第7章 ベクトル

内積の応用(なす角・垂直条件)
─ 角度と垂直を「計算」で求める

三角形の角度を求めるとき、分度器を使わなくても内積の計算だけで正確な値が得られます。特に「垂直かどうか」は内積が $0$ かどうかで即座に判定できます。この記事では、内積の応用として、なす角の計算、垂直条件、三角形の角度の求め方、そしてコーシー・シュワルツの不等式まで学びます。

1なす角の計算 ─ 内積から角度を求める

前回学んだ内積の定義 $\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$ を変形すると、2つのベクトルのなす角 $\theta$ を直接計算できます。

📐 なす角の公式

$$\cos\theta = \frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{a}||\vec{b}|}$$

成分表示では:

$$\cos\theta = \frac{a_1 b_1 + a_2 b_2}{\sqrt{a_1^2 + a_2^2}\;\sqrt{b_1^2 + b_2^2}}$$

※ $0^\circ \le \theta \le 180^\circ$ の範囲で $\cos\theta$ の値から $\theta$ を決定します。

💡 ここが本質:角度を「幾何」ではなく「計算」で求める

内積がなければ、角度を求めるには図を描いて測るか、余弦定理を3辺の長さから適用するしかありませんでした。内積の公式を使えば、成分の四則演算だけで角度の余弦が求まります。

これは座標幾何学の大きな力です。複雑な図形の角度も、座標を設定して成分計算すれば正確に求められるのです。

具体的に計算してみましょう。$\vec{a} = (1, \sqrt{3})$、$\vec{b} = (2, 0)$ のなす角は:

$$\cos\theta = \frac{1 \cdot 2 + \sqrt{3} \cdot 0}{\sqrt{1 + 3} \cdot \sqrt{4}} = \frac{2}{2 \cdot 2} = \frac{1}{2}$$

よって $\theta = 60^\circ$ です。

⚠️ 落とし穴:$\cos\theta$ の値から $\theta$ を求めるとき

✗ 誤:$\cos\theta = -\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ だから $\theta = -30^\circ$

○ 正:$\theta = 150^\circ$($0^\circ \le \theta \le 180^\circ$ の範囲で考える)

なす角は $0^\circ$ から $180^\circ$ の範囲です。$\cos\theta$ が負のとき、$\theta$ は鈍角($90^\circ$ より大きい)になります。三角関数の表やグラフから正しい角度を読み取りましょう。

2垂直条件 ─ なぜ「内積 = 0」なのか

2つのベクトルが垂直(直交)であることの判定は、ベクトルの応用で最も頻繁に使う技法です。

📐 垂直条件

$\vec{a} \neq \vec{0}$、$\vec{b} \neq \vec{0}$ のとき:

$$\vec{a} \perp \vec{b} \iff \vec{a} \cdot \vec{b} = 0$$

成分表示では:

$$\vec{a} \perp \vec{b} \iff a_1 b_1 + a_2 b_2 = 0$$

💡 ここが本質:内積 = 0 の幾何学的意味

$\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$ において、$|\vec{a}| \neq 0$、$|\vec{b}| \neq 0$ のとき:

$$\vec{a} \cdot \vec{b} = 0 \iff \cos\theta = 0 \iff \theta = 90^\circ$$

内積は「$\vec{b}$ の $\vec{a}$ 方向への射影の長さ × $|\vec{a}|$」でした。この射影が $0$ になるのは、$\vec{b}$ が $\vec{a}$ に対して完全に横向き、つまり垂直なときです。

たとえば $\vec{a} = (3, 2)$、$\vec{b} = (2, -3)$ が垂直かどうかを確認すると:

$$\vec{a} \cdot \vec{b} = 3 \cdot 2 + 2 \cdot (-3) = 6 - 6 = 0$$

内積が $0$ なので垂直です。

⚠️ 落とし穴:零ベクトルとの垂直判定

✗ 誤:$\vec{a} \cdot \vec{0} = 0$ だから $\vec{a} \perp \vec{0}$

○ 正:零ベクトルとの垂直・平行は定義しない(なす角が定まらない)

垂直条件 $\vec{a} \cdot \vec{b} = 0$ を使うときは、$\vec{a} \neq \vec{0}$ かつ $\vec{b} \neq \vec{0}$ であることを確認する必要があります。

垂直なベクトルの作り方

$\vec{a} = (a_1, a_2)$ に垂直なベクトルは、内積が $0$ になる条件 $a_1 x + a_2 y = 0$ を満たすベクトル $(x, y)$ です。簡単な解として:

