3次関数のグラフは増減表をもとに描きますが、それだけでは「正確な概形」にたどり着きません。変曲点を中心とした点対称性を理解すれば、グラフの全体像を素早く正確につかめます。本記事では、3次関数の概形を描く手順を体系的に整理し、入試で問われるグラフ関連の典型問題も扱います。
$f(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d$($a \neq 0$)のグラフは、$a$ の符号で大枠が決まります:
・$a > 0$ のとき:左下から右上へ($x \to -\infty$ で $f \to -\infty$、$x \to \infty$ で $f \to \infty$)
・$a < 0$ のとき:左上から右下へ($x \to -\infty$ で $f \to \infty$、$x \to \infty$ で $f \to -\infty$)
3次関数のグラフは、$f'(x) = 0$ の判別式 $D$ によって次の3パターンに分かれます($a > 0$ の場合):
| $D$ の符号 | $f'(x)=0$の解 | グラフの形 |
|---|---|---|
| $D > 0$ | 異なる2実数解 | S字型(極大・極小あり) |
| $D = 0$ | 重解 | 踊り場付き単調増加 |
| $D < 0$ | 実数解なし | 完全な単調増加 |
$a < 0$ の場合は、$x$ 軸に関して反転した形になります。
$f(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d$ の変曲点は $f''(x) = 0$ の解で与えられます。
$$f''(x) = 6ax + 2b = 0 \quad \Longrightarrow \quad x = -\frac{b}{3a}$$
変曲点の座標は $\left(-\dfrac{b}{3a},\; f\!\left(-\dfrac{b}{3a}\right)\right)$ です。
3次関数 $y = f(x)$ のグラフは、変曲点に関して点対称です。これは $f(x)$ を変曲点周りに平行移動すると $y = ax^3$ の形に帰着することから示されます。
この性質により、極大値と極小値の「平均」が変曲点の $y$ 座標に一致します。
変曲点はグラフの「凹凸が切り替わる点」です。$f''(x) > 0$ の区間では下に凸(お椀型)、$f''(x) < 0$ の区間では上に凸(山型)です。変曲点ではこの凹凸が反転します。
✗ 変曲点は増減が切り替わる点
✓ 変曲点は凹凸(曲がり方)が切り替わる点。増減の切り替わりは極値。
変曲点では $f'(x)$ が極値をとります($f'$ の増減が切り替わる)が、$f(x)$ 自身の極値とは全く別の概念です。
大学では $f''(x)$ の符号で凹凸を判定し、$f''(x) = 0$ かつ凹凸が実際に切り替わる点を変曲点と定義します。高校範囲では3次関数しか扱わないため常に変曲点が存在しますが、一般の関数では $f''(x) = 0$ でも変曲点でない場合があります(例:$f(x) = x^4$ の $x = 0$)。
Step 1: $f'(x)$ を求め、$f'(x) = 0$ を解く
Step 2: 増減表を書く(極値の座標を計算)
Step 3: $y$ 切片 $f(0)$ を求める
Step 4: 変曲点の座標を求める(余裕があれば)
Step 5: 極値・$y$ 切片・変曲点をプロットし、滑らかに結ぶ
Step 1: $f'(x) = 3x^2 - 6x = 3x(x-2)$、$f'(x) = 0$ のとき $x = 0, 2$
Step 2: 増減表
| $x$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ | $2$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $f'(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
| $f(x)$ | ↗ | 極大 $2$ | ↘ | 極小 $-2$ | ↗ |
Step 3: $f(0) = 2$($y$ 切片は極大値と同じ点)
Step 4: $f''(x) = 6x - 6 = 0$ より $x = 1$。$f(1) = 1 - 3 + 2 = 0$。変曲点 $(1, 0)$。
Step 5: $(0, 2)$, $(1, 0)$, $(2, -2)$ をプロットし、変曲点で凹凸が変わるように描く。
また、極大値と極小値の平均は $\dfrac{2 + (-2)}{2} = 0$ で、変曲点の $y$ 座標と一致します。
3次関数のグラフは滑らかな曲線です。極値の点で「折れ線」のように描いてはいけません。極値付近では接線が水平(傾き $0$)になることを意識して、丸みを帯びた山と谷を描きましょう。
$x = 0$ を代入すれば $y = d$(定数項)が $y$ 切片です。これは簡単に求まります。
$f(x) = 0$ を解く必要がありますが、3次方程式を解くのは一般に難しいです。入試では次の方法が使われます:
3次関数($a > 0$、極大値 $M$、極小値 $m$ とする)の $x$ 軸との交点の個数は:
・$M < 0$ または $m > 0$ → 交点は1個
・$M = 0$ または $m = 0$ → 交点は2個(1つは接点)
・$M > 0$ かつ $m < 0$ → 交点は3個
$y = f(x)$ のグラフを $x$ 軸方向に $p$、$y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動すると:
$$y - q = f(x - p) \quad \text{すなわち} \quad y = f(x - p) + q$$
