高校数学IIIでは、曲線の長さを $\displaystyle\int_a^b \sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2}\,dx$ という公式で計算します。
この公式は「微小な弧の長さ $ds$ をピタゴラスの定理で求めて足し合わせる」という考え方に基づいており、高校の範囲ではそれ以上深掘りされることはありません。
大学の微分幾何学では、この $s$(弧長)自体を曲線のパラメータとして使うことで、曲線の性質がきわめて明快に記述できるようになります。
弧長をパラメータにすると、接線ベクトルは常に長さ1になり、その変化率として曲率 $\kappa$(曲線の「曲がり具合」を測る量)が自然に定義されます。
高校で学ぶ第2次導関数と凹凸の関係は、この曲率の視点から統一的に理解できます。
高校数学IIIでは、曲線 $y = f(x)$ の $a \le x \le b$ における長さ $L$ を次の公式で求めます。
$$L = \int_a^b \sqrt{1 + \left(\frac{dy}{dx}\right)^2}\,dx$$
この公式の導出は、曲線を微小区間に分割し、各区間を線分で近似するという考え方に基づいています。 区間 $[x, x+dx]$ における微小な弧の長さ $ds$ は、水平方向の変位 $dx$ と垂直方向の変位 $dy$ を用いて
$$ds = \sqrt{dx^2 + dy^2} = \sqrt{1 + \left(\frac{dy}{dx}\right)^2}\,dx$$
とピタゴラスの定理から得られます。この $ds$ を $a$ から $b$ まで積分すれば曲線全体の長さ $L$ になります。
また、媒介変数 $t$ で $x = x(t)$, $y = y(t)$ と表された曲線の場合は
$$L = \int_\alpha^\beta \sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dy}{dt}\right)^2}\,dt$$
と書けます。これは、時刻 $t$ における速度ベクトル $(x'(t), y'(t))$ の大きさ(速さ)を時間について積分したものであり、「速さ $\times$ 時間 $=$ 距離」の連続版です。
曲線 $y = f(x)$ 上の点 $(a, f(a))$ における接線は、傾き $f'(a)$ の直線です。 法線はこれに直交する直線で、傾きは $-1/f'(a)$($f'(a) \neq 0$ のとき)です。 高校では接線・法線の方程式を求める問題を多く解きますが、「接線の方向が曲線に沿ってどう変化するか」を定量的に測ることはしません。
ここまでの高校の扱いでは、曲線の長さを計算する公式と、各点での接線の傾きはわかります。 しかし、「この曲線はどれくらい曲がっているのか」を数値で表す方法はありません。 次のセクションでは、大学の視点を導入することで、この問いに答えられるようになることを確認します。
高校の曲線の長さの公式に現れる $ds = \sqrt{dx^2 + dy^2}$ は、実は非常に重要な量です。 大学の微分幾何学では、この $s$(弧長)を曲線のパラメータとして使います。 弧長でパラメータ付けすると、曲線上を「速さ1」で一定に進むことになり、接線ベクトルの長さが常に1になります。 この単位接線ベクトルの変化率が曲率 $\kappa$ であり、曲線の「曲がり具合」を測る量として自然に定まります。
この記事を読み終えると、以下のことができるようになります。
1. 弧長パラメータの定義を説明し、「速さ1で曲線を辿るパラメータ付け」という意味を理解できる
2. 曲率 $\kappa = \left|\dfrac{d\mathbf{T}}{ds}\right|$ の定義と、その具体的な計算公式 $\kappa = \dfrac{|y''|}{(1+y'^2)^{3/2}}$ を導出できる
3. 曲率半径 $\rho = 1/\kappa$ と接触円の幾何学的意味を説明できる
4. 放物線・楕円・円など具体的な曲線の曲率を計算し、高校で学ぶ凹凸の議論を曲率の視点から理解できる
まず、弧長パラメータとは何かを正確に定義し、具体例で確認します。
曲線を媒介変数 $t$ で $\mathbf{r}(t) = (x(t), y(t))$ と表したとき、$t$ が時間だと思えば、$\mathbf{r}'(t) = (x'(t), y'(t))$ は速度ベクトルであり、その大きさ
$$|\mathbf{r}'(t)| = \sqrt{x'(t)^2 + y'(t)^2}$$
が速さです。セクション1で見た曲線の長さの公式は、この速さを時間で積分したものでした。
