第4章で学んだ接線、極値、グラフの概形、方程式の実数解の個数など、複数のテーマが融合した総合問題に挑戦します。実際の入試では、1つの問題の中で段階的に誘導され、最終的に複合的な結論を導く形式が多く出題されます。解法選択の判断力と計算力の両方が問われます。
原則1:小問の誘導に従え ─ 大問の小問は必ず次の小問のヒントになっている。前の結果を使わない解法を選んだら立ち止まって考え直す。
原則2:グラフを描け ─ グラフの概形を描くと解の個数や不等式の方向が直観的にわかる。計算に入る前にグラフをイメージする。
原則3:計算の見通しを立ててから始めよ ─ 複雑な計算に突入する前に、最終的にどのような形に帰着するかを予想する。
✕ 誤:各小問を独立に解く
○ 正:(1)の結果を(2)で、(2)の結果を(3)で使うのが普通
総合問題では小問が有機的につながっています。前の小問で示した不等式やグラフの性質を積極的に活用しましょう。
曲線の接線を求め、その接線と曲線で囲まれた面積を求める複合問題は、微分と積分の橋渡しとして頻出です。
$y = e^x$ 上の点 $(a, e^a)$ における接線と曲線、$y$ 軸で囲まれる面積を $a$ で表す。
接線:$y = e^a(x - a + 1)$。$y$ 軸との交点:$x = 0$ で $y = e^a(1 - a)$。
面積 $= \displaystyle\int_0^a \left[e^x - e^a(x - a + 1)\right] dx$($a > 0$ のとき、曲線が接線の上にある場合)
$= \left[e^x - e^a \cdot \dfrac{x^2}{2} + e^a(a-1)x\right]_0^a = e^a - e^a \cdot \dfrac{a^2}{2} + e^a(a-1)a - e^0 + 0$
$= e^a\left(1 - \dfrac{a^2}{2} + a^2 - a\right) - 1 = e^a\left(\dfrac{a^2}{2} - a + 1\right) - 1$
✕ 誤:常に曲線が接線の上にあると仮定
○ 正:凹凸や区間によって上下関係が変わるので必ず確認する
接線と曲線の上下は凹凸で決まります。下に凸なら曲線が上、上に凸なら曲線が下です。
パラメータ $a$ を含む関数の極値の個数や極値の値が条件を満たすように $a$ の範囲を定める問題です。
$f'(x) = 3x^2 - 3a = 3(x^2 - a)$
$f'(x) = 0$ が異なる2つの実数解をもつ ⟺ $a > 0$
$a > 0$ のとき $x = \pm\sqrt{a}$ で極値をとる。
極大値 $f(-\sqrt{a}) = -a\sqrt{a} + 3a\sqrt{a} + 1 = 2a\sqrt{a} + 1$
極小値 $f(\sqrt{a}) = a\sqrt{a} - 3a\sqrt{a} + 1 = -2a\sqrt{a} + 1$
Step 1. $f'(x) = 0$ の解を $a$ で表す → 極値をもつ条件($a$ の範囲)を決める
Step 2. 極値を $a$ で表す → 問題の条件(例:極小値 $> 0$)を $a$ の不等式に翻訳する
Step 3. $a$ の不等式を解く
不等式の証明にグラフの概形を利用する、またはグラフの性質から不等式を導出する問題です。
$y = e^x$ のグラフは下に凸で、$x = 1$ での接線は $y = e(x-1) + e = ex$。
下に凸なので $e^x \geq ex$(等号 $x = 1$)。
この不等式は $x = 1$ で接線を引いた結果として自然に得られます。
大学数学の解析学では、微分法の応用として「関数の近似」「級数の収束」「微分方程式」が3本柱です。高校で学ぶ接線の不等式やテイラー展開は、解析学の最も基本的な道具であり、物理学・工学のあらゆる場面で使われます。
方程式 $f(x) = k$ の実数解の個数を $k$ の値で場合分けする問題は、$y = f(x)$ のグラフと直線 $y = k$ の交点を考えます。
$x \neq 0$ のとき $\dfrac{e^x}{x} = a$ と変形。$g(x) = \dfrac{e^x}{x}$ のグラフと $y = a$ の交点を調べる。
$g'(x) = \dfrac{e^x(x-1)}{x^2}$。$x = 1$ で極小値 $g(1) = e$。
$x > 0$ で $g$ は $x = 1$ で極小値 $e$、$x < 0$ で $g < 0$。
$a > e$:解2個($x > 0$ に2つ)。$a = e$:解1個($x = 1$)。$0 < a < e$:解なし($x > 0$)。
$a < 0$:解1個($x < 0$ に1つ)。$a = 0$:解なし。
✕ 誤:$e^x = ax$ で $x = 0$ は常に解
○ 正:$x = 0$ のとき $e^0 = 1 \neq 0 = a \cdot 0$ なので $x = 0$ は解ではない
$\dfrac{e^x}{x} = a$ と変形する際に $x = 0$ を除外していることに注意しましょう。
Q1. 総合問題で小問 (1) の結果を使い忘れたときに考えるべきことは。
Q2. $f(x) = x^3 - 3ax + 1$ が極値をもつための $a$ の条件は。
Q3. $e^x = ax$ の実数解の個数で $a = e$ のとき解はいくつか。
Q4. 下に凸な曲線と接線の面積計算で注意すべきことは。
Q5. $f(x) = k$ の実数解の個数をグラフ的に求める方法を述べよ。
$f(x) = \log x$ のグラフ上の点 $(e, 1)$ における接線と、曲線 $y = \log x$、直線 $x = 1$ で囲まれる部分の面積を求めよ。
