第9章 複素数平面

複素数平面上の点の軌跡
─ 円・垂直二等分線・弧を読み解く

「$z$ が条件を満たすとき、$z$ はどんな図形を描くか」── これは複素数平面の醍醐味です。$|z - \alpha| = r$ が円を、$|z - \alpha| = |z - \beta|$ が垂直二等分線を表すことを出発点に、偏角の条件 $\arg\dfrac{z - \alpha}{z - \beta} = \theta$ が「弧」を描く理由まで、原理から丁寧に解き明かします。

1$|z - \alpha| = r$ ── なぜ円になるのか

実数の座標平面で「点 $(x, y)$ と点 $(a, b)$ の距離が $r$」と書けば、それは中心 $(a, b)$、半径 $r$ の円です。複素数平面でも全く同じことが起きます。

複素数 $z$ を点とみなし、$\alpha$ を固定された複素数とすると、$|z - \alpha|$ は $z$ と $\alpha$ の距離を表します。したがって $|z - \alpha| = r$($r > 0$)は、$\alpha$ を中心とする半径 $r$ の円にほかなりません。

📐 円の方程式(複素数版)

$$|z - \alpha| = r \quad (r > 0)$$

$\alpha = a + bi$ のとき、$z = x + yi$ を代入すると:

$$(x - a)^2 + (y - b)^2 = r^2$$

※ 実部・虚部に分解すれば、通常の円の方程式と完全に一致します。

💡 ここが本質:距離の等式 = 図形の方程式

複素数平面における $|z - \alpha|$ は「$z$ と $\alpha$ の距離」です。この一点を押さえれば、$|z - \alpha| = r$ が円であること、$|z - \alpha| \leq r$ が円の内部であることは自明です。

複素数の絶対値 = 距離という対応が、軌跡問題の全ての出発点になります。

不等式への拡張

$|z - \alpha| < r$ は円の内部、$|z - \alpha| > r$ は円の外部を表します。入試では「$z$ の存在範囲」を求める問題で頻出です。

また、$|z - \alpha| = 0$ は $z = \alpha$ を意味し、1点だけを表します。$r$ が負の場合は解なしです。こうした場合分けを忘れないことが大切です。

⚠️ 落とし穴:$|z|^2$ と $z\bar{z}$ の混同

✗ 誤:$|z|^2 = z^2$ と計算する

○ 正:$|z|^2 = z\bar{z}$ である($z$ は一般に複素数なので $z^2 \neq |z|^2$)

$|z - \alpha|^2$ を展開するとき、$(z - \alpha)\overline{(z - \alpha)} = (z - \alpha)(\bar{z} - \bar{\alpha})$ と共役を正しく取りましょう。

2$|z - \alpha| = |z - \beta|$ ── 垂直二等分線の正体

2つの固定点 $\alpha, \beta$ からの距離が等しい点の集合は何でしょうか。実数の世界では「2点 $A, B$ から等距離にある点の集合 = 線分 $AB$ の垂直二等分線」です。複素数平面でも同じです。

📐 垂直二等分線の方程式(複素数版)

$$|z - \alpha| = |z - \beta|$$

これは $\alpha$ と $\beta$ を結ぶ線分の垂直二等分線を表す。

※ 両辺を2乗して展開すると、$z$ と $\bar{z}$ の1次式(直線の方程式)が得られます。

展開による確認

$|z - \alpha|^2 = |z - \beta|^2$ を展開してみましょう。

$$(z - \alpha)(\bar{z} - \bar{\alpha}) = (z - \beta)(\bar{z} - \bar{\beta})$$

$$z\bar{z} - \alpha\bar{z} - \bar{\alpha}z + |\alpha|^2 = z\bar{z} - \beta\bar{z} - \bar{\beta}z + |\beta|^2$$

$$(\beta - \alpha)\bar{z} + (\bar{\beta} - \bar{\alpha})z = |\beta|^2 - |\alpha|^2$$

これは $z$ と $\bar{z}$ の1次式なので、確かに直線を表しています。

💡 ここが本質:「距離が等しい」= 垂直二等分線

「2点から等距離」→「垂直二等分線」という対応は、初等幾何の基本定理そのものです。複素数平面はこの幾何的直観を式で表現する言語にすぎません。

式の変形テクニックに頼る前に、まず「この条件は幾何的に何を意味するか」を考える習慣をつけましょう。

⚠️ 落とし穴:$|z - \alpha| = k|z - \beta|$ を垂直二等分線と即断する

✗ 誤:$|z - \alpha| = 2|z - \beta|$ は垂直二等分線

○ 正:$k = 1$ のときだけ垂直二等分線。$k \neq 1$ のときはアポロニウスの円になる

$|z - \alpha| = k|z - \beta|$($k > 0,\; k \neq 1$)はアポロニウスの円を表します。これは次の記事で詳しく扱います。