📐 垂直ベクトルの作り方

$(a_1, a_2)$ に垂直なベクトル:$(-a_2, a_1)$ または $(a_2, -a_1)$

※ 成分を入れ替えて一方の符号を変えるだけ。$(3, 2) \perp (-2, 3)$ を確認:$3 \cdot (-2) + 2 \cdot 3 = 0$ ✓

⚠️ 落とし穴:垂直ベクトルの符号

✗ 誤:$(3, 5)$ に垂直なベクトルは $(5, 3)$

○ 正:$(3, 5)$ に垂直なベクトルは $(-5, 3)$ または $(5, -3)$

成分を入れ替えるだけではなく、一方の符号を変えることが必要です。検算として内積を計算しましょう:$3 \cdot (-5) + 5 \cdot 3 = 0$ ✓

🔬 深掘り:法線ベクトルと直線の方程式

直線 $ax + by + c = 0$ の法線ベクトル(直線に垂直なベクトル)は $\vec{n} = (a, b)$ です。点 $P(x, y)$ がこの直線上にある条件は $\vec{n} \cdot \overrightarrow{OP'} = 0$($P'$ は直線上の定点)と内積を使って表せます。直線の方程式と内積は密接に結びついています。

3三角形の角度 ─ 座標から角度を計算する

3点の座標が与えられたとき、内積を使えば三角形の各角を計算で求められます。

三角形の角度を求める手順

三角形 $ABC$ の $\angle A$ を求めるには:

  1. 頂点 $A$ を始点とする2つのベクトル $\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{AC}$ を求める
  2. $\cos A = \dfrac{\overrightarrow{AB} \cdot \overrightarrow{AC}}{|\overrightarrow{AB}||\overrightarrow{AC}|}$ を計算する
  3. $\cos A$ の値から $\angle A$ を決定する

具体例として、$A(0, 0)$、$B(4, 0)$、$C(1, \sqrt{3})$ の三角形を考えます。

$\overrightarrow{AB} = (4, 0)$、$\overrightarrow{AC} = (1, \sqrt{3})$ より:

$$\cos A = \frac{4 \cdot 1 + 0 \cdot \sqrt{3}}{4 \cdot \sqrt{1+3}} = \frac{4}{4 \cdot 2} = \frac{1}{2}$$

よって $\angle A = 60^\circ$ です。

💡 ここが本質:始点をそろえることが鍵

$\angle A$ を求めるとき、2つのベクトルの始点を $A$ にそろえます。$\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{AC}$ の始点はどちらも $A$ です。$\angle B$ を求めたいなら $\overrightarrow{BA}$ と $\overrightarrow{BC}$ を使います。

「求めたい角の頂点が始点」── この原則を守れば、三角形のどの角でも機械的に計算できます。

⚠️ 落とし穴:$\angle B$ を求めるときの始点

✗ 誤:$\angle B$ を求めるのに $\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{BC}$ を使う

○ 正:$\angle B$ を求めるには $\overrightarrow{BA}$ と $\overrightarrow{BC}$ を使う(始点を $B$ にそろえる)

$\overrightarrow{AB}$ の始点は $A$、$\overrightarrow{BC}$ の始点は $B$ なので始点が一致していません。$\overrightarrow{BA} = -\overrightarrow{AB}$ と変換して始点をそろえましょう。

直角三角形の判定

三角形 $ABC$ が $\angle A$ で直角三角形であるかどうかは、$\overrightarrow{AB} \cdot \overrightarrow{AC} = 0$ を確認するだけで判定できます。3つの角すべてを調べれば、直角三角形かどうかの完全な判定ができます。

4コーシー・シュワルツの不等式 ─ 内積が教える限界

内積の定義から、重要な不等式が導かれます。$\cos\theta$ の値は $-1$ 以上 $1$ 以下なので:

$$|\vec{a} \cdot \vec{b}| = |\vec{a}||\vec{b}||\cos\theta| \le |\vec{a}||\vec{b}|$$

📐 コーシー・シュワルツの不等式

$$|\vec{a} \cdot \vec{b}| \le |\vec{a}||\vec{b}|$$

成分表示では:

$$(a_1 b_1 + a_2 b_2)^2 \le (a_1^2 + a_2^2)(b_1^2 + b_2^2)$$

※ 等号成立は $\vec{a} \mathbin{/\!/} \vec{b}$($\vec{a}$ と $\vec{b}$ が平行)のとき、すなわち $\theta = 0^\circ$ または $\theta = 180^\circ$ のとき。

