第8章 平面上の曲線

いろいろな曲線の媒介変数表示
─ 回転と振動が生む多彩な曲線たち

前節でサイクロイドを学びましたが、媒介変数表示の世界にはさらに多彩な曲線が広がっています。星形のアステロイド、心臓形のカージオイド、振動が織りなすリサージュ曲線。これらの曲線は「回転×回転」や「回転×直進」の組合せから生まれ、それぞれに固有の美しい性質を持っています。

1アステロイド ─ 星形を描く内転円

半径 $a$ の円の内側を、半径 $a/4$ の小円が滑らずに転がるとき、小円上の定点が描く曲線をアステロイド(星芒形)と呼びます。

📐 アステロイドの媒介変数表示

$$x = a\cos^3 t, \quad y = a\sin^3 t \quad (0 \le t < 2\pi)$$

直交座標での方程式($t$ を消去):$x^{2/3} + y^{2/3} = a^{2/3}$

※ 4つのカスプ(尖点)を持つ星形の閉曲線。周の長さは $6a$、囲む面積は $\dfrac{3}{8}\pi a^2$。

💡 ここが本質:アステロイドの導出メカニズム

半径 $R$ の定円の内側を半径 $r$ の動円が転がる曲線をハイポサイクロイドと呼びます。アステロイドは $R/r = 4$ の特殊な場合です。

動円の中心は $(R-r)\cos t$ と $(R-r)\sin t$ で円運動し、定点は中心からの相対位置が回転角 $-(R-r)t/r$ で決まります。$R = a$, $r = a/4$ のとき、相対回転角は $-3t$ となり、三角関数の3倍角の公式が $\cos^3 t$ や $\sin^3 t$ を生み出すのです。

▷ $t$ の消去:$x^{2/3} + y^{2/3} = a^{2/3}$ の導出

$x = a\cos^3 t$ より $x^{1/3} = a^{1/3}\cos t$、$y = a\sin^3 t$ より $y^{1/3} = a^{1/3}\sin t$

$$\left(\frac{x}{a}\right)^{2/3} + \left(\frac{y}{a}\right)^{2/3} = \cos^2 t + \sin^2 t = 1$$

よって $x^{2/3} + y^{2/3} = a^{2/3}$

⚠️ 落とし穴:$x^{2/3}$ は $x < 0$ でも定義される

✗ 誤:$x^{2/3}$ は $x \ge 0$ でのみ定義される

○ 正:$x^{2/3} = (x^{1/3})^2 = (\sqrt[3]{x})^2$ なので、$x < 0$ でも実数値をとる

例えば $(-8)^{2/3} = ((-8)^{1/3})^2 = (-2)^2 = 4$ です。アステロイドの方程式が4象限すべてで有効なのはこのためです。

🔬 深掘り:アステロイドと包絡線

実はアステロイドは、長さ $a$ の線分の両端が $x$ 軸と $y$ 軸の上を動くときの包絡線でもあります。直線 $\dfrac{x}{\cos t} + \dfrac{y}{\sin t} = a$ の $t$ に関する包絡線を計算するとアステロイドが得られます。これは「はしご問題」(壁に立てかけたはしごが滑り落ちるとき通過する領域の境界)としても知られています。

2カージオイド ─ 心臓形の曲線

カージオイド(心臓形)は、半径 $a$ の円の外側を同じ半径 $a$ の円が転がるとき、動円上の定点が描く曲線です。名前の通り、ハート型(正確には心臓の形)をしています。

📐 カージオイドの媒介変数表示

$$x = a(2\cos t - \cos 2t), \quad y = a(2\sin t - \sin 2t) \quad (0 \le t < 2\pi)$$

極座標での方程式:$r = 2a(1 + \cos\theta)$(もしくは $r = 2a(1 - \cos\theta)$)

※ 1つのカスプを持つ閉曲線。面積は $6\pi a^2$、周の長さは $16a$。

カージオイドの極方程式 $r = 2a(1 + \cos\theta)$ は非常にシンプルで、極座標表示の代表例として頻出します。$\theta = \pi$ で $r = 0$ となり、これがカスプに対応します。

⚠️ 落とし穴:カージオイドの極方程式は向きが複数ある

✗ 誤:カージオイドの極方程式は $r = 2a(1+\cos\theta)$ の1通りのみ

○ 正:$r = 2a(1-\cos\theta)$, $r = 2a(1+\sin\theta)$, $r = 2a(1-\sin\theta)$ もカージオイドを表す

