第6章 微分法

方程式の実数解の個数
─ グラフと直線の交点で解の個数を判定

3次方程式 $f(x) = k$ の実数解の個数は、$y = f(x)$ のグラフと直線 $y = k$ の交点の個数と一致します。微分でグラフの概形をつかみ、$k$ の値による場合分けで解の個数を決定する方法は、入試の定番テーマです。

1方程式の実数解とグラフの交点

💡 本質:方程式を「2つのグラフの交点」に読み替える

方程式 $f(x) = g(x)$ の実数解の個数は、$y = f(x)$ と $y = g(x)$ のグラフの交点の個数と一致します。特に $f(x) = k$(定数)の場合は、$y = f(x)$ のグラフと水平線 $y = k$ の交点です。

この読み替えにより、代数的に解けない方程式でも、グラフの概形から解の個数を判定できます。

方程式を解かなくても「何個の解をもつか」がわかる——これが微分法のグラフ的アプローチの強みです。

📐 基本的な手順

Step 1: 方程式を $f(x) = k$ の形に変形する

Step 2: $y = f(x)$ の増減表を作り、グラフの概形を描く

Step 3: 水平線 $y = k$ を動かし、交点の個数が変わる境界を見つける

Step 4: 極大値・極小値と $k$ の大小関係で場合分けする

23次方程式 $f(x) = k$ の解の個数

例題:$x^3 - 3x = k$ の実数解の個数

$f(x) = x^3 - 3x$ とおくと $f'(x) = 3x^2 - 3 = 3(x+1)(x-1)$

極大値 $f(-1) = 2$、極小値 $f(1) = -2$

$k$ の範囲交点の個数実数解の個数
$k < -2$ または $k > 2$11個
$k = -2$ または $k = 2$22個(1つは重解)
$-2 < k < 2$33個
⚠️ つまずきポイント:「交点2個」は重解を含む

$y = k$ が極値の位置を通るとき、交点は2個ですが、そのうち1つは接点(重解に対応)です。問題文が「異なる実数解の個数」を聞いているのか「重解も数える個数」なのかに注意しましょう。

3グラフの分離による判定

💡 「分離」の考え方

方程式 $f(x) = g(x)$ において、$f(x) - g(x) = 0$ とまとめる代わりに、$y = f(x)$ と $y = g(x)$ に分離してそれぞれのグラフを描くテクニックです。分離の仕方は一通りとは限らず、片方のグラフが簡単になるように工夫します。

例:$x^3 - 3x^2 + 1 = k$ の異なる実数解が3個ある $k$ の範囲

$f(x) = x^3 - 3x^2 + 1$ のグラフを描き、$y = k$ との交点が3個になる条件を求めます。

$f'(x) = 3x(x-2)$、極大値 $f(0) = 1$、極小値 $f(2) = -3$

$\therefore$ 異なる3実数解をもつ条件は $-3 < k < 1$

分離が効果的な場合

方程式にパラメータが含まれるとき、パラメータを一方にまとめると便利です:

例:$x^3 - 3x = a$ → $y = x^3 - 3x$ と $y = a$ に分離

例:$x^3 = ax + 1$ → $y = x^3 - 1$ と $y = ax$ に分離(この場合は原点を通る直線との交点)

🔗 分離のポイント

分離の仕方は問題によって異なりますが、「パラメータだけを一方に分離する」のが最も基本的な方針です。すると片方が $y = k$(定数)になり、水平線を動かすイメージでグラフ的に解けます。

4パラメータを含む方程式

例題:$x^3 - 3x^2 + a = 0$ の異なる正の実数解の個数

$a = -x^3 + 3x^2 = -(x^3 - 3x^2)$ と変形し、$y = -x^3 + 3x^2$ のグラフと $y = a$ の交点を $x > 0$ で数えます。

$g(x) = -x^3 + 3x^2$ とおくと $g'(x) = -3x^2 + 6x = -3x(x-2)$

$x > 0$ で:$g(0) = 0$、$x = 2$ で極大値 $g(2) = -8 + 12 = 4$

$g(x) \to -\infty$($x \to \infty$)

$a$ の範囲正の解の個数
$a < 0$ または $a > 4$0個
$a = 0$1個($x = 3$)
$0 < a < 4$2個
$a = 4$1個($x = 2$)
⚠️ つまずきポイント:定義域の制限を忘れる

「正の実数解」「$x > 0$ の範囲の解」などの制限がある場合、グラフ全体ではなく制限された範囲だけで交点を数えます。$x = 0$ を含むかどうかも要注意です。

5共有点の個数問題への応用

2曲線の共有点の個数

$y = f(x)$ と $y = g(x)$ の共有点の個数は $f(x) = g(x)$、つまり $f(x) - g(x) = 0$ の実数解の個数です。$h(x) = f(x) - g(x)$ とおいて $h(x) = 0$ のグラフ的考察に帰着します。

直線 $y = ax + b$ と曲線 $y = x^3$ の共有点

$x^3 = ax + b$、つまり $x^3 - ax - b = 0$ の実数解の個数を調べます。$b$ を分離して $b = x^3 - ax$ とし、$y = x^3 - ax$ と $y = b$ の交点を数えます。

💡 方程式の変形の自由度

$f(x) = g(x)$ を「どのように2つに分けるか」で解きやすさが変わります。分離後の両辺のグラフが描きやすくなるように工夫しましょう。パラメータが一方にまとまれば、もう一方のグラフは固定され、パラメータに応じてもう一方を動かすだけで済みます。

🔗 大学数学への橋渡し

この「グラフで解の個数を判定する」方法は、大学数学の中間値の定理陰関数定理の基礎です。特に中間値の定理は「$f(a) < 0 < f(b)$ ならば $f(c) = 0$ となる $c$ が $a$ と $b$ の間にある」という直感的にも明らかな定理で、解の存在証明に使われます。

