放物線は中学以来おなじみの $y = ax^2$ のグラフですが、その正体は「ある点とある直線から等距離にある点の集合」です。この幾何学的な定義を理解すると、焦点・準線・通径・接線といった概念がすべてつながります。2次曲線の世界への第一歩を踏み出しましょう。
中学・高校で学んだ $y = ax^2$ のグラフは「放物線」と呼ばれます。しかし、なぜ放物線がこのような形になるのか、その幾何学的な由来を知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。
放物線の定義は、驚くほどシンプルです。
平面上の1つの定点 $\mathrm{F}$(焦点)と、$\mathrm{F}$ を通らない1つの定直線 $\ell$(準線)が与えられたとき、
$$\text{点 } \mathrm{F} \text{ までの距離} = \text{直線 } \ell \text{ までの距離}$$
を満たす点 $\mathrm{P}$ の軌跡を放物線という。
つまり放物線とは、「1つの点と1本の直線から等距離にある点をすべて集めた図形」なのです。
放物線の本質は「点からの距離と直線からの距離が等しい」という条件です。この1つの条件だけで、あの美しい放物線の形が完全に決まります。
2次関数 $y = ax^2$ は放物線の1つの表し方にすぎません。焦点と準線による定義こそが放物線の「正体」であり、接線や反射の性質もすべてここから導けます。
焦点を $\mathrm{F}(p, 0)$($p > 0$)、準線を $x = -p$ としましょう。放物線上の点 $\mathrm{P}(x, y)$ について、定義の等距離条件を式にすると:
$$\sqrt{(x - p)^2 + y^2} = |x + p|$$
両辺を2乗して整理します。
$$(x - p)^2 + y^2 = (x + p)^2$$
$$x^2 - 2px + p^2 + y^2 = x^2 + 2px + p^2$$
$$y^2 = 4px$$
こうして、放物線の標準形 $y^2 = 4px$ が自然に導かれました。
✕ 誤:$y^2 = 4px$ は $y = ax^2$ とは別物だ
○ 正:同じ放物線を違う向きで書いているだけです。$y = ax^2$ は「上下に開く」放物線、$y^2 = 4px$ は「左右に開く」放物線です。$y = ax^2$ を焦点・準線で書き直すと $x^2 = \dfrac{1}{a}y$ となり、$4p = \dfrac{1}{a}$ すなわち $p = \dfrac{1}{4a}$ です。
前のセクションで $y^2 = 4px$ という式を導きました。ここでは、この式の各パーツが何を意味するのかを丁寧に見ていきます。
$$y^2 = 4px \quad (p > 0)$$
$p$ の値が大きいほど、焦点は原点から遠ざかり、放物線は「ゆるやかに」開きます。逆に $p$ が小さいほど、焦点は原点に近づき、放物線は「急に」開きます。
焦点と準線の位置関係によって、放物線は4つの向きに開きます。
| 方程式 | 焦点 | 準線 | 開く向き |
|---|---|---|---|
| $y^2 = 4px$($p > 0$) | $(p, 0)$ | $x = -p$ | 右 |
| $y^2 = -4px$($p > 0$) | $(-p, 0)$ | $x = p$ | 左 |
| $x^2 = 4py$($p > 0$) | $(0, p)$ | $y = -p$ | 上 |
| $x^2 = -4py$($p > 0$) | $(0, -p)$ | $y = p$ | 下 |
✕ 誤:$y^2 = -12x$ だから $4p = -12$ で $p = -3$。焦点は $(-3, 0)$
○ 正:$y^2 = -12x$ は $y^2 = -4 \cdot 3 \cdot x$ なので $p = 3$。左に開く放物線で、焦点は $(-3, 0)$、準線は $x = 3$ です。$p$ は常に正の値として扱います。
$y^2 = 4px$ の係数 $4$ は、等距離条件 $(x-p)^2 + y^2 = (x+p)^2$ を展開したときに自然に現れるものです。$4p = 2p + 2p$ と見れば、焦点から準線までの距離 $2p$ の2倍であることがわかります。
この $4$ を暗記するのではなく、定義から導出すれば自然に出てくるということを覚えておきましょう。
楕円・双曲線・放物線をまとめて「2次曲線(円錐曲線)」と呼びます。これらは「焦点からの距離」と「準線からの距離」の比(離心率 $e$)で統一的に分類できます。
$e < 1$ なら楕円、$e = 1$ なら放物線、$e > 1$ なら双曲線です。放物線は $e = 1$、すなわち「距離の比がちょうど $1:1$」という、楕円と双曲線の境界に位置する曲線なのです。
