第6章 微分法

接線の本数問題
─ 曲線外の点から何本の接線が引けるか

曲線外の点から何本の接線が引けるかは、接点の $x$ 座標に関する方程式の実数解の個数に帰着します。これは II-6-6(曲線外の点からの接線)と II-6-11(方程式の実数解の個数)の融合テーマであり、入試で最も差がつく問題です。

1接線の本数問題の考え方

💡 本質:接線の本数 = 接点の個数 = $t$ の方程式の実数解の個数

点 $(a, b)$ から曲線 $y = f(x)$ に接線を引くとき、接点を $(t, f(t))$ とおく。接線の方程式に $(a, b)$ を代入して得られる $t$ の方程式の実数解の個数が接線の本数です。

📐 接線の本数を求める手順

Step 1: 接点 $(t, f(t))$ における接線:$y - f(t) = f'(t)(x - t)$

Step 2: この接線が点 $(a, b)$ を通る条件:$b - f(t) = f'(t)(a - t)$

Step 3: この式を $t$ について整理し、$g(t) = 0$ の形にする

Step 4: $g(t) = 0$ の実数解の個数を調べる(グラフ利用)

2$t$ に関する方程式への帰着

例:$y = x^3$ に点 $(a, b)$ から引ける接線の本数

接点 $(t, t^3)$ における接線:$y = 3t^2(x - t) + t^3 = 3t^2x - 2t^3$

点 $(a, b)$ を通る条件:$b = 3t^2a - 2t^3$

$\therefore 2t^3 - 3at^2 + b = 0 \quad \cdots (*)$

$(*)$ の実数解の個数が接線の本数です。

⚠️ つまずきポイント:点が曲線上にある場合

$(a, b)$ が曲線 $y = f(x)$ 上にある場合、$t = a$ は必ず $(*)$ の解になります(その点での接線は必ず引ける)。このとき「接線の本数」に接点が $(a, b)$ 自身であるものを含めるかどうか、問題文の指示に注意しましょう。

3具体的な解法手順

例題:点 $(0, a)$ から曲線 $y = x^3 - 3x$ に引ける接線の本数を $a$ の値で分類せよ

接点 $(t, t^3 - 3t)$ における接線:$y = (3t^2 - 3)(x - t) + t^3 - 3t = (3t^2 - 3)x - 2t^3$

点 $(0, a)$ を通る条件:$a = -2t^3$、つまり $t^3 = -a/2$

3次方程式 $t^3 = -a/2$ は常に1つの実数解をもつので、接線は常に1本

このように、$y$ 軸上の点から $y = x^3 - 3x$ への接線は常に1本です。しかし、$y$ 軸から外れた点からは本数が変わります。

例題:点 $(1, a)$ から $y = x^3 - 3x$ に引ける接線の本数

接線が $(1, a)$ を通る条件:$a = (3t^2 - 3)(1 - t) + t^3 - 3t = -2t^3 + 3t^2 - 3$

$\therefore$ $h(t) = -2t^3 + 3t^2 - 3 = a$ の実数解の個数を調べる。

$h'(t) = -6t^2 + 6t = -6t(t - 1) = 0$ のとき $t = 0, 1$

$h(0) = -3$(極小)、$h(1) = -2$(極大)

$a$ の範囲接線の本数
$a < -3$ または $a > -2$1本
$a = -3$ または $a = -2$2本
$-3 < a < -2$3本
💡 接線の本数問題 = 方程式の解の個数問題

接線の本数問題は、結局 $h(t) = a$ というパラメータ付きの方程式の解の個数問題に帰着します。これは II-6-11 で学んだ「グラフと水平線の交点」の手法そのものです。

4接線の本数が変わる境界

境界の意味

接線の本数が変わる境界値(上の例では $a = -3, -2$)は、$h(t) = a$ が重解をもつときに対応します。幾何的には、点 $(1, a)$ から引いた接線が曲線に「接しつつ通る」(つまり接点が2重になる)特別な位置です。

