第4章 微分法の応用

最大値・最小値
─ 微分による最適化

微分法の最も実用的な応用が、関数の最大値・最小値を求めることです。閉区間での連続関数には必ず最大値と最小値が存在しますが、開区間や無限区間では極限の考察が不可欠です。本記事では、指数関数・対数関数を含む関数の最大・最小問題、さらには文字定数を含む条件付き最適化まで体系的に学びます。

1閉区間における最大値・最小値

閉区間 $[a, b]$ で連続な関数 $f(x)$ は、必ずその区間で最大値最小値をもちます(最大値・最小値の定理)。最大値・最小値は、極値をとる点か区間の端点で実現されます。

📐 閉区間での最大値・最小値の求め方

手順 1:$f'(x) = 0$ を解き、区間内の極値の候補を求める

手順 2:極値の候補と端点の値 $f(a)$, $f(b)$ をすべて計算する

手順 3:それらの値を比較し、最大のものが最大値、最小のものが最小値

※ 極大値が最大値とは限らない。端点の値が最大値になることもある。

📝 例題:閉区間での最大・最小

問題:$f(x) = x^3 - 3x^2 + 1$($-1 \leq x \leq 4$)の最大値と最小値を求めよ。

$f'(x) = 3x^2 - 6x = 3x(x - 2)$

$f'(x) = 0$ とすると $x = 0, 2$(いずれも区間内)

増減表を作成する:

$x$$-1$$\cdots$$0$$\cdots$$2$$\cdots$$4$
$f'(x)$$+$$0$$-$$0$$+$
$f(x)$$-3$$\nearrow$$1$$\searrow$$-3$$\nearrow$$17$

$f(-1) = -3$, $f(0) = 1$, $f(2) = -3$, $f(4) = 17$

したがって $x = 4$ で最大値 $17$、$x = -1, 2$ で最小値 $-3$

⚠️ 端点の値を忘れない

✗ 極大値 $f(0) = 1$ を最大値と即断する

✓ 端点の値 $f(4) = 17$ の方が大きいので、最大値は $17$

閉区間では必ず端点の値も計算して比較すること。

📌 最大値・最小値の定理

閉区間 $[a, b]$ で連続な関数は、その区間で必ず最大値と最小値をもつ。これは解析学の基本定理であり、最大・最小問題の出発点となる。

ただし、開区間 $(a, b)$ や無限区間 $(-\infty, \infty)$ では、最大値・最小値が存在しないこともある。

2開区間・無限区間での最大値・最小値

開区間や無限区間では、最大値・最小値が存在する保証がありません。端点での極限値や $x \to \pm\infty$ での挙動を調べ、極値と比較する必要があります。

📐 開区間・無限区間での判定法

手順 1:$f'(x) = 0$ を解き、極値を求める

手順 2:$\displaystyle\lim_{x \to a+0} f(x)$, $\displaystyle\lim_{x \to b-0} f(x)$ や $\displaystyle\lim_{x \to \pm\infty} f(x)$ を計算

手順 3:極値が極限値を超えていれば、それが最大値(最小値)

※ 極値に到達しつつ、極限値には到達しない場合、最大値のみ存在して最小値は存在しない(またはその逆)ことがある。

📝 例題:無限区間での最大値

問題:$f(x) = xe^{-x}$ の最大値を求めよ。

$f'(x) = e^{-x} + x \cdot (-e^{-x}) = e^{-x}(1 - x)$

$f'(x) = 0$ とすると $x = 1$

$x < 1$ で $f'(x) > 0$(増加)、$x > 1$ で $f'(x) < 0$(減少)

$\displaystyle\lim_{x \to -\infty} xe^{-x} = -\infty$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} xe^{-x} = 0$

$f(1) = e^{-1} = \dfrac{1}{e}$

したがって $x = 1$ で最大値 $\dfrac{1}{e}$。最小値は存在しない。

📝 例題:開区間での最小値

問題:$x > 0$ において $f(x) = x + \dfrac{1}{x}$ の最小値を求めよ。

$f'(x) = 1 - \dfrac{1}{x^2} = \dfrac{x^2 - 1}{x^2}$

$f'(x) = 0$ とすると $x = 1$($x > 0$ より $x = -1$ は不適)

$0 < x < 1$ で $f'(x) < 0$、$x > 1$ で $f'(x) > 0$

$\displaystyle\lim_{x \to +0} f(x) = +\infty$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} f(x) = +\infty$