🔗 実部・虚部に分解する方法

$z = x + yi$, $\alpha = a_1 + b_1 i$, $\beta = a_2 + b_2 i$ を代入して実部・虚部に分解すれば、通常の座標平面の直線の方程式 $Ax + By = C$ が得られます。複素数の式と座標の式の両方で扱えるようにしておくと、問題の状況に応じて使い分けられます。

3$\arg\dfrac{z - \alpha}{z - \beta} = \theta$ ── 弧の条件

絶対値の条件が円や直線を表したように、偏角の条件は「弧」を表します。これは複素数平面ならではの美しい結果で、円周角の定理と深くつながっています。

偏角の幾何的意味

$z$, $\alpha$, $\beta$ を複素数平面上の3点とするとき、$\dfrac{z - \alpha}{z - \beta}$ の偏角を考えましょう。

$\arg(z - \alpha)$ は $\beta$ から $\alpha$ への方向ではなく、原点から見た $z - \alpha$ の偏角です。しかし $\arg\dfrac{z - \alpha}{z - \beta} = \arg(z - \alpha) - \arg(z - \beta)$ は、点 $z$ から $\alpha$ への方向と $z$ から $\beta$ への方向のなす角 $\angle \beta z \alpha$ に等しくなります。

📐 弧の方程式(偏角条件)

$$\arg\frac{z - \alpha}{z - \beta} = \theta \quad (0 < \theta < \pi \text{ または } -\pi < \theta < 0)$$

これは $\alpha$, $\beta$ を端点とする弧の上の点 $z$ の集合を表す。

特に $\theta = \dfrac{\pi}{2}$ のとき、$z$ は $\alpha\beta$ を直径とする円の弧(半円)上にある。

※ $\theta$ の符号により弧が線分のどちら側にあるかが決まります。

💡 ここが本質:偏角条件と円周角の定理

$\arg\dfrac{z - \alpha}{z - \beta} = \theta$ は「点 $z$ から線分 $\alpha\beta$ を見込む角が $\theta$」という条件です。

円周角の定理により、同じ弧に対する円周角は一定です。つまり、$\angle\beta z\alpha = \theta$ を満たす $z$ の軌跡は、$\alpha, \beta$ を通るある円の弧になるのです。

偏角条件 = 円周角の定理の複素数版、と理解しましょう。

特殊な場合

$\theta$ の値によって、軌跡の形が変わります。

条件軌跡
$\theta = \dfrac{\pi}{2}$$\alpha\beta$ を直径とする円の半円($z$ が線分のどちら側かは符号による)
$\theta = 0$ または $\theta = \pi$$\alpha$, $\beta$ を通る直線($\alpha$, $\beta$ を除く部分)
$0 < \theta < \pi$$\alpha$, $\beta$ を端点とする劣弧または優弧
⚠️ 落とし穴:弧の「どちら側」かを忘れる

✗ 誤:$\arg\dfrac{z - \alpha}{z - \beta} = \dfrac{\pi}{4}$ を満たす $z$ は「円全体」にある

○ 正:円の片側の弧のみ。もう片側の弧は $\arg\dfrac{z - \alpha}{z - \beta} = \dfrac{\pi}{4} - \pi = -\dfrac{3\pi}{4}$

偏角条件は弧の片側だけを指定します。反対側の弧が必要な場合は $\theta - \pi$ の条件を別途考えましょう。$\alpha$, $\beta$ 自身は軌跡に含まれないことにも注意が必要です。

▷ なぜ弧になるか ── 円周角の定理から

点 $z$ から2点 $\alpha$, $\beta$ を見込む角 $\angle\beta z\alpha = \theta$ が一定であるとします。

円周角の定理の逆より、$\angle\beta z\alpha$ が一定であるような点 $z$ の集合は、$\alpha$, $\beta$ を通るある円の弧です。

具体的には、$\alpha$, $\beta$ を通り中心角が $2\theta$ となる円を考えると、その弧上の任意の点での円周角が $\theta$ となります。

