第3章 図形と方程式

円の方程式(標準形・一般形)
─ 「中心からの距離が一定」を方程式で表す

円は「ある点から等距離にある点の集まり」です。
この幾何学的な定義を方程式に翻訳すれば、円の方程式が自然に得られます。

1円の定義と標準形

円の定義

平面上で、ある定点 $\mathrm{C}$ からの距離が一定値 $r$($r > 0$)である点 $\mathrm{P}$ の集まりを(circle)といいます。点 $\mathrm{C}$ を中心、$r$ を半径と呼びます。

💡 ここが本質:円の方程式は距離の条件

「中心 $\mathrm{C}(a, b)$ からの距離が $r$」という条件を、座標を使って式にすると

$$\sqrt{(x - a)^2 + (y - b)^2} = r$$

両辺を2乗すれば円の方程式が得られます。円の方程式は「距離=一定」の翻訳にすぎません。

円の標準形

上の条件を2乗すると、中心 $(a, b)$、半径 $r$ の円の方程式が得られます。

📐 円の方程式(標準形)

中心 $(a, b)$、半径 $r$ の円の方程式:

$$(x - a)^2 + (y - b)^2 = r^2$$

特に、原点を中心とする半径 $r$ の円は $x^2 + y^2 = r^2$ です。

標準形から読み取れる情報

標準形を見れば、中心と半径が一目でわかります。

方程式中心半径
$x^2 + y^2 = 9$$(0, 0)$$3$
$(x - 1)^2 + (y - 2)^2 = 4$$(1, 2)$$2$
$(x + 3)^2 + (y - 1)^2 = 5$$(-3, 1)$$\sqrt{5}$
⚠️ 落とし穴:符号の読み間違い

$(x + 3)^2$ は $(x - (-3))^2$ と読みます。中心の $x$ 座標は $+3$ ではなく $-3$ です。

✗ 誤り:$(x + 3)^2 + (y - 1)^2 = 5$ の中心は $(3, 1)$

✓ 正しい:$(x + 3)^2 + (y - 1)^2 = 5$ の中心は $(-3, 1)$

また、右辺は $r^2$ であり $r$ ではありません。$r^2 = 5$ なら $r = \sqrt{5}$ です。

2円の一般形

標準形を展開する

標準形 $(x - a)^2 + (y - b)^2 = r^2$ を展開してみましょう。

$$x^2 - 2ax + a^2 + y^2 - 2by + b^2 = r^2$$

$$x^2 + y^2 - 2ax - 2by + (a^2 + b^2 - r^2) = 0$$

ここで $l = -2a$、$m = -2b$、$n = a^2 + b^2 - r^2$ とおくと、次の形になります。

📐 円の方程式(一般形)

$$x^2 + y^2 + lx + my + n = 0$$

ここで中心は $\left(-\dfrac{l}{2}, -\dfrac{m}{2}\right)$、半径は $r = \sqrt{\dfrac{l^2}{4} + \dfrac{m^2}{4} - n}$ です。

この方程式が円を表すためには $\dfrac{l^2}{4} + \dfrac{m^2}{4} - n > 0$ が必要です。

💡 ここが本質:一般形の特徴

一般形 $x^2 + y^2 + lx + my + n = 0$ の特徴は次の2点です:

① $x^2$ と $y^2$ の係数が等しい:どちらも $1$(係数が同じ)。もし異なれば楕円や双曲線になります。

② $xy$ の項がない:$xy$ の項があると、軸が傾いた曲線になります。

「$x^2$ と $y^2$ の係数が同じで、$xy$ の項がない2次方程式」が円の条件です。

一般形が円を表す条件

$r^2 = \dfrac{l^2}{4} + \dfrac{m^2}{4} - n$ が正でなければ円になりません。

  • $\dfrac{l^2}{4} + \dfrac{m^2}{4} - n > 0$ → 円を表す
  • $\dfrac{l^2}{4} + \dfrac{m^2}{4} - n = 0$ → 1点を表す(半径0の「点円」)
  • $\dfrac{l^2}{4} + \dfrac{m^2}{4} - n < 0$ → 実数の点を表さない(虚円)
⚠️ 落とし穴:一般形を見たらまず条件チェック

$x^2 + y^2 + lx + my + n = 0$ が与えられたとき、必ず「円を表すか」を確認しましょう。$r^2$ の値が0以下なら、この式は図形としての円を表しません。

例:$x^2 + y^2 + 2x + 4y + 6 = 0$ → $r^2 = 1 + 4 - 6 = -1 < 0$ → 実数の点を表さない

3標準形と一般形の相互変換

一般形 → 標準形(平方完成)