$f(1) = 2$

したがって $x = 1$ で最小値 $2$。最大値は存在しない。

💡 極値が1つだけの場合の判定

区間内で極大値が1つだけで、かつ端点・無限遠での極限値がその値を超えなければ、その極大値が最大値となります。

同様に、極小値が1つだけで、端点・無限遠の極限値がそれを下回らなければ、その極小値が最小値です。

3指数・対数関数の最大・最小

数学IIIの最大・最小問題では、$e^x$, $\log x$ を含む関数が頻出です。これらの極限の性質を正しく使う必要があります。

📐 重要な極限公式

$$\lim_{x \to \infty} \frac{x^n}{e^x} = 0 \quad (n \text{ は正の整数})$$

$$\lim_{x \to +0} x^n \log x = 0 \quad (n > 0)$$

※ $e^x$ は $x^n$ より速く増加し、$\log x$ は $x^n$ より遅く増加する。

📝 例題:$\dfrac{e^x}{x}$ の最小値

問題:$x > 0$ において $f(x) = \dfrac{e^x}{x}$ の最小値を求めよ。

$f'(x) = \dfrac{e^x \cdot x - e^x \cdot 1}{x^2} = \dfrac{e^x(x - 1)}{x^2}$

$x > 0$ のとき $e^x > 0$, $x^2 > 0$ なので、$f'(x)$ の符号は $x - 1$ で決まる。

$f'(x) = 0$ とすると $x = 1$

$0 < x < 1$ で $f'(x) < 0$、$x > 1$ で $f'(x) > 0$

$\displaystyle\lim_{x \to +0} \frac{e^x}{x} = +\infty$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} \frac{e^x}{x} = +\infty$

$f(1) = e$

したがって $x = 1$ で最小値 $e$

📝 例題:$x \log x$ の最小値

問題:$x > 0$ において $f(x) = x \log x$ の最小値を求めよ。

$f'(x) = \log x + x \cdot \dfrac{1}{x} = \log x + 1$

$f'(x) = 0$ とすると $\log x = -1$、すなわち $x = e^{-1} = \dfrac{1}{e}$

$0 < x < \dfrac{1}{e}$ で $f'(x) < 0$、$x > \dfrac{1}{e}$ で $f'(x) > 0$

$\displaystyle\lim_{x \to +0} x \log x = 0$($f(x)$ はこの値に到達しない)

$f\!\left(\dfrac{1}{e}\right) = \dfrac{1}{e} \cdot (-1) = -\dfrac{1}{e}$

したがって $x = \dfrac{1}{e}$ で最小値 $-\dfrac{1}{e}$

⚠️ $\lim_{x \to +0} x \log x = 0$ の扱い

✗ 極限値 $0$ を最小値と勘違いする

✓ 極限値には到達しないので最小値ではない。最小値は $f(1/e) = -1/e < 0$

極限値と関数値を混同しないこと。到達できる値のみが最大値・最小値の候補となる。

4文字定数を含む最大・最小問題

定数 $a$ を含む関数の最大値・最小値を求める問題では、$a$ の値によって増減表が変わることがあり、場合分けが必要になります。

📝 例題:最大値から係数を決定

問題:$f(x) = xe^{-ax}$($x \geq 0$, $a > 0$)の最大値が $\dfrac{1}{e}$ であるとき、$a$ の値を求めよ。

$f'(x) = e^{-ax} + x(-a)e^{-ax} = e^{-ax}(1 - ax)$

$f'(x) = 0$ とすると $x = \dfrac{1}{a}$

$0 \leq x < \dfrac{1}{a}$ で $f'(x) > 0$、$x > \dfrac{1}{a}$ で $f'(x) < 0$

よって $x = \dfrac{1}{a}$ で最大値をとり:

$$f\!\left(\frac{1}{a}\right) = \frac{1}{a} \cdot e^{-1} = \frac{1}{ae}$$

$\dfrac{1}{ae} = \dfrac{1}{e}$ より $a = 1$

📝 例題:閉区間での最大値の場合分け

問題:$f(x) = e^x(2x^2 - (a+4)x + a + 4)$($-1 \leq x \leq 1$)の最大値が $7$ であるとき、正の定数 $a$ を求めよ。

$f(-1) = e^{-1}(2 + a + 4 + a + 4) = \dfrac{2a + 10}{e}$

$f(1) = e(2 - a - 4 + a + 4) = 2e$

$f(1) = 2e \approx 5.44$ であるから、$f(-1) = 7$ ならば:

