$y = \sqrt{x}$ のグラフを描いたことはありますか。ルート(平方根)の中に $x$ を含む関数を無理関数といいます。無理関数のグラフは、実は放物線と深い関係を持っています。「なぜ放物線の半分のような形になるのか」──その理由を、定義域の制限と逆関数の観点から理解しましょう。
$f(x)$ が $x$ の無理式(根号を含む式)であるとき、関数 $y = f(x)$ を無理関数といいます。数学IIIで扱う代表的な無理関数は次の形です。
「無理」という言葉は「理にかなわない」という意味ではありません。数学史上、$\sqrt{2}$ のように分数(有理数)で表せない数を「無理数」と呼んだことに由来します。無理関数とは、無理式を含む関数のことです。
実数の範囲では、負の数の平方根は定義されません。したがって、$y = \sqrt{ax + b}$ の定義域は $ax + b \geq 0$ を満たす $x$ の範囲に限られます。
この定義域の制限こそが、無理関数のグラフが「途中から始まる」独特の形をしている理由です。
✕ 誤:$y = \sqrt{x^2}$ は無理関数である
○ 正:$y = \sqrt{x^2} = |x|$ なので、これは絶対値関数であり、無理関数ではない
根号内が完全平方式のとき、根号を外すと無理式ではなくなります。無理関数は、根号内の式が簡約できず無理式のまま残る場合を指します。
最も基本的な無理関数 $y = \sqrt{x}$ のグラフを考えましょう。定義域は $x \geq 0$、値域は $y \geq 0$ です。
このグラフの形を理解するカギは、放物線との関係にあります。$y = \sqrt{x}$ の両辺を2乗すると $y^2 = x$($y \geq 0$)となります。これは放物線 $x = y^2$ の上半分です。
$y = x^2$($x \geq 0$)のグラフで $x$ と $y$ の役割を入れ替えると $x = y^2$($y \geq 0$)、つまり $y = \sqrt{x}$ になります。グラフで見ると、放物線を直線 $y = x$ で折り返した形です。
だから無理関数のグラフは放物線に似た曲線になるのです。これは逆関数の話(次の記事で詳しく学びます)に直結しています。
$y = \sqrt{ax}$($a > 0$)のグラフは、原点を始点として右方向に伸びる曲線です。定義域は $x \geq 0$、値域は $y \geq 0$ です。$a$ が大きいほど曲線は急に立ち上がり、$a$ が小さいほど緩やかに伸びます。
$y = \sqrt{ax}$($a < 0$)のグラフは、原点を始点として左方向に伸びる曲線です。定義域は $x \leq 0$ です。$ax \geq 0$ となるためには、$a < 0$ のとき $x \leq 0$ でなければなりません。
$a > 0$ のとき:
定義域:$x \geq 0$、値域:$y \geq 0$、始点:原点、伸びる方向:右
$a < 0$ のとき:
定義域:$x \leq 0$、値域:$y \geq 0$、始点:原点、伸びる方向:左
✕ 誤:$y = \sqrt{-2x}$ はルートの中が負なので定義できない
○ 正:$x \leq 0$ のとき $-2x \geq 0$ なのでルートの中は非負。定義域が $x \leq 0$ であれば問題ない
ルートの中の式を見て「負の係数だから定義できない」と即断してはいけません。$x$ の値の範囲を考えましょう。
$y = \sqrt{x} = x^{1/2}$ は、$x$ が大きくなるにつれて増加はしますが、その増加のペースはどんどん緩やかになります。これを数学的には「劣線形(sublinear)」な増加といいます。大学では、$x^{1/n}$($n$ が大きいほど緩やか)や $\log x$(さらに緩やか)など、「ゆっくり増える関数」の族を系統的に学びます。
$y = \sqrt{ax + b}$ のグラフは、$y = \sqrt{ax}$ のグラフを $x$ 軸方向に平行移動したものです。具体的に見てみましょう。
$y = \sqrt{a(x + \frac{b}{a})} = \sqrt{a\left(x - \left(-\frac{b}{a}\right)\right)}$ と変形できるので、$y = \sqrt{ax}$ のグラフを $x$ 軸方向に $-\frac{b}{a}$ だけ平行移動したものです。
