極値から定数を決定する問題が頻出です。
問題:$f(x) = x^3 + ax^2 + bx + 1$ が $x = 1$ で極大値 $3$ をとるとき、$a,\, b$ を求めよ。
解:$f'(x) = 3x^2 + 2ax + b$ より、$x = 1$ で極値をとるための必要条件は $f'(1) = 0$。
$3 + 2a + b = 0$ ... (1)
$f(1) = 3$ より $1 + a + b + 1 = 3$、すなわち $a + b = 1$ ... (2)
(1), (2) より $a = -1$、$b = 2$。
確認:$f'(x) = 3x^2 - 2x + 2 = 3(x-1)\!\left(x + \dfrac{2}{3}\right)$
$f'(x) = 0$ は $x = -\dfrac{2}{3},\, 1$ を解にもち、$x = 1$ の前後で $f'$ は正から負に変わるから、確かに極大。
✗ $f'(a) = 0$ だけで「$x = a$ で極値をとる」と結論する
✓ $f'(a) = 0$ は必要条件。符号変化の確認(十分条件)が必須
$f(x) = x^3$ では $f'(0) = 0$ だが、$x = 0$ は極値でない(変曲点)。
問題:$f(x) = x^3 - 3ax$ が極値をもつような定数 $a$ の範囲を求めよ。
解:$f'(x) = 3x^2 - 3a = 3(x^2 - a)$
$f(x)$ が極値をもつためには $f'(x) = 0$ が異なる2つの実数解をもち、かつその前後で $f'$ の符号が変わることが必要十分である。
$x^2 = a$ が異なる2解をもつ条件は $a > 0$。
このとき $x = \pm\sqrt{a}$ で $f'$ の符号は変わるから(3次関数の導関数は2次関数)、$f$ は極大値と極小値を1つずつもつ。
$$\therefore\quad a > 0$$
$f(x) = x^3 + px + q$ について:
$f'(x) = 3x^2 + p$ が異なる2つの実数解をもつ条件は
$$p < 0$$
一般に $f(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d$($a \neq 0$)が極値をもつ条件は
$$f'(x) = 3ax^2 + 2bx + c \text{ の判別式 } D = 4b^2 - 12ac > 0$$
すなわち $b^2 - 3ac > 0$
関数がちょうど何個の極値をもつかを判定する問題は、特に高次関数やパラメータ付き関数で出題されます。
問題:$f(x) = x^4 - 4ax^2 + 1$ がちょうど1つの極値をもつ条件を求めよ。
解:$f'(x) = 4x^3 - 8ax = 4x(x^2 - 2a)$
$f'(x) = 0$ の解は $x = 0$ および $x^2 = 2a$。
場合分け:
(i) $a \leq 0$ のとき:$x^2 = 2a$ は実数解をもたない($a < 0$)か $x = 0$ のみ($a = 0$)。$f'(x) = 0$ の解は $x = 0$ のみ。
$a < 0$:$f'(x) = 4x(x^2 + |2a|)$ で $x = 0$ の前後で負から正に変わるので極小値が1つ。
$a = 0$:$f'(x) = 4x^3$ で符号変化なし。極値なし。
(ii) $a > 0$ のとき:$f'(x) = 0$ は $x = 0,\, \pm\sqrt{2a}$ の3つの実数解。増減表を作ると極大値1つ、極小値2つで合計3つの極値。
結論:ちょうど1つの極値をもつのは $a < 0$ のとき。
$f'(x) = 0$ の異なる実数解の個数が $n$ 個のとき:
・各解の前後で $f'$ の符号が変わるかどうかを確認する
・重解では符号が変わらないことがある(例:$f'(x) = (x-1)^2$ のとき $x = 1$ は極値でない)
・極値の個数は $f'$ の符号変化の回数に等しい
問題:$f(x) = e^x - ax$($a$ は正の定数)の極値の個数を調べよ。
解:$f'(x) = e^x - a$。$f'(x) = 0$ より $e^x = a$、すなわち $x = \log a$。
$a > 0$ のとき解はつねに1つ存在する。
$f''(x) = e^x > 0$(常に正)より、$x = \log a$ は極小値。
$f(\log a) = a - a\log a = a(1 - \log a)$
よって $a > 0$ のとき、$f(x)$ はつねにちょうど1つの極値(極小値)をもつ。
$e^x = ax$ の実数解の個数は、$y = e^x$ と $y = ax$ のグラフの交点を調べることに帰着します。$y = ax$ が $y = e^x$ に接するときの $a$ の値が境界になります。接点は $x = 1$ で $a = e$ です。
$a \leq 0$:1個、$0 < a < e$:0個、$a = e$:1個、$a > e$:2個。
入試で最適化問題に取り組む際の戦略をまとめます。
1. 変数の設定:求める量を1つの変数 $t$ の関数として表す
2. 定義域の確認:$t$ の取り得る範囲を明確にする
3. 手法の選択:
・積が一定 or $t + \frac{k}{t}$ 型 → AM-GM
・それ以外 → 微分法($f'(t) = 0$ を解く)
4. 極値の判定:符号変化 or 第2次導関数で判定
5. 端点との比較:閉区間なら端点の値と比較、開区間なら極限値を確認
| 問題の型 | 推奨手法 | 注意点 |
|---|---|---|
| $x + \frac{a}{x}$ 型 | AM-GM | 等号条件が定義域内にあるか確認 |
| 体積・面積の最大 | 微分法 | 変数を1つに絞る |
| 三角関数の最大最小 | 微分法 | 周期性・定義域に注意 |
| 指数・対数関数 | 微分法 | 端点や極限の確認 |
