方程式 $f(x) = 0$ の実数解の個数を調べるには、$y = f(x)$ のグラフと $x$ 軸の共有点の個数を数えます。さらに、方程式を $f(x) = k$ の形に変形し、$y = f(x)$ のグラフと直線 $y = k$ の交点の個数から解の個数を判定する「定数分離法」は、入試で最も重要なテクニックの一つです。
方程式 $f(x) = g(x)$ の実数解の個数は、2つの曲線 $y = f(x)$ と $y = g(x)$ の共有点の個数に等しくなります。これは微分法で学んだグラフの概形を活用する場面です。
方程式 $f(x) = g(x)$ の実数解の個数
$= y = f(x)$ と $y = g(x)$ のグラフの共有点の個数
方程式 $h(x) = 0$ の実数解の個数
$= y = h(x)$ のグラフと $x$ 軸($y = 0$)の共有点の個数
※ 共有点の $x$ 座標が実数解に対応する。接する場合は重解。
方法1:$h(x) = f(x) - g(x)$ とおき、$y = h(x)$ のグラフと $x$ 軸の交点を調べる
方法2:方程式を $f(x) = k$(定数)の形に変形し、$y = f(x)$ と $y = k$ の交点を調べる(定数分離法)
パラメータ $k$ を含む方程式では方法2が有効。$k$ の値によって交点の個数が変わる様子を読み取れる。
問題:方程式 $x^3 - 3x + k = 0$ の実数解の個数を、定数 $k$ の値によって調べよ。
$f(x) = x^3 - 3x$ とおき、方程式を $f(x) = -k$ と変形する。
$f'(x) = 3x^2 - 3 = 3(x+1)(x-1)$
$f'(x) = 0$ とすると $x = -1, 1$
$f(-1) = -1 + 3 = 2$(極大値)、$f(1) = 1 - 3 = -2$(極小値)
$y = f(x)$ と $y = -k$ の交点の個数を調べると:
$-k > 2$($k < -2$)のとき:1個
$-k = 2$($k = -2$)のとき:2個(極大値に接する)
$-2 < -k < 2$($-2 < k < 2$)のとき:3個
$-k = -2$($k = 2$)のとき:2個(極小値に接する)
$-k < -2$($k > 2$)のとき:1個
定数分離法は、方程式に含まれるパラメータ $k$ を一方の辺に分離し、$f(x) = k$ の形にする手法です。$y = f(x)$ のグラフと水平線 $y = k$ の交点を数えることで、$k$ の値に応じた解の個数が一目でわかります。
手順 1:方程式を $f(x) = k$ の形に変形する
手順 2:$y = f(x)$ の増減・極値・極限を調べてグラフを描く
手順 3:水平線 $y = k$ を動かし、交点の個数が変わる $k$ の境界値を求める
※ 境界値は $f(x)$ の極大値・極小値・端点の値・極限値に対応する。
問題:方程式 $x^3 - 3x^2 = k$ の異なる実数解の個数を、定数 $k$ の値で分類せよ。
$f(x) = x^3 - 3x^2$ とおく。$f'(x) = 3x^2 - 6x = 3x(x - 2)$
$f'(x) = 0$ のとき $x = 0, 2$
$f(0) = 0$(極大値)、$f(2) = 8 - 12 = -4$(極小値)
$\displaystyle\lim_{x \to -\infty} f(x) = -\infty$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} f(x) = +\infty$
よって $y = f(x)$ と $y = k$ の交点の個数は:
| $k$ の範囲 | 実数解の個数 |
|---|---|
| $k < -4$ または $k > 0$ | 1個 |
| $k = -4$ または $k = 0$ | 2個 |
| $-4 < k < 0$ | 3個 |
$k$ を含む項だけを右辺に移し、左辺が $x$ のみの式になるようにします。
ただし、$k$ と $x$ が複雑に絡んでいる場合は、両辺を適切な関数で割る必要があることもあります(例:$e^x = kx$ を $\dfrac{e^x}{x} = k$ に変形)。
✗ 定数分離の際に $x$ で割ったのに $x = 0$ の場合を検討しない
✓ $x$ で割るときは $x = 0$ が元の方程式の解かどうかを別に確認する
分離の過程で定義域が変わることがあるので注意。