$\cos$ と $\sin$ の選択、符号の選択によってカスプの位置(右・左・上・下)が変わります。問題の条件をよく確認しましょう。

💡 ここが本質:カージオイドはリマソンの特殊な場合

極方程式 $r = a + b\cos\theta$ で表される曲線をリマソン(パスカルの蝸牛線)と呼びます。カージオイドは $a = b$ の特殊な場合です。

$a > b$ のとき:くびれのない卵形、$a = b$ のとき:カージオイド(1つのカスプ)、$a < b$ のとき:内側にループを持つ形

3インボリュート ─ 糸をほどくと現れる曲線

円に巻き付けた糸をピンと張ったまま巻き戻すとき、糸の先端が描く曲線をインボリュート(伸開線)と呼びます。

📐 円のインボリュートの媒介変数表示

半径 $a$ の円のインボリュート:

$$x = a(\cos t + t\sin t), \quad y = a(\sin t - t\cos t)$$

※ $t \ge 0$ で、原点から渦巻き状に広がっていく曲線。$t$ は糸が円に接する点の偏角。

導出の考え方

半径 $a$ の円上の点 $A(a\cos t, a\sin t)$ から、糸をほどいた分だけ接線方向に伸ばします。$A$ における円の接線方向の単位ベクトルは $(-\sin t, \cos t)$ で、ほどいた糸の長さは弧 $at$ です。したがって先端 $P$ は:

$$P = (a\cos t, a\sin t) + at(-\sin t, \cos t) \cdot (-1)$$

(巻き戻す方向なので符号に注意)整理すると上の公式を得ます。

⚠️ 落とし穴:インボリュートは閉曲線ではない

✗ 誤:$t$ を $0$ から $2\pi$ まで動かせばインボリュートの全体が得られる

○ 正:インボリュートは $t \to \infty$ で無限に広がる開曲線。$t$ の範囲を大きくするほど外側に渦を巻く

$t = 0$ で曲線は円上の点 $(a, 0)$ から始まり、$t$ が増加するにつれて渦巻き状に広がっていきます。

🔬 深掘り:インボリュート歯車

インボリュート曲線は工業的に極めて重要です。インボリュート歯車の歯の形状はこの曲線に基づいており、歯車の中心間距離が多少ずれても滑らかに噛み合うという優れた性質を持ちます。18世紀にオイラーが提案し、現代の機械工学の基盤となっています。

4リサージュ曲線 ─ 2つの振動の合成

リサージュ曲線は、$x$ 方向と $y$ 方向にそれぞれ異なる周波数で振動する点が描く曲線です。

📐 リサージュ曲線の媒介変数表示

$$x = A\sin(at + \delta), \quad y = B\sin bt$$

ここで $A$, $B$ は振幅、$a$, $b$ は角振動数、$\delta$ は位相差。

※ $a : b$ が有理数のとき曲線は閉じる。$a : b = 1 : 1$ で $\delta = \pi/2$ のとき楕円、$\delta = 0$ のとき直線となる。

💡 ここが本質:周波数比が曲線の形を決める

リサージュ曲線の形は周波数比 $a : b$位相差 $\delta$ で決まります。

$a : b = 1 : 1$:楕円($\delta$ によって傾きが変わる)

$a : b = 1 : 2$:8の字や放物線に似た形

$a : b = 2 : 3$:より複雑な閉曲線

$a : b$ が無理数のとき、曲線は閉じず、長方形 $|x| \le A$, $|y| \le B$ の内部を稠密に埋め尽くします。

特殊な場合の確認

$a = b = 1$, $A = B = 1$ のとき、$x = \sin(t + \delta)$, $y = \sin t$ です。

  • $\delta = 0$:$x = \sin t = y$ つまり直線 $x = y$
  • $\delta = \pi/2$:$x = \cos t$, $y = \sin t$ つまり円 $x^2 + y^2 = 1$
  • $\delta = \pi/4$:傾いた楕円
⚠️ 落とし穴:リサージュ曲線の閉じる条件

✗ 誤:リサージュ曲線は常に閉曲線

○ 正:$a/b$ が有理数のときのみ閉じる。無理数のときは閉じない

$a/b$ が無理数のとき、$t$ をいくら大きくしても曲線は同じ点を通らず、限りなく複雑なパターンを描き続けます。

🔬 深掘り:オシロスコープとリサージュ図形

リサージュ曲線は19世紀にフランスの物理学者リサージュが発見しました。2つの音叉の振動をオシロスコープで直交する方向に入力すると画面にリサージュ図形が現れます。周波数比の微妙なずれが曲線をゆっくり変化させ、「見える音」として周波数の比較に利用されました。現代の電子工学でも信号の位相関係の確認に使われています。

