高校数学では、漸化式 $a_{n+1} = f(a_n)$ に対して「特性方程式」や「置き換え」などのテクニックを使い、一般項を求めます。
しかし、なぜ特性方程式で $a_{n+1} = \alpha$ とおくのか、なぜある漸化式の数列は収束し、別の数列は発散するのか、その理由はあまり説明されません。
大学数学では、漸化式 $a_{n+1} = f(a_n)$ を離散力学系(discrete dynamical system)として捉えます。
この視点では、関数 $f$ を繰り返し適用する操作が「時間発展」に対応し、$f(p) = p$ を満たす点 $p$(固定点)が数列の収束先の候補になります。
そして、固定点における導関数 $f'(p)$ の絶対値が $1$ より小さいか大きいかで、その固定点が数列を引き寄せるか弾き飛ばすかが決まります。
高校で学ぶ特性方程式の背後には、この固定点の理論が隠れています。
高校数学Bでは、数列 $\{a_n\}$ の隣り合う項の関係を表す式を漸化式と呼びます。 典型的なものとして、1次の漸化式
$$a_{n+1} = pa_n + q \quad (p \neq 0)$$
があります。$q = 0$ なら等比数列、$p = 1$ なら等差数列ですが、一般の場合には「特性方程式」と呼ばれるテクニックを使います。
具体的には、$\alpha = p\alpha + q$ を満たす $\alpha$ を求め、漸化式を
$$a_{n+1} - \alpha = p(a_n - \alpha)$$
と変形します。$b_n = a_n - \alpha$ とおくと $b_{n+1} = pb_n$ となり、$\{b_n\}$ は公比 $p$ の等比数列になるので一般項が求まります。
この手法は確かに機能しますが、いくつかの疑問が残ります。なぜ $\alpha = p\alpha + q$ という方程式を解くのか。 $|p| < 1$ のとき数列が $\alpha$ に収束し、$|p| > 1$ のとき発散するのはなぜか。 そして、$a_{n+1} = f(a_n)$ の形でもっと複雑な関数 $f$ が現れたとき、同じような議論はできるのか。 次のセクションでは、これらの問いに一挙に答える枠組みを導入します。
大学数学では、漸化式 $a_{n+1} = f(a_n)$ を離散力学系と呼ばれる枠組みで捉えます。 この見方では、関数 $f$ は「状態を次の時刻の状態に移す規則」であり、初期値 $a_1$ から出発して $f$ を繰り返し適用する操作が数列を生成します。
$$a_1 \xrightarrow{f} a_2 \xrightarrow{f} a_3 \xrightarrow{f} \cdots$$
この視点の核心は、数列の長期的なふるまい(収束するか、発散するか、振動するか)が、関数 $f$ の固定点とその安定性で決まるという点です。
この記事を読み終えると、以下のことができるようになります。
1. 漸化式 $a_{n+1} = f(a_n)$ の固定点を求め、その幾何学的な意味を説明できる
2. 固定点における $|f'(p)|$ の値から、数列の収束・発散を判定できる
3. 高校の特性方程式が「固定点を求めている」ことを理解し、収束条件 $|p| < 1$ の意味を説明できる
4. 一般項が求まらない漸化式に対しても、長期的なふるまいを分析できる
ここまでで、大学の視点では漸化式を「離散力学系」として捉え、固定点とその安定性が鍵になることがわかりました。 次のセクションでは、まず固定点の定義を正確に述べ、具体例で確認します。
関数 $f$ を繰り返し適用する操作を考えるとき、「適用しても動かない点」は特別な意味を持ちます。 もし数列 $\{a_n\}$ がある値 $p$ に収束するなら、十分大きな $n$ で $a_n \approx p$ かつ $a_{n+1} \approx p$ なので、$a_{n+1} = f(a_n)$ から
$$p = f(p)$$
が成り立つはずです。つまり、数列の収束先は必ず $f$ の固定点です。これが固定点に注目する理由です。
関数 $f$ に対して、
$$f(p) = p$$
を満たす点 $p$ を $f$ の固定点(fixed point)と呼ぶ。
幾何学的には、$y = f(x)$ のグラフと直線 $y = x$ の交点の $x$ 座標が固定点です。
高校でおなじみの漸化式 $a_{n+1} = 2a_n - 3$ を考えます。$f(x) = 2x - 3$ とおくと、固定点は
$$f(p) = p \iff 2p - 3 = p \iff p = 3$$
で $p = 3$ です。これは、高校の特性方程式 $\alpha = 2\alpha - 3$ を解くことと全く同じです。 つまり、特性方程式とは固定点を求める方程式にほかなりません。
漸化式 $\displaystyle a_{n+1} = \frac{3a_n + 2}{a_n + 2}$ を考えます。$\displaystyle f(x) = \frac{3x + 2}{x + 2}$ の固定点は