$(e, 1)$ での接線:$y = \dfrac{1}{e}(x - e) + 1 = \dfrac{x}{e}$
$x = 1$ での値:接線 $y = \dfrac{1}{e}$、曲線 $y = 0$。$1 \leq x \leq e$ で接線が曲線の上。
面積 $= \displaystyle\int_1^e \left(\dfrac{x}{e} - \log x\right) dx = \left[\dfrac{x^2}{2e} - x\log x + x\right]_1^e$
$= \left(\dfrac{e}{2} - e + e\right) - \left(\dfrac{1}{2e} - 0 + 1\right) = \dfrac{e}{2} - \dfrac{1}{2e} - 1 = \dfrac{e^2 - 1}{2e} - 1 = \dfrac{e^2 - 2e - 1}{2e}$
$f(x) = xe^{-ax}$($a > 0$)の極大値を $a$ の式で表し、極大値が $1$ より小さくなるような $a$ の範囲を求めよ。
$f'(x) = e^{-ax}(1 - ax)$。$f'(x) = 0$ のとき $x = \dfrac{1}{a}$。
極大値 $f\!\left(\dfrac{1}{a}\right) = \dfrac{1}{a} \cdot e^{-1} = \dfrac{1}{ae}$
$\dfrac{1}{ae} < 1$ ⟺ $a > \dfrac{1}{e}$
$f(x) = x\log x$($x > 0$)について:
(1) $f(x)$ の増減と極値を調べ、グラフの概形を描け。
(2) $x\log x = a$ が異なる2つの正の実数解をもつような $a$ の範囲を求めよ。
(3) (2) の2つの解を $\alpha$, $\beta$($\alpha < \beta$)とするとき、$\alpha\beta < 1$ を示せ。
(1) $f'(x) = \log x + 1 = 0$ より $x = e^{-1}$。$0 < x < e^{-1}$ で減少、$x > e^{-1}$ で増加。極小値 $f(e^{-1}) = -e^{-1}$。$f(x) \to 0^-$($x \to 0^+$)、$f(x) \to +\infty$($x \to +\infty$)。
(2) $y = f(x)$ と $y = a$ の交点が2個 ⟺ $-\dfrac{1}{e} < a < 0$
(3) $\alpha\log\alpha = \beta\log\beta = a < 0$ で $0 < \alpha < e^{-1} < \beta$。
$g(t) = t\log t$ は $t = e^{-1}$ で極小値 $-e^{-1}$ をとる。$g(\alpha) = g(\beta) = a$。
$g(t) = a$ の2解 $\alpha$, $\beta$ に対して $\alpha\beta < 1$ を示す。
$\log(\alpha\beta) = \log\alpha + \log\beta$。$\alpha\log\alpha = \beta\log\beta$ から $\log\alpha = \dfrac{a}{\alpha}$, $\log\beta = \dfrac{a}{\beta}$ なので $\log(\alpha\beta) = a\left(\dfrac{1}{\alpha} + \dfrac{1}{\beta}\right) = \dfrac{a(\alpha + \beta)}{\alpha\beta}$。
$a < 0$, $\alpha + \beta > 0$, $\alpha\beta > 0$ より $\log(\alpha\beta) < 0$、すなわち $\alpha\beta < 1$。
$n$ を自然数とするとき、$\left(1 + \dfrac{1}{n}\right)^n < e < \left(1 + \dfrac{1}{n}\right)^{n+1}$ を示せ。
$\log\left(1 + \dfrac{1}{n}\right)$ と $\dfrac{1}{n}$ の大小を比較する。$f(x) = \log(1+x)$ に平均値の定理を適用($[0, 1/n]$):
$\log\left(1 + \dfrac{1}{n}\right) = f'(c) \cdot \dfrac{1}{n} = \dfrac{1}{(1+c)n}$($0 < c < \dfrac{1}{n}$)
$0 < c$ より $1 + c > 1$ より $\dfrac{1}{(1+c)n} < \dfrac{1}{n}$。すなわち $\log\left(1+\dfrac{1}{n}\right) < \dfrac{1}{n}$。
$n\log\left(1+\dfrac{1}{n}\right) < 1$ ⟹ $\left(1+\dfrac{1}{n}\right)^n < e$ …①
また $c < \dfrac{1}{n}$ より $1 + c < 1 + \dfrac{1}{n} = \dfrac{n+1}{n}$ より $\dfrac{1}{(1+c)n} > \dfrac{1}{n+1}$
$\log\left(1+\dfrac{1}{n}\right) > \dfrac{1}{n+1}$。$(n+1)\log\left(1+\dfrac{1}{n}\right) > 1$ ⟹ $\left(1+\dfrac{1}{n}\right)^{n+1} > e$ …②
①②より $\left(1+\dfrac{1}{n}\right)^n < e < \left(1+\dfrac{1}{n}\right)^{n+1}$。