3次方程式 $ax^3 + bx^2 + cx + d = 0$ は、最大で3つの実数解をもちます。極大値と極小値の符号によって解の個数が決まります。
$f(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d$($a > 0$)が極大値 $M$、極小値 $m$ をもつとき:
$M > 0$ かつ $m < 0$:異なる3つの実数解
$M = 0$ または $m = 0$:異なる2つの実数解(重解を含む)
$M < 0$ または $m > 0$:ただ1つの実数解
$f'(x) = 0$ が重解:極値をもたず、ただ1つの実数解
問題:方程式 $x^3 - 3ax + 2 = 0$($a > 0$)が異なる3つの実数解をもつための $a$ の条件を求めよ。
$f(x) = x^3 - 3ax + 2$ とおく。$f'(x) = 3x^2 - 3a = 3(x^2 - a)$
$a > 0$ より $f'(x) = 0$ のとき $x = \pm\sqrt{a}$
極大値:$f(-\sqrt{a}) = -a\sqrt{a} + 3a\sqrt{a} + 2 = 2a\sqrt{a} + 2$
極小値:$f(\sqrt{a}) = a\sqrt{a} - 3a\sqrt{a} + 2 = -2a\sqrt{a} + 2$
極大値は常に正($a > 0$ より $2a\sqrt{a} + 2 > 0$)なので、条件は極小値が負であること:
$-2a\sqrt{a} + 2 < 0$、すなわち $a\sqrt{a} > 1$、$a^{3/2} > 1$、$a > 1$
よって $a > 1$
3次関数 $f(x)$ が極大値 $M$ と極小値 $m$ をもつとき、$f(x) = 0$ が異なる3つの実数解をもつ条件は $M \cdot m < 0$(異符号)と同値です。
これは、グラフが $x$ 軸を3回横切るためには、極大値が正で極小値が負(または逆)である必要があるからです。
$e^x = ax$ のような指数関数を含む方程式では、定数分離法が威力を発揮します。$\dfrac{e^x}{x} = a$ のように変形してグラフで判定します。
問題:方程式 $e^x = ax$ の異なる実数解の個数を、正の定数 $a$ の値で分類せよ。
$x \neq 0$ のとき $\dfrac{e^x}{x} = a$ と変形する。$x = 0$ は $e^0 = 0$ となり不適。
$f(x) = \dfrac{e^x}{x}$ とおく。$f'(x) = \dfrac{e^x(x-1)}{x^2}$
$f'(x) = 0$ のとき $x = 1$
$x < 0$ の範囲:$f'(x) = \dfrac{e^x(x-1)}{x^2}$。$x < 0$ のとき $x - 1 < 0$ なので $f'(x) < 0$(単調減少)
$\displaystyle\lim_{x \to -\infty} f(x) = 0$, $\displaystyle\lim_{x \to -0} f(x) = -\infty$
$0 < x < 1$ で $f'(x) < 0$(減少)、$x > 1$ で $f'(x) > 0$(増加)
$\displaystyle\lim_{x \to +0} f(x) = +\infty$, $f(1) = e$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} f(x) = +\infty$
よって $y = a$($a > 0$)との交点の個数は:
| $a$ の範囲 | 実数解の個数 |
|---|---|
| $0 < a < e$ | 0個 |
| $a = e$ | 1個 |
| $a > e$ | 2個 |
問題:$0 < x < 2\pi$ における方程式 $\log(\sin x + 2) = k$ の実数解の個数を、定数 $k$ の値で分類せよ。
$\sin x + 2 = e^k$、すなわち $\sin x = e^k - 2$ と変形する。
$0 < x < 2\pi$ で $-1 \leq \sin x \leq 1$ だから、$\sin x = e^k - 2$ が解をもつ条件は $-1 \leq e^k - 2 \leq 1$、すなわち $1 \leq e^k \leq 3$、$0 \leq k \leq \log 3$