一般のパラメータ $t$ では、速さは一定とは限りません。例えば $\mathbf{r}(t) = (\cos t, \sin t)$(単位円)では速さは常に1ですが、$\mathbf{r}(t) = (\cos 2t, \sin 2t)$ では速さは2になります。 同じ円を辿っていても、パラメータの取り方によって速さが変わるのです。
では、速さが常に1になるような「最も自然な」パラメータは存在するでしょうか。 実は、曲線の始点からの弧長 $s$ をパラメータに使えば、まさにそのようなパラメータ付けが得られます。
曲線 $\mathbf{r}(t) = (x(t), y(t))$ に対し、始点 $t = t_0$ からの弧長を
$$s(t) = \int_{t_0}^{t} |\mathbf{r}'(\tau)|\,d\tau = \int_{t_0}^{t} \sqrt{x'(\tau)^2 + y'(\tau)^2}\,d\tau$$
と定義します。$s$ は $t$ の増加関数であり(速さが正である限り)、逆関数 $t = t(s)$ が存在します。 $\mathbf{r}(t(s))$ と書き直したとき、$s$ を弧長パラメータ(arc length parameter)と呼びます。
この定義の直感的な意味は明快です。弧長 $s$ は「曲線の始点からどれだけの道のりを進んだか」を表しています。 道のりでパラメータ付けするということは、曲線上を一定の速さ1で歩いていることに相当します。
実際にこれを確認しましょう。$s$ でパラメータ付けされた曲線 $\mathbf{r}(s)$ について、速さを計算すると
$$\left|\frac{d\mathbf{r}}{ds}\right| = \left|\frac{d\mathbf{r}/dt}{ds/dt}\right| = \frac{|\mathbf{r}'(t)|}{|\mathbf{r}'(t)|} = 1$$
となります。ここで $ds/dt = |\mathbf{r}'(t)|$(弧長の定義から微積分学の基本定理より)を使いました。 つまり、弧長パラメータで表した曲線は常に速さ1で辿られるのです。
半径 $r$ の円を $\mathbf{r}(t) = (r\cos t, r\sin t)$ と表すと、速さは
$$|\mathbf{r}'(t)| = \sqrt{(-r\sin t)^2 + (r\cos t)^2} = r$$
です。弧長は $s = rt$ なので、$t = s/r$ と書き直せます。弧長パラメータによる表示は
$$\mathbf{r}(s) = \left(r\cos\frac{s}{r},\; r\sin\frac{s}{r}\right)$$
となります。確認すると $|d\mathbf{r}/ds| = \sqrt{\sin^2(s/r) + \cos^2(s/r)} = 1$ であり、確かに速さ1です。
放物線 $y = x^2$ の $0 \le x \le 1$ における弧長は
$$s = \int_0^1 \sqrt{1 + (2x)^2}\,dx = \int_0^1 \sqrt{1 + 4x^2}\,dx$$
です。$x = \frac{1}{2}\sinh u$ と置換すると $\sqrt{1+4x^2} = \cosh u$, $dx = \frac{1}{2}\cosh u\,du$ より
$$s = \int_0^{\sinh^{-1}2} \frac{1}{2}\cosh^2 u\,du = \frac{1}{4}\left[\sinh u\cosh u + u\right]_0^{\sinh^{-1}2} = \frac{1}{4}\left(2\sqrt{5} + \sinh^{-1}2\right)$$
$\sinh^{-1}2 = \ln(2+\sqrt{5}) \approx 1.4436$ なので、$s \approx \frac{1}{4}(4.4721 + 1.4436) \approx 1.4789$ です。 このように、弧長を陽に求めることは多くの場合容易ではありません。しかし、弧長パラメータの概念自体は、次に見る曲率の定義において決定的な役割を果たします。
ここまでで、弧長パラメータとは「速さ1で曲線を辿るパラメータ付け」であることがわかりました。 この設定のもとで、接線ベクトルの長さは常に1になります。 次に、この単位接線ベクトルの変化率として「曲がり具合」を定量化します。
弧長パラメータ $s$ で表された曲線 $\mathbf{r}(s)$ に対し、
$$\mathbf{T}(s) = \frac{d\mathbf{r}}{ds}$$
を単位接線ベクトルと呼びます。セクション3で確認したとおり $|\mathbf{T}(s)| = 1$ です。 つまり、$\mathbf{T}(s)$ は各点における曲線の進行方向を表す、長さ1のベクトルです。