🔗 大学数学への橋渡し

接線の本数が変わる点の軌跡は、代数幾何では判別式曲線(discriminant locus)と呼ばれます。3次曲線の場合、この軌跡は曲線自身の接線がちょうど2点で接するような特別な曲線(カスプ曲線)になります。

5接線の本数と領域

平面を接線の本数で領域分け

曲線上の各点での接線は、平面を「接線が1本引ける領域」「2本引ける領域」「3本引ける領域」に分けます。3次曲線の場合、変曲点における接線が境界の一部を形成します。

例:$y = x^3$ の場合

接点 $(t, t^3)$ での接線:$y = 3t^2x - 2t^3$

変曲点 $(0, 0)$ での接線は $y = 0$($x$ 軸)。$x$ 軸の上側と下側で接線の本数が異なります。

⚠️ つまずきポイント:領域の境界の扱い

境界上の点(接線の本数が変わるちょうどの位置)では、2本の接線のうち1本が「接しつつ通る」形になるため、通常の接線+特殊な接線の合計として本数を数えます。問題文が「異なる接線」と聞いているか「重複を含む」と聞いているかに注意。

まとめ

  • 基本原理:接線の本数 = 接点の $t$ に関する方程式の実数解の個数。
  • 手順:接線の式に通過点を代入 → $t$ の方程式 → グラフで解の個数を判定。
  • 融合テーマ:II-6-6(曲線外の点からの接線)+ II-6-11(実数解の個数)の融合。
  • 境界値:接線の本数が変わる $a$ の値は、$t$ の方程式が重解をもつ値。
  • 領域分け:3次曲線では、変曲点の接線が領域の境界の一部を形成する。

確認テスト

Q1. 点 $(0, k)$ から曲線 $y = x^3$ に引ける接線の本数を $k$ で分類せよ。

接線が $(0, k)$ を通る条件:$k = -2t^3$、すなわち $t^3 = -k/2$

任意の $k$ に対して $t$ は1つ定まるので、接線は常に1本

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Q2. 接線の本数問題を解く基本手順を述べよ。

① 接点 $(t, f(t))$ での接線の式を立てる

② 通過点の座標を代入し、$t$ に関する方程式を導く

③ この方程式の実数解の個数をグラフで判定する

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Q3. 曲線 $y = x^3 - 3x$ に点 $(2, a)$ から引ける接線が3本あるとき、$a$ の範囲を求めよ。

接線が $(2, a)$ を通る条件:$a = (3t^2 - 3)(2 - t) + t^3 - 3t = -2t^3 + 6t^2 - 6t + 6 - 3t = -2t^3 + 6t^2 - 9t + 6$

$h(t) = -2t^3 + 6t^2 - 9t + 6$ とおく

$h'(t) = -6t^2 + 12t - 9 = -3(2t^2 - 4t + 3)$

判別式 $= 16 - 24 = -8 < 0$ なので $h'(t) < 0$(常に減少)。

$h(t)$ は単調減少なので $h(t) = a$ の解は常に1個。接線は常に1本(3本にならない)。

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Q4. 接線の本数が変わる境界値は、$t$ の方程式がどのような解をもつときか。

$t$ の方程式が重解をもつときに、接線の本数が変わる。

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Q5. 点 $(0, a)$ から曲線 $y = x^3 - 12x$ に何本の接線が引けるか、$a$ で場合分けせよ。

接線が $(0, a)$ を通る条件:$a = -2t^3 + 12t$

$h(t) = -2t^3 + 12t$、$h'(t) = -6t^2 + 12 = -6(t^2 - 2) = 0$ のとき $t = \pm\sqrt{2}$

$h(-\sqrt{2}) = -8\sqrt{2}$(極小)、$h(\sqrt{2}) = 8\sqrt{2}$(極大)