より一般的な形 $y = \sqrt{ax + b} + c$ は、さらに $y$ 軸方向に $c$ だけ移動したものです。
$y = \sqrt{ax + b} + c$ のグラフ:
始点(端点):$\left(-\frac{b}{a},\; c\right)$
定義域:$a > 0$ のとき $x \geq -\frac{b}{a}$、$a < 0$ のとき $x \leq -\frac{b}{a}$
値域:$y \geq c$($+\sqrt{}$ のとき)、$y \leq c$($-\sqrt{}$ のとき)
具体例を見ましょう。$y = \sqrt{2x - 6} + 1$ の始点を求めます。
ルートの中 $= 0$ とすると $2x - 6 = 0$、よって $x = 3$。このとき $y = 0 + 1 = 1$。始点は $(3, 1)$ です。
このグラフは $y = \sqrt{2x}$ を $x$ 軸方向に $3$、$y$ 軸方向に $1$ だけ平行移動したものです。定義域は $x \geq 3$、値域は $y \geq 1$ です。
$y = \sqrt{ax + b} + c$ の始点は次の手順で求められます。
Step 1:ルートの中 $ax + b = 0$ を解く → $x = -\frac{b}{a}$
Step 2:その $x$ の値を元の式に代入 → $y = \sqrt{0} + c = c$
よって始点は $\left(-\frac{b}{a},\; c\right)$ です。
ルートの中が $0$ のとき $\sqrt{0} = 0$ で、関数値が最小($+\sqrt{}$)または最大($-\sqrt{}$)になるため、この点がグラフの端点(始点)になります。
✕ 誤:$2x - 6$ の定数項が $-6$ なので始点の $x$ 座標は $6$
○ 正:$2x - 6 = 0$ を解いて $x = 3$ なので始点は $(3, 0)$
始点は「ルートの中 $= 0$」を方程式として解いて求めます。定数項をそのまま使うのではありません。
$y = \sqrt{ax + b} + c$ は放物線の上半分に対応し、$y = -\sqrt{ax + b} + c$ は下半分に対応します。2つを合わせると、$x$ 軸を軸とする放物線全体が得られます。このように、無理関数1つでは放物線の「半分」しか表現できません。これは $\sqrt{}$ が非負の値しか返さないという制約に起因します。
無理関数の問題を解くうえで最も重要なのが、定義域の正確な把握です。ルートの中が $0$ 以上であることを常に確認する必要があります。
たとえば、$y = \sqrt{-x^2 + 4x + 5}$ の定義域を求めてみましょう。
$-x^2 + 4x + 5 \geq 0$ を解きます。両辺に $-1$ をかけて $x^2 - 4x - 5 \leq 0$、$(x - 5)(x + 1) \leq 0$ より $-1 \leq x \leq 5$ です。
$y = \sqrt{g(x)}$ の値域を求めるには、定義域における $g(x)$ の最大値を調べます。$g(x)$ の最大値が $M$ なら、$y$ の最大値は $\sqrt{M}$ です。
上の例では、$g(x) = -x^2 + 4x + 5 = -(x-2)^2 + 9$ の最大値は $x = 2$ のとき $9$ です。したがって $y$ の最大値は $\sqrt{9} = 3$ で、値域は $0 \leq y \leq 3$ です。
| 関数 | 定義域 | 値域 |
|---|---|---|
| $y = \sqrt{x}$ | $x \geq 0$ | $y \geq 0$ |
| $y = \sqrt{ax + b} + c$($a > 0$) | $x \geq -\frac{b}{a}$ | $y \geq c$ |
| $y = \sqrt{ax + b} + c$($a < 0$) | $x \leq -\frac{b}{a}$ | $y \geq c$ |
| $y = -\sqrt{ax + b} + c$($a > 0$) | $x \geq -\frac{b}{a}$ | $y \leq c$ |