$$\frac{3p + 2}{p + 2} = p \iff 3p + 2 = p(p + 2) = p^2 + 2p \iff p^2 - p - 2 = 0$$
これを解くと $(p-2)(p+1) = 0$ なので $p = 2$ または $p = -1$ です。 固定点が2つあるとき、数列がどちらに収束するか(あるいはどちらにも収束しないか)は、次のセクションで導入する「安定性」で判定できます。
誤解:固定点が存在すれば数列はそこに収束する
正確:固定点は数列の収束先の「候補」にすぎません。収束するかどうかは安定性の判定が必要です。例えば $a_{n+1} = 2a_n - 3$ の固定点は $p = 3$ ですが、$a_1 \neq 3$ のとき数列は $3$ から離れていきます($|f'(3)| = 2 > 1$ なので不安定)。
ここまでで、固定点の定義と求め方がわかりました。しかし、固定点が見つかっても、数列が実際にそこに収束するかどうかは別問題です。 次のセクションでは、固定点における導関数の値を使って、収束・発散を判定する方法を導入します。
固定点 $p$ の近くから出発した数列が $p$ に近づいていくなら、$p$ は安定な固定点です。 逆に、$p$ から離れていくなら不安定です。
この安定・不安定を決めるのが、固定点における導関数 $f'(p)$ です。 直感的に理解するために、$a_n$ が固定点 $p$ の近くにあるときの状況を考えます。 $a_n$ と $p$ の差を $e_n = a_n - p$ とおくと($e_n$ は固定点からの「ずれ」を表します)、
$$e_{n+1} = a_{n+1} - p = f(a_n) - f(p)$$
です。ここで、$a_n = p + e_n$ が $p$ に近い($e_n$ が小さい)とき、$f$ の1次近似(微分の定義)を使うと
$$f(p + e_n) \approx f(p) + f'(p) \cdot e_n = p + f'(p) \cdot e_n$$
が得られます。したがって
$$e_{n+1} \approx f'(p) \cdot e_n$$
となります。これは、固定点からのずれ $e_n$ が毎回おおよそ $f'(p)$ 倍されることを意味します。
$f$ が微分可能で、$f(p) = p$ を満たす固定点 $p$ に対して:
$|f'(p)| < 1$ ならば $p$ は安定(attracting)
$|f'(p)| > 1$ ならば $p$ は不安定(repelling)
$|f'(p)| = 1$ のときは、この判定法だけでは決定できません(高次の項の分析が必要)。 安定な固定点は、十分近い初期値から出発した数列を引き寄せます。不安定な固定点は、ごくわずかでもずれると数列を弾き飛ばします。
例1:$f(x) = 2x - 3$(固定点 $p = 3$)
$f'(x) = 2$ なので $|f'(3)| = 2 > 1$。固定点 $p = 3$ は不安定です。
実際、$a_1 = 4$ として計算すると $a_2 = 5$, $a_3 = 7$, $a_4 = 11, \ldots$ と $3$ から急速に離れていきます。
例2:$\displaystyle f(x) = \frac{1}{2}x + 1$(固定点 $p = 2$)
$f'(x) = \dfrac{1}{2}$ なので $|f'(2)| = \dfrac{1}{2} < 1$。固定点 $p = 2$ は安定です。
$a_1 = 0$ として計算すると $a_2 = 1$, $a_3 = \dfrac{3}{2}$, $a_4 = \dfrac{7}{4}, \ldots$ と $2$ に近づいていきます。
一般項は $a_n = 2 - 2 \cdot \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}$ であり、$n \to \infty$ で $a_n \to 2$ です。
例3:$\displaystyle f(x) = \frac{3x + 2}{x + 2}$(固定点 $p = 2$ と $p = -1$)
$f'(x)$ を計算します。商の微分法を使って
$$f'(x) = \frac{3(x + 2) - (3x + 2)}{(x + 2)^2} = \frac{4}{(x + 2)^2}$$
$|f'(2)| = \dfrac{4}{16} = \dfrac{1}{4} < 1$ なので $p = 2$ は安定。
$|f'(-1)| = \dfrac{4}{1} = 4 > 1$ なので $p = -1$ は不安定。
したがって、$a_1 > -1$ の範囲で初期値を選べば、数列は安定な固定点 $p = 2$ に収束します。
高校で学ぶ $a_{n+1} = pa_n + q$ の特性方程式 $\alpha = p\alpha + q$ は、$f(x) = px + q$ の固定点条件そのものです。
そして、変形後の等比数列の公比 $p$ は、固定点における導関数 $f'(\alpha) = p$ にほかなりません。