| パラメータ付き極値 | 微分法 | $f'=0$ の判別式を活用 |
開区間 $(a, b)$ では端点の値が取れないため、極値が最大値・最小値になるとは限りません。連続関数が閉区間で最大最小をもつことは保証されますが(最大値最小値の定理)、開区間では保証されません。
開区間での最大最小を議論するには、端点での極限値も調べる必要があります。
Q1. $x > 0$ のとき $x + \dfrac{9}{x}$ の最小値を AM-GM で求めよ。
Q2. $f(x) = x^3 - 3ax$($a$ は実数)が極値をもたないための $a$ の条件は何か。
Q3. 半径 $R$ の円に内接する長方形の面積の最大値を求めよ。
Q4. $f(x) = xe^{-x}$($x > 0$)の最大値を求めよ。
Q5. $f(x) = x^4 + ax^2 + 1$ がちょうど2つの極値をもつ $a$ の条件を求めよ。
$x > 0,\; y > 0$、$x + 2y = 6$ のとき、$xy$ の最大値を求めよ。
$x = 6 - 2y$($0 < y < 3$)を代入して $xy = (6-2y)y = 6y - 2y^2$。
方法1(微分法):$\dfrac{d}{dy}(6y - 2y^2) = 6 - 4y = 0$ より $y = \dfrac{3}{2}$、$x = 3$。
$xy = 3 \cdot \dfrac{3}{2} = \dfrac{9}{2}$。
方法2(AM-GM):$x + 2y = 6$ かつ AM-GM より $x \cdot 2y \leq \left(\dfrac{x + 2y}{2}\right)^2 = 9$。よって $xy \leq \dfrac{9}{2}$。等号:$x = 2y = 3$。
底面の半径が $r$、母線の長さが $l$ の円錐がある。$r + l = 10$ のとき、この円錐の体積を最大にする $r$ の値と、そのときの体積を求めよ。
$l = 10 - r$($0 < r < 10$)。高さ $h = \sqrt{l^2 - r^2} = \sqrt{(10-r)^2 - r^2} = \sqrt{100 - 20r}$。
$V = \dfrac{1}{3}\pi r^2 h = \dfrac{\pi}{3}r^2\sqrt{100 - 20r}$。
$V^2 = \dfrac{\pi^2}{9}r^4(100 - 20r)$ を最大化する。$g(r) = r^4(100 - 20r)$($0 < r < 5$)。
$g'(r) = 4r^3(100 - 20r) + r^4(-20) = 4r^3(100 - 25r) = 100r^3(4 - r)$
$g'(r) = 0$ より $r = 4$。$g(4) = 256 \cdot 20 = 5120$。
$V = \dfrac{\pi}{3} \cdot 16\sqrt{20} = \dfrac{16\sqrt{20}\,\pi}{3} = \dfrac{32\sqrt{5}\,\pi}{3}$
$f(x) = x^3 + ax^2 + bx + 2$ が $x = -1$ で極大値 $6$ をとるとき:
(1) $a,\, b$ の値を求めよ。
(2) $f(x)$ の極小値を求めよ。
(1) $f(-1) = -1 + a - b + 2 = 6$ より $a - b = 5$ ... (i)
$f'(x) = 3x^2 + 2ax + b$、$f'(-1) = 3 - 2a + b = 0$ より $-2a + b = -3$ ... (ii)
(i) + (ii):$-a = 2$、$a = -2$。(i) より $b = -7$。
確認:$f'(x) = 3x^2 - 4x - 7 = (3x - 7)(x + 1)$。$x = -1$ の前後で正→負なので極大。 ✓
(2) $f'(x) = 0$ のもう一つの解は $x = \dfrac{7}{3}$。
$f\!\left(\dfrac{7}{3}\right) = \dfrac{343}{27} - 2 \cdot \dfrac{49}{9} - 7 \cdot \dfrac{7}{3} + 2 = \dfrac{343}{27} - \dfrac{98}{9} - \dfrac{49}{3} + 2$
$= \dfrac{343 - 294 - 441 + 54}{27} = \dfrac{-338}{27} = -\dfrac{338}{27}$
$a$ を正の定数とする。$f(x) = x^2 e^{-ax}$ について:
(1) $f(x)$ の極値をすべて求めよ。
(2) $f(x)$ の極大値が $\dfrac{1}{e^2}$ に等しいとき、$a$ の値を求めよ。
(1) $f'(x) = 2xe^{-ax} + x^2(-a)e^{-ax} = xe^{-ax}(2 - ax)$
$a > 0$ より $f'(x) = 0$ のとき $x = 0$ または $x = \dfrac{2}{a}$。
$x < 0$:$f' < 0$($x < 0,\, e^{-ax} > 0,\, 2-ax > 0$)
$0 < x < \frac{2}{a}$:$f' > 0$。$x > \frac{2}{a}$:$f' < 0$。
$x = 0$ で極小値 $f(0) = 0$。$x = \dfrac{2}{a}$ で極大値 $f\!\left(\dfrac{2}{a}\right) = \dfrac{4}{a^2}e^{-2}$。
(2) $\dfrac{4}{a^2 e^2} = \dfrac{1}{e^2}$ より $a^2 = 4$。$a > 0$ より $a = 2$。
$x^n e^{-ax}$ 型の関数では、$f'(x)$ を計算すると $e^{-ax}$ でくくれる。$e^{-ax} > 0$ なので符号は残りの因子で決まる。$x \to \infty$ で $f(x) \to 0$ となることも押さえておくと、増減表の全体像がつかみやすい。