✕ 誤:$y = \sqrt{x}$ で $x = -1$ のとき $y = \sqrt{-1}$(虚数)を考慮してしまう
○ 正:定義域 $x \geq 0$ の範囲でのみ考える。$x < 0$ は関数が定義されていない
無理関数の問題では、常に最初に定義域を確認する習慣をつけましょう。計算の途中で定義域外の値が出てきたら、それは解として不適です。
「$\sqrt{-1}$ は存在しない」というのは実数の範囲での話です。複素数の世界では $\sqrt{-1} = i$(虚数単位)と定義され、任意の複素数の平方根が存在します。大学の複素関数論では、$\sqrt{z}$($z$ は複素数)を「リーマン面」という概念を使って厳密に扱います。
無理関数と直線の共有点は、無理方程式を解くことで求まります。ただし、無理関数ならではの注意点があります。
$\sqrt{ax + b} + c = mx + n$ のような方程式を解くとき、次の手順を踏みます。
両辺を2乗すると、元の方程式にはなかった解(無縁解)が紛れ込む可能性があります。$A = B$ ならば $A^2 = B^2$ ですが、逆は成り立ちません($A = -B$ でも $A^2 = B^2$ になる)。
つまり、2乗は「同値変形」ではなく「片方向の変形」なのです。だから、最後に必ず検算して無縁解を排除する必要があります。
具体例として、$y = \sqrt{2x + 3}$ と $y = x + 1$ の共有点を求めてみましょう。
$\sqrt{2x + 3} = x + 1$ の両辺を2乗して $2x + 3 = (x+1)^2 = x^2 + 2x + 1$
$x^2 - 2 = 0$ より $x = \pm\sqrt{2}$
検算:$x = \sqrt{2}$ のとき、左辺 $= \sqrt{2\sqrt{2} + 3} > 0$、右辺 $= \sqrt{2} + 1 > 0$。どちらも正なので適。
$x = -\sqrt{2}$ のとき、右辺 $= -\sqrt{2} + 1 = 1 - \sqrt{2} \approx -0.41 < 0$。しかし左辺 $= \sqrt{-2\sqrt{2}+3} > 0$ なので左辺 $\neq$ 右辺。不適(無縁解)。
よって共有点は $x = \sqrt{2}$ のときの1点のみです。
✕ 誤:2乗して得た解をそのまま答えとする
○ 正:得た解を元の式に代入し、両辺の値が一致するか確認する
特に「$\sqrt{\text{式}} = $ 負の数」となる解は無縁解です。$\sqrt{}$ は常に $0$ 以上なので、右辺が負なら等号は成り立ちません。
$y = \sqrt{x}$ と $y = x + k$ の共有点の個数を $k$ の値で場合分けする問題もよく出ます。このとき、2乗して得られる2次方程式の判別式だけでなく、無縁解の条件($x + k \geq 0$)も考慮する必要があります。グラフの概形を描いて視覚的に確認するのが最も確実です。
$\sqrt{f(x)} > g(x)$ を解くとき、$g(x) < 0$ なら $f(x) \geq 0$ の範囲で常に成立します。$g(x) \geq 0$ のときだけ両辺を2乗できます。場合分けを忘れると、解の範囲を間違えます。
Q1. $y = \sqrt{3x - 6}$ の定義域と始点を求めなさい。
Q2. $y = \sqrt{-x + 4}$ の定義域と値域を答えなさい。
Q3. $y = \sqrt{2x + 8} - 3$ の始点と、グラフが $x$ 軸と交わる点を求めなさい。
Q4. $y = \sqrt{-x^2 + 6x - 5}$ の定義域を求めなさい。
Q5. $y = \sqrt{x}$ と $y = x - 2$ の共有点を求めなさい。
$y = \sqrt{2x + 4} - 1$ の定義域、値域を求め、グラフの概形を描け。
$2x + 4 \geq 0$ より定義域は $x \geq -2$。
始点:$x = -2$ のとき $y = \sqrt{0} - 1 = -1$。始点は $(-2, -1)$。
値域:$\sqrt{2x + 4} \geq 0$ より $y \geq -1$。