直線の場合、進行方向は一定なので $\mathbf{T}$ は変化しません。 曲線が曲がっているとき、$\mathbf{T}$ の方向が変わります。この変化が激しいほど、曲線は「急カーブ」していると言えます。 この直観を定量化したのが曲率です。
弧長パラメータ $s$ で表された曲線 $\mathbf{r}(s)$ の曲率(curvature)を
$$\kappa(s) = \left|\frac{d\mathbf{T}}{ds}\right| = \left|\frac{d^2\mathbf{r}}{ds^2}\right|$$
と定義します。$\kappa$ は各点での「単位距離あたりの接線方向の変化量」を表します。
$\kappa$ はギリシャ文字で「カッパ」と読みます。$\kappa \ge 0$ であり、$\kappa = 0$ は曲線がその点で直線的であることを意味します。
なぜ弧長パラメータで定義する必要があるのでしょうか。 一般のパラメータ $t$ で $|d\mathbf{T}/dt|$ を計算すると、同じ曲線でも $t$ の取り方によって値が変わってしまいます。 弧長パラメータは「速さ1」という正規化を与えるため、$\kappa$ は曲線の形状だけで決まる量(幾何学的不変量)になるのです。
単位接線ベクトル $\mathbf{T}$ は長さ1なので、$x$ 軸の正の方向となす角 $\theta$ を用いて $\mathbf{T} = (\cos\theta, \sin\theta)$ と書けます。 このとき
$$\frac{d\mathbf{T}}{ds} = \left(-\sin\theta\frac{d\theta}{ds},\; \cos\theta\frac{d\theta}{ds}\right)$$
なので
$$\kappa = \left|\frac{d\mathbf{T}}{ds}\right| = \left|\frac{d\theta}{ds}\right|$$
となります。つまり、曲率とは「単位距離進んだときに接線の方向がどれだけ回転するか」です。 1メートル進むごとに接線方向が大きく変わるなら曲率が大きく、ほとんど変わらないなら曲率が小さいということです。
弧長パラメータを陽に求めるのは多くの場合困難です。 そこで、$y = f(x)$ の形で与えられた曲線の曲率を、$f'(x)$ と $f''(x)$ から直接計算する公式を導出します。
目標:$y = f(x)$ の曲率が $\kappa = \dfrac{|f''(x)|}{(1 + f'(x)^2)^{3/2}}$ であることを示す。
方針:接線の傾き角 $\theta$ を $f'(x)$ で表し、$\kappa = |d\theta/ds|$ を計算する。
ステップ1:接線の傾きは $\tan\theta = f'(x)$ です。両辺を $x$ で微分すると
$$\frac{1}{\cos^2\theta}\frac{d\theta}{dx} = f''(x)$$
$\tan\theta = f'$ より $\cos^2\theta = \dfrac{1}{1+\tan^2\theta} = \dfrac{1}{1+f'^2}$ なので
$$\frac{d\theta}{dx} = \frac{f''(x)}{1 + f'(x)^2}$$
ステップ2:弧長の微小変化は $ds = \sqrt{1 + f'(x)^2}\,dx$ なので
$$\frac{d\theta}{ds} = \frac{d\theta/dx}{ds/dx} = \frac{f''(x)/(1+f'^2)}{\sqrt{1+f'^2}} = \frac{f''(x)}{(1+f'^2)^{3/2}}$$
ステップ3:$\kappa = |d\theta/ds|$ より
$$\kappa = \frac{|f''(x)|}{(1 + f'(x)^2)^{3/2}}$$
が得られました。
$$\kappa = \frac{|f''(x)|}{(1 + f'(x)^2)^{3/2}}$$
分子の $|f''(x)|$ は曲線の凹凸を反映し、分母の $(1 + f'^2)^{3/2}$ は接線の傾きによる補正です。
$f'(x) = 0$(水平な接線)のとき $\kappa = |f''(x)|$ となり、曲率は第2次導関数の絶対値に一致します。 傾きが急なとき($|f'| \gg 1$)、分母が大きくなるため曲率は小さくなります。これは、急な傾きの曲線では見た目ほど「曲がっていない」ことを意味しています。
半径 $r$ の円 $x^2 + y^2 = r^2$ の上半分を $y = \sqrt{r^2 - x^2}$ と表します。
$$y' = \frac{-x}{\sqrt{r^2 - x^2}}, \quad y'' = \frac{-r^2}{(r^2 - x^2)^{3/2}}$$
曲率の公式に代入すると
