第6章 微分法

3次関数のグラフ
─ 変曲点対称と概形の描き方

3次関数のグラフは増減表をもとに描きますが、それだけでは「正確な概形」にたどり着きません。変曲点を中心とした点対称性を理解すれば、グラフの全体像を素早く正確につかめます。本記事では、3次関数の概形を描く手順を体系的に整理し、入試で問われるグラフ関連の典型問題も扱います。

13次関数のグラフの基本形

💡 本質:最高次の係数でグラフの「向き」が決まる

$f(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d$($a \neq 0$)のグラフは、$a$ の符号で大枠が決まります:

・$a > 0$ のとき:左下から右上へ($x \to -\infty$ で $f \to -\infty$、$x \to \infty$ で $f \to \infty$)

・$a < 0$ のとき:左上から右下へ($x \to -\infty$ で $f \to \infty$、$x \to \infty$ で $f \to -\infty$)

3つのパターン

3次関数のグラフは、$f'(x) = 0$ の判別式 $D$ によって次の3パターンに分かれます($a > 0$ の場合):

$D$ の符号$f'(x)=0$の解グラフの形
$D > 0$異なる2実数解S字型(極大・極小あり)
$D = 0$重解踊り場付き単調増加
$D < 0$実数解なし完全な単調増加

$a < 0$ の場合は、$x$ 軸に関して反転した形になります。

2変曲点と点対称性

📐 変曲点の公式

$f(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d$ の変曲点は $f''(x) = 0$ の解で与えられます。

$$f''(x) = 6ax + 2b = 0 \quad \Longrightarrow \quad x = -\frac{b}{3a}$$

変曲点の座標は $\left(-\dfrac{b}{3a},\; f\!\left(-\dfrac{b}{3a}\right)\right)$ です。

💡 3次関数のグラフは変曲点に関して点対称

3次関数 $y = f(x)$ のグラフは、変曲点に関して点対称です。これは $f(x)$ を変曲点周りに平行移動すると $y = ax^3$ の形に帰着することから示されます。

この性質により、極大値と極小値の「平均」が変曲点の $y$ 座標に一致します。

変曲点の直感的な意味

変曲点はグラフの「凹凸が切り替わる点」です。$f''(x) > 0$ の区間では下に凸(お椀型)、$f''(x) < 0$ の区間では上に凸(山型)です。変曲点ではこの凹凸が反転します。

⚠️ つまずきポイント:変曲点と極値の混同

✗ 変曲点は増減が切り替わる点

✓ 変曲点は凹凸(曲がり方)が切り替わる点。増減の切り替わりは極値。

変曲点では $f'(x)$ が極値をとります($f'$ の増減が切り替わる)が、$f(x)$ 自身の極値とは全く別の概念です。

🔗 大学数学への橋渡し

大学では $f''(x)$ の符号で凹凸を判定し、$f''(x) = 0$ かつ凹凸が実際に切り替わる点を変曲点と定義します。高校範囲では3次関数しか扱わないため常に変曲点が存在しますが、一般の関数では $f''(x) = 0$ でも変曲点でない場合があります(例:$f(x) = x^4$ の $x = 0$)。

3グラフの概形を描く手順

📐 3次関数のグラフ作成5ステップ

Step 1: $f'(x)$ を求め、$f'(x) = 0$ を解く

Step 2: 増減表を書く(極値の座標を計算)

Step 3: $y$ 切片 $f(0)$ を求める

Step 4: 変曲点の座標を求める(余裕があれば)

Step 5: 極値・$y$ 切片・変曲点をプロットし、滑らかに結ぶ

例題:$f(x) = x^3 - 3x^2 + 2$ のグラフを描け

Step 1: $f'(x) = 3x^2 - 6x = 3x(x-2)$、$f'(x) = 0$ のとき $x = 0, 2$

Step 2: 増減表

$x$$\cdots$$0$$\cdots$$2$$\cdots$
$f'(x)$$+$$0$$-$$0$$+$
$f(x)$極大 $2$極小 $-2$

Step 3: $f(0) = 2$($y$ 切片は極大値と同じ点)