$|p| < 1$ で収束、$|p| > 1$ で発散という高校の結論は、固定点の安定性判定の特殊ケースです。
ここまでで、固定点の安定性を導関数の値で判定できることを、具体例を通じて確認しました。 次のセクションでは、この判定法がなぜ正しいのかを、数学的に証明します。
セクション4では、$e_{n+1} \approx f'(p) \cdot e_n$ という近似を使って安定性を直感的に説明しました。 ここでは、$|f'(p)| < 1$ のとき数列が実際に固定点に収束することを証明します。
示すこと:$f$ が固定点 $p$ の近くで微分可能で $|f'(p)| < 1$ ならば、$p$ に十分近い初期値 $a_1$ から出発した数列 $\{a_n\}$ は $p$ に収束する。
証明の方針:$|f'(p)| < 1$ なので、$|f'(p)| < r < 1$ を満たす $r$ がとれます。固定点の近くで $|a_{n+1} - p| \leq r|a_n - p|$ が成り立つことを示し、$r^n \to 0$ から収束を導きます。
ステップ1:$|f'(p)| < r < 1$ を満たす定数 $r$ を1つ固定します。例えば $r = \dfrac{|f'(p)| + 1}{2}$ ととれば、$|f'(p)| < r < 1$ が成り立ちます。
ステップ2:$f'$ の連続性($f$ が微分可能であることから従います)を使います。$|f'(x)| \leq r$ が成り立つような $p$ の近傍 $(p - \delta, p + \delta)$ が存在します。 これは、導関数の値が $p$ から少しずれても急に大きくは変わらないということです。
ステップ3:初期値 $a_1$ が $|a_1 - p| < \delta$ を満たすとします。平均値の定理により、$a_1$ と $p$ の間のある点 $c_1$ が存在して
$$|a_2 - p| = |f(a_1) - f(p)| = |f'(c_1)| \cdot |a_1 - p| \leq r \cdot |a_1 - p|$$
が成り立ちます。ここで $|f'(c_1)| \leq r$ は、$c_1$ が $(p - \delta, p + \delta)$ にあることから成り立ちます。
$|a_2 - p| \leq r|a_1 - p| < r\delta < \delta$ なので、$a_2$ もまた $(p - \delta, p + \delta)$ に含まれます。
ステップ4:同じ議論を繰り返すと(数学的帰納法を使って)
$$|a_n - p| \leq r^{n-1} |a_1 - p|$$
が全ての $n \geq 1$ で成り立ちます。
ステップ5:$0 < r < 1$ なので $r^{n-1} \to 0$($n \to \infty$)です。よって
$$|a_n - p| \leq r^{n-1} |a_1 - p| \to 0$$
となり、$a_n \to p$ が示されました。 $\square$
この証明のポイントは、平均値の定理を使って近似ではなく厳密な不等式 $|a_{n+1} - p| \leq r|a_n - p|$ を得たことです。 高校数学IIIで学ぶ平均値の定理が、ここで本質的な役割を果たしています。
$|f'(p)| = 1$ のときは、安定にも不安定にもなりえます。例えば $f(x) = x + x^2$ は固定点 $p = 0$ で $f'(0) = 1$ ですが、$a_1 > 0$ なら $a_n \to \infty$ に発散します。一方、$f(x) = x - x^3$ も $f'(0) = 1$ ですが、$|a_1|$ が十分小さければ $a_n \to 0$ に収束します。このような境界ケースでは、$f'(p)$ だけでなく高次の導関数($f''(p)$, $f'''(p)$ など)の情報が必要になります。
ここまでで、安定性判定の理論的な裏付けが得られました。 次のセクションでは、この判定法を使って、高校で扱うさまざまな漸化式を統一的に分析してみます。
$f(x) = px$ とおくと、固定点は $px = x$ より $p = 1$ でなければ $x = 0$ のみです。 $f'(x) = p$ なので $|f'(0)| = |p|$。
$\displaystyle f(x) = \frac{x + 4}{2} = \frac{1}{2}x + 2$ とおくと、固定点は $\dfrac{p + 4}{2} = p$ より $p = 4$ です。 $f'(x) = \dfrac{1}{2}$ なので $|f'(4)| = \dfrac{1}{2} < 1$。固定点 $p = 4$ は安定です。
$a_1 = 0$ から計算すると $a_2 = 2$, $a_3 = 3$, $a_4 = 3.5$, $a_5 = 3.75$, $\ldots$ と $4$ に近づいていきます。 一般項は $a_n = 4 - 4 \cdot \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}$ であり、確かに $a_n \to 4$ です。