💡 ここが本質:内積の絶対値は「大きさの積」を超えない

コーシー・シュワルツの不等式は、「2つのベクトルの方向が完全に一致(または反対)したとき、内積の絶対値が最大になる」ことを述べています。斜め方向では、内積は必ず $|\vec{a}||\vec{b}|$ より小さくなります。

これは射影の解釈と一致します。$\vec{b}$ を $\vec{a}$ 方向に射影すると、元の長さ以下にしかなりません。

▷ コーシー・シュワルツの不等式の別証明

任意の実数 $t$ に対して $|t\vec{a} + \vec{b}|^2 \ge 0$ が成り立つことを利用します。

$$|t\vec{a} + \vec{b}|^2 = |\vec{a}|^2 t^2 + 2(\vec{a}\cdot\vec{b})t + |\vec{b}|^2 \ge 0$$

これが任意の $t$ で成り立つので、$t$ の2次関数の判別式が $0$ 以下:

$$D = 4(\vec{a}\cdot\vec{b})^2 - 4|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2 \le 0$$

$$\therefore (\vec{a}\cdot\vec{b})^2 \le |\vec{a}|^2|\vec{b}|^2$$

等号は $|t\vec{a} + \vec{b}| = 0$、すなわち $\vec{b} = -t\vec{a}$(平行)のとき成立。

コーシー・シュワルツの不等式の応用

この不等式は、数の不等式の証明に威力を発揮します。$(a_1, a_2) = (x, y)$、$(b_1, b_2) = (1, 1)$ とすると:

$$(x + y)^2 \le 2(x^2 + y^2)$$

これは「相加平均と二乗平均の関係」の特別な場合に対応します。

🔬 深掘り:コーシー・シュワルツの一般化

コーシー・シュワルツの不等式は $n$ 次元のベクトルや、さらには関数の内積(積分)にも拡張されます。関数版は $\left(\int f(x)g(x)\,dx\right)^2 \le \int f(x)^2\,dx \cdot \int g(x)^2\,dx$ となり、フーリエ解析や量子力学の不確定性原理の基礎になっています。

5垂直条件の応用 ─ 垂線・直交座標への展開

点から直線への垂線の足

点 $P$ から直線 $AB$ に下ろした垂線の足 $H$ を求める問題は、垂直条件を使えば体系的に解けます。

$H$ は直線 $AB$ 上にあるので $\overrightarrow{AH} = t\overrightarrow{AB}$($t$ は実数)と書けます。$\overrightarrow{PH} \perp \overrightarrow{AB}$ の条件から $t$ が決定します。

$\overrightarrow{PH} = \overrightarrow{AH} - \overrightarrow{AP} = t\overrightarrow{AB} - \overrightarrow{AP}$ なので:

$$\overrightarrow{PH} \cdot \overrightarrow{AB} = 0 \implies (t\overrightarrow{AB} - \overrightarrow{AP}) \cdot \overrightarrow{AB} = 0$$

$$t|\overrightarrow{AB}|^2 - \overrightarrow{AP} \cdot \overrightarrow{AB} = 0 \implies t = \frac{\overrightarrow{AP} \cdot \overrightarrow{AB}}{|\overrightarrow{AB}|^2}$$

📐 垂線の足の公式

点 $P$ から直線 $AB$ に下ろした垂線の足 $H$ は:

$$\overrightarrow{AH} = \frac{\overrightarrow{AP} \cdot \overrightarrow{AB}}{|\overrightarrow{AB}|^2}\overrightarrow{AB}$$

※ これは前回学んだ正射影ベクトルの公式そのものです。

⚠️ 落とし穴:垂線の足が線分上にあるとは限らない

✗ 誤:垂線の足 $H$ は必ず線分 $AB$ 上にある

○ 正:$0 \le t \le 1$ のときのみ $H$ は線分 $AB$ 上にある

$t < 0$ や $t > 1$ のときは、$H$ は線分 $AB$ の延長線上にあります。距離の最小値問題では、この場合分けが必要になることがあります。

ベクトルの分解と直交基底

互いに垂直な2つのベクトル $\vec{e}_1$、$\vec{e}_2$($\vec{e}_1 \cdot \vec{e}_2 = 0$)を使えば、任意のベクトル $\vec{v}$ を次のように分解できます:

$$\vec{v} = \frac{\vec{v} \cdot \vec{e}_1}{|\vec{e}_1|^2}\vec{e}_1 + \frac{\vec{v} \cdot \vec{e}_2}{|\vec{e}_2|^2}\vec{e}_2$$

