第4章 微分法の応用

共通接線
─ 2つの曲線をつなぐ直線を見つける

2つの異なる曲線に同時に接する直線を共通接線と呼びます。共通接線の問題は、前記事で学んだ「曲線外の点からの接線」の考え方を2本の曲線に拡張したものです。接点の座標を2つの曲線でそれぞれ設定し、「傾きが等しい」「接線が一致する」という条件から方程式を立てるのがポイントです。

1共通接線とは何か

2つの曲線 $C_1: y = f(x)$ と $C_2: y = g(x)$ に対して、$C_1$ 上のある点で $C_1$ に接し、同時に $C_2$ 上のある点で $C_2$ にも接する直線を共通接線といいます。

前記事では「1つの曲線に対して外部の点から接線を引く」方法を学びました。共通接線では、外部の点の代わりに「もう1つの曲線の上の点」から接線を考えるイメージです。

💡 共通接線の本質

共通接線とは「2つの曲線を同時に接する1本の直線」です。$C_1$ 上の接点 $(a, f(a))$ での接線と $C_2$ 上の接点 $(b, g(b))$ での接線が同一の直線であることが条件です。

同一の直線になるための条件は「傾きが等しく、かつ切片が等しい」こと。これを式で書くと連立方程式が得られます。

⚠️ 共通接線 ≠ 交点での接線

✕ 誤:2つの曲線の交点における接線が共通接線

○ 正:共通接線は、2つの曲線の異なる点で同時に接する直線。交点で接する必要はない

交点では2つの曲線が同じ点を通りますが、そこでの接線の傾きが一般に異なります。共通接線は接点が異なっていても(同じでも)構いません。

2共通接線の求め方 ─ 基本戦略

📐 共通接線の立式法

$C_1: y = f(x)$ 上の点 $(a, f(a))$ での接線:$y = f'(a)(x - a) + f(a)$

$C_2: y = g(x)$ 上の点 $(b, g(b))$ での接線:$y = g'(b)(x - b) + g(b)$

この2つが同一の直線になる条件:

(i) 傾きが等しい:$f'(a) = g'(b)$

(ii) 切片が等しい:$f(a) - af'(a) = g(b) - bg'(b)$

▷ 具体例:$y = x^2$ と $y = (x-2)^2 + 1$ の共通接線

$C_1: f(x) = x^2$ 上の点 $(a, a^2)$ での接線:$y = 2a(x - a) + a^2 = 2ax - a^2$

$C_2: g(x) = (x-2)^2 + 1$ 上の点 $(b, (b-2)^2 + 1)$ での接線:$y = 2(b-2)(x - b) + (b-2)^2 + 1$

整理すると:$y = 2(b-2)x - b^2 + 4b - 3$

条件 (i):$2a = 2(b-2)$、すなわち $a = b - 2$

条件 (ii):$-a^2 = -b^2 + 4b - 3$

$a = b - 2$ を代入:$-(b-2)^2 = -b^2 + 4b - 3$

$-b^2 + 4b - 4 = -b^2 + 4b - 3$ より $-4 = -3$ ── 矛盾!

この場合、共通接線は存在しません(2つの放物線が離れすぎている)。

▷ 具体例:$y = x^2$ と $y = -x^2 + 4x - 2$ の共通接線

$C_1: f(x) = x^2$ 上の接線:$y = 2ax - a^2$

$C_2: g(x) = -x^2 + 4x - 2$ 上の接線:$y = (-2b + 4)(x - b) + (-b^2 + 4b - 2) = (-2b+4)x + b^2 - 2$

条件 (i):$2a = -2b + 4$ より $a = -b + 2$ …①

条件 (ii):$-a^2 = b^2 - 2$ より $a^2 + b^2 = 2$ …②

①を②に代入:$(-b+2)^2 + b^2 = 2$、$b^2 - 4b + 4 + b^2 = 2$、$2b^2 - 4b + 2 = 0$、$b^2 - 2b + 1 = 0$、$(b-1)^2 = 0$

$b = 1$, $a = 1$。共通接線は $y = 2x - 1$(ただ1本)。

💡 共通接線が存在しない場合もある

2つの曲線の位置関係によっては共通接線が存在しない場合があります。連立方程式を解いて実数解が得られるかどうかで判定できます。

3共通外接線と共通内接線

2つの曲線が上に凸と下に凸のように向きが異なる場合、共通接線には2種類あります。

共通外接線

2つの曲線が接線の同じ側にある場合を共通外接線といいます。接線が2つの曲線の「外側」を通るイメージです。

共通内接線

2つの曲線が接線の反対側にある場合を共通内接線といいます。接線が2つの曲線の「間」を通るイメージです。

▷ 具体例:$y = x^2$ と $y = -(x-3)^2 + 5$ の共通接線

$C_1: y = x^2$ 上の接線:$y = 2ax - a^2$

$C_2: y = -(x-3)^2 + 5$ 上の接線:$y = -2(b-3)(x-b) + (-(b-3)^2 + 5) = -2(b-3)x + b^2 - 4$

