等比数列は、隣り合う項の比が常に一定である数列です。細胞分裂(1, 2, 4, 8, ...)や複利計算など、「倍々に増える」現象を記述する数列として自然科学・経済学で広く使われます。等差数列が「加法的」な数列であったのに対し、等比数列は「乗法的」な数列です。
隣り合う2つの項の比が常に一定である数列を等比数列(geometric sequence)といいます。この一定の比を公比(common ratio)と呼び、$r$ で表します。
数列 $\{a_n\}$ が等比数列であるとは、$a_n \neq 0$ かつすべての自然数 $n$ に対して
$$\frac{a_{n+1}}{a_n} = r \quad (\text{$r$ は $0$ でない定数})$$
が成り立つことをいう。この $r$ を公比という。
※ 同値な表現:$a_{n+1} = r \cdot a_n$(漸化式の形)
例1:$2, 6, 18, 54, 162, \ldots$(初項 $2$、公比 $3$)
確認:$\frac{6}{2} = 3$, $\frac{18}{6} = 3$, $\frac{54}{18} = 3$ ✓
例2:$81, 27, 9, 3, 1, \ldots$(初項 $81$、公比 $\frac{1}{3}$)
確認:$\frac{27}{81} = \frac{1}{3}$, $\frac{9}{27} = \frac{1}{3}$ ✓
例3:$1, -2, 4, -8, 16, \ldots$(初項 $1$、公比 $-2$)
確認:$\frac{-2}{1} = -2$, $\frac{4}{-2} = -2$ ✓ 符号が交互に入れ替わる
例4:$5, 5, 5, 5, \ldots$(初項 $5$、公比 $1$)
等差数列は「同じ数を足す」操作の繰り返し → $a_n = a + (n-1)d$
等比数列は「同じ数をかける」操作の繰り返し → $a_n = ar^{n-1}$
この対応関係を意識すると、公式の構造が自然に理解できます。
初項 $a_1 = a$ と公比 $r$ が与えられたとき、等比数列の一般項を求めましょう。
初項 $a$、公比 $r$ の等比数列 $\{a_n\}$ の一般項は
$$a_n = a \cdot r^{n-1}$$
※ 公比を $(n-1)$ 回かけます。$n = 1$ のとき $a_1 = a \cdot r^0 = a$ ✓
各項を初項と公比で表します。
$a_1 = a$
$a_2 = a_1 \cdot r = ar$
$a_3 = a_2 \cdot r = ar^2$
$a_4 = a_3 \cdot r = ar^3$
$\vdots$
$a_n = ar^{n-1}$
第 $n$ 項に到達するまでに公比を $(n-1)$ 回かけるので $a_n = ar^{n-1}$ です。
✗ $a_n = ar^n$(公比を $n$ 回かけている → 実際は第 $(n+1)$ 項の値!)