$x$ 切片:$y = 0$ のとき $\sqrt{2x + 4} = 1$、$2x + 4 = 1$、$x = -\frac{3}{2}$。
$y$ 切片:$x = 0$ のとき $y = \sqrt{4} - 1 = 1$。
グラフは $(-2, -1)$ を始点として右方向に伸びる曲線。
始点を求めてからプロットし、$x$ 切片や $y$ 切片などの特徴的な点を打って滑らかにつなぐ。
$y = \sqrt{x}$ と $y = x + k$ が異なる2点で交わるとき、定数 $k$ の値の範囲を求めよ。
$\sqrt{x} = x + k$ ……① ただし $x \geq 0$ かつ $x + k \geq 0$
①の両辺を2乗:$x = (x + k)^2 = x^2 + 2kx + k^2$
$x^2 + (2k - 1)x + k^2 = 0$ ……②
②の判別式 $D = (2k-1)^2 - 4k^2 = 4k^2 - 4k + 1 - 4k^2 = -4k + 1$
②が異なる2つの正の実数解を持ち、かつ各解で $x + k \geq 0$ であることが必要。
$D > 0$:$-4k + 1 > 0$ より $k < \frac{1}{4}$ ……③
解と係数の関係より、2解の和 $= 1 - 2k > 0$ かつ 2解の積 $= k^2 > 0$ より $k \neq 0$ かつ $k < \frac{1}{2}$
2解とも $x + k \geq 0$ すなわち $x \geq -k$:各解が正なので $k > 0$ なら自動的に成立。$k < 0$ のとき $-k > 0$ なので、小さい方の解 $> -k$ であればよい。
②に $x = -k$ を代入:$k^2 - 2k^2 + k + k^2 = k > 0$ より $k > 0$ が条件。
以上を合わせて、$0 < k < \frac{1}{4}$。
2乗して2次方程式に帰着させ、判別式・解の符号・無縁解の排除をすべて確認する。グラフで $y = \sqrt{x}$ と $y = x + k$ の位置関係をイメージすると見通しがよい。
$y = \sqrt{-x^2 + 2x + 3}$ の定義域と値域を求めよ。
$-x^2 + 2x + 3 \geq 0$、$x^2 - 2x - 3 \leq 0$、$(x-3)(x+1) \leq 0$ より定義域は $-1 \leq x \leq 3$。
$g(x) = -x^2 + 2x + 3 = -(x-1)^2 + 4$ は $x = 1$ のとき最大値 $4$ をとる。
$y = \sqrt{g(x)}$ の最大値は $\sqrt{4} = 2$。
$g(x)$ の最小値は $g(-1) = g(3) = 0$ なので、$y$ の最小値は $0$。
よって値域は $0 \leq y \leq 2$。
ルートの中の2次関数の最大値・最小値を求め、$\sqrt{}$ をとる。ルートの中が2次式のときは平方完成が有効。
無理関数 $y = \sqrt{ax + b} + c$ のグラフが点 $(1, 3)$、$(5, 5)$ を通り、始点の $y$ 座標が $1$ であるとき、$a$, $b$, $c$ の値を求めよ。
始点の $y$ 座標が $1$ なので $c = 1$。$y = \sqrt{ax + b} + 1$。
$(1, 3)$ を代入:$3 = \sqrt{a + b} + 1$ より $\sqrt{a + b} = 2$、$a + b = 4$ ……①
$(5, 5)$ を代入:$5 = \sqrt{5a + b} + 1$ より $\sqrt{5a + b} = 4$、$5a + b = 16$ ……②
②$-$①:$4a = 12$ より $a = 3$。①に代入して $b = 1$。
検証:始点は $3x + 1 = 0$ すなわち $x = -\frac{1}{3}$ で $y = 1$。$a = 3 > 0$ なので $x \geq -\frac{1}{3}$ の範囲で定義され、$(1, 3)$, $(5, 5)$ は定義域内。
よって $a = 3$, $b = 1$, $c = 1$。
始点の $y$ 座標から $c$ を決定。次に通過点から連立方程式を立てて $a$, $b$ を求める。$\sqrt{}$ を外すために2乗するが、通過点が定義域内であることの確認を忘れずに。