条件 (i):$2a = -2(b-3) = -2b + 6$ より $a = -b + 3$ …①

条件 (ii):$-a^2 = b^2 - 4$ より $a^2 + b^2 = 4$ …②

①を②に代入:$(-b+3)^2 + b^2 = 4$、$2b^2 - 6b + 9 = 4$、$2b^2 - 6b + 5 = 0$

$b = \dfrac{6 \pm \sqrt{36 - 40}}{4} = \dfrac{6 \pm \sqrt{-4}}{4}$ ── 実数解なし

この場合、共通接線は存在しません。

⚠️ 解が虚数 → 共通接線なし

✕ 誤:判別式が負でも何らかの接線が引ける

○ 正:連立方程式の判別式が負なら共通接線は存在しない

接点のパラメータ $a$, $b$ が実数でなければ接点が存在しないので、共通接線も存在しません。

🔬 2つの円の共通接線との関係

共通外接線・共通内接線の概念は、幾何学で学ぶ「2つの円の共通接線」と同じ構造です。2つの円の位置関係(離れている・外接・交わる・内接・含む)によって共通接線の本数は 4, 3, 2, 1, 0 と変化します。曲線の場合も同様に位置関係によって本数が変わります。

4指数・対数関数の共通接線

入試では $e^x$ や $\log x$ を含む曲線の共通接線がよく出題されます。指数・対数関数では式の整理に工夫が必要です。

▷ 頻出例:$y = e^x$ と $y = \log x + a$ の共通接線

$C_1: y = e^x$ 上の点 $(s, e^s)$ での接線:$y = e^s(x - s) + e^s = e^s(x - s + 1)$

$C_2: y = \log x + a$ 上の点 $(t, \log t + a)$ での接線($t > 0$):$y = \dfrac{1}{t}(x - t) + \log t + a = \dfrac{x}{t} + \log t + a - 1$

条件 (i):$e^s = \dfrac{1}{t}$ より $t = e^{-s}$ …①

条件 (ii):$e^s(1 - s) = \log t + a - 1 + 1 = \log t + a$

①より $\log t = -s$ を代入:$e^s(1-s) = -s + a$

$a = e^s(1-s) + s = e^s - se^s + s$

$a$ の値が与えられたとき、$s$ の値を求めることで共通接線が決まります。

⚠️ 対数関数の定義域に注意

✕ 誤:$\log x$ の接点で $x < 0$ の場合も考える

○ 正:$\log x$ は $x > 0$ でのみ定義されるので、接点の $x$ 座標は必ず正

連立方程式を解いた結果 $t \leq 0$ が出てきたら、それは共通接線の条件を満たす解ではありません。

▷ 例題:$y = e^x$ と $y = ae^x$($0 < a < 1$)の共通接線

$C_1$ 上の接線:$y = e^s(x - s + 1)$

$C_2$ 上の接線:$y = ae^t(x - t + 1)$

条件 (i):$e^s = ae^t$ より $s = \log a + t$ …①

条件 (ii):$e^s(1-s) = ae^t(1-t)$

条件 (i) から $e^s = ae^t$ を使うと:$ae^t(1-s) = ae^t(1-t)$

$1-s = 1-t$ より $s = t$。①に代入すると $t = \log a + t$ より $\log a = 0$、$a = 1$。

$a \neq 1$ のとき共通接線は存在しません(同じ形の曲線を縦に伸縮しただけだから)。

5共通接線の本数と存在条件

共通接線の本数は、2つの曲線のパラメータや位置関係に依存します。パラメータを含む問題では、共通接線の本数がいくつかを場合分けして答えることが求められます。

📐 共通接線の本数の判定法

Step 1. 接点のパラメータ $a$, $b$ に関する連立方程式を立てる

Step 2. 1つの変数を消去して、もう1つの変数に関する方程式にまとめる

Step 3. その方程式の実数解の個数が共通接線の本数に対応する

※ 同じ直線が異なるパラメータの組で得られることもあるので注意

▷ 例題:$y = x^2$ と $y = a(x-1)^2$($a > 0$, $a \neq 1$)の共通接線の本数

$C_1$ 上の接線:$y = 2s \cdot x - s^2$

$C_2$ 上の接線:$y = 2a(t-1)(x - t) + a(t-1)^2 = 2a(t-1)x - a(t^2 - 1) = 2a(t-1)x - at^2 + a$

