ディスク法では回転体を「薄い円板の積み重ね」と見ました。ここでは別の視点 ── 回転体を「薄い円筒の入れ子」と見る方法を学びます。バウムクーヘンの年輪のように同心円筒を重ねる発想から、「バウムクーヘン積分」と呼ばれます。逆関数が求めにくいとき、この方法は強力な武器になります。
バウムクーヘン(年輪ケーキ)を思い浮かべてください。外側から1層ずつ剥がすと、薄い円筒の殻が次々と現れます。回転体をこの「薄い円筒殻」の集まりと見なすのがバウムクーヘン積分(殻積分、shell method)の考え方です。
ディスク法:回転軸に垂直に切る → 断面は円 → 回転軸方向に積分
バウムクーヘン法:回転軸に平行に切る → 薄い円筒殻 → 回転軸に垂直な方向に積分
同じ回転体を2通りの方法で分割しているだけです。どちらを使っても正しい体積が得られます。
y 軸まわりの回転体を考えます。x 座標が $x$ の位置で y 軸に平行に薄く切ると、高さ $f(x)$、半径 $x$、厚さ $dx$ の薄い円筒殻が得られます。この円筒殻の体積は、展開すると薄い直方体になり、その体積は近似的に「円周 $\times$ 高さ $\times$ 厚さ」= $2\pi x \cdot f(x) \cdot dx$ です。
✗ 誤:バウムクーヘン積分は大学の内容だから高校では使えない
○ 正:入試では明示的に「殻積分」とは言わないが、$V = 2\pi\int xf(x)\,dx$ の形で出題される
教科書に載っていないことが多いですが、入試では「断面積の積分」の一般論として認められる手法です。ディスク法で計算困難な問題への強力な武器です。
y 軸まわりの回転体について、バウムクーヘン積分の公式を導出します。
$y = f(x) \ge 0$($a \le x \le b$, $0 \le a < b$)と x 軸で囲まれた領域を y 軸まわりに回転させます。
x 座標が $x$ から $x + dx$ の範囲にある薄い短冊を y 軸まわりに回転させると、薄い円筒殻ができます。
この円筒殻の体積は:
$$dV = \pi(x + dx)^2 f(x) - \pi x^2 f(x) = \pi f(x)\left[(x+dx)^2 - x^2\right]$$
$$= \pi f(x)(2x\,dx + (dx)^2) \approx 2\pi x f(x)\,dx$$
($(dx)^2$ は微小量の2乗なので無視できます。)
これを $a$ から $b$ まで積分すると:
$$V = \int_a^b 2\pi x f(x)\,dx = 2\pi\int_a^b x f(x)\,dx$$
$y = f(x) \ge 0$($a \le x \le b$, $0 \le a$)と x 軸で囲まれた領域を y 軸まわりに1回転させた立体の体積:
$$V = 2\pi\int_a^b x f(x)\,dx$$
※ $2\pi x$ = 半径 $x$ の円筒殻の円周、$f(x)$ = 殻の高さ、$dx$ = 殻の厚さ。「円周 $\times$ 高さ $\times$ 厚さ」を積み重ねた総和です。
薄い円筒殻を縦に切って展開すると、横の長さが $2\pi x$(円周)、縦の長さが $f(x)$(高さ)の長方形になります。この「展開した長方形の面積 $\times$ 厚さ」が各殻の体積です。
ディスク法では円の面積 $\pi r^2$ が現れましたが、バウムクーヘン法では円周 $2\pi r$ が現れます。これは分割の仕方が異なるためです。
✗ 誤:$V = \pi\int_a^b xf(x)\,dx$($\pi$ が1つ)
○ 正:$V = 2\pi\int_a^b xf(x)\,dx$($2\pi$ が正しい)
ディスク法の $\pi\int\{f(x)\}^2\,dx$ と混同しやすいです。覚え方:ディスク法は「円の面積 $\pi r^2$」だから $\pi$、バウムクーヘン法は「円周 $2\pi r$」だから $2\pi$ です。
ディスク法とバウムクーヘン法は同じ体積を異なる方法で計算するツールです。問題に応じて楽な方を選びましょう。
| 状況 | 推奨する方法 | 理由 |
|---|---|---|
| y 軸まわりで逆関数が簡単 | ディスク法 | $x = f(y)$ が簡単に求まるなら直接的 |