$e^k - 2 = 1$ つまり $k = \log 3$ のとき $\sin x = 1$ で解は $x = \dfrac{\pi}{2}$:1個
$0 < e^k - 2 < 1$ つまり $\log 2 < k < \log 3$ のとき:2個
$e^k - 2 = 0$ つまり $k = \log 2$ のとき $\sin x = 0$ で $x = \pi$:1個
$-1 < e^k - 2 < 0$ つまり $0 < k < \log 2$ のとき:2個
$e^k - 2 = -1$ つまり $k = 0$ のとき $\sin x = -1$ で $x = \dfrac{3\pi}{2}$:1個
$e^x$ の増加が $x$ より圧倒的に速いため $\dfrac{e^x}{x} \to +\infty$($x \to \infty$)。
一方、$x = 1$ で最小値 $e$ をとることから、$a \geq e$ のときのみ $e^x = ax$ が正の解をもちます。
方程式の解の個数だけでなく、解が特定の範囲にある条件を求める問題も重要です。
問題:方程式 $e^x - 2x - k = 0$ が $0 < x < 1$ の範囲にただ1つの実数解をもつための $k$ の条件を求めよ。
$k = e^x - 2x$ と変形する。$g(x) = e^x - 2x$ とおく。
$g'(x) = e^x - 2$、$g'(x) = 0$ のとき $x = \log 2$
$0 < \log 2 < 1$ であるから、$g(x)$ は $0 < x < \log 2$ で減少、$\log 2 < x < 1$ で増加。
$g(0) = 1$, $g(\log 2) = 2 - 2\log 2$, $g(1) = e - 2$
$2 - 2\log 2 \approx 0.614$, $e - 2 \approx 0.718$
$y = g(x)$ と $y = k$ が $0 < x < 1$ で1つの交点をもつ条件は:
$$2 - 2\log 2 \leq k < 1 \quad \text{または} \quad 2 - 2\log 2 \leq k < e - 2$$
$g(0) = 1 > e - 2 = g(1)$ であるから、「ただ1つ」の条件は:
$$2 - 2\log 2 \leq k < e - 2 \quad \text{のとき2個、}$$
$$e - 2 \leq k < 1 \quad \text{のとき1個}$$
よって $e - 2 \leq k < 1$
✗ 「少なくとも1つ」と「ただ1つ」を混同し、端点を含めてしまう
✓ 「ただ1つ」の場合は、2つ以上の解が存在する $k$ の範囲を除外する
定数分離法は、パラメータを含む方程式の実数解を視覚的に把握できる強力な手法です。特に以下の点が重要:
1. グラフの極値が水平線との交点の個数の境界となる
2. 端点の値と極限値も忘れずに考慮する
3. 等号(接する場合)の扱いに注意する
Q1. 方程式 $f(x) = k$ の実数解の個数は、何と何の共有点の個数に等しいか。
Q2. 方程式 $x^3 - 3x = k$ が異なる3つの実数解をもつための $k$ の範囲を答えよ。
Q3. 定数分離法とはどのような手法か、簡潔に説明せよ。
Q4. $f(x) = \dfrac{e^x}{x}$($x > 0$)の最小値を答えよ。
Q5. 3次関数 $f(x)$ が極大値 $M$、極小値 $m$ をもつとき、$f(x) = 0$ が異なる3つの実数解をもつ条件は何か。
方程式 $x^3 - 6x^2 + 9x = k$ の異なる実数解の個数を、定数 $k$ の値によって分類せよ。
$f(x) = x^3 - 6x^2 + 9x$ とおく。$f'(x) = 3x^2 - 12x + 9 = 3(x-1)(x-3)$
$f'(x) = 0$ のとき $x = 1, 3$
$f(1) = 1 - 6 + 9 = 4$(極大値)、$f(3) = 27 - 54 + 27 = 0$(極小値)
$\displaystyle\lim_{x \to -\infty} f(x) = -\infty$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} f(x) = +\infty$
したがって:
$k < 0$ または $k > 4$ のとき:1個
$k = 0$ または $k = 4$ のとき:2個
$0 < k < 4$ のとき:3個