$\dfrac{2a + 10}{e} = 7$ より $2a + 10 = 7e$、$a = \dfrac{7e - 10}{2} \approx 4.51$

$a > 0$ を満たすので $a = \dfrac{7e - 10}{2}$

💡 場合分けの方針

$f'(x) = 0$ の解が区間内にあるかどうかで場合分けをします。

極値の候補が区間の外にある場合、関数は区間全体で単調なので、端点で最大値・最小値をとります。

5条件付き最適化問題

面積・体積などの幾何的条件のもとで最大・最小を求める問題では、条件を使って変数を1つに絞り込むことがポイントです。

📐 条件付き最大・最小の手順

1. 最大・最小を求めたい量を $f(x, y, \ldots)$ として式で表す

2. 条件式を用いて変数を1つ(例えば $x$)に統一する

3. $x$ の定義域を定めて、1変数関数の最大・最小問題に帰着する

4. 微分法を用いて極値を求め、端点・極限との比較で答えを出す

📝 例題:面積条件のもとでの最小値

問題:曲線 $y = e^x$ 上の点 $\mathrm{P}(t, e^t)$ における接線と $x$ 軸、$y$ 軸で囲まれる三角形の面積 $S(t)$ の最小値を求めよ。ただし $t < 0$ とする。

接線の方程式:$y - e^t = e^t(x - t)$、すなわち $y = e^t(x - t + 1)$

$x$ 切片:$y = 0$ とすると $x = t - 1$

$y$ 切片:$x = 0$ とすると $y = e^t(1 - t)$

$t < 0$ のとき $t - 1 < 0$ かつ $e^t(1 - t) > 0$ であるから:

$$S(t) = \frac{1}{2} |t - 1| \cdot e^t(1 - t) = \frac{1}{2}(1 - t)^2 e^t$$

$S'(t) = \frac{1}{2}\{2(1-t)(-1)e^t + (1-t)^2 e^t\} = \frac{1}{2}(1-t)e^t(-2 + 1 - t) = \frac{1}{2}(1-t)e^t(-1-t)$

$t < 0$ で $1 - t > 0$, $e^t > 0$ なので、$S'(t) = 0$ のとき $-1 - t = 0$、$t = -1$

$t < -1$ で $S'(t) < 0$、$-1 < t < 0$ で $S'(t) > 0$

$$S(-1) = \frac{1}{2} \cdot 4 \cdot e^{-1} = \frac{2}{e}$$

したがって $t = -1$ で最小値 $\dfrac{2}{e}$

📌 最適化問題の典型パターン

容器の体積最大:展開図の寸法から体積を1変数で表し微分

距離の最小:曲線上の点から直線・点までの距離を微分

面積条件下の周囲最小:面積条件で変数を消去し周囲の長さを微分

いずれの場合も「変数を1つに絞る」ことが最初のステップである。

まとめ

  • 閉区間 ─ 連続関数は必ず最大値・最小値をもつ。極値と端点の値を比較して決定する
  • 開区間・無限区間 ─ 端点の極限値や $x \to \pm\infty$ の極限を調べる。極限値には到達しないことに注意
  • 指数・対数関数 ─ $\lim x^n/e^x = 0$, $\lim x\log x = 0$ などの極限公式が必須
  • 文字定数 ─ 極値の位置が区間内か外かで場合分けが必要になることがある
  • 条件付き最適化 ─ 条件を用いて変数を1つに絞り、1変数関数の問題に帰着させる

確認テスト

Q1. 閉区間で連続な関数が必ず最大値と最小値をもつことを保証する定理の名前は何か。

▶ クリックして解答を表示 最大値・最小値の定理(ワイエルシュトラスの定理)。閉区間で連続であることが条件。

Q2. $f(x) = xe^{-x}$ の最大値とそれを与える $x$ の値を答えよ。

▶ クリックして解答を表示 $x = 1$ で最大値 $\dfrac{1}{e}$。$f'(x) = e^{-x}(1 - x) = 0$ より $x = 1$。

Q3. $\displaystyle\lim_{x \to +0} x \log x$ の値を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 $0$。$x \to +0$ のとき $\log x \to -\infty$ だが、$x \to 0$ の方が速いため $x \log x \to 0$。

Q4. $f(x) = x \log x$($x > 0$)の最小値とそれを与える $x$ の値を答えよ。

▶ クリックして解答を表示 $x = \dfrac{1}{e}$ で最小値 $-\dfrac{1}{e}$。$f'(x) = \log x + 1 = 0$ より $x = e^{-1}$。

