第6章 積分法の応用

面積(媒介変数表示)
─ パラメータで描かれる曲線の面積を求める

曲線が $x = x(t)$, $y = y(t)$ という媒介変数表示で与えられたとき、面積の公式はどう変わるのでしょうか。本記事では、媒介変数表示の面積公式を導出し、サイクロイドや楕円といった代表的な曲線の面積計算を丁寧に扱います。

1媒介変数表示の面積公式 ─ なぜ $y\,dx$ を置換するのか

曲線と $x$ 軸で囲まれた面積は $S = \displaystyle\int_a^b y\,dx$ で求められます。曲線が $x = x(t)$, $y = y(t)$ で表されているとき、$dx = x'(t)\,dt$ と置換すれば、積分変数を $t$ に変更できます。

📐 媒介変数表示の面積公式

曲線 $x = x(t)$, $y = y(t)$($\alpha \le t \le \beta$)と $x$ 軸で囲まれた面積:

$$S = \left|\int_{\alpha}^{\beta} y(t)\,x'(t)\,dt\right|$$

閉曲線の場合、曲線が囲む領域の面積:

$$S = \left|\int_{\alpha}^{\beta} y(t)\,x'(t)\,dt\right|$$

※ 曲線の向き($t$ の増加に伴う点の進行方向)によって積分の符号が変わるため、絶対値をつけます。

💡 公式の本質:変数の置換に過ぎない

媒介変数表示の面積公式は、$\displaystyle\int y\,dx$ に $x = x(t)$ を代入しただけです。新しい公式ではなく、定積分の置換積分法そのものです。

「面積 $= \displaystyle\int y\,dx$」→「$dx = x'(t)\,dt$ で置換」→「$\displaystyle\int y(t)\,x'(t)\,dt$」。この変換の流れを理解していれば、公式を暗記する必要はありません。

⚠️ 落とし穴:積分の上端・下端の取り違え

✗ 誤:$x$ が $a$ から $b$ に動くから積分は $\int_a^b$

○ 正:$t$ が $\alpha$ から $\beta$ に動くときの $x(t)$ の変化を追う。$x(\alpha) = a$, $x(\beta) = b$ であっても、積分変数は $t$ なので $\int_{\alpha}^{\beta}$

置換積分では、積分の上端・下端も $t$ の値に変換する必要があります。$x$ の値に戻して代入しないように注意しましょう。

2公式の導出と符号の注意

媒介変数表示の面積公式を、より丁寧に導出しましょう。

▷ 面積公式の導出

$y = f(x)$ と $x$ 軸で囲まれた面積($a \le x \le b$, $f(x) \ge 0$)は:

$$S = \int_a^b f(x)\,dx = \int_a^b y\,dx$$

ここで $x = x(t)$, $y = y(t)$ とし、$t = \alpha$ で $x = a$, $t = \beta$ で $x = b$ とすると:

$$dx = x'(t)\,dt$$

$$S = \int_{\alpha}^{\beta} y(t)\,x'(t)\,dt$$

ただし、$t$ が $\alpha$ から $\beta$ に増加するとき $x$ が減少する($x'(t) < 0$)場合、積分は負になります。面積は正の量なので絶対値をつけます。

符号と曲線の向きの関係

閉曲線が囲む面積を計算するとき、曲線の向き(パラメータ $t$ の増加に伴う点の移動方向)が重要です。

曲線を反時計回りに一周するとき、$\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta} y(t)\,x'(t)\,dt$ はの値になります。逆に時計回りなら正の値です。

⚠️ 落とし穴:絶対値をつけ忘れる

✗ 誤:公式通り $\int_{\alpha}^{\beta} y(t)x'(t)\,dt$ を計算して負の値が出たのに、そのまま答えとする

○ 正:面積は常に正。計算結果が負なら絶対値をとる

あるいは、積分の上端と下端を入れ替えて正の値を得る方法もあります。

🔬 深掘り:グリーンの定理と面積

大学数学のベクトル解析では、グリーンの定理により閉曲線 $C$ が囲む領域 $D$ の面積が

$$S = \frac{1}{2}\left|\oint_C (x\,dy - y\,dx)\right|$$

で表されることが示されます。媒介変数表示の面積公式は、この定理の特殊な場合にあたります。

3サイクロイドの面積 ─ 美しい結果の背景

サイクロイドは、直線上を転がる円の円周上の1点が描く曲線です。半径 $a$ の円が $x$ 軸上を転がるとき、媒介変数表示は:

$$x = a(t - \sin t), \quad y = a(1 - \cos t) \quad (0 \le t \le 2\pi)$$

1アーチ分の曲線と $x$ 軸で囲まれた面積を求めましょう。

$x'(t) = a(1 - \cos t)$ なので:

$$S = \int_0^{2\pi} y(t)\,x'(t)\,dt = \int_0^{2\pi} a(1-\cos t) \cdot a(1-\cos t)\,dt = a^2\int_0^{2\pi}(1-\cos t)^2\,dt$$

