2次方程式の解が「実数なのか虚数なのか」「異なる2つか重解か」──
これを方程式を解かずに判定できるのが判別式 $D$ の威力です。
数学Iでは判別式 $D < 0$ のとき「解なし」としていましたが、複素数の導入により、すべての2次方程式が解をもつようになります。
$ax^2 + bx + c = 0$($a \neq 0$、$a, b, c$ は実数)の解は
$$x = \frac{-b \pm \sqrt{b^2 - 4ac}}{2a}$$
$D = b^2 - 4ac$ を判別式という。
$b = 2b'$ のとき:$x = \dfrac{-b' \pm \sqrt{b'^2 - ac}}{a}$、$D/4 = b'^2 - ac$
$D < 0$ のとき、$\sqrt{D} = \sqrt{|D|}\,i$ として計算を進めます。
例:$x^2 - 2x + 5 = 0$ を解く。
$D/4 = 1 - 5 = -4$ より
$$x = \frac{2 \pm \sqrt{-4}}{2} = \frac{2 \pm 2i}{2} = 1 \pm i$$
実数係数の2次方程式 $ax^2 + bx + c = 0$ の解は $\dfrac{-b \pm \sqrt{D}}{2a}$ です。$D < 0$ のとき $\sqrt{D} = \sqrt{|D|}\,i$ なので、2つの解は
$$\alpha = \frac{-b + \sqrt{|D|}\,i}{2a}, \quad \beta = \frac{-b - \sqrt{|D|}\,i}{2a}$$
となり、$\beta = \bar{\alpha}$ です。つまり実数係数の方程式の虚数解は必ず共役ペアで現れます。
$ax^2 + bx + c = 0$($a, b, c$ は実数、$a \neq 0$)について
| $D$ の符号 | 解の種類 | 解の個数(実数) |
|---|---|---|
| $D > 0$ | 異なる2つの実数解 | 2個 |
| $D = 0$ | 重解(実数) | 1個(重複度2) |
| $D < 0$ | 異なる2つの虚数解(共役) | 0個 |
✗ $D < 0$ なので解なし
✓ $D < 0$ なので実数解なし(虚数解が2つある)
「解なし」は数学Iでの表現です。数学IIでは複素数範囲で考えるため、$D < 0$ でも必ず2つの(虚数)解が存在します。問題文の「実数解」「複素数の範囲で」の指定に注意しましょう。
$y = ax^2 + bx + c$ のグラフと $x$ 軸の共有点の個数は、まさに判別式 $D$ で決まります。
虚数解はグラフ上には現れませんが、方程式としては解が存在しています。これは「目に見えない解」とも言えます。
$b$ が偶数のとき($b = 2b'$ とおける場合)、$D/4 = b'^2 - ac$ を使うと計算がシンプルになります。例えば $x^2 - 6x + 13 = 0$ では $D/4 = 9 - 13 = -4$ とすぐに計算でき、$x = 3 \pm 2i$ が得られます。試験では $D/4$ を積極的に活用しましょう。
$a$ や $m$ などのパラメータを含む2次方程式の解の種類を判別する問題は、入試の定番です。
例:$x^2 - 2mx + m + 2 = 0$ が異なる2つの実数解をもつ $m$ の範囲を求めよ。
$D/4 = m^2 - (m+2) = m^2 - m - 2 = (m-2)(m+1) > 0$
$m < -1$ または $m > 2$
Step 1:判別式 $D$(または $D/4$)を計算する
Step 2:条件に合わせて $D$ の符号を決める不等式を立てる
Step 3:パラメータの範囲を求める
「2次方程式である」条件($a \neq 0$)の確認も忘れずに。
$D = 0$ のとき重解 $x = -\dfrac{b}{2a}$ をもちます。重解条件は方程式の係数から連立方程式を立てるのにも使えます。
例:$x^2 + ax + a + 3 = 0$ が重解をもつ $a$ の値を求めよ。
$D = a^2 - 4(a+3) = a^2 - 4a - 12 = (a-6)(a+2) = 0$
$a = 6$ のとき重解 $x = -3$、$a = -2$ のとき重解 $x = 1$。