方程式 $e^x = kx^2$($k > 0$)の正の実数解の個数を、$k$ の値で分類せよ。
$x > 0$ のとき $\dfrac{e^x}{x^2} = k$ と変形する。$g(x) = \dfrac{e^x}{x^2}$ とおく。
$g'(x) = \dfrac{e^x \cdot x^2 - e^x \cdot 2x}{x^4} = \dfrac{e^x(x-2)}{x^3}$
$x > 0$ のとき、$g'(x) = 0$ とすると $x = 2$
$0 < x < 2$ で $g'(x) < 0$(減少)、$x > 2$ で $g'(x) > 0$(増加)
$g(2) = \dfrac{e^2}{4}$(最小値)
$\displaystyle\lim_{x \to +0} g(x) = +\infty$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} g(x) = +\infty$
したがって:
$0 < k < \dfrac{e^2}{4}$ のとき:0個
$k = \dfrac{e^2}{4}$ のとき:1個
$k > \dfrac{e^2}{4}$ のとき:2個
方程式 $x^3 + 3x^2 - 9x + a = 0$ が異なる3つの正の実数解をもつような定数 $a$ の値の範囲を求めよ。
$f(x) = x^3 + 3x^2 - 9x$ とおくと、方程式は $f(x) = -a$
$f'(x) = 3x^2 + 6x - 9 = 3(x+3)(x-1)$
$f'(x) = 0$ のとき $x = -3, 1$
$f(-3) = -27 + 27 + 27 = 27$(極大値)、$f(1) = 1 + 3 - 9 = -5$(極小値)
3つの正の実数解をもつには、$y = -a$ が $x > 0$ の範囲で $y = f(x)$ と3つの交点をもつ必要がある。
$x > 0$ では $x = 1$ のみが極値点(極小値 $-5$)であり、$f(0) = 0$ である。
$0 < x < 1$ で $f'(x) < 0$(減少)、$x > 1$ で $f'(x) > 0$(増加)
$f(0) = 0$ であるから、$y = -a$ が $x > 0$ で3つの交点をもつことは不可能(極値が1つしかないため最大2つ)。
よって、異なる3つの正の実数解をもつ $a$ は存在しない。
$x > 0$ での $f(x)$ の極値点は $x = 1$ の1つのみなので、この範囲でグラフが水平線と3つの交点をもつことは不可能です。3つの解をもつには $x < 0$ の解も含む必要があります。
方程式 $2^x = ax$($a > 0$)について:
(1) この方程式が相異なる2つの正の実数解をもつための $a$ の条件を求めよ。
(2) この方程式がただ1つの正の実数解をもつための $a$ の条件を求めよ。
$x > 0$ で $\dfrac{2^x}{x} = a$ と変形する。$g(x) = \dfrac{2^x}{x}$ とおく。
$g'(x) = \dfrac{2^x \log 2 \cdot x - 2^x}{x^2} = \dfrac{2^x(x \log 2 - 1)}{x^2}$
$g'(x) = 0$ のとき $x = \dfrac{1}{\log 2}$
$0 < x < \dfrac{1}{\log 2}$ で $g'(x) < 0$(減少)、$x > \dfrac{1}{\log 2}$ で $g'(x) > 0$(増加)
$g\!\left(\dfrac{1}{\log 2}\right) = \dfrac{2^{1/\log 2}}{1/\log 2} = e \log 2$($\because 2^{1/\log 2} = e$)
$\displaystyle\lim_{x \to +0} g(x) = +\infty$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} g(x) = +\infty$
(1) $y = a$ と $y = g(x)$ が2つの交点をもつ条件:$a > e\log 2$
(2) ただ1つの交点をもつ条件:$a = e\log 2$
$2^{1/\log 2} = e$ となることの確認:$2^{1/\log 2} = (e^{\log 2})^{1/\log 2} = e^1 = e$。定数分離法で $g(x)$ の最小値を正確に求めることが鍵となる。