$a < -8\sqrt{2}$ or $a > 8\sqrt{2}$:1本、$a = \pm 8\sqrt{2}$:2本、$-8\sqrt{2} < a < 8\sqrt{2}$:3本

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入試問題演習

問題 1 A 基礎

点 $(0, 2)$ から曲線 $y = x^3$ に引ける接線の方程式をすべて求めよ。

解答

接点 $(t, t^3)$ での接線:$y = 3t^2x - 2t^3$

$(0, 2)$ を通る条件:$2 = -2t^3$、$t^3 = -1$、$t = -1$

接線:$y = 3x + 2$

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問題 2 B 標準

点 $(1, a)$ から曲線 $y = x^3$ に3本の接線が引けるような $a$ の範囲を求めよ。

解答

接線が $(1, a)$ を通る条件:$a = 3t^2 \cdot 1 - 2t^3 = -2t^3 + 3t^2$

$h(t) = -2t^3 + 3t^2$、$h'(t) = -6t^2 + 6t = -6t(t-1) = 0$ のとき $t = 0, 1$

$h(0) = 0$(極小)、$h(1) = 1$(極大)

$h(t) = a$ が3つの実数解をもつ条件:$0 < a < 1$

解説

注意:$t = 1$ のとき接点は $(1, 1)$ で、接線は $y = 3x - 2$。$(1, a)$ が曲線上の点 $(1, 1)$ と一致する場合($a = 1$)は、接線の本数が2本になります。

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問題 3 B 標準

曲線 $y = x^3 - 3x$ 上の点 $(a, a^3 - 3a)$ からこの曲線に引ける接線は、その点での接線を含めて何本あるか。

解答

接線が $(a, a^3 - 3a)$ を通る条件:

$a^3 - 3a = (3t^2 - 3)(a - t) + t^3 - 3t$

$a^3 - 3a = 3t^2a - 3t^3 - 3a + 3t + t^3 - 3t = -2t^3 + 3at^2$

$2t^3 - 3at^2 + a^3 = 0$

$t = a$ は解(自明)。$(t - a)$ で割ると $2t^2 - at - a^2 = (2t + a)(t - a) = 0$

$t = a$(重解), $t = -a/2$。$t = a$ と $t = -a/2$ が異なるのは $a \neq 0$ のとき。

$a \neq 0$ のとき接線は2本、$a = 0$ のとき接線は1本

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問題 4 C 発展

曲線 $C: y = x^3 - 3x$ について、点 $P(a, b)$ から $C$ に引ける接線がちょうど2本となるような点 $P$ の軌跡を求めよ。

解答

接線が $(a, b)$ を通る条件:$b = -2t^3 + 3at^2 - 3a + 3t - 3t = -2t^3 + 3at^2 - 3t + (3t - 3a + b)$

整理すると $2t^3 - 3at^2 + (3a - b) = 0 \cdots (*)$

ちょうど2本の接線 ⟺ $(*)$ がちょうど2つの異なる実数解をもつ ⟺ $(*)$ が重解をもつ

$h(t) = 2t^3 - 3at^2$ とおくと $(*)$ は $h(t) = b - 3a$

$h'(t) = 6t(t - a) = 0$ のとき $t = 0, a$

$h(0) = 0$, $h(a) = 2a^3 - 3a^3 = -a^3$

重解をもつのは $b - 3a = 0$ または $b - 3a = -a^3$

すなわち $b = 3a$ または $b = -a^3 + 3a = -(a^3 - 3a)$

後者は $b = -(a^3 - 3a)$ つまり点 $(a, b)$ が曲線 $y = -(x^3 - 3x)$ 上にあるとき。

実は $b = a^3 - 3a$(曲線 $C$ 上の点、$a \neq 0$)でも2本になる。

軌跡は曲線 $C$ 自身(原点を除く)と変曲点における接線 $y = -3x$ の一部。

採点のポイント
  • $t$ の3次方程式の正確な導出
  • 重解条件の設定と極値の計算
  • 曲線上の点から引く場合の考察
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