| y 軸まわりで逆関数が困難 | バウムクーヘン法 | $x$ のまま積分できる |
| x 軸まわり(通常) | ディスク法 | $y = f(x)$ をそのまま使える |
| x 軸まわりで $x = g(y)$ が複雑 | バウムクーヘン法(y で殻積分) | $y$ のまま積分できる |
$y = x^2$($0 \le x \le 1$)と x 軸で囲まれた領域を y 軸まわりに回転させた体積を求めます。
ディスク法:$x = \sqrt{y}$、$y: 0 \to 1$ で
$$V = \pi\int_0^1 (\sqrt{y})^2\,dy = \pi\int_0^1 y\,dy = \frac{\pi}{2}$$
バウムクーヘン法:
$$V = 2\pi\int_0^1 x \cdot x^2\,dx = 2\pi\int_0^1 x^3\,dx = 2\pi \cdot \frac{1}{4} = \frac{\pi}{2}$$
同じ答え $\dfrac{\pi}{2}$ が得られます。この例ではどちらも簡単ですが、逆関数が求めにくい場合にバウムクーヘン法が威力を発揮します。
y 軸まわりの回転体を求めるとき、ディスク法は $y = f(x)$ を $x = f^{-1}(y)$ に書き直す必要があります。
一方、バウムクーヘン法では $y = f(x)$ のまま $V = 2\pi\int xf(x)\,dx$ と計算できます。逆関数が存在しない場合や、複雑な場合に特に便利です。
✗ 誤:$V = 2\pi\int_0^1 f(x)\,dx$($x$ が抜けている)
○ 正:$V = 2\pi\int_0^1 x \cdot f(x)\,dx$($x$ と $f(x)$ の積)
被積分関数は「$x$ と $f(x)$ の積」です。$x$ は円筒殻の半径なので、これがないと円周の長さが計算できません。
この問題でディスク法を使おうとすると、$\sin x = y$ の逆関数を求め、さらに区間の分割が必要になり複雑です。バウムクーヘン法なら一発です。
$$V = 2\pi\int_0^{\pi} x\sin x\,dx$$
部分積分を用います。$u = x$, $dv = \sin x\,dx$ とおくと $du = dx$, $v = -\cos x$ より:
$$\int_0^{\pi} x\sin x\,dx = [-x\cos x]_0^{\pi} + \int_0^{\pi}\cos x\,dx = \pi + [\sin x]_0^{\pi} = \pi$$
$$V = 2\pi \cdot \pi = 2\pi^2$$
$y = e^{-x^2}$ の逆関数は $x = \sqrt{-\log y}$ で、これをディスク法で積分するのは困難です。バウムクーヘン法なら:
$$V = 2\pi\int_0^1 x e^{-x^2}\,dx$$
$t = x^2$ と置換すると $dt = 2x\,dx$ より:
$$V = 2\pi\int_0^1 \frac{1}{2}e^{-t}\,dt = \pi[-e^{-t}]_0^1 = \pi(1 - e^{-1}) = \pi\left(1 - \frac{1}{e}\right)$$
$xe^{-x^2}$ という被積分関数の $x$ がちょうど $e^{-x^2}$ の微分に必要な因子になっており、バウムクーヘン法の $x$ が自然に置換積分を助けています。
$\int_0^{\infty}e^{-x^2}\,dx = \dfrac{\sqrt{\pi}}{2}$ は有名なガウス積分で、初等的な不定積分では求められません。しかし $\int xe^{-x^2}\,dx$ なら $x$ の存在により置換積分が可能です。バウムクーヘン積分の公式に現れる $x$ が、このように計算を可能にする「魔法の因子」となることがあります。
$$V = 2\pi\int_1^e x\log x\,dx$$
部分積分で $u = \log x$, $dv = x\,dx$ とおくと $du = \dfrac{1}{x}dx$, $v = \dfrac{x^2}{2}$ より:
$$\int_1^e x\log x\,dx = \left[\frac{x^2}{2}\log x\right]_1^e - \int_1^e \frac{x}{2}\,dx = \frac{e^2}{2} - \frac{1}{2}\left[\frac{x^2}{2}\right]_1^e = \frac{e^2}{2} - \frac{e^2 - 1}{4} = \frac{e^2 + 1}{4}$$
$$V = 2\pi \cdot \frac{e^2 + 1}{4} = \frac{\pi(e^2 + 1)}{2}$$
2曲線 $y = f(x)$ と $y = g(x)$($f(x) \ge g(x) \ge 0$, $a \le x \le b$)に挟まれた領域を y 軸まわりに回転させる場合、各円筒殻の高さは $f(x) - g(x)$ になります。
$f(x) \ge g(x) \ge 0$($a \le x \le b$, $0 \le a$)のとき、2曲線間の領域を y 軸まわりに回転:
$$V = 2\pi\int_a^b x\left[f(x) - g(x)\right]\,dx$$
※ 円筒殻の高さが $f(x) - g(x)$ に変わっただけです。ディスク法のように「2乗の差」ではなく、単純に「高さの差」です。
✗ 誤:$V = 2\pi\int x\left[\{f(x)\}^2 - \{g(x)\}^2\right]\,dx$
○ 正:$V = 2\pi\int x\left[f(x) - g(x)\right]\,dx$
ディスク法では「面積の差」($\pi R^2 - \pi r^2$)なので2乗の差です。バウムクーヘン法では「高さの差」なので、引き算してから $x$ をかけます。2つの方法で「差」の取り方が異なるのは、分割の仕方が違うからです。
$y = x^2$ と $y = 2x$($x \ge 0$)で囲まれた領域を y 軸まわりに回転させます。
交点:$x^2 = 2x$ より $x = 0, 2$。$0 \le x \le 2$ で $2x \ge x^2$。
$$V = 2\pi\int_0^2 x(2x - x^2)\,dx = 2\pi\int_0^2 (2x^2 - x^3)\,dx$$
$$= 2\pi\left[\frac{2x^3}{3} - \frac{x^4}{4}\right]_0^2 = 2\pi\left(\frac{16}{3} - 4\right) = 2\pi \cdot \frac{4}{3} = \frac{8\pi}{3}$$
前回の記事でディスク法で求めた結果と一致します。
x 軸まわりの回転体にもバウムクーヘン法は使えます。その場合は y で積分し、$V = 2\pi\int_c^d y \cdot g(y)\,dy$ となります。ここで $g(y)$ は曲線の x 方向の幅です。回転軸と垂直な方向に積分するのがバウムクーヘン法の特徴です。
| 方法 | 分割の仕方 | y 軸まわりの公式 | 被積分関数の構造 |
|---|---|---|---|
| ディスク法 | y 軸に垂直に切る | $\pi\int\{f(y)\}^2\,dy$ | $\pi \times$(半径)$^2$ |
| ワッシャー法 | y 軸に垂直に切る | $\pi\int[\{f_1\}^2-\{f_2\}^2]\,dy$ | $\pi \times$(外$^2$ $-$ 内$^2$) |
| バウムクーヘン法 | y 軸に平行に切る | $2\pi\int xf(x)\,dx$ | $2\pi \times$ 半径 $\times$ 高さ |
Q1. バウムクーヘン積分の公式で $2\pi x$ は何を表していますか。
Q2. ディスク法の係数が $\pi$ で、バウムクーヘン法の係数が $2\pi$ である理由は何ですか。
Q3. $y = x^2$($0 \le x \le 1$)の y 軸まわりの回転体をバウムクーヘン法で求めてください。
Q4. 2曲線間のバウムクーヘン積分で、被積分関数は「2乗の差」ではなく何ですか。
Q5. バウムクーヘン法がディスク法より有利なのはどのような場合ですか。
$y = 4 - x^2$($x \ge 0$)と x 軸および y 軸で囲まれた領域を y 軸まわりに1回転させた立体の体積を、バウムクーヘン積分を用いて求めよ。