Step 4: $f''(x) = 6x - 6 = 0$ より $x = 1$。$f(1) = 1 - 3 + 2 = 0$。変曲点 $(1, 0)$。

Step 5: $(0, 2)$, $(1, 0)$, $(2, -2)$ をプロットし、変曲点で凹凸が変わるように描く。

また、極大値と極小値の平均は $\dfrac{2 + (-2)}{2} = 0$ で、変曲点の $y$ 座標と一致します。

⚠️ つまずきポイント:概形を「角張った」グラフにしない

3次関数のグラフは滑らかな曲線です。極値の点で「折れ線」のように描いてはいけません。極値付近では接線が水平(傾き $0$)になることを意識して、丸みを帯びた山と谷を描きましょう。

4$y$ 軸との交点・$x$ 軸との交点

$y$ 軸との交点

$x = 0$ を代入すれば $y = d$(定数項)が $y$ 切片です。これは簡単に求まります。

$x$ 軸との交点

$f(x) = 0$ を解く必要がありますが、3次方程式を解くのは一般に難しいです。入試では次の方法が使われます:

  1. 因数定理で有理数の根を見つける($f(a) = 0$ となる整数 $a$ を探す)
  2. $f(x) = (x - a)(x^2 + px + q)$ と因数分解し、$x^2 + px + q = 0$ を解く
  3. グラフの概形から交点の「個数」のみ判定する
💡 $x$ 軸との交点の個数と極値の関係

3次関数($a > 0$、極大値 $M$、極小値 $m$ とする)の $x$ 軸との交点の個数は:

・$M < 0$ または $m > 0$ → 交点は1個

・$M = 0$ または $m = 0$ → 交点は2個(1つは接点)

・$M > 0$ かつ $m < 0$ → 交点は3個

5グラフの平行移動と対称移動

平行移動

$y = f(x)$ のグラフを $x$ 軸方向に $p$、$y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動すると:

$$y - q = f(x - p) \quad \text{すなわち} \quad y = f(x - p) + q$$

変曲点を原点に移動する変換

$f(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d$ の変曲点 $\left(-\dfrac{b}{3a}, f\!\left(-\dfrac{b}{3a}\right)\right)$ を原点に移動すると、$y = ax^3 + kx$ の形になります。これにより3次関数の本質的な形は $y = ax^3 + kx$ であることがわかります。

📐 対称移動の公式

$y = f(x)$ のグラフについて:

・$x$ 軸対称 → $y = -f(x)$

・$y$ 軸対称 → $y = f(-x)$

・原点対称 → $y = -f(-x)$

🔗 グラフの対称性の活用

3次関数は変曲点に関して点対称なので、変曲点の座標を求めれば、グラフの概形をより正確に描けます。特に、極大点と極小点の中点が変曲点になるため、2点間の「バランス」を意識してグラフを描くとよいでしょう。

まとめ

  • 基本形:$a > 0$ なら左下→右上、$a < 0$ なら左上→右下。判別式で3パターンに分類。
  • 変曲点:$f''(x) = 0$ の点で凹凸が切り替わる。座標は $x = -b/(3a)$。
  • 点対称性:3次関数のグラフは変曲点に関して点対称。極値の平均 = 変曲点の $y$ 座標。
  • 概形の手順:$f'(x) = 0$ → 増減表 → $y$ 切片 → 変曲点 → プロット → 滑らかに結ぶ。
  • $x$ 軸交点:極大値・極小値の符号で交点の個数を判定できる。

確認テスト

Q1. $f(x) = x^3 - 6x^2 + 9x$ の変曲点の座標を求めよ。

$f''(x) = 6x - 12 = 0$ より $x = 2$

$f(2) = 8 - 24 + 18 = 2$

変曲点は $(2, 2)$

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Q2. $f(x) = -x^3 + 3x$ のグラフは左右のどちらの端で $+\infty$ に向かうか。

最高次の係数が $-1 < 0$ なので、$x \to -\infty$ で $f(x) \to +\infty$。したがって左側で $+\infty$ に向かう。

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Q3. $f(x) = x^3 - 3x + 1$ の極大値と極小値を求め、$x$ 軸との交点の個数を答えよ。

$f'(x) = 3x^2 - 3 = 3(x+1)(x-1)$

極大値 $f(-1) = -1 + 3 + 1 = 3 > 0$、極小値 $f(1) = 1 - 3 + 1 = -1 < 0$

極大値 $> 0$、極小値 $< 0$ なので $x$ 軸との交点は3個

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Q4. $f(x) = 2x^3 - 3x^2 - 12x + 5$ の極大値と極小値の平均を求めよ。