$(1-\cos t)^2 = 1 - 2\cos t + \cos^2 t = 1 - 2\cos t + \dfrac{1+\cos 2t}{2} = \dfrac{3}{2} - 2\cos t + \dfrac{\cos 2t}{2}$

$$S = a^2\left[\frac{3}{2}t - 2\sin t + \frac{\sin 2t}{4}\right]_0^{2\pi} = a^2 \cdot 3\pi = 3\pi a^2$$

💡 サイクロイドの面積は元の円の3倍

サイクロイド1アーチ分の面積 $3\pi a^2$ は、転がる円の面積 $\pi a^2$ のちょうど3倍です。この驚くべき結果は17世紀にロベルヴァルによって発見されました。

直感的には、円が1回転する間に水平方向に $2\pi a$ 進み、その間に高さ $2a$ の山を描くことから、$2\pi a \times 2a$ の長方形の面積 $4\pi a^2$ よりは小さいが、かなりの面積を占めることがわかります。

⚠️ 落とし穴:$(1-\cos t)^2$ の展開でのミス

✗ 誤:$(1-\cos t)^2 = 1 - \cos^2 t = \sin^2 t$

○ 正:$(1-\cos t)^2 = 1 - 2\cos t + \cos^2 t$(二項展開)

$a^2 - b^2 = (a+b)(a-b)$ と $(a-b)^2 = a^2 - 2ab + b^2$ を混同しないようにしましょう。

4楕円の面積

楕円 $\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1$ は、媒介変数表示 $x = a\cos t$, $y = b\sin t$($0 \le t \le 2\pi$)で表せます。

楕円の面積を媒介変数で求める

楕円は $x$ 軸に関して対称なので、上半分の面積を2倍します。上半分は $t$ が $0$ から $\pi$ まで動く部分です。ただし $t = 0$ で $x = a$、$t = \pi$ で $x = -a$ なので、$x$ は減少方向です。

$$S = 2\left|\int_0^{\pi} b\sin t \cdot (-a\sin t)\,dt\right| = 2ab\int_0^{\pi}\sin^2 t\,dt$$

$\displaystyle\int_0^{\pi}\sin^2 t\,dt = \frac{\pi}{2}$ なので:

$$S = 2ab \cdot \frac{\pi}{2} = \pi ab$$

📐 楕円の面積

$$\frac{x^2}{a^2} + \frac{y^2}{b^2} = 1 \quad \text{の面積} = \pi ab$$

※ $a = b = r$ のとき $\pi r^2$ となり、円の面積に一致します。楕円の面積公式は円の面積の自然な一般化です。

⚠️ 落とし穴:上半分で $t$ を $0$ から $\pi$ とするとき $x'(t) < 0$ を見落とす

✗ 誤:$\int_0^{\pi} b\sin t \cdot (-a\sin t)\,dt = -\pi ab$ → 面積が負?

○ 正:$x'(t) = -a\sin t < 0$($0 < t < \pi$)なので積分は負。面積は絶対値をとって $\pi ab$

$t$ が $0$ から $\pi$ に増加するとき、$x$ は $a$ から $-a$ へ減少するので $x'(t) < 0$ です。このことから積分が負になるのは自然なことで、面積を求めるには絶対値が必要です。

楕円の面積を $x$ 方向の積分で求める方法

比較として、$y = \dfrac{b}{a}\sqrt{a^2 - x^2}$(上半分)を使って $x$ 方向で直接積分する方法もあります:

$$S = 2\int_{-a}^{a}\frac{b}{a}\sqrt{a^2 - x^2}\,dx = \frac{2b}{a} \cdot \frac{\pi a^2}{2} = \pi ab$$

ここで $\displaystyle\int_{-a}^{a}\sqrt{a^2 - x^2}\,dx = \dfrac{\pi a^2}{2}$(半径 $a$ の半円の面積)を使いました。媒介変数を使う方法の方が、三角関数の積分に帰着でき計算の見通しがよいことが多いです。

🔬 深掘り:ヤコビアンと面積の変換

楕円の面積が $\pi ab$ になることは、「円を一方向に引き伸ばすと面積がその倍率だけ変わる」ことから直感的に理解できます。単位円(面積 $\pi$)を $x$ 方向に $a$ 倍、$y$ 方向に $b$ 倍すると面積は $ab$ 倍になり $\pi ab$ です。大学数学では、この変換の面積比はヤコビアン(Jacobian)で厳密に表現されます。