この漸化式は高校でも扱うことがありますが、一般項を求めるのは困難です。 しかし、力学系の視点なら収束先を予測できます。
$f(x) = \sqrt{2 + x}$ とおくと、固定点は $\sqrt{2 + p} = p$($p \geq 0$)です。 両辺を2乗して $2 + p = p^2$、すなわち $p^2 - p - 2 = 0$ を解くと $(p-2)(p+1) = 0$ で、$p \geq 0$ より $p = 2$ です。
$f'(x) = \dfrac{1}{2\sqrt{2 + x}}$ なので $|f'(2)| = \dfrac{1}{2\sqrt{4}} = \dfrac{1}{4} < 1$。固定点 $p = 2$ は安定です。
$a_1 = 0$ から計算すると:$a_2 = \sqrt{2} \approx 1.414$, $a_3 = \sqrt{2 + \sqrt{2}} \approx 1.848$, $a_4 \approx 1.962$, $a_5 \approx 1.990, \ldots$ と $2$ に収束していきます。 一般項は求まりませんが、$|f'(2)| = \dfrac{1}{4}$ という情報から、固定点からのずれが毎ステップおよそ $\dfrac{1}{4}$ 倍に縮むこともわかります。
$\sqrt{A}$ を計算する有名なアルゴリズムにニュートン法(Newton's method)があります。 これは漸化式
$$a_{n+1} = \frac{1}{2}\left(a_n + \frac{A}{a_n}\right)$$
で定義されます。$\displaystyle f(x) = \frac{1}{2}\left(x + \frac{A}{x}\right)$ とおくと、固定点は
$$\frac{1}{2}\left(p + \frac{A}{p}\right) = p \iff p + \frac{A}{p} = 2p \iff \frac{A}{p} = p \iff p^2 = A$$
より $p = \sqrt{A}$($p > 0$)です。導関数は
$$f'(x) = \frac{1}{2}\left(1 - \frac{A}{x^2}\right)$$
なので $f'(\sqrt{A}) = \dfrac{1}{2}\left(1 - \dfrac{A}{A}\right) = 0$ です。
$|f'(\sqrt{A})| = 0 < 1$ ですから、固定点 $\sqrt{A}$ は安定です。しかも $f'(p) = 0$ ということは、ずれの縮小が1次の項では起きず、2次以上の項で起きることを意味します。 実際、このとき $|e_{n+1}| \approx C|e_n|^2$ となり、収束は非常に速くなります。例えば $A = 2$, $a_1 = 1$ で計算すると
$a_2 = 1.5$, $a_3 = 1.41\overline{6}$, $a_4 = 1.41421356\ldots$ となり、わずか4ステップで $\sqrt{2} = 1.41421356\ldots$ の8桁が確定します。
離散力学系の振る舞いを視覚的に理解する方法として、コブウェブ図(cobweb diagram)があります。$y = f(x)$ のグラフと直線 $y = x$ を描き、初期値 $a_1$ から出発して、$(a_1, a_2) \to (a_2, a_2) \to (a_2, a_3) \to (a_3, a_3) \to \cdots$ と縦横に線を引くことで、数列の動きをたどることができます。安定な固定点では線が渦を巻くように(あるいはジグザグしながら)固定点に近づき、不安定な固定点では離れていく様子が見えます。
このように、固定点の安定性判定は、一般項が明示的に求まらない漸化式に対しても、数列の長期的なふるまいを予測する強力な道具になります。
Q1. 漸化式 $a_{n+1} = 3a_n - 4$ の固定点を求めてください。
Q2. Q1の固定点 $p = 2$ は安定ですか、不安定ですか。
Q3. $\displaystyle a_{n+1} = \frac{a_n + 6}{3}$ の固定点を求め、安定性を判定してください。
Q4. 高校の特性方程式 $\alpha = p\alpha + q$ は、離散力学系の用語では何を求めていますか。
次の各関数の固定点をすべて求めてください。
(1) $f(x) = -x + 6$
(2) $\displaystyle f(x) = \frac{2x + 3}{x + 1}$
(3) $f(x) = x^2 - 2$
(1) $-p + 6 = p$ より $p = 3$
(2) $\dfrac{2p + 3}{p + 1} = p$ より $2p + 3 = p^2 + p$、$p^2 - p - 3 = 0$。解の公式から $p = \dfrac{1 \pm \sqrt{13}}{2}$