✗ $ax^2 + bx + c = 0$ で $D$ を計算($a = 0$ の可能性を見落とす)
✓ まず $a \neq 0$ を確認してから $D$ を計算する
パラメータが $x^2$ の係数に入っている場合、$a = 0$ で1次方程式になる可能性があります。「2次方程式が〜」と問われたら、2次であることの確認が必須です。
2つの2次方程式が「共通解をもつ」「少なくとも一方が実数解をもつ」などの条件を考える問題は入試頻出です。
$f(x) = 0$ と $g(x) = 0$ が共通解 $\alpha$ をもつ
$$\iff f(\alpha) = 0 \text{ かつ } g(\alpha) = 0$$
$\alpha$ を消去して係数の条件を導く。
例:$x^2 + ax + b = 0$ と $x^2 + bx + a = 0$ が共通解をもつ条件を求めよ。
共通解を $\alpha$ とすると $\alpha^2 + a\alpha + b = 0$ …① かつ $\alpha^2 + b\alpha + a = 0$ …②
①−②:$(a-b)\alpha + (b-a) = 0$ より $(a-b)(\alpha - 1) = 0$
場合1:$a = b$ のとき、2つの方程式は同一なので常に共通解をもつ。
場合2:$a \neq b$ のとき、$\alpha = 1$。①に代入して $1 + a + b = 0$、すなわち $a + b = -1$。
したがって、$a = b$ または $a + b = -1$。
「少なくとも一方の方程式が実数解をもつ」ような条件は、余事象を使うと見通しがよくなります。
「少なくとも一方が実数解をもつ」の否定は「両方とも実数解をもたない」すなわち $D_1 < 0$ かつ $D_2 < 0$ です。このように、「少なくとも〜」の条件は余事象で考えるのが常道です。
係数に虚数を含む2次方程式では、判別式の意味が変わってくるので注意が必要です。
例:$x^2 - (3+i)x + (2+3i) = 0$ を解く。
解の公式を使うと $D = (3+i)^2 - 4(2+3i) = 9 + 6i + i^2 - 8 - 12i = 9 + 6i - 1 - 8 - 12i = -6i$
$\sqrt{-6i}$ の計算が複雑になるため、因数分解を試みます。
$\alpha + \beta = 3+i$、$\alpha\beta = 2+3i$ から推測して $\alpha = 1+i, \beta = 2$ を見つけます。
検算:$(1+i) + 2 = 3+i$ ✓、$(1+i) \cdot 2 = 2+2i$ …$\neq 2+3i$
再検討:$\alpha = 2+i, \beta = 1$ を試す。$2+i+1 = 3+i$ ✓、$(2+i) \cdot 1 = 2+i$ …$\neq 2+3i$
$\alpha = 1+3i, \beta = 2-2i$ を試す。$1+3i+2-2i = 3+i$ ✓、$(1+3i)(2-2i) = 2-2i+6i-6i^2 = 2+4i+6 = 8+4i$ …$\neq$
因数分解で解くと:$x^2 - (3+i)x + (2+3i) = 0$ に $x = 1+i$ を代入。
$(1+i)^2 - (3+i)(1+i) + (2+3i) = 2i - (3+3i+i+i^2) + 2+3i = 2i - (2+4i) + 2+3i = 2i - 2 - 4i + 2 + 3i = i \neq 0$
解の公式に戻って:$\sqrt{D} = \sqrt{-6i}$ を求めるため $z^2 = -6i$ とおくと $z = a+bi$ として $a^2-b^2 = 0, 2ab = -6$ より $a = b$ または $a = -b$。$a = -b$ で $2a(-a) = -6$ より $a^2 = 3$、$a = \sqrt{3}$。$z = \sqrt{3} - \sqrt{3}\,i$。
$$x = \frac{(3+i) \pm (\sqrt{3}-\sqrt{3}\,i)}{2}$$
✗ $D$ が負だから虚数解をもつ(虚数係数のとき)
✓ 虚数係数のとき、$D$ 自体が複素数になり得るので「$D > 0, = 0, < 0$」の分類が使えない