5アステロイドとその他の曲線

アステロイド(星芒形)は $x = a\cos^3 t$, $y = a\sin^3 t$($0 \le t \le 2\pi$)で表される曲線です。$(x/a)^{2/3} + (y/a)^{2/3} = 1$ を満たします。

アステロイドの面積

対称性から第1象限の面積を4倍します。第1象限は $0 \le t \le \dfrac{\pi}{2}$ に対応し、$t = 0$ で $(a, 0)$, $t = \dfrac{\pi}{2}$ で $(0, a)$ です。

$x'(t) = -3a\cos^2 t\,\sin t$ なので:

$$S = 4\left|\int_0^{\pi/2} a\sin^3 t \cdot (-3a\cos^2 t\,\sin t)\,dt\right| = 12a^2\int_0^{\pi/2}\sin^4 t\,\cos^2 t\,dt$$

ウォリスの公式(またはベータ関数)を用いて:

$$\int_0^{\pi/2}\sin^4 t\,\cos^2 t\,dt = \frac{3 \cdot 1 \cdot 1}{6 \cdot 4 \cdot 2} \cdot \frac{\pi}{2} = \frac{3}{48} \cdot \frac{\pi}{2} = \frac{\pi}{32}$$

$$S = 12a^2 \cdot \frac{\pi}{32} = \frac{3\pi a^2}{8}$$

💡 媒介変数表示の面積計算のコツ

媒介変数表示の面積計算では、被積分関数が $\sin^m t\,\cos^n t$ の形になることが非常に多いです。このときウォリスの公式半角公式の繰り返し使用が威力を発揮します。

特に $\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^m t\,\cos^n t\,dt$ の形は定型化されているので、公式として整理しておくと効率的です。

媒介変数表示の面積計算で使う積分公式

積分
$\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^2 t\,dt$$\dfrac{\pi}{4}$
$\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^4 t\,dt$$\dfrac{3\pi}{16}$
$\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^2 t\,\cos^2 t\,dt$$\dfrac{\pi}{16}$
$\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^4 t\,\cos^2 t\,dt$$\dfrac{\pi}{32}$
🔬 深掘り:ベータ関数とガンマ関数

$\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^m t\,\cos^n t\,dt = \frac{1}{2}B\!\left(\frac{m+1}{2}, \frac{n+1}{2}\right)$($B$ はベータ関数)として統一的に表現できます。ベータ関数はガンマ関数 $\Gamma$ で $B(p,q) = \dfrac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}$ と書け、$\Gamma(n+1) = n!$ を一般化したものです。

まとめ

✅ 確認テスト

Q1. 媒介変数表示の面積公式 $\int y(t)\,x'(t)\,dt$ は、何の操作で導かれるか。

▶ 答えを見る
$\int y\,dx$ に $dx = x'(t)\,dt$ を代入する置換積分で導かれます。

Q2. サイクロイド $x = a(t - \sin t)$, $y = a(1-\cos t)$ で $x'(t)$ を求めよ。

▶ 答えを見る
$x'(t) = a(1 - \cos t)$

Q3. サイクロイド1アーチ分の面積は転がる円の面積の何倍か。

▶ 答えを見る
$3\pi a^2 \div \pi a^2 = 3$ 倍

Q4. 楕円 $x = 3\cos t$, $y = 2\sin t$ の面積を求めよ。

▶ 答えを見る
$\pi ab = \pi \cdot 3 \cdot 2 = 6\pi$

Q5. $\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^2 t\,\cos^2 t\,dt$ の値は?

▶ 答えを見る
$\sin^2 t\,\cos^2 t = \dfrac{1}{4}\sin^2 2t$ より $\dfrac{1}{4}\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^2 2t\,dt = \dfrac{1}{4} \cdot \dfrac{\pi}{4} = \dfrac{\pi}{16}$

入試問題演習

問題 1 LEVEL A 楕円の面積

楕円 $\dfrac{x^2}{9} + \dfrac{y^2}{4} = 1$ の面積を、媒介変数表示を用いて求めよ。

▶ 解答を表示
解答

$x = 3\cos t$, $y = 2\sin t$($0 \le t \le 2\pi$)とおく。

対称性より上半分($0 \le t \le \pi$)を2倍する。$x'(t) = -3\sin t$。

$$S = 2\left|\int_0^{\pi} 2\sin t \cdot (-3\sin t)\,dt\right| = 12\int_0^{\pi}\sin^2 t\,dt = 12 \cdot \frac{\pi}{2} = 6\pi$$