各成分は射影ベクトルであり、直交するベクトルへの射影は互いに独立に計算できます。これが座標軸($x$ 軸と $y$ 軸)を直交させる理由です。

🔬 深掘り:グラム・シュミットの直交化法

与えられたベクトルの組から直交基底を構成する方法を「グラム・シュミットの直交化法」と呼びます。射影ベクトルを順に引いていくことで、互いに直交するベクトルの組を作ります。この手法は線形代数・数値計算の基礎であり、高校で学ぶ射影の公式が出発点です。

まとめ

✅ 確認テスト

Q1. $\vec{a} = (1, 1)$、$\vec{b} = (1, -1)$ のなす角 $\theta$ を求めよ。

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$\vec{a}\cdot\vec{b} = 1 - 1 = 0$ なので $\theta = 90^\circ$(垂直)

Q2. $(2, -3)$ に垂直なベクトルを1つ求めよ。

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$(3, 2)$(成分を入れ替えて一方の符号を変える)。検算:$2 \cdot 3 + (-3) \cdot 2 = 0$ ✓

Q3. $A(1, 2)$、$B(5, 4)$、$C(3, 6)$ で $\angle A$ を求めるとき、どの2つのベクトルを使うか?

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$\overrightarrow{AB} = (4, 2)$ と $\overrightarrow{AC} = (2, 4)$(始点を $A$ にそろえる)

Q4. コーシー・シュワルツの不等式で等号が成立する条件は?

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$\vec{a}$ と $\vec{b}$ が平行($\vec{b} = k\vec{a}$)のとき。$\theta = 0^\circ$ または $\theta = 180^\circ$。

Q5. $\vec{a} = (1, 2)$、$\vec{b} = (k, -1)$ が垂直になる $k$ の値は?

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$\vec{a}\cdot\vec{b} = k - 2 = 0$ より $k = 2$

6入試問題演習

問題 1 LEVEL A 三角形の角度

$A(1, 1)$、$B(4, 2)$、$C(2, 4)$ を頂点とする三角形 $ABC$ の3つの角を求めよ。

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解答

$\overrightarrow{AB} = (3, 1)$、$\overrightarrow{AC} = (1, 3)$

$\cos A = \dfrac{3 \cdot 1 + 1 \cdot 3}{\sqrt{10}\sqrt{10}} = \dfrac{6}{10} = \dfrac{3}{5}$

$\overrightarrow{BA} = (-3, -1)$、$\overrightarrow{BC} = (-2, 2)$

$\cos B = \dfrac{6 - 2}{\sqrt{10}\sqrt{8}} = \dfrac{4}{4\sqrt{5}} = \dfrac{1}{\sqrt{5}}$

$\overrightarrow{CA} = (-1, -3)$、$\overrightarrow{CB} = (2, -2)$

$\cos C = \dfrac{-2 + 6}{\sqrt{10}\sqrt{8}} = \dfrac{4}{4\sqrt{5}} = \dfrac{1}{\sqrt{5}}$

$\angle B = \angle C$ であり、$\angle A = \arccos\dfrac{3}{5}$、$\angle B = \angle C = \arccos\dfrac{1}{\sqrt{5}}$

(二等辺三角形:$AB = AC = \sqrt{10}$)

採点ポイント
  • 各角のベクトルの始点をそろえる … 3点
  • $\cos A$、$\cos B$、$\cos C$ の計算 … 各2点
  • 二等辺三角形であることの指摘 … 1点
問題 2 LEVEL B 垂直条件と軌跡

$A(2, 0)$、$B(0, 4)$ とする。点 $P(x, y)$ が $\overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PB} = 0$ を満たすとき、$P$ の軌跡を求めよ。

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解答

$\overrightarrow{PA} = (2-x, -y)$、$\overrightarrow{PB} = (-x, 4-y)$

$\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB} = (2-x)(-x) + (-y)(4-y) = 0$

$-2x + x^2 - 4y + y^2 = 0$

$x^2 - 2x + y^2 - 4y = 0$

$(x-1)^2 + (y-2)^2 = 5$

よって $P$ の軌跡は中心 $(1, 2)$、半径 $\sqrt{5}$ の円。

解説

$\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB} = 0$ は $\overrightarrow{PA} \perp \overrightarrow{PB}$、すなわち $\angle APB = 90^\circ$ を意味します。「線分 $AB$ を直径とする円の円周上の点から $AB$ を見込む角は $90^\circ$」(タレスの定理)ですから、$P$ の軌跡は $AB$ を直径とする円です。中心は $AB$ の中点 $(1, 2)$、半径は $\dfrac{AB}{2} = \dfrac{\sqrt{20}}{2} = \sqrt{5}$ と一致します。