条件 (i):$2s = 2a(t-1)$ より $s = a(t-1)$ …①

条件 (ii):$-s^2 = -at^2 + a$ …②

①を②に代入:$-a^2(t-1)^2 = -at^2 + a$

$a^2 t^2 - 2a^2 t + a^2 = at^2 - a$

$(a^2 - a)t^2 - 2a^2 t + (a^2 + a) = 0$

$a(a-1)t^2 - 2a^2 t + a(a+1) = 0$

$a \neq 0$ で割ると:$(a-1)t^2 - 2at + (a+1) = 0$

判別式 $D = 4a^2 - 4(a-1)(a+1) = 4a^2 - 4(a^2 - 1) = 4 > 0$

$a \neq 1$ のとき常に異なる2つの実数解をもつ。よって共通接線は2本

💡 問題のタイプ別アプローチ

共通接線を求める問題:連立方程式を解いて接点の座標と接線の方程式を求める

共通接線の存在条件を求める問題:パラメータに関する方程式の実数解の存在条件に帰着させる

共通接線の本数を求める問題:方程式の実数解の個数をパラメータで場合分けする

⚠️ 2つの接点が一致する場合

✕ 誤:$a = b$ なら共通接線ではない

○ 正:2つの曲線が同じ点を通り、そこでの接線の傾きが一致するなら、その点での接線が共通接線

これは2曲線が「接する」場合に相当し、その接点での接線は自然に共通接線になります。

🔬 包絡線(envelope)への橋渡し

パラメータを動かしたときに生じる接線の族が描く曲線を「包絡線」といいます。共通接線の問題は、2つの曲線の接線族の交わりを求める問題と見ることもでき、微分幾何学の基礎概念につながります。

まとめ

  • 共通接線 ─ 2つの曲線に同時に接する直線。各曲線での接点を別々に設定して連立方程式を解く
  • 立式の手順 ─ (i) 傾きが等しい条件と (ii) 切片が等しい条件の2つを連立する
  • 共通外接線と共通内接線 ─ 2つの曲線が接線の同じ側にあるか反対側にあるかで分類される
  • 本数の判定 ─ パラメータに関する方程式の実数解の個数=共通接線の本数(重複に注意)
  • 指数・対数関数 ─ 定義域の制約($\log x$ は $x > 0$)を忘れずに確認する

確認テスト

Q1. 2つの曲線 $C_1$, $C_2$ の共通接線を求めるために必要な2つの条件は何か。

▶ クリックして解答を表示 (i) 2つの接線の傾きが等しいこと($f'(a) = g'(b)$)。(ii) 2つの接線の $y$ 切片が等しいこと($f(a) - af'(a) = g(b) - bg'(b)$)。この2条件で「同一の直線」になる。

Q2. $y = x^2$ 上の点 $(a, a^2)$ における接線の方程式を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 $y = 2a(x - a) + a^2 = 2ax - a^2$

Q3. 共通接線の連立方程式で実数解が存在しない場合、何が言えるか。

▶ クリックして解答を表示 共通接線が存在しない。2つの曲線の位置関係により、同時に接する直線が引けない。

Q4. $y = e^x$ 上の点 $(s, e^s)$ における接線を $y = mx + n$ の形で表せ。

▶ クリックして解答を表示 $y = e^s x + e^s(1 - s)$。すなわち $m = e^s$, $n = e^s(1-s)$。

Q5. 共通外接線と共通内接線の違いを述べよ。

▶ クリックして解答を表示 共通外接線:2つの曲線が接線の同じ側にある。共通内接線:2つの曲線が接線の反対側にある。

入試問題演習

問題 1 A 基礎 多項式

$y = x^2$ と $y = -x^2 + 6x - 5$ の共通接線の方程式を求めよ。

解答

$C_1$ 上の接線:$y = 2ax - a^2$

$C_2$ 上の接線:$y = (-2b+6)(x-b) - b^2 + 6b - 5 = (-2b+6)x + b^2 - 5$

条件 (i):$2a = -2b + 6$ より $a = -b + 3$ …①

条件 (ii):$-a^2 = b^2 - 5$ より $a^2 + b^2 = 5$ …②

①を②に代入:$(-b+3)^2 + b^2 = 5$、$2b^2 - 6b + 4 = 0$、$b^2 - 3b + 2 = 0$

$(b-1)(b-2) = 0$ より $b = 1, 2$

$b = 1$:$a = 2$, 接線 $y = 4x - 4$

$b = 2$:$a = 1$, 接線 $y = 2x - 1$

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問題 2 B 標準 指数関数

$y = e^x$ と $y = e^{2x}$ の共通接線の方程式を求めよ。

解答

$C_1$ 上の接線:$y = e^s(x - s + 1)$

$C_2$ 上の接線:$y = 2e^{2t}(x - t) + e^{2t} = 2e^{2t}x - 2te^{2t} + e^{2t} = 2e^{2t}x + e^{2t}(1-2t)$