$\arg\dfrac{z-\alpha}{z-\beta}$ は向き(符号)付きの角度なので、弧の片側だけが条件を満たします。

🔗 $\arg\dfrac{z-\alpha}{z-\beta} = \theta$ から円の中心と半径を求める

$\alpha$, $\beta$ を通る円の中心は、線分 $\alpha\beta$ の垂直二等分線上にあります。中心角と円周角の関係 $2\theta = \text{中心角}$ から半径を計算できます。具体的には、$|\alpha - \beta|$ を $2R\sin\theta$ で割れば外接円の半径 $R$ が求まります(正弦定理と同じ原理です)。

4軌跡問題の解法パターン

複素数平面の軌跡問題では、与えられた条件を「絶対値の条件」か「偏角の条件」に帰着させることが基本方針です。

パターン分類

条件の形軌跡解法の方針
$|z - \alpha| = r$中心 $\alpha$、半径 $r$ の円直接読み取り
$|z - \alpha| = |z - \beta|$$\alpha\beta$ の垂直二等分線直接読み取り
$|z - \alpha| = k|z - \beta|$($k \neq 1$)アポロニウスの円両辺2乗して整理
$\arg\dfrac{z-\alpha}{z-\beta} = \theta$円周角の定理を利用
$z = f(w)$ で $w$ が円上$f$ による像$w$ を消去して $z$ の条件へ

「$z$ と $\bar{z}$ の連立」テクニック

軌跡を求める際、$z = x + yi$ と置いて実部・虚部に分解する方法のほかに、$z$ と $\bar{z}$ を独立な変数のように扱って計算する方法があります。

例えば、$|z - 1|^2 = 4$ を展開すると $(z-1)(\bar{z}-1) = 4$、つまり $z\bar{z} - z - \bar{z} + 1 = 4$ です。$z\bar{z} = |z|^2 = x^2 + y^2$、$z + \bar{z} = 2x$ を使えば $x^2 + y^2 - 2x - 3 = 0$、すなわち $(x-1)^2 + y^2 = 4$ と簡潔に円の方程式が得られます。

⚠️ 落とし穴:$z = x + yi$ への分解で計算ミス

✗ 誤:$|z - (1+i)|^2$ を $(x-1)^2 + (y-1)^2$ と展開する際に符号ミス

○ 正:$z - (1+i) = (x-1) + (y-1)i$ なので $|z-(1+i)|^2 = (x-1)^2 + (y-1)^2$

$\alpha = a + bi$ のとき、虚部は $y - b$ であって $y + b$ ではありません。$z - \alpha$ を丁寧に書き下すことで防げます。

💡 ここが本質:軌跡問題の2つのアプローチ

方法1(幾何的直観):条件の意味を幾何的に解釈して、直接「円」「直線」「弧」と判断する。

方法2(代数的計算):$z = x + yi$ と置いて実部・虚部に分解し、$x, y$ の方程式として整理する。

方法1で見通しを立て、方法2で確認する ── この二段構えが最も確実です。

5複合条件と応用

入試問題では、絶対値と偏角の条件が組み合わさったり、$z$ の変換を経由して軌跡を求めたりする問題が出題されます。ここでは典型的な複合パターンを整理します。

絶対値と偏角の同時指定

$|z - \alpha| = r$ かつ $\arg(z - \alpha) = \theta$ という条件が同時に与えられると、$z$ は円周上の1点に確定します。$z = \alpha + r(\cos\theta + i\sin\theta)$ です。

パラメータ付き軌跡

$w = z^2$ で $z$ が $|z| = 1$ 上を動くとき、$w$ の軌跡を求める ── このような問題では、$z = \cos\theta + i\sin\theta$ とパラメータ表示して $w$ を計算するのが定石です。

$$w = z^2 = \cos 2\theta + i\sin 2\theta$$

$\theta$ が $0$ から $2\pi$ まで動くと $2\theta$ は $0$ から $4\pi$ まで動き、$w$ は単位円を2周します。よって軌跡は $|w| = 1$(単位円)です。

⚠️ 落とし穴:軌跡の「全体」を求めたか確認する

✗ 誤:$w = z^2$ で $z$ が上半円を動くとき、$w$ は単位円全体を動く

○ 正:$z$ が上半円($0 \leq \theta \leq \pi$)なら $w = \cos 2\theta + i\sin 2\theta$ で $0 \leq 2\theta \leq 2\pi$、つまり $w$ は単位円全体を1周する。この場合は正しいが、$z$ の範囲制限がある場合は $w$ の範囲にも注意