$f(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d$ の変曲点 $\left(-\dfrac{b}{3a}, f\!\left(-\dfrac{b}{3a}\right)\right)$ を原点に移動すると、$y = ax^3 + kx$ の形になります。これにより3次関数の本質的な形は $y = ax^3 + kx$ であることがわかります。
$y = f(x)$ のグラフについて:
・$x$ 軸対称 → $y = -f(x)$
・$y$ 軸対称 → $y = f(-x)$
・原点対称 → $y = -f(-x)$
3次関数は変曲点に関して点対称なので、変曲点の座標を求めれば、グラフの概形をより正確に描けます。特に、極大点と極小点の中点が変曲点になるため、2点間の「バランス」を意識してグラフを描くとよいでしょう。
Q1. $f(x) = x^3 - 6x^2 + 9x$ の変曲点の座標を求めよ。
$f''(x) = 6x - 12 = 0$ より $x = 2$
$f(2) = 8 - 24 + 18 = 2$
変曲点は $(2, 2)$
Q2. $f(x) = -x^3 + 3x$ のグラフは左右のどちらの端で $+\infty$ に向かうか。
最高次の係数が $-1 < 0$ なので、$x \to -\infty$ で $f(x) \to +\infty$。したがって左側で $+\infty$ に向かう。
Q3. $f(x) = x^3 - 3x + 1$ の極大値と極小値を求め、$x$ 軸との交点の個数を答えよ。
$f'(x) = 3x^2 - 3 = 3(x+1)(x-1)$
極大値 $f(-1) = -1 + 3 + 1 = 3 > 0$、極小値 $f(1) = 1 - 3 + 1 = -1 < 0$
極大値 $> 0$、極小値 $< 0$ なので $x$ 軸との交点は3個
Q4. $f(x) = 2x^3 - 3x^2 - 12x + 5$ の極大値と極小値の平均を求めよ。
$f'(x) = 6(x-2)(x+1)$ より極大値 $f(-1) = 12$、極小値 $f(2) = -15$
平均 $= \dfrac{12 + (-15)}{2} = -\dfrac{3}{2}$
これは変曲点 $x = \dfrac{1}{2}$ での $f\!\left(\dfrac{1}{2}\right) = \dfrac{1}{4} - \dfrac{3}{4} - 6 + 5 = -\dfrac{3}{2}$ と一致。
Q5. $y = x^3 - 3x$ のグラフを $x$ 軸方向に $2$、$y$ 軸方向に $1$ だけ平行移動した曲線の方程式を求めよ。
$y - 1 = (x-2)^3 - 3(x-2)$
$= x^3 - 6x^2 + 12x - 8 - 3x + 6$
$= x^3 - 6x^2 + 9x - 2$
$\therefore y = x^3 - 6x^2 + 9x - 1$
$f(x) = x^3 - 12x + 16$ について、増減表を書き、グラフの概形を描け。また、$x$ 軸との交点の座標をすべて求めよ。
$f'(x) = 3x^2 - 12 = 3(x+2)(x-2)$
極大値 $f(-2) = -8 + 24 + 16 = 32$、極小値 $f(2) = 8 - 24 + 16 = 0$
$f(2) = 0$ より $x = 2$ は $x$ 軸との接点。$f(x) = (x-2)^2(x+4)$ と因数分解できる。
$x$ 軸との交点:$(2, 0)$(接する)、$(-4, 0)$
$f(x) = x^3 - 3ax$ が $x$ 軸の正の部分と異なる2点で交わるような $a$ の範囲を求めよ。
$f(x) = x(x^2 - 3a)$ より $x = 0$ は常に $x$ 軸との交点。
正の部分で2点と交わるには $x^2 = 3a$ が正の解をもつ、すなわち $a > 0$ が必要。
このとき $x = \pm\sqrt{3a}$ で、正の交点は $x = \sqrt{3a}$ の1つだけ。
したがって正の部分で「異なる2点」と交わるには、$x > 0$ の範囲で極小値が負になればよい。
$f'(x) = 3x^2 - 3a = 0$ より $x = \sqrt{a}$($a > 0$)
極小値 $f(\sqrt{a}) = a\sqrt{a} - 3a\sqrt{a} = -2a\sqrt{a} < 0$($a > 0$ のとき自動的に成立)
よって $a > 0$
3次関数 $f(x) = x^3 + ax^2 + bx + c$ が変曲点 $(1, -3)$ をもち、$f(0) = -1$ であるとき、$a, b, c$ を求めよ。
変曲点の $x$ 座標は $x = -\dfrac{a}{3}$ より $-\dfrac{a}{3} = 1$、$a = -3$
$f(1) = -3$:$1 - 3 + b + c = -3$ より $b + c = -1 \quad \cdots (1)$
$f(0) = -1$:$c = -1 \quad \cdots (2)$
$(1)(2)$ より $b = 0$
$\therefore a = -3, b = 0, c = -1$
$f(x) = x^3 - 3x$ のグラフ上の点 $(t, f(t))$ におけるこのグラフの接線が、このグラフと接点以外の点で交わる点の $x$ 座標を $t$ を用いて表せ。
$f'(x) = 3x^2 - 3$ より、点 $(t, t^3 - 3t)$ における接線は:
$$y = (3t^2 - 3)(x - t) + t^3 - 3t = (3t^2 - 3)x - 2t^3$$
接線と曲線の交点は $x^3 - 3x = (3t^2 - 3)x - 2t^3$
$x^3 - 3t^2x + 2t^3 = 0$
$x = t$ が重解なので $(x - t)^2(x + 2t) = 0$
接点以外の交点は $x = -2t$
3次関数の接線と曲線の「接点以外の交点」では、接点の $x$ 座標 $t$ に対して交点の $x$ 座標が $-2t$ となるのは一般的な性質です。$f(x) - (\text{接線}) = 0$ が $x = t$ を重解にもつことを利用して因数分解します。