一般形を標準形に直すには、$x$ と $y$ それぞれについて平方完成します。

例:$x^2 + y^2 - 6x + 4y + 9 = 0$ を標準形に変換する。

$$\underbrace{(x^2 - 6x)}_{x\text{の部分}} + \underbrace{(y^2 + 4y)}_{y\text{の部分}} + 9 = 0$$

$$(x^2 - 6x + 9) - 9 + (y^2 + 4y + 4) - 4 + 9 = 0$$

$$(x - 3)^2 + (y + 2)^2 = 4$$

中心 $(3, -2)$、半径 $2$ の円です。

▷ 平方完成の手順

Step 1:$x$ の項をまとめる:$x^2 + lx = \left(x + \dfrac{l}{2}\right)^2 - \dfrac{l^2}{4}$

Step 2:$y$ の項をまとめる:$y^2 + my = \left(y + \dfrac{m}{2}\right)^2 - \dfrac{m^2}{4}$

Step 3:代入して整理すると

$$\left(x + \frac{l}{2}\right)^2 + \left(y + \frac{m}{2}\right)^2 = \frac{l^2}{4} + \frac{m^2}{4} - n$$

標準形 → 一般形(展開)

標準形を展開するだけです。

例:$(x - 1)^2 + (y + 3)^2 = 16$

$$x^2 - 2x + 1 + y^2 + 6y + 9 = 16$$

$$x^2 + y^2 - 2x + 6y - 6 = 0$$

🔬 深掘りTips:$x^2 + y^2$ の係数が1でない場合

$2x^2 + 2y^2 + 4x - 6y + 1 = 0$ のように $x^2, y^2$ の係数が1でない場合、まず両辺をその係数で割って $x^2 + y^2 + 2x - 3y + \frac{1}{2} = 0$ に変換してから平方完成します。

大切なのは、$x^2$ と $y^2$ の係数が等しいことです。もし異なれば(例えば $2x^2 + 3y^2$)、その方程式は楕円を表し、円にはなりません。

4円の方程式の決定

円の方程式を決める条件

円の方程式には3つの未知数(中心の $x$ 座標、$y$ 座標、半径)があるので、円を1つに決定するには3つの条件が必要です。

パターン1:中心と半径が直接わかる場合

標準形 $(x - a)^2 + (y - b)^2 = r^2$ に直接代入すれば完了です。

例:中心 $(2, -1)$、半径 $3$ の円 → $(x - 2)^2 + (y + 1)^2 = 9$

パターン2:中心と通る1点がわかる場合

中心がわかれば、通る点との距離が半径になります。

例:中心 $(1, 2)$ で点 $(4, 6)$ を通る円

$$r = \sqrt{(4-1)^2 + (6-2)^2} = \sqrt{9 + 16} = 5$$

$$\therefore \quad (x - 1)^2 + (y - 2)^2 = 25$$

パターン3:3点を通る円

3点が与えられた場合、一般形 $x^2 + y^2 + lx + my + n = 0$ を使います。3点の座標を代入して $l, m, n$ の連立方程式を解きます。

📐 3点を通る円の求め方

3点 $(x_1, y_1)$、$(x_2, y_2)$、$(x_3, y_3)$ を一般形 $x^2 + y^2 + lx + my + n = 0$ に代入し、$l, m, n$ の3元1次連立方程式を解く。

3点が同一直線上にある場合、円は存在しません(連立方程式が解なしになります)。

例:3点 $(0, 0)$、$(4, 0)$、$(0, 2)$ を通る円を求めよ。

一般形 $x^2 + y^2 + lx + my + n = 0$ に各点を代入すると:

  • $(0, 0)$:$n = 0$
  • $(4, 0)$:$16 + 4l + n = 0$ → $4l = -16$ → $l = -4$
  • $(0, 2)$:$4 + 2m + n = 0$ → $2m = -4$ → $m = -2$

$$x^2 + y^2 - 4x - 2y = 0 \quad \Leftrightarrow \quad (x - 2)^2 + (y - 1)^2 = 5$$

中心 $(2, 1)$、半径 $\sqrt{5}$ の円です。

⚠️ 落とし穴:原点を通る場合の特別な性質

円が原点 $(0, 0)$ を通る場合、一般形で $n = 0$ となるため、方程式は $x^2 + y^2 + lx + my = 0$ と簡単になります。原点を通る円では、計算が楽になることを覚えておきましょう。

5円と座標軸の関係

円が座標軸に接する条件

中心 $(a, b)$、半径 $r$ の円について:

  • $x$ 軸に接する条件:中心から $x$ 軸までの距離が $r$、すなわち $|b| = r$
  • $y$ 軸に接する条件:中心から $y$ 軸までの距離が $r$、すなわち $|a| = r$
  • 両軸に接する条件:$|a| = |b| = r$。中心は直線 $y = x$ または $y = -x$ 上にある
💡 ここが本質:接する=距離が半径に等しい

「円が直線に接する」とは、中心から直線までの距離が半径に等しいことです。これは点と直線の距離の公式を使えば、どんな直線に対しても適用できます。

座標軸への接線条件は、その特殊ケースにすぎません。

座標軸との共有点

円と座標軸の共有点(交点)は、方程式に $y = 0$($x$ 軸)や $x = 0$($y$ 軸)を代入して求めます。

例:$(x - 3)^2 + (y - 2)^2 = 9$ と $x$ 軸の交点

$y = 0$ を代入:$(x - 3)^2 + 4 = 9$、$(x - 3)^2 = 5$、$x = 3 \pm \sqrt{5}$

交点は $(3 - \sqrt{5}, 0)$ と $(3 + \sqrt{5}, 0)$。

円が座標軸から切り取る弦の長さ

上の例で $x$ 軸から切り取る弦の長さは

$$(3 + \sqrt{5}) - (3 - \sqrt{5}) = 2\sqrt{5}$$

一般に、中心 $(a, b)$、半径 $r$ の円が $x$ 軸から切り取る弦の長さは $2\sqrt{r^2 - b^2}$($|b| < r$ のとき)です。

🔬 深掘りTips:2次曲線の分類

$ax^2 + bxy + cy^2 + dx + ey + f = 0$ の形の2次方程式は、$a, b, c$ の値に応じて様々な曲線(円、楕円、双曲線、放物線)を表します。円は $a = c$、$b = 0$ の特殊ケースです。

大学数学では、行列 $\begin{pmatrix} a & b/2 \\ b/2 & c \end{pmatrix}$ の固有値を調べることで曲線の種類を分類します。

⚠️ 落とし穴:$x$ 軸との共有点の個数

$y = 0$ を代入して得られる $x$ の方程式の判別式から、交点の個数が決まります。

$r^2 - b^2 > 0$:2点で交わる | $r^2 - b^2 = 0$:接する(1点) | $r^2 - b^2 < 0$:交わらない

$|b|$ と $r$ の大小関係で判定できます。

📋まとめ

  • 標準形:$(x - a)^2 + (y - b)^2 = r^2$。中心 $(a, b)$ と半径 $r$ が直読できる。円の定義「中心からの距離が一定」そのもの。
  • 一般形:$x^2 + y^2 + lx + my + n = 0$。中心 $\left(-\frac{l}{2}, -\frac{m}{2}\right)$、半径 $\sqrt{\frac{l^2+m^2}{4} - n}$。3点を通る円を求めるときに便利。
  • 相互変換:一般形→標準形は平方完成、標準形→一般形は展開。一般形が円を表す条件は $\frac{l^2+m^2}{4} - n > 0$。
  • 円の決定:3つの条件で決まる。中心+半径、中心+通る点、3点を通る、などのパターン。
  • 座標軸との関係:接する条件は中心から軸までの距離=半径。共有点は座標軸の方程式を代入して求める。

✅ 確認テスト

Q1. 中心 $(3, -1)$、半径 $4$ の円の方程式を標準形で書け。

▶ クリックして解答を表示 $(x - 3)^2 + (y + 1)^2 = 16$

Q2. $x^2 + y^2 - 4x + 6y + 4 = 0$ の中心と半径を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 $(x - 2)^2 + (y + 3)^2 = 9$ より、中心 $(2, -3)$、半径 $3$

Q3. 中心 $(1, 4)$ で原点を通る円の方程式を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 半径 $r = \sqrt{1^2 + 4^2} = \sqrt{17}$ より、$(x - 1)^2 + (y - 4)^2 = 17$

Q4. $x^2 + y^2 + 2x - 8y + k = 0$ が円を表すための $k$ の条件を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 $r^2 = \dfrac{4}{4} + \dfrac{64}{4} - k = 1 + 16 - k = 17 - k > 0$ より $k < 17$

Q5. 中心が $(2, 3)$ で $x$ 軸に接する円の方程式を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 $x$ 軸に接する条件 $|b| = r$ より $r = 3$。$(x - 2)^2 + (y - 3)^2 = 9$