採点ポイント
  • ベクトルの成分表示 … 2点
  • 内積 $= 0$ の式の展開 … 3点
  • 平方完成による円の方程式 … 3点
  • タレスの定理との関連の指摘 … 2点
問題 3 LEVEL B コーシー・シュワルツの応用

正の実数 $x$、$y$ が $x + y = 1$ を満たすとき、$\dfrac{1}{x} + \dfrac{4}{y}$ の最小値をコーシー・シュワルツの不等式を用いて求めよ。

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解答

コーシー・シュワルツの不等式 $(a_1 b_1 + a_2 b_2)^2 \le (a_1^2 + a_2^2)(b_1^2 + b_2^2)$ で

$(a_1, a_2) = (\sqrt{x}, \sqrt{y})$、$(b_1, b_2) = \left(\dfrac{1}{\sqrt{x}}, \dfrac{2}{\sqrt{y}}\right)$ とおくと:

$$\left(\sqrt{x} \cdot \frac{1}{\sqrt{x}} + \sqrt{y} \cdot \frac{2}{\sqrt{y}}\right)^2 \le (x + y)\left(\frac{1}{x} + \frac{4}{y}\right)$$

$$(1 + 2)^2 \le 1 \cdot \left(\frac{1}{x} + \frac{4}{y}\right)$$

$$9 \le \frac{1}{x} + \frac{4}{y}$$

等号は $\dfrac{\sqrt{x}}{1/\sqrt{x}} = \dfrac{\sqrt{y}}{2/\sqrt{y}}$、すなわち $x = \dfrac{y}{2}$。$x + y = 1$ と合わせて $x = \dfrac{1}{3}$、$y = \dfrac{2}{3}$ のとき等号成立。

よって最小値は $9$。

採点ポイント
  • ベクトルの適切な設定 … 3点
  • コーシー・シュワルツの正しい適用 … 3点
  • 等号条件の確認 … 2点
  • 最小値 $9$ の結論 … 2点
問題 4 LEVEL C 垂線と面積

$A(0, 0)$、$B(6, 2)$、$C(1, 5)$ とする。

(1) 点 $C$ から直線 $AB$ に下ろした垂線の足 $H$ の座標を求めよ。

(2) 三角形 $ABC$ の面積を求めよ。

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解答

(1) $\overrightarrow{AB} = (6, 2)$、$\overrightarrow{AC} = (1, 5)$

$\overrightarrow{AH} = t\overrightarrow{AB}$ とおくと $\overrightarrow{CH} = \overrightarrow{AH} - \overrightarrow{AC} = t(6, 2) - (1, 5) = (6t-1, 2t-5)$

$\overrightarrow{CH} \cdot \overrightarrow{AB} = 0$ より:

$(6t-1) \cdot 6 + (2t-5) \cdot 2 = 36t - 6 + 4t - 10 = 40t - 16 = 0$

$t = \dfrac{2}{5}$

$H = A + t\overrightarrow{AB} = \left(\dfrac{12}{5}, \dfrac{4}{5}\right)$

(2) $CH = |\overrightarrow{CH}| = \left|\left(\dfrac{12}{5}-1, \dfrac{4}{5}-5\right)\right| = \left|\left(\dfrac{7}{5}, -\dfrac{21}{5}\right)\right| = \dfrac{7}{5}\sqrt{1+9} = \dfrac{7\sqrt{10}}{5}$

$AB = \sqrt{36+4} = \sqrt{40} = 2\sqrt{10}$

面積 $= \dfrac{1}{2} \cdot AB \cdot CH = \dfrac{1}{2} \cdot 2\sqrt{10} \cdot \dfrac{7\sqrt{10}}{5} = \dfrac{1}{2} \cdot \dfrac{140}{5} = 14$

解説

別解として、$\dfrac{1}{2}|a_1 b_2 - a_2 b_1| = \dfrac{1}{2}|6 \cdot 5 - 2 \cdot 1| = \dfrac{1}{2} \cdot 28 = 14$ と外積の絶対値を使う方法もあります。この公式は「平行四辺形の面積の半分」として理解できます。

採点ポイント
  • 垂線の足の $t$ の計算 … 3点
  • $H$ の座標 … 2点
  • $CH$ の長さの計算 … 2点
  • 面積の計算 … 3点