採点ポイント
  • 媒介変数表示の設定 … 2点
  • $x'(t) = -3\sin t$ の計算 … 2点
  • $\sin^2 t$ の積分と最終結果 $6\pi$ … 6点
問題 2 LEVEL B サイクロイド

半径 $2$ の円が $x$ 軸上を滑らずに転がるとき、円周上の定点が描くサイクロイドの1アーチ分と $x$ 軸で囲まれた部分の面積を求めよ。

▶ 解答を表示
解答

$a = 2$ とし、$x = 2(t - \sin t)$, $y = 2(1 - \cos t)$($0 \le t \le 2\pi$)。

$x'(t) = 2(1 - \cos t)$、$y(t) \cdot x'(t) = 4(1 - \cos t)^2$

$$S = \int_0^{2\pi} 4(1-\cos t)^2\,dt = 4\int_0^{2\pi}\left(\frac{3}{2} - 2\cos t + \frac{\cos 2t}{2}\right)dt$$

$$= 4\left[\frac{3t}{2} - 2\sin t + \frac{\sin 2t}{4}\right]_0^{2\pi} = 4 \cdot 3\pi = 12\pi$$

(公式 $3\pi a^2 = 3\pi \cdot 4 = 12\pi$ と一致)

採点ポイント
  • 媒介変数表示の設定 … 2点
  • $(1-\cos t)^2$ の正しい展開 … 3点
  • 各項の積分と最終結果 $12\pi$ … 5点
問題 3 LEVEL B アステロイド

アステロイド $x = \cos^3 t$, $y = \sin^3 t$($0 \le t \le 2\pi$)が囲む面積を求めよ。

▶ 解答を表示
解答

$a = 1$ のアステロイド。対称性から第1象限($0 \le t \le \dfrac{\pi}{2}$)を4倍する。

$x'(t) = -3\cos^2 t\,\sin t$ なので:

$$S = 4\left|\int_0^{\pi/2}\sin^3 t \cdot (-3\cos^2 t\,\sin t)\,dt\right| = 12\int_0^{\pi/2}\sin^4 t\,\cos^2 t\,dt$$

$\sin^4 t\,\cos^2 t = \sin^4 t\,(1-\sin^2 t)$ に半角公式を適用するか、ウォリスの公式を利用する:

$$\int_0^{\pi/2}\sin^4 t\,\cos^2 t\,dt = \frac{3 \cdot 1 \cdot 1}{6 \cdot 4 \cdot 2} \cdot \frac{\pi}{2} = \frac{\pi}{32}$$

$$S = 12 \cdot \frac{\pi}{32} = \frac{3\pi}{8}$$

採点ポイント
  • 対称性の利用 … 2点
  • $x'(t)$ の計算 … 2点
  • $\sin^4 t\,\cos^2 t$ の積分 … 4点
  • 最終結果 $\dfrac{3\pi}{8}$ … 2点
問題 4 LEVEL C 媒介変数と面積

曲線 $C$:$x = t - \sin t$, $y = 1 - \cos t$($0 \le t \le 2\pi$)と $x$ 軸で囲まれた部分を、直線 $x = \pi$ で2つの部分 $S_1$(左側), $S_2$(右側)に分ける。$S_1$ と $S_2$ の面積をそれぞれ求めよ。

▶ 解答を表示
解答

$a = 1$ のサイクロイド。全体の面積は $3\pi$。

$x = \pi$ に対応する $t$ の値を求める。$t - \sin t = \pi$ で $t = \pi$ のとき $\pi - 0 = \pi$(成立)。

$$S_1 = \int_0^{\pi}(1-\cos t)^2\,dt = \left[\frac{3t}{2} - 2\sin t + \frac{\sin 2t}{4}\right]_0^{\pi} = \frac{3\pi}{2}$$

$S_2 = 3\pi - S_1 = 3\pi - \dfrac{3\pi}{2} = \dfrac{3\pi}{2}$

よって $S_1 = S_2 = \dfrac{3\pi}{2}$。直線 $x = \pi$ はサイクロイドの面積を二等分する。

解説

サイクロイドは $x = \pi$(すなわち $t = \pi$)に関して対称です。$t = \pi$ での点は $(x, y) = (\pi, 2)$ で、サイクロイドの頂点にあたります。対称性から左右の面積が等しくなるのは自然な結果ですが、計算でも確認できました。

採点ポイント
  • $x = \pi$ に対応する $t = \pi$ の特定 … 2点
  • $S_1$ の積分計算 … 4点
  • $S_2$ の導出($3\pi - S_1$ または直接計算) … 2点
  • 対称性への言及 … 2点