$$\kappa = \frac{|{-r^2}/{(r^2-x^2)^{3/2}}|}{\left(1 + {x^2}/{(r^2-x^2)}\right)^{3/2}} = \frac{r^2/(r^2-x^2)^{3/2}}{(r^2/(r^2-x^2))^{3/2}} = \frac{r^2/(r^2-x^2)^{3/2}}{r^3/(r^2-x^2)^{3/2}} = \frac{1}{r}$$
つまり、半径 $r$ の円の曲率はどの点でも $\kappa = 1/r$ です。 これは直観と一致します。半径が小さい円ほど「急カーブ」であり、曲率は大きくなります。 逆に半径が大きくなると曲率は小さくなり、$r \to \infty$ で $\kappa \to 0$(直線に近づく)となります。
誤解:「$f''(x)$ が大きいほど曲がっている」と考えがちですが、これは正確ではありません。
正確には:$f''(x)$ はあくまで $y$ 方向の加速度であり、曲線の傾きが急なとき、$f''$ が大きくても曲率は小さくなりえます。 例えば $y = x^3$ の $x = 10$ では $f''(10) = 60$ と大きいですが、$f'(10) = 300$ なので曲率は $\kappa = 60/(1+90000)^{3/2} \approx 2.2 \times 10^{-6}$ と非常に小さくなります。 曲率の公式の分母 $(1+f'^2)^{3/2}$ が、傾きの効果を正しく補正しています。
ここまでで、曲率の定義と計算公式を得ました。円の曲率が $1/r$ であることから、$\kappa$ の逆数は「曲線がその点でどの程度の大きさの円に似ているか」を表していると予想できます。 次のセクションでは、この逆数(曲率半径)と接触円の関係を正確に述べます。
セクション4で、半径 $r$ の円の曲率が $\kappa = 1/r$ であることを確認しました。 この関係を逆に使い、任意の曲線の各点での曲率 $\kappa$ に対して
$$\rho = \frac{1}{\kappa}$$
を曲率半径(radius of curvature)と定義します。$\rho$ は、その点での曲線の曲がり具合と同じ曲がり具合を持つ円の半径です。
曲線 $y = f(x)$ 上の点 $P$ を考えます。点 $P$ における接線は、曲線を1次近似する直線です。 では、曲線を「2次近似」する円は何でしょうか。
点 $P$ で曲線に接し(同じ接線を持ち)、かつ同じ曲率を持つ円を接触円(osculating circle)と呼びます。 「osculating」はラテン語で「キスする」を意味し、接触円は曲線に「ぴったり寄り添う」円です。
接触円の中心は、点 $P$ から法線方向に曲率半径 $\rho = 1/\kappa$ だけ離れた点にあります。 この中心を曲率中心と呼びます。
接触円は、接線を「直線による1次近似」とするならば「円による2次近似」に相当します。 接線は点 $P$ での位置と傾き($f(a)$ と $f'(a)$)を共有しますが、接触円はさらに曲がり具合($f''(a)$ に関連する曲率)まで共有します。
曲線の各点における近似には階層があります。
0次近似:点 $P$ 自身(位置のみ一致)
1次近似:接線(位置と傾きが一致)
2次近似:接触円(位置と傾きと曲率が一致)
曲率とは、この2次近似を決定するために必要な量です。テイラー展開が多項式で関数を近似するように、接触円は円で曲線を近似します。
$y = x^2$ の頂点 $(0, 0)$ での曲率を求めます。$f'(x) = 2x$, $f''(x) = 2$ なので
$$\kappa(0) = \frac{|f''(0)|}{(1+f'(0)^2)^{3/2}} = \frac{2}{1} = 2$$
したがって曲率半径は $\rho = 1/2$ です。 頂点 $(0,0)$ での法線は $y$ 軸(鉛直方向)であり、放物線は上に凸ではなく下に凸($f'' > 0$)なので、曲率中心は $(0, 1/2)$ にあります。 つまり、接触円は中心 $(0, 1/2)$、半径 $1/2$ の円です。
この円の方程式は $x^2 + (y - 1/2)^2 = 1/4$、すなわち $y = 1/2 - \sqrt{1/4 - x^2}$(下半分)です。 $x$ が小さいとき $y \approx x^2$ となることが確認でき、放物線の頂点付近では接触円が曲線をよく近似していることがわかります。
ここまでで、曲率半径と接触円の幾何学的意味を理解しました。接触円は「曲線に最もよくフィットする円」であり、その半径は曲率の逆数です。 次のセクションでは、具体的な曲線に対して曲率を計算し、応用例を見ていきます。
放物線 $y = ax^2$($a > 0$)の曲率を一般に求めます。$f'(x) = 2ax$, $f''(x) = 2a$ より