📝入試問題演習

問題 1 A 基礎

次の円の中心と半径を求めよ。

(1) $x^2 + y^2 + 10x - 2y + 17 = 0$

(2) $2x^2 + 2y^2 - 8x + 12y - 6 = 0$

▶ クリックして解答を表示
解答

(1) $(x + 5)^2 + (y - 1)^2 = 25 + 1 - 17 = 9$ より中心 $(-5, 1)$、半径 $3$

(2) まず両辺を2で割る:$x^2 + y^2 - 4x + 6y - 3 = 0$

$(x - 2)^2 + (y + 3)^2 = 4 + 9 + 3 = 16$ より中心 $(2, -3)$、半径 $4$

問題 2 B 標準

3点 $\mathrm{A}(1, 1)$、$\mathrm{B}(5, 1)$、$\mathrm{C}(3, 5)$ を通る円の方程式を求めよ。

▶ クリックして解答を表示
解答

一般形 $x^2 + y^2 + lx + my + n = 0$ に3点を代入する。

$\mathrm{A}$:$1 + 1 + l + m + n = 0$ → $l + m + n = -2$ …①

$\mathrm{B}$:$25 + 1 + 5l + m + n = 0$ → $5l + m + n = -26$ …②

$\mathrm{C}$:$9 + 25 + 3l + 5m + n = 0$ → $3l + 5m + n = -34$ …③

②−①:$4l = -24$ → $l = -6$

③−①:$2l + 4m = -32$ → $-12 + 4m = -32$ → $m = -5$

①に代入:$-6 - 5 + n = -2$ → $n = 9$

$$x^2 + y^2 - 6x - 5y + 9 = 0$$

$$\left(x - 3\right)^2 + \left(y - \frac{5}{2}\right)^2 = 9 + \frac{25}{4} - 9 = \frac{25}{4}$$

中心 $\left(3, \dfrac{5}{2}\right)$、半径 $\dfrac{5}{2}$

問題 3 B 標準

中心が直線 $y = 2x - 1$ 上にあり、両座標軸に接する円の方程式をすべて求めよ。

▶ クリックして解答を表示
解答

両座標軸に接する円の中心を $(a, b)$、半径を $r$ とすると $|a| = |b| = r$。

場合1:$a = b$ のとき。中心 $(a, a)$ が $y = 2x - 1$ 上にあるので $a = 2a - 1$、$a = 1$。半径 $r = 1$。

$$(x - 1)^2 + (y - 1)^2 = 1$$

場合2:$a = -b$ のとき。中心 $(a, -a)$ が $y = 2x - 1$ 上にあるので $-a = 2a - 1$、$3a = 1$、$a = \frac{1}{3}$。半径 $r = \frac{1}{3}$。

$$\left(x - \frac{1}{3}\right)^2 + \left(y + \frac{1}{3}\right)^2 = \frac{1}{9}$$

確認:中心 $\left(\frac{1}{3}, -\frac{1}{3}\right)$ は第4象限にあるので、$x$ 軸と $y$ 軸の正の部分に接する。$|a| = |b| = \frac{1}{3} = r$ ✓

解説

両軸に接する円は中心が $y = x$ 上または $y = -x$ 上にあります。これと $y = 2x - 1$ の交点を求めれば中心が決まります。

問題 4 C 発展

$k$ を実数の定数とする。方程式 $x^2 + y^2 + 2kx - 4ky + 6k^2 - 4k + 3 = 0$ について。

(1) この方程式が円を表すような $k$ の範囲を求めよ。

(2) (1) の範囲において、円の中心の軌跡を求めよ。

(3) (1) の範囲において、円の半径 $r$ の最大値とそのときの $k$ の値を求めよ。

▶ クリックして解答を表示
解答

(1) 平方完成する。

$(x + k)^2 - k^2 + (y - 2k)^2 - 4k^2 + 6k^2 - 4k + 3 = 0$

$(x + k)^2 + (y - 2k)^2 = k^2 + 4k^2 - 6k^2 + 4k - 3 = -k^2 + 4k - 3$

円を表す条件:$-k^2 + 4k - 3 > 0$、すなわち $k^2 - 4k + 3 < 0$

$(k - 1)(k - 3) < 0$ より $1 < k < 3$

(2) 中心は $(-k, 2k)$。$x = -k, y = 2k$ より $k = -x$ を $y = 2k$ に代入すると $y = -2x$。

$1 < k < 3$ より $-3 < x < -1$。

よって中心の軌跡は直線 $y = -2x$ の $-3 < x < -1$ の部分。

(3) $r^2 = -k^2 + 4k - 3 = -(k - 2)^2 + 1$

$k = 2$ のとき $r^2$ は最大値 $1$ をとる。$r = 1$。

$1 < 2 < 3$ より条件を満たす。

採点のポイント
  • (1) 平方完成を正しく行い、$r^2 > 0$ の不等式を解く
  • (2) パラメータ $k$ を消去して $x, y$ の関係式と範囲を求める
  • (3) $r^2$ を $k$ の2次関数とみて最大値を求める