Q5. 条件付き最適化問題で最初に行うべきステップは何か。

▶ クリックして解答を表示 条件式を用いて変数を1つに絞り込み、1変数関数の最大・最小問題に帰着させる。

入試問題演習

問題 1 A 基礎 閉区間の最大最小

関数 $f(x) = x^3 - 12x$($-3 \leq x \leq 3$)の最大値と最小値を求めよ。

解答

$f'(x) = 3x^2 - 12 = 3(x^2 - 4) = 3(x+2)(x-2)$

$f'(x) = 0$ とすると $x = -2, 2$(いずれも区間内)

$f(-3) = -27 + 36 = 9$, $f(-2) = -8 + 24 = 16$

$f(2) = 8 - 24 = -16$, $f(3) = 27 - 36 = -9$

したがって $x = -2$ で最大値 $16$、$x = 2$ で最小値 $-16$

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問題 2 B 標準 指数関数の最大値

$x > 0$ において、関数 $f(x) = x^2 e^{-x}$ の最大値を求めよ。

解答

$f'(x) = 2xe^{-x} + x^2(-e^{-x}) = xe^{-x}(2 - x)$

$x > 0$ のとき $xe^{-x} > 0$ なので、$f'(x)$ の符号は $2 - x$ で決まる。

$f'(x) = 0$ とすると $x = 2$

$0 < x < 2$ で $f'(x) > 0$、$x > 2$ で $f'(x) < 0$

$\displaystyle\lim_{x \to +0} x^2 e^{-x} = 0$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} x^2 e^{-x} = 0$

$f(2) = 4e^{-2} = \dfrac{4}{e^2}$

したがって $x = 2$ で最大値 $\dfrac{4}{e^2}$

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問題 3 B 標準 対数関数の最大値

$x > 0$ において、関数 $f(x) = \dfrac{\log x}{x}$ の最大値を求めよ。

解答

$f'(x) = \dfrac{\frac{1}{x} \cdot x - \log x \cdot 1}{x^2} = \dfrac{1 - \log x}{x^2}$

$f'(x) = 0$ とすると $\log x = 1$、$x = e$

$0 < x < e$ で $f'(x) > 0$、$x > e$ で $f'(x) < 0$

$\displaystyle\lim_{x \to +0} \frac{\log x}{x} = -\infty$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} \frac{\log x}{x} = 0$

$f(e) = \dfrac{1}{e}$

したがって $x = e$ で最大値 $\dfrac{1}{e}$

解説

$\dfrac{\log x}{x}$ は対数関数と多項式の比で、$x = e$ で最大となることは頻出。$\lim_{x \to \infty} \dfrac{\log x}{x} = 0$ は「対数関数の増加は多項式より遅い」ことを反映している。

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問題 4 C 発展 条件付き最適化

曲線 $y = \log x$ 上の点 $\mathrm{P}(t, \log t)$($t > 0$)から $x$ 軸に下ろした垂線の足を $\mathrm{H}$ とし、原点を $\mathrm{O}$ とする。三角形 $\mathrm{OPH}$ の面積を $S(t)$ とする。

(1) $S(t)$ を $t$ の式で表せ。

(2) $S(t)$ の最大値を求めよ。

解答

(1) $\mathrm{H}(t, 0)$ であり、$\mathrm{OH} = t$, $\mathrm{PH} = |\log t|$

$S(t) > 0$ となるのは $t > 0$ かつ $t \neq 1$ のとき。

$t > 1$ のとき $\log t > 0$ より $S(t) = \dfrac{1}{2} t \log t$

$0 < t < 1$ のとき $\log t < 0$ より $S(t) = -\dfrac{1}{2} t \log t$

(2) $t > 1$ の場合:$S(t) = \dfrac{1}{2} t \log t \to \infty$($t \to \infty$)で最大値なし。

$0 < t < 1$ の場合:$S(t) = -\dfrac{1}{2} t \log t$ とおく。

$S'(t) = -\dfrac{1}{2}(\log t + 1) = 0$ より $t = \dfrac{1}{e}$

$0 < t < \dfrac{1}{e}$ で $S'(t) > 0$、$\dfrac{1}{e} < t < 1$ で $S'(t) < 0$

$$S\!\left(\frac{1}{e}\right) = -\frac{1}{2} \cdot \frac{1}{e} \cdot (-1) = \frac{1}{2e}$$

$0 < t < 1$ の範囲では $t = \dfrac{1}{e}$ で最大値 $\dfrac{1}{2e}$

解説

三角形の面積を $t$ の関数として表す際、$\log t$ の符号で場合分けが必要です。$t > 1$ では面積が発散するので最大値は存在せず、$0 < t < 1$ の範囲に限定して最大値を求めます。$x \log x$ 型の微分は頻出パターンです。

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