放物線の性質を議論するときに登場する基本的な要素を整理しましょう。
$y^2 = 4px$ の場合、放物線は $x$ 軸に関して対称です。$x$ 軸のことをこの放物線の対称軸(または単に軸)と呼びます。放物線と対称軸の交点を頂点と呼び、標準形では原点 $\mathrm{O}(0, 0)$ です。
焦点を通り対称軸に垂直な弦を通径(latus rectum)と呼びます。通径の長さは放物線の「幅」を表す重要な量です。
$y^2 = 4px$ で $x = p$(焦点の $x$ 座標)を代入すると:
$$y^2 = 4p \cdot p = 4p^2 \quad \therefore y = \pm 2p$$
よって通径の両端は $(p, 2p)$ と $(p, -2p)$ であり、通径の長さは $|2p - (-2p)| = 4p$ です。
・焦点:$\mathrm{F}(p, 0)$
・準線:$x = -p$
・頂点:$\mathrm{O}(0, 0)$
・通径の長さ:$4p$
・焦点から頂点までの距離:$p$
・焦点から準線までの距離:$2p$
放物線 $y^2 = 4px$ 上の点 $\mathrm{P}(x_0, y_0)$ から焦点 $\mathrm{F}(p, 0)$ までの距離は、定義から準線までの距離に等しいので:
$$\mathrm{PF} = x_0 + p$$
これは非常にシンプルで便利な式です。焦点までの距離を計算するのに、平方根を使う必要がありません。
✕ 非効率:$\mathrm{PF} = \sqrt{(x_0 - p)^2 + y_0^2}$ を毎回展開して計算する
○ 効率的:$\mathrm{PF} = x_0 + p$ を使う。定義「焦点距離 $=$ 準線距離」から直接得られます。
入試の計算量が大幅に減ります。この公式は必ず使えるようにしましょう。
2次曲線が「円錐曲線」と呼ばれるのは、円錐を平面で切った切り口として現れるからです。円錐の母線に平行な平面で切ると放物線が得られます。母線より急な角度で切ると楕円、母線より浅い角度で切ると双曲線になります。
古代ギリシャのアポロニウスがこの事実を発見し、2000年以上経った今でも、衛星放送のアンテナから自動車のヘッドライトまで、放物線は私たちの生活を支えています。
放物線上の点における接線は、入試で最もよく出題されるテーマの1つです。公式を「なぜそうなるか」から理解しましょう。
放物線 $y^2 = 4px$ 上の点 $\mathrm{P}(x_1, y_1)$ における接線を求めます。
$y^2 = 4px$ の両辺を $x$ で微分します。$y$ は $x$ の関数と見て陰関数の微分法を使います。
$$2y \cdot \frac{dy}{dx} = 4p$$
$$\frac{dy}{dx} = \frac{2p}{y}$$
点 $\mathrm{P}(x_1, y_1)$(ただし $y_1 \neq 0$)における接線の傾きは $\dfrac{2p}{y_1}$ なので:
$$y - y_1 = \frac{2p}{y_1}(x - x_1)$$
両辺に $y_1$ をかけると:
$$y_1 y - y_1^2 = 2p(x - x_1)$$
$y_1^2 = 4px_1$ を使って:
$$y_1 y - 4px_1 = 2px - 2px_1$$
$$y_1 y = 2p(x + x_1)$$
放物線 $y^2 = 4px$ 上の点 $(x_1, y_1)$ における接線:
$$y_1 y = 2p(x + x_1)$$
2次曲線の接線公式には共通の規則があります。曲線の方程式で、$x^2 \to x_1 x$、$y^2 \to y_1 y$、$x \to \dfrac{x + x_1}{2}$、$y \to \dfrac{y + y_1}{2}$ と置き換えると接線の方程式になります。
これは楕円・双曲線でもまったく同じ規則です。このパターンを覚えておけば、3種類の接線公式を個別に暗記する必要はありません。
放物線 $y^2 = 4px$ の外部の点 $\mathrm{A}(a, b)$ から放物線に引いた接線を求めるには、接点を $\mathrm{P}(t^2/(4p),\; t)$(ただし $y_1 = t$ とおいた)として接線 $ty = 2p\!\left(x + \dfrac{t^2}{4p}\right)$ が $\mathrm{A}$ を通る条件から $t$ を求めます。
具体的には $tb = 2p\!\left(a + \dfrac{t^2}{4p}\right)$ すなわち $t^2 - 2bt + 4pa = 0$ を解きます。判別式 $D/4 = b^2 - 4pa > 0$ のとき、2本の接線が引けます。
