第6章 微分法

3次方程式の解の配置
─ 解がどの範囲にあるかをグラフで判定

「3次方程式が正の解を3つもつ条件」「解がすべて $1$ より大きい条件」——このような解の配置問題は、2次方程式では判別式・軸・端点の符号で解けましたが、3次方程式ではグラフの概形と極値の符号条件を組み合わせて解きます。

1解の配置問題とは

💡 本質:「解がどこにあるか」をグラフの通過条件に翻訳

方程式 $f(x) = 0$ の解の位置に関する条件(「正の解が3つ」「すべての解が区間 $(a, b)$ にある」など)を、$y = f(x)$ のグラフが $x$ 軸とどう交わるかの条件に翻訳します。具体的には、極大値・極小値の符号と、特定の点での $f$ の値の符号を組み合わせます。

2グラフを使った判定の原理

📐 3次方程式の解の配置の基本条件

$f(x) = x^3 + px + q$(最高次係数正)が異なる3つの実数解をもつ基本条件は、極大値 $> 0$ かつ極小値 $< 0$ です。

解の位置をさらに制約するには、グラフの概形を描いて「$x$ 軸との交点がどこにあるか」を視覚的に考えます。

判定に使う条件の種類

  • 極値の符号:極大値 $> 0$ かつ極小値 $< 0$ → 3つの実数解
  • 特定点での $f$ の値の符号:$f(0) > 0$ なら $x = 0$ の右側と左側の解の配置がわかる
  • 極値点の位置:極値をとる $x$ の値が指定区間に入るか
⚠️ つまずきポイント:条件の漏れ

解の配置問題では、複数の条件を同時に満たす必要があります。1つの条件だけでは不十分なことが多いため、グラフを描いて必要な条件を視覚的に漏れなく拾い上げましょう。

3「すべての解が正」の条件

例題:$f(x) = x^3 - 3x + a = 0$ がすべて正の3つの解をもつ条件

$f'(x) = 3x^2 - 3 = 3(x+1)(x-1)$

極大 $x = -1$:$f(-1) = -1 + 3 + a = a + 2$

極小 $x = 1$:$f(1) = 1 - 3 + a = a - 2$

3つの正の解をもつための条件($x > 0$ に3つの $x$ 軸との交点):

  1. $f$ が3つの異なる実数解をもつ → 極大値 $> 0$ かつ極小値 $< 0$
  2. 3つの解がすべて正 → $x = -1$(極大の位置)は正ではないので、$x = -1$ の左側に解がないことが必要

$a > 0$ では $x = -1$ での極大値は正。$a < 0$ は条件外。

グラフを描くと:3つの解がすべて正であるには、極小の $x = 1$ が正(✓)で、$f(0) > 0$($x = 0$ でグラフが $x$ 軸の上)であり、かつ極小値 $< 0$ が必要。

$f(0) = a > 0$ かつ $a - 2 < 0$:$0 < a < 2$

💡 条件の整理方法

「すべて正の解」= 最小の解 $> 0$。3次関数($a > 0$)のグラフが $x = 0$ で正の値をもち($f(0) > 0$)、かつ3つの解がある(極値条件)ことを確認します。グラフの概形を描いて、$x = 0$ にグラフがどの位置にあるかを見るのが確実です。

4「解が指定区間にある」条件

例:$f(x) = x^3 - 3x + a = 0$ の解が1つだけ $x > 2$ にある条件

$f(2) = 8 - 6 + a = a + 2$

$x > 2$ に1つの解がある ⟺ $f(2) < 0$(最高次係数正で $x \to \infty$ では $f \to +\infty$ なので)

$a + 2 < 0$、$a < -2$

📐 区間に解がある条件のパターン

$f(x) = 0$ が区間 $(p, q)$ に少なくとも1つの解をもつ十分条件の一つは:

$$f(p) \cdot f(q) < 0 \quad (\text{中間値の定理})$$

ただし3次関数では極値の位置も考慮する必要があります。

🔗 2次方程式との比較

2次方程式の解の配置では「判別式 $\geq 0$」「軸の位置」「端点の符号」の3条件を使いました。3次方程式では「極値の符号」「特定点の符号」「極値点の位置」を使いますが、考え方は同じです。グラフの概形を見て、必要な条件を読み取ります。