まとめ

  • 基本原理:方程式 $f(x) = k$ の解の個数 = $y = f(x)$ と $y = k$ の交点の個数。
  • 3次方程式:極大値・極小値と $k$ の大小で1個・2個・3個を判定する。
  • グラフ分離:パラメータを一方にまとめ、水平線(定数)を動かすイメージで解く。
  • 定義域制限:「正の解」「$x > a$ の解」などの条件では、対応する範囲だけで交点を数える。
  • 共有点問題:2曲線の共有点は $f(x) - g(x) = 0$ に帰着。分離の仕方で解きやすさが変わる。

確認テスト

Q1. $x^3 - 12x = k$ が異なる3つの実数解をもつ $k$ の範囲を求めよ。

$f(x) = x^3 - 12x$、$f'(x) = 3(x+2)(x-2)$

極大値 $f(-2) = -8 + 24 = 16$、極小値 $f(2) = 8 - 24 = -16$

$\therefore -16 < k < 16$

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Q2. $x^3 - 3x + 2 = 0$ の実数解の個数を求めよ。

$f(x) = x^3 - 3x$ のグラフと $y = -2$ の交点を数える。

極小値 $f(1) = -2$ なので $y = -2$ は極小値と一致。交点は2個($x = 1$ で接する)。

実際 $x^3 - 3x + 2 = (x-1)^2(x+2) = 0$ より $x = 1$(重解), $x = -2$。異なる実数解は2個

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Q3. 方程式の実数解の個数をグラフで判定する基本手順を3ステップで述べよ。

① $f(x) = k$ の形に変形する

② $y = f(x)$ の増減表からグラフの概形を描く

③ $y = k$ との交点の個数を極値との大小で場合分けする

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Q4. $x^3 - 6x^2 + 9x = a$ が正の範囲で異なる2つの解をもつ $a$ の値を求めよ。

$f(x) = x^3 - 6x^2 + 9x$、$f'(x) = 3(x-1)(x-3)$

$x > 0$ で:極大値 $f(1) = 4$、極小値 $f(3) = 0$

正の範囲で2つの交点をもつのは $a = 0$ または $a = 4$

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Q5. $y = x^3$ と $y = 3x + k$ が異なる3点で交わるための $k$ の条件を求めよ。

$x^3 - 3x = k$ より $f(x) = x^3 - 3x$ のグラフと $y = k$ の交点。

極大値 $f(-1) = 2$、極小値 $f(1) = -2$

$\therefore -2 < k < 2$

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入試問題演習

問題 1 A 基礎

方程式 $x^3 - 3x^2 + 4 = 0$ の異なる実数解の個数を求めよ。

解答

$f(x) = x^3 - 3x^2 + 4$ とおく。$f'(x) = 3x(x-2)$

$f(0) = 4$(極大)、$f(2) = 8 - 12 + 4 = 0$(極小)

$f(x) = 0$ は $y = f(x)$ と $x$ 軸の交点。極小値 $= 0$ なので $x$ 軸に接する。

$f(x) = (x-2)^2(x+1)$ と因数分解できる。$x = 2$(重解)、$x = -1$

異なる実数解は2個

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問題 2 B 標準

方程式 $x^3 - 3x^2 + a = 0$ が異なる3つの正の実数解をもつような $a$ の範囲を求めよ。

解答

$a = -x^3 + 3x^2$ とおく。$g(x) = -x^3 + 3x^2$ のグラフと $y = a$ の交点を $x > 0$ で考える。

$g'(x) = -3x^2 + 6x = -3x(x-2)$

$g(0) = 0$、$g(2) = -8 + 12 = 4$(極大)、$g(x) \to -\infty$($x \to \infty$)

$x > 0$ で3つの交点をもつには、$y = a$ が極大値より下で、$g(0) = 0$ より上でなければならない。

$\therefore 0 < a < 4$

解説

$g(0) = 0$ なので $a > 0$ が必要($a = 0$ だと $x = 0$ が解になり正の解でない)。$a < 4$ で3つの正の交点が存在します。

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問題 3 B 標準

曲線 $y = x^3 - 3x$ と直線 $y = ax$ が異なる3点で交わるような $a$ の範囲を求めよ。

解答

$x^3 - 3x = ax$、$x^3 - (a+3)x = 0$、$x(x^2 - (a+3)) = 0$

$x = 0$ は常に解。残りの $x^2 = a + 3$ が $x \neq 0$ の2つの実数解をもつ条件は $a + 3 > 0$、$a > -3$

$\therefore a > -3$

解説

原点を通る直線と3次曲線の交点問題は、$x$ をくくり出すことで2次方程式に帰着します。分離法を使わなくても解けるパターンですが、$x = 0$ が常に解であることを見抜くのがポイントです。

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問題 4 C 発展

方程式 $x^3 - 3a^2x + 2a^3 = 0$($a > 0$)の異なる実数解の個数を調べよ。

解答

$f(x) = x^3 - 3a^2x + 2a^3$ とおく。$f'(x) = 3(x+a)(x-a)$

$f(-a) = -a^3 + 3a^3 + 2a^3 = 4a^3 > 0$(極大)

$f(a) = a^3 - 3a^3 + 2a^3 = 0$(極小)

極小値 $= 0$ なので $x$ 軸に接する。$f(x) = (x-a)^2(x+2a) = 0$

$x = a$(重解)、$x = -2a$

異なる実数解は2個($a > 0$ のとき $a \neq -2a$)

採点のポイント
  • $f'(x)$ の因数分解と極値の計算
  • 極小値 $= 0$ の意味($x$ 軸に接する)の理解
  • $f(x)$ の因数分解による解の確認
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