$y = 4 - x^2 = 0$ より $x = 2$($x \ge 0$)。$0 \le x \le 2$ で $y \ge 0$。
$$V = 2\pi\int_0^2 x(4 - x^2)\,dx = 2\pi\int_0^2(4x - x^3)\,dx$$
$$= 2\pi\left[2x^2 - \frac{x^4}{4}\right]_0^2 = 2\pi\left(8 - 4\right) = 8\pi$$
$y = \cos x$($0 \le x \le \dfrac{\pi}{2}$)と x 軸および y 軸で囲まれた領域を y 軸まわりに1回転させた立体の体積を求めよ。
$$V = 2\pi\int_0^{\pi/2} x\cos x\,dx$$
部分積分:$u = x$, $dv = \cos x\,dx$ より $du = dx$, $v = \sin x$。
$$\int_0^{\pi/2}x\cos x\,dx = [x\sin x]_0^{\pi/2} - \int_0^{\pi/2}\sin x\,dx = \frac{\pi}{2} - [-\cos x]_0^{\pi/2} = \frac{\pi}{2} - 1$$
$$V = 2\pi\left(\frac{\pi}{2} - 1\right) = \pi(\pi - 2) = \pi^2 - 2\pi$$
$y = x$ と $y = x^3$($x \ge 0$)で囲まれた領域を y 軸まわりに1回転させた立体の体積を求めよ。
交点:$x = x^3$ より $x^3 - x = 0$、$x(x-1)(x+1) = 0$。$x \ge 0$ なので $x = 0, 1$。
$0 \le x \le 1$ で $x \ge x^3$($y = x$ が上側)。
$$V = 2\pi\int_0^1 x(x - x^3)\,dx = 2\pi\int_0^1(x^2 - x^4)\,dx$$
$$= 2\pi\left[\frac{x^3}{3} - \frac{x^5}{5}\right]_0^1 = 2\pi\left(\frac{1}{3} - \frac{1}{5}\right) = 2\pi \cdot \frac{2}{15} = \frac{4\pi}{15}$$
$y = \sqrt{x}$($0 \le x \le 4$)と x 軸で囲まれた領域を y 軸まわりに1回転させた立体の体積を、次の2通りの方法で求め、結果が一致することを確認せよ。
(1) ディスク法($y$ で積分)
(2) バウムクーヘン法($x$ で積分)
(1) ディスク法:
$y = \sqrt{x}$ より $x = y^2$。$y$ の範囲は $0 \le y \le 2$。
y 座標 $y$ での断面は外半径 $4$($x = 4$ の直線)、内半径 $y^2$(曲線)の円環。
$$V = \pi\int_0^2\left[4^2 - (y^2)^2\right]\,dy = \pi\int_0^2(16 - y^4)\,dy$$
$$= \pi\left[16y - \frac{y^5}{5}\right]_0^2 = \pi\left(32 - \frac{32}{5}\right) = \frac{128\pi}{5}$$
(2) バウムクーヘン法:
$$V = 2\pi\int_0^4 x\sqrt{x}\,dx = 2\pi\int_0^4 x^{3/2}\,dx$$
$$= 2\pi\left[\frac{x^{5/2}}{5/2}\right]_0^4 = 2\pi \cdot \frac{2}{5} \cdot 4^{5/2} = \frac{4\pi}{5} \cdot 32 = \frac{128\pi}{5}$$
$4^{5/2} = (2^2)^{5/2} = 2^5 = 32$ より、両方法とも $V = \dfrac{128\pi}{5}$ で一致。
ディスク法では「$x = 4$ の壁」と「曲線 $x = y^2$」に挟まれた円環を y 方向に積み重ねています。バウムクーヘン法では曲線 $y = \sqrt{x}$ の下の領域を円筒殻に分割しています。分割の仕方は違いますが、同じ立体を測っているので結果は一致します。この問題ではバウムクーヘン法の方が立式が自然で計算も簡潔です。