5トロコイド ─ サイクロイドの一般化

前節で学んだサイクロイドは「円周上の点」が描く曲線でしたが、円周上ではなく円の内部や外部の点が描く曲線をトロコイドと呼びます。

📐 トロコイドの媒介変数表示

半径 $a$ の円が $x$ 軸上を転がるとき、中心から距離 $d$ の点が描く曲線:

$$x = at - d\sin t, \quad y = a - d\cos t$$

※ $d = a$ でサイクロイド。$d < a$ で波形(プロレートサイクロイド)、$d > a$ でループ付き(カーテートサイクロイド)。

$d$ の値による形状の変化

$d$ の範囲名称形状の特徴
$d < a$縮閉トロコイド波形。カスプなし。$x$ 軸に接しない
$d = a$サイクロイドカスプを持つ。$x$ 軸に接する
$d > a$伸長トロコイドループ(自己交差)を持つ。$x$ 軸の下にも入る
💡 ここが本質:すべての「転がり曲線」の統一的視点

サイクロイド、トロコイド、エピサイクロイド(外転)、ハイポサイクロイド(内転)はすべて「円が別の曲線の上を転がるときの軌跡」として統一的に理解できます。

直線上 → サイクロイド・トロコイド、円の外側 → エピサイクロイド(カージオイドなど)、円の内側 → ハイポサイクロイド(アステロイドなど)

パラメータ(半径の比、描画点の位置)を変えることで、無限の曲線のバリエーションが生まれます。

⚠️ 落とし穴:サイクロイドとトロコイドの混同

✗ 誤:「車輪の回転が描く曲線」は常にサイクロイド

○ 正:車輪の縁($d = a$)ならサイクロイド、ハブやスポーク($d \neq a$)の点ならトロコイド

自転車のバルブ(タイヤの外側、$d > a$)はループ付きのトロコイドを、ハブの点($d < a$)は波形のトロコイドを描きます。

まとめ

✅ 確認テスト

Q1. アステロイド $x = a\cos^3 t$, $y = a\sin^3 t$ のカスプの数は?

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4つ。$t = 0, \pi/2, \pi, 3\pi/2$ で $(a,0)$, $(0,a)$, $(-a,0)$, $(0,-a)$ にカスプがある。

Q2. カージオイドの極方程式 $r = 2a(1+\cos\theta)$ で $r = 0$ となる $\theta$ は?

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$\cos\theta = -1$ より $\theta = \pi$。これがカスプの位置。

Q3. リサージュ曲線 $x = \sin t$, $y = \sin 2t$ は閉曲線か?

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$a:b = 1:2$(有理数比)なので閉曲線。$t = 0$ から $t = 2\pi$ で1周する。

Q4. トロコイドで $d > a$ のとき、曲線にはどんな特徴がある?

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ループ(自己交差)を持つ。描画点が円の外側にあるため、$x$ 軸の下にも回り込む。

Q5. アステロイドを $x$-$y$ の関係式で表すと?

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$x^{2/3} + y^{2/3} = a^{2/3}$

6入試問題演習

問題 1 LEVEL A アステロイド×方程式

アステロイド $x = 2\cos^3 t$, $y = 2\sin^3 t$ について、$t = \dfrac{\pi}{4}$ に対応する点の座標と、その点における $\dfrac{dy}{dx}$ の値を求めよ。

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解答

$t = \pi/4$ のとき:$x = 2\left(\dfrac{\sqrt{2}}{2}\right)^3 = 2 \cdot \dfrac{\sqrt{2}}{4} = \dfrac{\sqrt{2}}{2}$

同様に $y = \dfrac{\sqrt{2}}{2}$。点は $\left(\dfrac{\sqrt{2}}{2},\;\dfrac{\sqrt{2}}{2}\right)$。

$\dfrac{dx}{dt} = -6\cos^2 t \sin t$, $\dfrac{dy}{dt} = 6\sin^2 t \cos t$

$$\frac{dy}{dx} = \frac{6\sin^2 t \cos t}{-6\cos^2 t \sin t} = -\frac{\sin t}{\cos t} = -\tan t$$