✕ 誤:接線を $y = mx + n$ とおいて $y^2 = 4px$ に代入し判別式 $D = 0$ で求める → これも正しいが、$m = 0$($x$ 軸に平行な接線)の場合を見落としやすい
○ 推奨:接点のパラメータ $t$ を使う方法が確実。$y^2 = 4px$ 上の点を $(t^2, 2pt)$($t$ をパラメータ)とおくと、パラメトリックに接線が表せます。
放物線の外部の点 $\mathrm{A}$ から2本の接線を引いたとき、2つの接点を結ぶ直線を $\mathrm{A}$ に関する極線と呼びます。この「点と直線の対応関係」は射影幾何学の基本概念で、大学数学で詳しく学びます。
極と極線の関係は楕円・双曲線でも同様に定義でき、2次曲線論の美しい統一的理論を形作ります。
放物線には、入試でもしばしば出題される興味深い反射の性質があります。
放物線 $y^2 = 4px$ 上の任意の点 $\mathrm{P}$ における接線を考えます。$\mathrm{P}$ から焦点 $\mathrm{F}$ へ向かう直線と、$\mathrm{P}$ から $x$ 軸に平行に引いた半直線は、接線に関して対称になります。
$\mathrm{P}(x_1, y_1)$ における接線は $y_1 y = 2p(x + x_1)$。この接線と $x$ 軸の交点を $\mathrm{T}$ とすると、$y = 0$ を代入して $x = -x_1$ なので $\mathrm{T}(-x_1, 0)$ です。
$\mathrm{TF} = p + x_1 = \mathrm{PF}$(焦点距離の公式より)なので、三角形 $\mathrm{TPF}$ は二等辺三角形です。
接線は底辺 $\mathrm{TF}$ の対辺 $\mathrm{TP}$ 上にあるため、$\angle \mathrm{FPT}$(入射角に対応)$= \angle$($x$ 軸に平行な方向と接線のなす角)が成り立ちます。
すなわち、軸に平行に入ってきた光線は放物面で反射して焦点に集まり、逆に焦点から出た光は反射後に軸に平行に進みます。
放物線の反射の性質は、$\mathrm{TF} = \mathrm{PF}$(接線の $x$ 軸との交点と焦点の距離 $=$ 焦点距離)から生じる二等辺三角形に帰着します。
これにより、パラボラアンテナ(電波を焦点に集める)、自動車のヘッドライト(焦点からの光を平行光にする)、太陽炉(太陽光を焦点に集めて高温を得る)など、多くの応用が生まれます。
放物線 $y^2 = 4px$ 上の点を、パラメータ $t$ を使って
$$x = pt^2, \quad y = 2pt$$
と表すことができます。$y = 2pt$ を $y^2 = 4px$ に代入すると $4p^2 t^2 = 4p \cdot pt^2$ となり確かに成り立ちます。
この表示を使うと、接点のパラメータで接線や弦を扱うことができ、計算が見通しよくなります。パラメータ $t$ の点における接線は $ty = x + pt^2$ です。
✕ 誤:$x = pt^2$ だから $t \ge 0$ でないといけない
○ 正:$t$ は実数全体を動きます。$t > 0$ なら $y > 0$(上半分)、$t < 0$ なら $y < 0$(下半分)、$t = 0$ で頂点 $(0, 0)$ に対応します。
Q1. 放物線 $y^2 = 12x$ の焦点の座標と準線の方程式を求めよ。
Q2. 放物線 $x^2 = -8y$ の焦点の座標と開く向きを答えよ。
Q3. 放物線 $y^2 = 4px$ の通径の長さを $p$ を用いて表せ。
Q4. 放物線 $y^2 = 8x$ 上の点 $(2, 4)$ における接線の方程式を求めよ。
Q5. 焦点が $(0, 3)$、準線が $y = -3$ の放物線の方程式を求めよ。
放物線 $y^2 = 16x$ 上の点 $\mathrm{P}$ から焦点 $\mathrm{F}$ までの距離が $8$ であるとき、点 $\mathrm{P}$ の座標をすべて求めよ。
$4p = 16$ より $p = 4$。焦点は $\mathrm{F}(4, 0)$。
焦点距離の公式 $\mathrm{PF} = x_0 + p$ より、$x_0 + 4 = 8$ なので $x_0 = 4$。
$y^2 = 16 \cdot 4 = 64$ より $y = \pm 8$。
よって $\mathrm{P}(4, 8)$ または $\mathrm{P}(4, -8)$。
点 $(−2, 1)$ から放物線 $y^2 = 4x$ に引いた2本の接線の方程式を求めよ。
$y^2 = 4x$ で $p = 1$。接点を $(t^2, 2t)$ とおくと、接線は $ty = x + t^2$。