✓ $a_n = ar^{n-1}$(初項から第 $n$ 項まで、公比をかける回数は $(n-1)$ 回)
等差数列の $a_n = a + (n-1)d$ と同じ構造です。$n = 1$ で初項に戻るか常に確認しましょう。
例1:初項 $3$、公比 $2$ → $a_n = 3 \cdot 2^{n-1}$。$a_6 = 3 \cdot 32 = 96$。
例2:初項 $100$、公比 $\frac{1}{2}$ → $a_n = 100 \cdot \left(\frac{1}{2}\right)^{n-1} = \frac{100}{2^{n-1}}$。$a_5 = \frac{100}{16} = \frac{25}{4}$。
例3:初項 $-1$、公比 $-3$ → $a_n = (-1)(-3)^{n-1} = (-1)^n \cdot 3^{n-1}$。
等差数列に「等差中項」があったように、等比数列にも等比中項があります。
$a$, $b$, $c$(いずれも $0$ でない)がこの順に等比数列をなすとき
$$b^2 = ac$$
すなわち、$b$ は $a$ と $c$ の相乗平均(幾何平均)の $\pm$ である。
$a$, $b$, $c$ が等比数列をなすので、公比を $r$ とすると
$b = ar$, $c = ar^2$
よって $ac = a \cdot ar^2 = a^2r^2 = (ar)^2 = b^2$
すなわち $b^2 = ac$(または $b = \pm\sqrt{ac}$)。
✗ $b = \sqrt{ac}$ のみ
✓ $b = \sqrt{ac}$ または $b = -\sqrt{ac}$($ac > 0$ のとき)
たとえば $2$, $b$, $8$ が等比数列 → $b^2 = 16$ → $b = 4$ または $b = -4$。
$b = 4$ なら公比 $2$($2, 4, 8$)、$b = -4$ なら公比 $-2$($2, -4, 8$)。どちらも等比数列です。
「$a$, $b$, $c$ が等比数列」⟺「$b^2 = ac$」ですが、$a$, $b$, $c$ がすべて $0$ でないことが前提です。
$a = 0$ の場合は $b = 0$, $c = 0$ となり、公比が定義できないため等比数列とはいいません。
公比 $r$ の値によって、等比数列の項の振る舞いが大きく変わります。
| 公比 $r$ の条件 | 振る舞い | 例($a = 1$) |
|---|---|---|
| $r > 1$ | 単調増加(発散) | $1, 2, 4, 8, 16, \ldots$ |
| $r = 1$ | 定数列 | $1, 1, 1, 1, \ldots$ |
| $0 < r < 1$ | 単調減少($0$ に収束) | $1, \frac{1}{2}, \frac{1}{4}, \frac{1}{8}, \ldots$ |
| $r = -1$ | 符号交代(振動) | $1, -1, 1, -1, \ldots$ |
| $-1 < r < 0$ | 符号交代・$0$ に収束 | $1, -\frac{1}{2}, \frac{1}{4}, -\frac{1}{8}, \ldots$ |
| $r < -1$ | 符号交代・発散 | $1, -3, 9, -27, \ldots$ |
$|r| < 1$ のとき $r^n \to 0$($n \to \infty$)なので、$a_n = ar^{n-1} \to 0$ です。
この性質は等比数列の和(無限級数)で重要な役割を果たします(後の記事で学びます)。
公比 $r < 0$ のとき、項の符号は交互に入れ替わる。
$a_n = ar^{n-1}$ で、$r^{n-1}$ の符号は $(−1)^{n-1}$ の因子を持つ。
$$r < 0 \text{ のとき:} a_n = a \cdot |r|^{n-1} \cdot (-1)^{n-1}$$
与えられた数列が等比数列であるかどうかの判定方法を学びます。
すべての項が $0$ でない数列 $\{a_n\}$ が等比数列である ⟺ 次のいずれかが成り立つ
条件1:$\frac{a_{n+1}}{a_n} = r$(定数)がすべての $n$ で成り立つ
条件2:$a_n = A \cdot B^n$($A \neq 0$, $B \neq 0$ の定数)で表せる
※ 条件2のとき、初項 $a_1 = AB$、公比 $r = B$ です。
例1:$a_n = 5 \cdot 3^n$ は等比数列か?
$\frac{a_{n+1}}{a_n} = \frac{5 \cdot 3^{n+1}}{5 \cdot 3^n} = 3$(定数)→ 等比数列(公比 $3$)✓
初項:$a_1 = 5 \cdot 3 = 15$。一般項は $a_n = 15 \cdot 3^{n-1}$ とも書ける。
例2:$a_n = 2^n + 1$ は等比数列か?