(3) $p^2 - 2 = p$ より $p^2 - p - 2 = 0$、$(p - 2)(p + 1) = 0$ から $p = 2$ または $p = -1$
漸化式 $a_{n+1} = a_n^2 - 2$ について、以下の問いに答えてください。
(1) 固定点をすべて求めてください。
(2) 各固定点の安定性を判定してください。
(3) $a_1 = 1.9$ のとき、数列の最初の5項を計算し、収束先を予測してください。
(1) $f(x) = x^2 - 2$ として $p^2 - 2 = p$ より $p^2 - p - 2 = 0$、$(p-2)(p+1) = 0$。固定点は $p = 2$ と $p = -1$。
(2) $f'(x) = 2x$ なので、$|f'(2)| = 4 > 1$(不安定)、$|f'(-1)| = 2 > 1$(不安定)。どちらの固定点も不安定です。
(3) $a_1 = 1.9$, $a_2 = 1.61$, $a_3 = 0.5921$, $a_4 = -1.649\ldots$, $a_5 = 0.720\ldots$ 数列は不規則に変動し、どちらの固定点にも収束しません。(実はこの漸化式はカオス的な振る舞いを示します。)
$\sqrt{5}$ をニュートン法で求めます。漸化式 $\displaystyle a_{n+1} = \frac{1}{2}\left(a_n + \frac{5}{a_n}\right)$ について、以下の問いに答えてください。
(1) 固定点を求め、安定性を判定してください。
(2) $a_1 = 2$ として $a_2$, $a_3$ を分数で求めてください。
(3) $a_3$ と $\sqrt{5}$ の差を小数で評価してください($\sqrt{5} = 2.2360679\ldots$)。
(1) 固定点は $p = \sqrt{5}$($p > 0$)。$f'(x) = \dfrac{1}{2}\left(1 - \dfrac{5}{x^2}\right)$ なので $f'(\sqrt{5}) = \dfrac{1}{2}(1 - 1) = 0$。$|f'(\sqrt{5})| = 0 < 1$ なので安定(超安定)。
(2) $a_2 = \dfrac{1}{2}\left(2 + \dfrac{5}{2}\right) = \dfrac{9}{4} = 2.25$
$a_3 = \dfrac{1}{2}\left(\dfrac{9}{4} + \dfrac{5 \cdot 4}{9}\right) = \dfrac{1}{2}\left(\dfrac{9}{4} + \dfrac{20}{9}\right) = \dfrac{1}{2} \cdot \dfrac{81 + 80}{36} = \dfrac{161}{72} \approx 2.23611\ldots$
(3) $a_3 - \sqrt{5} \approx 2.23611 - 2.23607 = 0.00004\ldots$ わずか2ステップで小数第4位まで正しい値が得られています。
$f(x) = \cos x$ について、以下の問いに答えてください。
(1) $f$ の固定点、すなわち $\cos p = p$ を満たす $p$ が区間 $(0, 1)$ にただ1つ存在することを、中間値の定理を用いて示してください。
(2) その固定点が安定であることを示してください。
(3) $a_1 = 0$ として、漸化式 $a_{n+1} = \cos a_n$ の最初の5項を電卓で計算し、収束の様子を確認してください。
(1) $g(x) = \cos x - x$ とおきます。$g(0) = 1 > 0$, $g(1) = \cos 1 - 1 \approx 0.5403 - 1 = -0.4597 < 0$ です。$g$ は連続関数なので、中間値の定理により $g(p) = 0$、すなわち $\cos p = p$ を満たす $p \in (0, 1)$ が存在します。一意性は $g'(x) = -\sin x - 1 < 0$($x \in (0, 1)$ で $\sin x > 0$)より $g$ が狭義単調減少であることから従います。
(2) $f'(x) = -\sin x$ なので、固定点 $p \approx 0.7391$ において $|f'(p)| = |\sin p| \approx \sin(0.7391) \approx 0.6736 < 1$ です。したがって安定です。
(3) $a_1 = 0$, $a_2 = \cos 0 = 1$, $a_3 = \cos 1 \approx 0.5403$, $a_4 = \cos(0.5403) \approx 0.8576$, $a_5 = \cos(0.8576) \approx 0.6543$。振動しながら固定点 $p \approx 0.7391$ に近づいていきます($f'(p) < 0$ なので固定点の周りを交互に行き来します)。