これが $(-2, 1)$ を通るので $t \cdot 1 = -2 + t^2$ すなわち $t^2 - t - 2 = 0$。
$(t-2)(t+1) = 0$ より $t = 2$ または $t = -1$。
$t = 2$:接線は $2y = x + 4$ すなわち $x - 2y + 4 = 0$
$t = -1$:接線は $-y = x + 1$ すなわち $x + y + 1 = 0$
放物線 $y^2 = 4px$ の焦点を通る弦 $\mathrm{AB}$ の両端が $\mathrm{A}(x_1, y_1)$、$\mathrm{B}(x_2, y_2)$ であるとき、$\dfrac{1}{\mathrm{AF}} + \dfrac{1}{\mathrm{BF}}$ の値を求めよ。
$\mathrm{AF} = x_1 + p$、$\mathrm{BF} = x_2 + p$ より
$$\frac{1}{\mathrm{AF}} + \frac{1}{\mathrm{BF}} = \frac{1}{x_1 + p} + \frac{1}{x_2 + p} = \frac{(x_1 + p) + (x_2 + p)}{(x_1 + p)(x_2 + p)}$$
焦点弦の性質から、$\mathrm{A}$、$\mathrm{B}$ をパラメータ $t_1$、$t_2$ で表すと $t_1 t_2 = -1$(焦点を通る条件)。
$x_1 + p = pt_1^2 + p = p(t_1^2 + 1)$、同様に $x_2 + p = p(t_2^2 + 1)$。
分子:$p(t_1^2 + 1 + t_2^2 + 1) = p(t_1^2 + t_2^2 + 2)$
分母:$p^2(t_1^2 + 1)(t_2^2 + 1) = p^2(t_1^2 t_2^2 + t_1^2 + t_2^2 + 1) = p^2(1 + t_1^2 + t_2^2 + 1) = p^2(t_1^2 + t_2^2 + 2)$
$$\therefore \frac{1}{\mathrm{AF}} + \frac{1}{\mathrm{BF}} = \frac{p(t_1^2 + t_2^2 + 2)}{p^2(t_1^2 + t_2^2 + 2)} = \frac{1}{p}$$
焦点弦に関する $\dfrac{1}{\mathrm{AF}} + \dfrac{1}{\mathrm{BF}} = \dfrac{1}{p}$ は通径の長さ $\dfrac{1}{2} \cdot 4p = 2p$ の逆数の2倍とも関係する美しい結果です。この一定値は弦の傾きによらず成り立ちます。
放物線 $y^2 = 4x$ 上の異なる2点 $\mathrm{P}(p^2, 2p)$、$\mathrm{Q}(q^2, 2q)$ における接線の交点を $\mathrm{R}$ とする。
(1) $\mathrm{R}$ の座標を $p, q$ で表せ。
(2) $\mathrm{PQ}$ が焦点 $\mathrm{F}(1, 0)$ を通るとき、接線 $\mathrm{PR}$ と $\mathrm{QR}$ は直交することを示せ。
(1) $\mathrm{P}$ における接線:$py = x + p^2$、$\mathrm{Q}$ における接線:$qy = x + q^2$
辺々引いて $(p - q)y = p^2 - q^2 = (p-q)(p+q)$ より $y = p + q$($p \neq q$)。
$x = py - p^2 = p(p+q) - p^2 = pq$
よって $\mathrm{R}(pq,\; p+q)$
(2) $\mathrm{PQ}$ が $\mathrm{F}(1, 0)$ を通る条件:直線 $\mathrm{PQ}$ の方程式は $y(p+q) = 2(x + pq)$。$\mathrm{F}(1, 0)$ を代入すると $0 = 2(1 + pq)$ より $pq = -1$。
$\mathrm{P}$ における接線の傾き:$\dfrac{1}{p}$、$\mathrm{Q}$ における接線の傾き:$\dfrac{1}{q}$
$$\frac{1}{p} \cdot \frac{1}{q} = \frac{1}{pq} = \frac{1}{-1} = -1$$
傾きの積が $-1$ なので、2本の接線は直交する。□
焦点弦の両端における接線が直交するという性質は、放物線の美しい幾何学的性質の1つです。さらに、このとき交点 $\mathrm{R}$ の $x$ 座標は $pq = -1$ なので $\mathrm{R}(-1,\; p+q)$、つまり $\mathrm{R}$ は準線 $x = -1$ 上にあります。