判別式による解の分類は実数係数の2次方程式にのみ適用できます。虚数係数の場合は、虚数解が共役ペアとは限らず、解の公式か因数分解で直接解くしかありません。
大学の代数学では代数学の基本定理を学びます:「$n$ 次の複素数係数多項式は、複素数の範囲で(重複を含めて)ちょうど $n$ 個の根をもつ」。これにより、あらゆる多項式方程式は複素数の範囲で完全に解けることが保証されます。実数だけでは不完全だった方程式論が、複素数の導入で完結するのです。
Q1. $x^2 + 4x + 13 = 0$ の解を求めよ。
Q2. $2x^2 - 3x + 5 = 0$ の判別式 $D$ を求め、解の種類を判別せよ。
Q3. $x^2 - 2kx + k + 6 = 0$ が重解をもつ $k$ の値をすべて求めよ。
Q4. $x^2 + ax + 2a = 0$ が異なる2つの正の実数解をもつとき、$a$ の範囲を求めよ。
Q5. 実数係数の2次方程式の一つの解が $2 - 3i$ のとき、もう一つの解を答えよ。
次の2次方程式を複素数の範囲で解け。
(1) $x^2 - 6x + 25 = 0$
(2) $3x^2 + 2x + 1 = 0$
(1) $D/4 = 9 - 25 = -16$ より $x = 3 \pm 4i$
(2) $D = 4 - 12 = -8$ より $x = \dfrac{-2 \pm \sqrt{-8}}{6} = \dfrac{-2 \pm 2\sqrt{2}\,i}{6} = \dfrac{-1 \pm \sqrt{2}\,i}{3}$
$x^2 + (2m-1)x + m^2 = 0$ が異なる2つの実数解をもつような実数 $m$ の範囲を求めよ。
$D = (2m-1)^2 - 4m^2 = 4m^2 - 4m + 1 - 4m^2 = -4m + 1 > 0$
$m < \dfrac{1}{4}$
2つの方程式 $x^2 - ax + a + 1 = 0$、$x^2 + (a-1)x - a = 0$ が共通の実数解をもつような実数 $a$ の値をすべて求めよ。
共通解を $\alpha$ とする。2式を辺々引くと
$-a\alpha + a + 1 - (a-1)\alpha + a = 0$
$-(2a-1)\alpha + 2a + 1 = 0$ …③
第2式は $x^2 + (a-1)x - a = (x+a)(x-1) = 0$ より $x = -a$ または $x = 1$。
場合1:$\alpha = 1$ を第1式に代入:$1 - a + a + 1 = 2 \neq 0$。不適。
場合2:$\alpha = -a$ を第1式に代入:$a^2 + a^2 + a + 1 = 0$
$2a^2 + a + 1 = 0$。$D = 1 - 8 = -7 < 0$ より実数解なし。
よって、共通の実数解をもつ $a$ の値は存在しない。
$a$ を実数の定数とする。2次方程式 $x^2 - 2ax + 2a^2 - a - 3 = 0$ について
(1) この方程式が実数解をもつような $a$ の範囲を求めよ。
(2) この方程式が正の実数解と負の実数解を1つずつもつような $a$ の範囲を求めよ。
(1) $D/4 = a^2 - (2a^2 - a - 3) = -a^2 + a + 3 \geq 0$
$a^2 - a - 3 \leq 0$ より $\dfrac{1 - \sqrt{13}}{2} \leq a \leq \dfrac{1 + \sqrt{13}}{2}$
(2) $f(x) = x^2 - 2ax + 2a^2 - a - 3$ とおく。正の解と負の解を1つずつもつ条件は $f(0) < 0$。
$f(0) = 2a^2 - a - 3 = (2a - 3)(a + 1) < 0$ より $-1 < a < \dfrac{3}{2}$
(2) で $f(0) < 0$ が必要十分である理由:$f(0) < 0$ のとき $y = f(x)$ のグラフ(下に凸の放物線)は $x = 0$ で負の値をとるため、$x$ 軸の正の部分と負の部分でそれぞれ1回ずつ交わります。判別式の条件 $D \geq 0$ は $f(0) < 0$ から自動的に満たされます。