条件 (i):$e^s = 2e^{2t}$ …①

条件 (ii):$e^s(1-s) = e^{2t}(1-2t)$

①から $e^s = 2e^{2t}$ なので:$2e^{2t}(1-s) = e^{2t}(1-2t)$、$2(1-s) = 1-2t$、$2 - 2s = 1 - 2t$、$s = \dfrac{1+2t}{2}$ …②

①から $s = \log 2 + 2t$ …③

②③から:$\dfrac{1+2t}{2} = \log 2 + 2t$、$1 + 2t = 2\log 2 + 4t$、$t = \dfrac{1 - 2\log 2}{2}$

$s = \log 2 + 1 - 2\log 2 = 1 - \log 2$

接線の傾き:$e^s = e^{1-\log 2} = \dfrac{e}{2}$

共通接線:$y = \dfrac{e}{2}(x - 1 + \log 2 + 1) = \dfrac{e}{2}(x + \log 2)$

解説

指数関数同士の共通接線では、対数が自然に現れます。$e^s = 2e^{2t}$ を対数をとって $s = \log 2 + 2t$ と変形するのがポイントです。

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問題 3 B 標準 パラメータ

$y = x^3$ と $y = a(x - 1)^3$($a > 0$)が共通接線をもつための $a$ の条件を求めよ。

解答

$C_1$ 上の接線:$y = 3s^2(x - s) + s^3 = 3s^2 x - 2s^3$

$C_2$ 上の接線:$y = 3a(t-1)^2(x-t) + a(t-1)^3 = 3a(t-1)^2 x - 2a(t-1)^2 t - a(t-1)^2$

整理:$y = 3a(t-1)^2 x - a(t-1)^2(2t+1)$

条件 (i):$3s^2 = 3a(t-1)^2$ より $s^2 = a(t-1)^2$ …①

条件 (ii):$-2s^3 = -a(t-1)^2(2t+1)$

①から $s^2 = a(t-1)^2$ なので $s = \pm\sqrt{a}(t-1)$

$s = \sqrt{a}(t-1)$ の場合、条件 (ii) に代入して整理すると解が得られます。

最終的に $a > 0$ かつ $a \neq 1$ のとき共通接線が存在します。$a = 1$ のときは2つの曲線が平行移動の関係にあり、$y = 0$($x$ 軸)が共通接線となります。

よって、$a > 0$ の全ての値で共通接線が存在する。

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問題 4 C 発展 共通接線の本数

$y = e^x$ と $y = (x - a)^2$($a$ は実数定数)の共通接線の本数を $a$ の値で場合分けして求めよ。

解答

$C_1$ 上の接線:$y = e^s(x - s + 1)$

$C_2$ 上の接線:$y = 2(t-a)(x-t) + (t-a)^2 = 2(t-a)x - t^2 + a^2$

条件 (i):$e^s = 2(t-a)$ より $t = a + \dfrac{e^s}{2}$ …①

条件 (ii):$e^s(1-s) = -t^2 + a^2 = -(t-a)(t+a)$

①から $t-a = \dfrac{e^s}{2}$, $t+a = 2a + \dfrac{e^s}{2}$

$e^s(1-s) = -\dfrac{e^s}{2}\left(2a + \dfrac{e^s}{2}\right)$

$e^s > 0$ で割ると:$1-s = -a - \dfrac{e^s}{4}$

$\dfrac{e^s}{4} = 1 - s + a$ より $e^s = 4(1 - s + a)$

$h(s) = e^s - 4(1-s+a)$ とおくと $h(s) = 0$ の実数解の個数が共通接線の本数。

$h'(s) = e^s + 4 > 0$ より $h(s)$ は単調増加。

よって $h(s) = 0$ は高々1つの実数解をもつ。

$s \to -\infty$ で $h(s) \to -4(1+a) - 4(-s) \to -\infty$($s \to -\infty$)、$s \to +\infty$ で $h(s) \to +\infty$

中間値の定理より常に1つの解をもつ。

ただし $t - a = \dfrac{e^s}{2} > 0$ は自動的に満たされるので、すべての実数 $a$ に対して共通接線はちょうど1本

解説

連立方程式から1変数の方程式に帰着させ、単調性を利用して解の個数を調べるのが王道です。$h'(s) = e^s + 4 > 0$ により $h(s)$ が単調増加であることがわかれば、解はちょうど1つと結論できます。

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