52次方程式の解の配置との比較

2次方程式3次方程式
グラフの形放物線(1つの頂点)S字曲線(極大+極小)
実数解の個数0, 1, 21, 2, 3
使う条件判別式, 軸, 端点極値の符号, 特定点の値
3解の存在条件極大値 $> 0$ 極小値 $< 0$
⚠️ つまずきポイント:3次方程式には「判別式」が使えない

2次方程式の判別式 $D = b^2 - 4ac$ に直接対応するものは、3次方程式では「$f'(x) = 0$ の判別式」と「極大値と極小値の符号」の組み合わせです。3次方程式自体の判別式は高校範囲では扱いませんが、結果的にグラフから読み取る情報と同じです。

まとめ

  • 解の配置:解がどの位置にあるかを、グラフと $x$ 軸の交点の位置で判定する。
  • 3解の存在:極大値 $> 0$ かつ極小値 $< 0$ が基本条件。
  • 正の解:$f(0)$ の符号と極値の符号を組み合わせて判定する。
  • 区間の解:端点 $f(p), f(q)$ の符号と中間値の定理、極値点の位置を利用する。
  • 2次との比較:判別式→極値条件、軸→極値点の位置、端点→特定点の値、と読み替える。

確認テスト

Q1. $x^3 - 3x + a = 0$ が3つの異なる実数解をもつ $a$ の範囲を求めよ。

極大値 $f(-1) = a + 2 > 0$ かつ極小値 $f(1) = a - 2 < 0$

$-2 < a < 2$

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Q2. $x^3 - 6x^2 + 9x + a = 0$ がすべて正の解をもつための $a$ の範囲を求めよ。

$f(x) = x^3 - 6x^2 + 9x + a$、$f'(x) = 3(x-1)(x-3)$

極大値 $f(1) = 4 + a$、極小値 $f(3) = a$

3正解の条件:$f(0) = a > 0$($f(0) > 0$ で $x < 0$ に解なし)、$4 + a > 0$、$a < 0$

$a > 0$ と $a < 0$ は矛盾。よって条件を満たす $a$ は存在しない

(極小値 $f(3) = a$ で、$a > 0$ なら極小値 $> 0$ で3解なし、$a < 0$ なら $f(0) < 0$ で $x < 0$ にも解がある)

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Q3. 3次方程式が3つの異なる実数解をもつための極値に関する条件を述べよ。

極大値 $> 0$ かつ極小値 $< 0$(最高次係数が正の場合)

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Q4. $f(x) = x^3 - 3ax + 1 = 0$($a > 0$)が $x > 0$ に2つの正の解をもつ条件を求めよ。

$f'(x) = 3x^2 - 3a = 3(x^2 - a) = 0$ より $x = \sqrt{a}$($x > 0$で極小)

$f(\sqrt{a}) = a\sqrt{a} - 3a\sqrt{a} + 1 = -2a\sqrt{a} + 1 < 0$ かつ $f(0) = 1 > 0$

$2a\sqrt{a} > 1$、$a^{3/2} > 1/2$、$a > (1/2)^{2/3} = 1/\sqrt[3]{4}$

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Q5. 3次方程式の解の配置問題で、2次方程式の「判別式」に対応するのは何か。

$f'(x)=0$ の解の存在(極値をもつこと)と、極大値・極小値の符号条件の組み合わせ。

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入試問題演習

問題 1A 基礎

$x^3 - 12x + a = 0$ が異なる3つの実数解をもつような $a$ の範囲を求めよ。

解答

$f(x) = x^3 - 12x + a$、$f'(x) = 3(x+2)(x-2)$

極大値 $f(-2) = -8 + 24 + a = 16 + a > 0$、$a > -16$

極小値 $f(2) = 8 - 24 + a = a - 16 < 0$、$a < 16$

$\therefore -16 < a < 16$

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問題 2B 標準

$x^3 - 3x + a = 0$ の3つの異なる実数解がすべて $-2$ と $2$ の間にあるような $a$ の範囲を求めよ。

解答

3つの異なる実数解が $-2 < x < 2$ にある条件:

① 3実数解の存在:$-2 < a < 2$

② $f(-2) > 0$:$-8 + 6 + a = a - 2 > 0$、$a > 2$ — これは①と矛盾。

再検討:$f(-2) = -8 + 6 + a = a - 2$。最高次係数正で $x \to -\infty$ では $f \to -\infty$ なので、$x = -2$ の左に解がないためには $f(-2) < 0$(この場合解がすべて $x > -2$)— いや、逆。

$a > 0$ のとき、$x \to -\infty$ で $f \to -\infty$ なので $x = -2$ の左にも解が1つある可能性あり。$f(-2) > 0$ なら $x < -2$ に解なし。

$f(-2) = a - 2$、$f(2) = 8 - 6 + a = a + 2$

すべての解が $(-2, 2)$ にある条件:$f(-2) > 0$ かつ $f(2) < 0$(不可能:$a > 2$ かつ $a < -2$)

逆に考えて、$f(-2) < 0$ かつ $f(2) > 0$ だと $(-2, 2)$ の外にも解がある。

$f(-2) \cdot f(2) > 0$(同符号)で、かつ3つの解が $(-2, 2)$ に入るには $f(-2) > 0$ かつ $f(2) > 0$ と極値条件。

$a - 2 > 0$:$a > 2$ だが、3実数解条件 $a < 2$ と矛盾。

$\therefore$ 3つの解がすべて $(-2, 2)$ にある $a$ は存在しない

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問題 3B 標準

$f(x) = x^3 - 3a^2x + 2a^3 = 0$($a > 0$)が正の解と負の解をそれぞれ少なくとも1つもつことを示せ。

解答

$f(0) = 2a^3 > 0$($a > 0$)

$f(a) = a^3 - 3a^3 + 2a^3 = 0$ より $x = a > 0$ は解。

$f(-2a) = -8a^3 + 6a^3 + 2a^3 = 0$ より $x = -2a < 0$ も解。

よって正の解 $x = a$ と負の解 $x = -2a$ が存在する。■

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問題 4C 発展

$f(x) = x^3 - 3x + a$ について、次の問いに答えよ。

(1) $f(x) = 0$ が $0 < x < 1$ に少なくとも1つの解をもつための $a$ の範囲を求めよ。

(2) $f(x) = 0$ が $0 < x < 1$ にちょうど1つの解をもつための $a$ の範囲を求めよ。

解答

(1) $f(0) = a$、$f(1) = a - 2$。$f(0) \cdot f(1) < 0$ なら中間値の定理より解が存在。

$a(a-2) < 0$、$0 < a < 2$ — これは十分条件の1つ。

端点が $0$ の場合:$f(0) = a = 0$ のとき $x = 0$ は解だが $(0, 1)$ に含まず。$f(1) = a - 2 = 0$ のとき $a = 2$ で $x = 1$ は開区間に含まず。

また、$f'(x) = 3(x+1)(x-1)$ なので $(0, 1)$ で $f'(x) < 0$(単調減少)。単調減少区間で1つの解があるのは $f(0) > 0$ かつ $f(1) < 0$(または $f(0) \geq 0$ かつ $f(1) \leq 0$ で少なくとも1つ厳密な不等号)のとき。

$f(0) = a > 0$ かつ $f(1) = a - 2 < 0$:$0 < a < 2$

$f(0) = 0$($a = 0$)のとき $x = 0$ は端点だが開区間に含まないので不可。

$\therefore 0 < a < 2$

(2) $(0, 1)$ で $f$ は単調減少なので、解があれば1つ。(1) と同じ答え:$0 < a < 2$

採点のポイント
  • $(0, 1)$ で $f$ が単調減少であることの確認
  • $f(0)$ と $f(1)$ の符号による判定
  • 開区間であることの注意(端点は含まない)
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