$\frac{a_2}{a_1} = \frac{5}{3}$, $\frac{a_3}{a_2} = \frac{9}{5}$。比が一定でない → 等比数列ではない ✗
問:等比数列 $\{a_n\}$ で $a_2 = 6$, $a_5 = 162$ のとき、一般項を求めよ。
$a_2 = ar = 6$ ... ①
$a_5 = ar^4 = 162$ ... ②
②÷① より $r^3 = 27$、$r = 3$。①より $a = 2$。
$a_n = 2 \cdot 3^{n-1}$
等差数列では2つの式の「差」をとって公差を求めましたが、等比数列では2つの式の「比」をとって公比を求めます。
$\frac{a_m}{a_k} = \frac{ar^{m-1}}{ar^{k-1}} = r^{m-k}$ なので、初項 $a$ が消えて公比 $r$ だけの式になります。
Q1. 初項 $4$、公比 $-2$ の等比数列の一般項と $a_6$ を求めよ。
Q2. $3$, $b$, $27$ がこの順に等比数列をなすとき $b$ を求めよ。
Q3. $a_3 = 12$, $a_6 = 96$ の等比数列の初項と公比を求めよ。
Q4. 等比数列 $\{a_n\}$ で $a_n = 5 \cdot 2^{n+1}$ のとき、初項と公比を求めよ。
Q5. $a_n = 3^n - 1$ は等比数列か?理由も答えよ。
次の等比数列の一般項を求め、$a_8$ の値を計算せよ。
(1) 初項 $5$、公比 $2$
(2) 初項 $256$、公比 $\frac{1}{4}$
(1) $a_n = 5 \cdot 2^{n-1}$。$a_8 = 5 \cdot 2^7 = 5 \cdot 128 = 640$
(2) $a_n = 256 \cdot \left(\frac{1}{4}\right)^{n-1} = \frac{256}{4^{n-1}} = \frac{4^4}{4^{n-1}} = 4^{5-n}$。$a_8 = 4^{-3} = \frac{1}{64}$
等比数列 $\{a_n\}$ において $a_3 = 24$, $a_6 = 192$ である。初項 $a$ と公比 $r$ を求め、一般項を答えよ。
$a_6 \div a_3 = r^3 = \frac{192}{24} = 8$ より $r = 2$。
$a_3 = ar^2 = 4a = 24$ より $a = 6$。
$a_n = 6 \cdot 2^{n-1} = 3 \cdot 2^n$
$a$, $b$, $c$ がこの順に等比数列をなし、$a + b + c = 21$, $abc = 64$ を満たすとき、$a$, $b$, $c$ の値を求めよ。ただし $a < c$ とする。
$b^2 = ac$ より $b^3 = abc = 64$、$b = 4$。
$a + c = 21 - 4 = 17$、$ac = b^2 = 16$。
$a$, $c$ は $t^2 - 17t + 16 = 0$ の解。$(t-1)(t-16) = 0$。
$a < c$ より $a = 1$, $c = 16$。よって $(a, b, c) = (1, 4, 16)$。
確認:公比 $4$、$1 \cdot 4 \cdot 16 = 64$ ✓
3つの正の数 $a$, $b$, $c$ がこの順に等差数列をなし、$a$, $b$, $c+1$ がこの順に等比数列をなす。$a + b + c = 15$ のとき、$a$, $b$, $c$ の値を求めよ。
等差数列の条件:$2b = a + c$ ... ①
$a + b + c = 15$ と①より $3b = 15$、$b = 5$。$a + c = 10$。
等比数列の条件:$b^2 = a(c+1)$、$25 = a(c+1)$ ... ②
$c = 10 - a$ を②に代入:$25 = a(11-a)$、$a^2 - 11a + 25 = 0$。
$a = \frac{11 \pm \sqrt{121-100}}{2} = \frac{11 \pm \sqrt{21}}{2}$
$a, c > 0$ かつ $a + c = 10$ なので両解とも正($\sqrt{21} \approx 4.58$ より $a \approx 7.79$ または $a \approx 3.21$)。
$a = \frac{11 - \sqrt{21}}{2}$, $c = \frac{9 + \sqrt{21}}{2}$ または $a = \frac{11 + \sqrt{21}}{2}$, $c = \frac{9 - \sqrt{21}}{2}$。
等差数列と等比数列の融合問題は入試で頻出です。まず等差条件で $b$ を確定し、次に等比条件から $a$, $c$ の関係式を立てる流れが基本です。結果が無理数になることもあるので、正の数の条件を確認しましょう。