$f'(x) = 6(x-2)(x+1)$ より極大値 $f(-1) = 12$、極小値 $f(2) = -15$

平均 $= \dfrac{12 + (-15)}{2} = -\dfrac{3}{2}$

これは変曲点 $x = \dfrac{1}{2}$ での $f\!\left(\dfrac{1}{2}\right) = \dfrac{1}{4} - \dfrac{3}{4} - 6 + 5 = -\dfrac{3}{2}$ と一致。

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Q5. $y = x^3 - 3x$ のグラフを $x$ 軸方向に $2$、$y$ 軸方向に $1$ だけ平行移動した曲線の方程式を求めよ。

$y - 1 = (x-2)^3 - 3(x-2)$

$= x^3 - 6x^2 + 12x - 8 - 3x + 6$

$= x^3 - 6x^2 + 9x - 2$

$\therefore y = x^3 - 6x^2 + 9x - 1$

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入試問題演習

問題 1 A 基礎

$f(x) = x^3 - 12x + 16$ について、増減表を書き、グラフの概形を描け。また、$x$ 軸との交点の座標をすべて求めよ。

解答

$f'(x) = 3x^2 - 12 = 3(x+2)(x-2)$

極大値 $f(-2) = -8 + 24 + 16 = 32$、極小値 $f(2) = 8 - 24 + 16 = 0$

$f(2) = 0$ より $x = 2$ は $x$ 軸との接点。$f(x) = (x-2)^2(x+4)$ と因数分解できる。

$x$ 軸との交点:$(2, 0)$(接する)、$(-4, 0)$

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問題 2 B 標準

$f(x) = x^3 - 3ax$ が $x$ 軸の正の部分と異なる2点で交わるような $a$ の範囲を求めよ。

解答

$f(x) = x(x^2 - 3a)$ より $x = 0$ は常に $x$ 軸との交点。

正の部分で2点と交わるには $x^2 = 3a$ が正の解をもつ、すなわち $a > 0$ が必要。

このとき $x = \pm\sqrt{3a}$ で、正の交点は $x = \sqrt{3a}$ の1つだけ。

したがって正の部分で「異なる2点」と交わるには、$x > 0$ の範囲で極小値が負になればよい。

$f'(x) = 3x^2 - 3a = 0$ より $x = \sqrt{a}$($a > 0$)

極小値 $f(\sqrt{a}) = a\sqrt{a} - 3a\sqrt{a} = -2a\sqrt{a} < 0$($a > 0$ のとき自動的に成立)

よって $a > 0$

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問題 3 B 標準

3次関数 $f(x) = x^3 + ax^2 + bx + c$ が変曲点 $(1, -3)$ をもち、$f(0) = -1$ であるとき、$a, b, c$ を求めよ。

解答

変曲点の $x$ 座標は $x = -\dfrac{a}{3}$ より $-\dfrac{a}{3} = 1$、$a = -3$

$f(1) = -3$:$1 - 3 + b + c = -3$ より $b + c = -1 \quad \cdots (1)$

$f(0) = -1$:$c = -1 \quad \cdots (2)$

$(1)(2)$ より $b = 0$

$\therefore a = -3, b = 0, c = -1$

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問題 4 C 発展

$f(x) = x^3 - 3x$ のグラフ上の点 $(t, f(t))$ におけるこのグラフの接線が、このグラフと接点以外の点で交わる点の $x$ 座標を $t$ を用いて表せ。

解答

$f'(x) = 3x^2 - 3$ より、点 $(t, t^3 - 3t)$ における接線は:

$$y = (3t^2 - 3)(x - t) + t^3 - 3t = (3t^2 - 3)x - 2t^3$$

接線と曲線の交点は $x^3 - 3x = (3t^2 - 3)x - 2t^3$

$x^3 - 3t^2x + 2t^3 = 0$

$x = t$ が重解なので $(x - t)^2(x + 2t) = 0$

接点以外の交点は $x = -2t$

解説

3次関数の接線と曲線の「接点以外の交点」では、接点の $x$ 座標 $t$ に対して交点の $x$ 座標が $-2t$ となるのは一般的な性質です。$f(x) - (\text{接線}) = 0$ が $x = t$ を重解にもつことを利用して因数分解します。

採点のポイント
  • 接線の方程式を正確に立式
  • $x = t$ が重解であることの認識
  • $(x-t)^2$ で割って残りの因子を求める
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