$$\kappa(x) = \frac{2a}{(1 + 4a^2x^2)^{3/2}}$$
この式からわかることを整理します。
楕円 $\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1$($a > b > 0$)の上半分を $y = \dfrac{b}{a}\sqrt{a^2 - x^2}$ と表します。計算すると
$$y' = \frac{-bx}{a\sqrt{a^2 - x^2}}, \quad y'' = \frac{-ab}{(a^2 - x^2)^{3/2}}$$
曲率の公式に代入して整理すると
$$\kappa = \frac{ab}{\left(\dfrac{b^2 x^2}{a^2} + \dfrac{a^2(a^2 - x^2)}{a^2}\right)^{3/2}} = \frac{ab}{\left(a^2 + \dfrac{(b^2-a^2)x^2}{a^2}\right)^{3/2}}$$
特に重要な2つの点での曲率を求めます。
$a > b$ のとき $a/b^2 > b/a^2$ なので、長軸の端点の方が曲率が大きい(より急に曲がっている)ことがわかります。楕円を手で描いてみると、長軸の端が「尖って」見えるのはこのためです。
高校では、$f''(x) > 0$ のとき下に凸(凹)、$f''(x) < 0$ のとき上に凸(凸)と学びます。 この判定は曲率の視点からどう見えるでしょうか。
曲率の公式 $\kappa = |f''|/(1+f'^2)^{3/2}$ の分母は常に正なので、曲率の「向き」は $f''(x)$ の符号で決まります。 実は、絶対値を取る前の符号付き曲率
$$\kappa_s = \frac{f''(x)}{(1+f'(x)^2)^{3/2}}$$
を考えると、$\kappa_s > 0$ が下に凸、$\kappa_s < 0$ が上に凸に対応します。 $f''(x)$ の符号は曲線の凹凸を判定しますが、$f''(x)$ の大きさは曲がりの強さを正しく反映しません(セクション4の pitfall-box 参照)。 曲がりの強さを正確に表すのは曲率 $\kappa$ であり、凹凸の方向は $f''$ の符号で決まるというのが統一的な理解です。
曲率は純粋数学だけでなく、さまざまな実世界の設計に活用されています。
曲線が $\mathbf{r}(t) = (x(t), y(t))$ と媒介変数表示されている場合の曲率公式も導出できます。
弧長パラメータへの変換を経由すると、次の公式が得られます。
$$\kappa = \frac{|x'y'' - y'x''|}{(x'^2 + y'^2)^{3/2}}$$
ここで $'$ は $t$ による微分です。分子の $x'y'' - y'x''$ は速度ベクトルと加速度ベクトルの外積(の $z$ 成分)に相当し、「接線方向からの逸脱の度合い」を表しています。分母は速さの3乗で、弧長への変換に対応する正規化因子です。
例えば、円 $x = r\cos t$, $y = r\sin t$ に適用すると、$x' = -r\sin t$, $y' = r\cos t$, $x'' = -r\cos t$, $y'' = -r\sin t$ より
$$\kappa = \frac{|(-r\sin t)(-r\sin t) - (r\cos t)(-r\cos t)|}{(r^2)^{3/2}} = \frac{r^2}{r^3} = \frac{1}{r}$$
となり、セクション4の結果と一致します。
Q1. 弧長パラメータ $s$ で表された曲線 $\mathbf{r}(s)$ において、$|d\mathbf{r}/ds|$ の値はいくつですか。その理由も簡潔に述べてください。
Q2. 半径5の円の曲率 $\kappa$ と曲率半径 $\rho$ をそれぞれ求めてください。
Q3. 曲率の明示公式 $\kappa = |f''|/(1+f'^2)^{3/2}$ において、$f'(x) = 0$ のとき $\kappa$ はどうなりますか。これはどのような状況に対応しますか。
Q4. 接触円とは何ですか。接線との違いを「近似の次数」の観点から説明してください。
曲線 $y = \ln(\cos x)$ の $0 \le x \le \pi/4$ における弧長 $L$ を求めてください。
$y' = -\tan x$ より
$$L = \int_0^{\pi/4}\sqrt{1+\tan^2 x}\,dx = \int_0^{\pi/4}\frac{1}{\cos x}\,dx = \int_0^{\pi/4}\sec x\,dx$$
$\displaystyle\int \sec x\,dx = \ln|\sec x + \tan x| + C$ を用いて
$$L = \left[\ln|\sec x + \tan x|\right]_0^{\pi/4} = \ln(\sqrt{2}+1) - \ln 1 = \ln(\sqrt{2}+1)$$