パラメータの範囲を必ず確認しましょう。特に $z$ が弧の一部しか動かないとき、$w$ も対応する部分だけが軌跡です。

逆像を求める問題

「$w = \dfrac{z+1}{z-1}$ で $w$ が実軸上にあるとき、$z$ の軌跡を求めよ」のような問題では、$w$ が実数 $\Leftrightarrow$ $w = \bar{w}$ という条件を使います。

$w = \bar{w}$ は $\dfrac{z+1}{z-1} = \dfrac{\bar{z}+1}{\bar{z}-1}$ を意味し、クロス乗算して整理すると $z\bar{z} - z\bar{z} = 0$ ではなく、$z\bar{z}$ を含む方程式が得られ、直線や円の方程式に帰着します。

🔗 メビウス変換への橋渡し

$w = \dfrac{az + b}{cz + d}$ の形の変換は一次分数変換(メビウス変換)と呼ばれ、「円と直線を円と直線に写す」という美しい性質をもちます。これは C-3-8 で詳しく学びます。ここでの軌跡問題は、メビウス変換の具体例になっています。

まとめ

✅ 確認テスト

Q1. $|z - 2i| = 3$ はどんな図形を表すか。

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中心 $2i$(点 $(0, 2)$)、半径 $3$ の円。

Q2. $|z - 1| = |z - i|$ はどんな図形を表すか。

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$1$ と $i$ を結ぶ線分(すなわち点 $(1,0)$ と $(0,1)$ を結ぶ線分)の垂直二等分線。直線 $y = x$ にあたる。

Q3. $\arg\dfrac{z - 1}{z + 1} = \dfrac{\pi}{2}$ はどんな図形を表すか。

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$\alpha = 1$, $\beta = -1$ を端点とし、$z$ から見た $\angle(-1)z(1) = \dfrac{\pi}{2}$ となる弧。$1$ と $-1$ を直径の両端とする単位円の上半分(ただし $z = \pm 1$ を除く)。

Q4. $|z|^2$ を $z$ と $\bar{z}$ で表せ。

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$|z|^2 = z\bar{z}$

Q5. $z$ が $|z| = 2$ 上を動くとき、$w = z + \dfrac{1}{z}$ の実部の範囲を求めよ。

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$z = 2(\cos\theta + i\sin\theta)$ とおくと $\dfrac{1}{z} = \dfrac{1}{2}(\cos\theta - i\sin\theta)$ より、$w$ の実部 $= 2\cos\theta + \dfrac{1}{2}\cos\theta = \dfrac{5}{2}\cos\theta$。よって $-\dfrac{5}{2} \leq \text{Re}(w) \leq \dfrac{5}{2}$。

入試問題演習

問題 1 LEVEL A 円の方程式

複素数 $z$ が $|z - 3 + 4i| = 5$ を満たすとき、$|z|$ の最大値と最小値を求めよ。

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解答

$|z - (3 - 4i)| = 5$ は中心 $3 - 4i$、半径 $5$ の円である。

中心と原点の距離は $|3 - 4i| = \sqrt{9 + 16} = 5$。

$|z|$ は原点と点 $z$ の距離であり、三角不等式から:

$$||z| - |3-4i|| \leq |z - (3-4i)| = 5$$

$$|z| - 5| \leq 5$$

$$0 \leq |z| \leq 10$$

よって最大値 $10$、最小値 $0$。最小値は原点が円上にあることから達成される($z = 0$ で $|0 - 3 + 4i| = 5$ を確認)。

採点ポイント
  • 円の中心と半径の特定 … 2点
  • 中心と原点の距離の計算 … 3点
  • 三角不等式の適用 … 3点
  • 最大値・最小値の答え … 2点
問題 2 LEVEL B 偏角条件

$\alpha = 1 + i$, $\beta = 1 - i$ とする。$\arg\dfrac{z - \alpha}{z - \beta} = \dfrac{\pi}{4}$ を満たす点 $z$ の軌跡を求め、その円の中心と半径を答えよ。

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解答

$\alpha = 1+i$, $\beta = 1-i$ より $\alpha, \beta$ は点 $(1,1)$, $(1,-1)$ である。

$\arg\dfrac{z-\alpha}{z-\beta} = \dfrac{\pi}{4}$ は、$z$ から $\alpha$ と $\beta$ を見込む角が $\dfrac{\pi}{4}$ となる条件である。

$\alpha\beta$ の中点は $1$、$|\alpha - \beta| = |2i| = 2$。

円周角 $\dfrac{\pi}{4}$ に対する中心角は $\dfrac{\pi}{2}$。正弦定理より:

$$2R = \frac{|\alpha - \beta|}{\sin\dfrac{\pi}{4}} = \frac{2}{\frac{\sqrt{2}}{2}} = 2\sqrt{2}$$