$t = \pi/4$ で $\dfrac{dy}{dx} = -\tan\dfrac{\pi}{4} = -1$

採点ポイント
  • 点の座標 … 4点
  • $dx/dt$, $dy/dt$ の計算 … 3点
  • $dy/dx = -1$ … 3点
問題 2 LEVEL B リサージュ×消去

媒介変数表示 $x = \sin t$, $y = \sin 2t$ から $t$ を消去して $x$ と $y$ の関係式を求めよ。また、この曲線の概形を述べよ。

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解答

$y = \sin 2t = 2\sin t \cos t = 2x\cos t$

$\cos t = \pm\sqrt{1 - \sin^2 t} = \pm\sqrt{1 - x^2}$ より:

$$y = \pm 2x\sqrt{1 - x^2}$$

両辺を2乗すると $y^2 = 4x^2(1 - x^2)$

$$y^2 = 4x^2 - 4x^4$$

概形:$-1 \le x \le 1$ の範囲で、原点を通り $x$ 軸に関して対称な8の字型の曲線。$x = \pm\dfrac{1}{\sqrt{2}}$ のとき $|y|$ は最大値 $1$ をとる。

採点ポイント
  • $y = 2x\cos t$ への変形 … 3点
  • $\cos t$ の消去 … 3点
  • $y^2 = 4x^2(1-x^2)$ … 2点
  • 概形の説明 … 2点
問題 3 LEVEL B アステロイド×弧長

アステロイド $x = a\cos^3 t$, $y = a\sin^3 t$ の第1象限部分($0 \le t \le \pi/2$)の弧長を求めよ。

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解答

$\dfrac{dx}{dt} = -3a\cos^2 t \sin t$, $\dfrac{dy}{dt} = 3a\sin^2 t \cos t$

$$\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dy}{dt}\right)^2 = 9a^2\cos^4 t\sin^2 t + 9a^2\sin^4 t\cos^2 t$$

$$= 9a^2\cos^2 t\sin^2 t(\cos^2 t + \sin^2 t) = 9a^2\cos^2 t\sin^2 t$$

$0 \le t \le \pi/2$ で $\cos t \ge 0$, $\sin t \ge 0$ より:

$$L = \int_0^{\pi/2} 3a\cos t\sin t\,dt = 3a\int_0^{\pi/2}\frac{\sin 2t}{2}\,dt = \frac{3a}{2}\left[-\frac{\cos 2t}{2}\right]_0^{\pi/2}$$

$$= \frac{3a}{4}(1 + 1) = \frac{3a}{2}$$

全周は $4 \times \dfrac{3a}{2} = 6a$。

採点ポイント
  • 微分の計算 … 3点
  • 被積分関数の整理 … 3点
  • 積分の実行と結果 $3a/2$ … 4点
問題 4 LEVEL C カージオイド×面積

カージオイド $r = a(1 + \cos\theta)$($a > 0$)で囲まれた部分の面積を求めよ。

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解答

極座標の面積公式 $S = \dfrac{1}{2}\displaystyle\int_0^{2\pi} r^2\,d\theta$ を用いる。

$$S = \frac{1}{2}\int_0^{2\pi} a^2(1+\cos\theta)^2\,d\theta = \frac{a^2}{2}\int_0^{2\pi}(1 + 2\cos\theta + \cos^2\theta)\,d\theta$$

$\cos^2\theta = \dfrac{1+\cos 2\theta}{2}$ を使って:

$$= \frac{a^2}{2}\int_0^{2\pi}\left(\frac{3}{2} + 2\cos\theta + \frac{\cos 2\theta}{2}\right)d\theta$$

$$= \frac{a^2}{2}\left[\frac{3}{2}\theta + 2\sin\theta + \frac{\sin 2\theta}{4}\right]_0^{2\pi} = \frac{a^2}{2} \cdot 3\pi = \frac{3\pi a^2}{2}$$

解説

極座標の面積公式は、微小な扇形の面積 $\dfrac{1}{2}r^2\,d\theta$ を足し合わせたものです。$\cos\theta$ や $\cos 2\theta$ の $[0, 2\pi]$ 上の積分はゼロになるという性質を使うと、計算が大幅に簡略化されます。

採点ポイント
  • 面積公式の適用 … 2点
  • $(1+\cos\theta)^2$ の展開 … 2点
  • $\cos^2\theta$ の半角変換 … 3点
  • 最終答え $\dfrac{3\pi a^2}{2}$ … 3点