$\ln(\sqrt{2}+1) \approx 0.8814$ です。
曲線 $y = e^x$ の $x = 0$ における曲率 $\kappa$ と曲率半径 $\rho$ を求めてください。
$f(x) = e^x$ より $f'(x) = e^x$, $f''(x) = e^x$ です。$x = 0$ で $f'(0) = 1$, $f''(0) = 1$ なので
$$\kappa = \frac{|1|}{(1+1)^{3/2}} = \frac{1}{2\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{4}$$
曲率半径は $\rho = 1/\kappa = 2\sqrt{2} \approx 2.828$ です。
放物線 $y = x^2$ 上で曲率が最大となる点を求め、その点での曲率と曲率半径を計算してください。また、$x \to \pm\infty$ での曲率の振る舞いを述べてください。
$f'(x) = 2x$, $f''(x) = 2$ より $\kappa(x) = \dfrac{2}{(1+4x^2)^{3/2}}$ です。
分母 $(1+4x^2)^{3/2}$ は $x = 0$ で最小値1をとるので、$\kappa$ は $x = 0$ で最大値をとります。
$$\kappa(0) = 2, \quad \rho(0) = \frac{1}{2}$$
$x \to \pm\infty$ のとき $(1+4x^2)^{3/2} \to \infty$ なので $\kappa \to 0$ です。放物線は頂点付近で最も急に曲がり、頂点から離れるほど直線に近づきます。
曲線 $y = \sin x$ の $x = 0$ における接触円の中心と半径を求めてください。
$f(x) = \sin x$ より $f'(x) = \cos x$, $f''(x) = -\sin x$ です。
$x = 0$ で $f(0) = 0$, $f'(0) = 1$, $f''(0) = 0$ なので $\kappa(0) = 0$ です。
曲率が0ということは、この点での接触円の半径は $\rho = \infty$ であり、接触「円」は接線(直線)に退化します。
実際、$x = 0$ は $\sin x$ の変曲点であり、凹凸が切り替わる点です。変曲点では曲線は局所的に直線のように振る舞うため、曲率が0になることは幾何学的にも自然です。
代わりに $x = \pi/2$ で計算すると、$f'(\pi/2) = 0$, $f''(\pi/2) = -1$ より $\kappa = 1$ で、曲率半径は $\rho = 1$ です。接触円の中心は $(\pi/2, 0)$(点 $(\pi/2, 1)$ から法線方向に $\rho = 1$ だけ下がった点)であり、半径1の円です。
サイクロイド $x = t - \sin t$, $y = 1 - \cos t$($0 < t < 2\pi$)の曲率 $\kappa(t)$ を求めてください。また、$t = \pi$ における曲率と曲率半径を計算してください。
(ヒント:媒介変数表示での曲率公式 $\kappa = |x'y'' - y'x''|/(x'^2+y'^2)^{3/2}$ を使ってください。)
$x' = 1 - \cos t$, $y' = \sin t$, $x'' = \sin t$, $y'' = \cos t$ より
$$x'y'' - y'x'' = (1-\cos t)\cos t - \sin t \cdot \sin t = \cos t - \cos^2 t - \sin^2 t = \cos t - 1$$
$$x'^2 + y'^2 = (1-\cos t)^2 + \sin^2 t = 1 - 2\cos t + \cos^2 t + \sin^2 t = 2(1 - \cos t)$$
半角の公式 $1 - \cos t = 2\sin^2(t/2)$ を用いると $x'^2 + y'^2 = 4\sin^2(t/2)$ です。また $\cos t - 1 = -2\sin^2(t/2)$ なので
$$\kappa = \frac{2\sin^2(t/2)}{(4\sin^2(t/2))^{3/2}} = \frac{2\sin^2(t/2)}{8|\sin(t/2)|^3} = \frac{1}{4|\sin(t/2)|}$$
$t = \pi$ のとき $\sin(\pi/2) = 1$ なので
$$\kappa(\pi) = \frac{1}{4}, \quad \rho(\pi) = 4$$
サイクロイドの頂点($t = \pi$)での曲率半径は4であり、これは生成する円の直径の2倍に等しくなっています。