よって $R = \sqrt{2}$。

中心は $\alpha\beta$ の垂直二等分線(実軸:$y = 0$ の直線ではなく $x = 1$ の直線上)から距離 $\sqrt{R^2 - 1} = 1$ にある。弧の条件($\theta > 0$ は線分の左側)から中心は $(1-1, 0) = (0, 0)$ 、つまり原点。

確認:中心が原点、半径 $\sqrt{2}$ の円は $|z| = \sqrt{2}$。$\alpha, \beta$ はこの円上にある($|1+i| = \sqrt{2}$, $|1-i| = \sqrt{2}$)。

軌跡は原点を中心、半径 $\sqrt{2}$ の円の、実軸より左側の弧($\alpha$, $\beta$ を除く)。

採点ポイント
  • 偏角条件の幾何的解釈 … 3点
  • 正弦定理による半径計算 … 3点
  • 中心の決定 … 2点
  • 弧の片側指定 … 2点
問題 3 LEVEL B 軌跡と変換

$z$ が $|z| = 1$ を満たすとき、$w = z + 2\bar{z}$ の軌跡を求めよ。

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解答

$|z| = 1$ より $z = \cos\theta + i\sin\theta$, $\bar{z} = \cos\theta - i\sin\theta$。

$$w = z + 2\bar{z} = (\cos\theta + i\sin\theta) + 2(\cos\theta - i\sin\theta)$$

$$= 3\cos\theta - i\sin\theta$$

$w = u + vi$ とおくと $u = 3\cos\theta$, $v = -\sin\theta$。

$$\frac{u^2}{9} + v^2 = \cos^2\theta + \sin^2\theta = 1$$

よって軌跡は楕円 $\dfrac{u^2}{9} + v^2 = 1$(実軸方向の半径3、虚軸方向の半径1)。

解説

$|z| = 1$ のとき $\bar{z} = \dfrac{1}{z}$ であることを利用して $w = z + \dfrac{2}{z}$ と書き換えることもできます。パラメータ表示から $\cos\theta, \sin\theta$ を消去して $u, v$ の関係式を導くのが定石です。

採点ポイント
  • $z$ のパラメータ表示 … 2点
  • $w$ の実部・虚部の計算 … 3点
  • パラメータ消去 … 3点
  • 楕円の方程式 … 2点
問題 4 LEVEL C 複合条件

複素数 $z$ が次の2条件を同時に満たすとき、$z$ の軌跡を求めよ。

(i) $|z - 2| = |z + 2i|$

(ii) $\arg(z) = \theta$ ただし $0 < \theta < \dfrac{\pi}{2}$

また、条件(i)のみを満たす $z$ について $|z|$ の最小値を求めよ。

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解答

条件(i)の解釈:$|z - 2| = |z - (-2i)|$ は $2$ と $-2i$ の垂直二等分線。

$z = x + yi$ とおくと $(x-2)^2 + y^2 = x^2 + (y+2)^2$。

$$x^2 - 4x + 4 + y^2 = x^2 + y^2 + 4y + 4$$

$$-4x = 4y \quad \therefore\; y = -x$$

これは直線 $y = -x$ である。

条件(i)かつ(ii):$0 < \theta < \dfrac{\pi}{2}$(第1象限の偏角)を持ち、かつ直線 $y = -x$ 上にある $z$ を求める。$y = -x$ で第1象限($x > 0, y > 0$)の点は存在しない($y = -x < 0$ となる)。

よって条件(i)と(ii)を同時に満たす $z$ は存在しない。

$|z|$ の最小値:直線 $y = -x$ 上で $|z| = \sqrt{x^2 + y^2} = \sqrt{x^2 + x^2} = |x|\sqrt{2}$。

$|z|$ の最小値は $x = 0$ のとき $|z| = 0$、すなわち $z = 0$ で達成。よって最小値 $0$。

解説

条件の組み合わせが空集合になる場合もあります。「軌跡が存在しない」と正しく判断できることも重要な力です。また、直線上での原点からの距離の最小値は、原点が直線上にあるかどうかで場合分けします。

採点ポイント
  • 垂直二等分線の方程式導出 … 3点
  • 条件(i)と(ii)の両立不能の判定 … 3点
  • $|z|$ の最小値の導出 … 2点
  • 論述の正確さ … 2点