曲線を表す方法には、$y = f(x)$ のような陽関数表示や $F(x, y) = 0$ のような陰関数表示がありました。ここで登場する媒介変数表示は、第3の方法です。点の座標 $(x, y)$ を第3の変数(媒介変数)$t$ の関数として $x = f(t)$、$y = g(t)$ と表すことで、複雑な曲線も自在に記述できるようになります。
$y = f(x)$ という表し方は万能ではありません。たとえば円 $x^2 + y^2 = r^2$ は、$y = \pm\sqrt{r^2 - x^2}$ と書くと上半分と下半分に分割されてしまいます。1つの式で「点が円周上を動く様子」を記述するには、別のアプローチが必要です。
媒介変数表示とは、曲線上の点 $P(x, y)$ の位置を第3の変数 $t$(媒介変数・パラメータ)で表すことです。
$$x = f(t), \quad y = g(t)$$
$t$ は「時間」と考えるのが直感的です。$t$ が変化すると点 $P$ が動き、その軌跡が曲線を描きます。つまり媒介変数表示は「点の動きの台本」であり、曲線の形だけでなく「どの方向に、どの速さで動くか」という情報も含んでいます。
| 表示方法 | 形式 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| 陽関数表示 | $y = f(x)$ | $y$ の値が一意に決まる | $x$ に対し $y$ が多価のとき不可 |
| 陰関数表示 | $F(x,y)=0$ | 多価でも1つの式で表せる | 点の動きの情報がない |
| 媒介変数表示 | $x=f(t)$, $y=g(t)$ | 動きの情報を含む。多価OK | $t$ の消去が必要な場合がある |
✗ 誤:円の媒介変数表示は $x = r\cos t$, $y = r\sin t$ の1通り
○ 正:$x = r\cos 2t$, $y = r\sin 2t$ や $x = r \cdot \dfrac{1-t^2}{1+t^2}$, $y = r \cdot \dfrac{2t}{1+t^2}$ なども同じ円を表す
同じ軌跡でも、パラメータの取り方によって「動く速さ」や「$t$ の範囲」が変わります。問題では $t$ の範囲の指定に注意しましょう。
媒介変数表示から曲線の方程式($x$ と $y$ の関係式)を得るには、パラメータ $t$ を消去します。消去の方法はケースバイケースですが、三角関数の恒等式($\cos^2 t + \sin^2 t = 1$ など)を使う方法が最も重要です。
最も基本的な媒介変数表示は、円の表示です。
中心 $(a, b)$、半径 $r$ の円:
$$x = a + r\cos t, \quad y = b + r\sin t \quad (0 \le t < 2\pi)$$
原点中心の場合($a = b = 0$):
$$x = r\cos t, \quad y = r\sin t$$
※ $t$ は中心から見た角度(偏角)に対応します。$t$ が $0$ から $2\pi$ まで動くと点は円周を反時計回りに1周します。
確認してみましょう。$x^2 + y^2 = r^2\cos^2 t + r^2\sin^2 t = r^2(\cos^2 t + \sin^2 t) = r^2$ となり、確かに円の方程式が得られます。
✗ 誤:$x = \cos t$, $y = \sin t$($0 \le t \le \pi$)は円全体を表す
○ 正:$t$ が $0$ から $\pi$ までなので、上半円のみ($y \ge 0$ の部分)を表す
媒介変数表示では、$t$ の変域が曲線のどの部分を描くかを決めます。変域を見落とすと間違った曲線を描いてしまいます。
円には三角関数を使わない媒介変数表示もあります。$t = \tan(\theta/2)$ とおくと、半角の公式から $\cos\theta = \dfrac{1-t^2}{1+t^2}$, $\sin\theta = \dfrac{2t}{1+t^2}$ が得られます。これをワイエルシュトラス置換と呼び、三角関数の有理式の積分で威力を発揮します。数学IIIの積分法でも登場する重要なテクニックです。
楕円は円を「引き伸ばした」曲線なので、円の媒介変数表示を変形すれば得られます。
楕円 $\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1$:
$$x = a\cos t, \quad y = b\sin t \quad (0 \le t < 2\pi)$$
※ $t$ は楕円上の点の偏角ではなく、「対応する円上の点の偏角」(離心角)です。
確認:$\dfrac{(a\cos t)^2}{a^2} + \dfrac{(b\sin t)^2}{b^2} = \cos^2 t + \sin^2 t = 1$ で確かに楕円上です。
楕円 $x = a\cos t$, $y = b\sin t$ のパラメータ $t$ は、楕円上の点 $P$ と原点を結ぶ線分が $x$ 軸となす角(偏角)ではありません。
$P$ の偏角 $\alpha$ は $\tan\alpha = \dfrac{b\sin t}{a\cos t} = \dfrac{b}{a}\tan t$ であり、$t \neq \alpha$($a \neq b$ のとき)です。$t$ は離心角(eccentric angle)と呼ばれ、楕円に外接する半径 $a$ の円上で測った角度に対応します。
双曲線では $\cos^2 t + \sin^2 t = 1$ の代わりに、双曲線関数の恒等式や $\sec^2 t - \tan^2 t = 1$ を利用します。
双曲線 $\dfrac{x^2}{a^2} - \dfrac{y^2}{b^2} = 1$:
方法1(三角関数):$x = \dfrac{a}{\cos t}$, $y = b\tan t$($t \neq \pm\dfrac{\pi}{2}$)
方法2(双曲線関数):$x = a\cosh t$, $y = b\sinh t$(右枝のみ)
※ 方法1は $\dfrac{1}{\cos^2 t} - \tan^2 t = 1$ を利用。方法2は $\cosh^2 t - \sinh^2 t = 1$ を利用。
✗ 誤:$x = a\cosh t$, $y = b\sinh t$ で双曲線全体を表す
○ 正:$\cosh t > 0$ なので右枝($x > 0$)のみ。左枝は $x = -a\cosh t$, $y = b\sinh t$
方法1の $x = a/\cos t$ なら、$\cos t > 0$ で右枝、$\cos t < 0$ で左枝が表せます。
$\cosh t = \dfrac{e^t + e^{-t}}{2}$, $\sinh t = \dfrac{e^t - e^{-t}}{2}$ を双曲線関数(hyperbolic functions)と呼びます。三角関数が円 $x^2 + y^2 = 1$ をパラメータ表示するのに対し、双曲線関数は双曲線 $x^2 - y^2 = 1$ をパラメータ表示します。大学の解析学や物理学で頻出し、相対性理論のローレンツ変換にも登場します。
放物線 $y^2 = 4px$ の媒介変数表示は、楕円や双曲線とは少し異なるスタイルです。
放物線 $y^2 = 4px$:
$$x = pt^2, \quad y = 2pt \quad (-\infty < t < \infty)$$
※ 確認:$y^2 = (2pt)^2 = 4p^2 t^2 = 4p \cdot pt^2 = 4px$。$t$ は直線の傾きの逆数に関連する量です。
この表示の利点は、$t$ が実数全体を動くと放物線全体が得られることです。$t > 0$ で上半分($y > 0$)、$t < 0$ で下半分($y < 0$)、$t = 0$ で頂点 $(0, 0)$ に対応します。
$y = 2pt$ を $y^2 = 4px$ に代入すると $4p^2 t^2 = 4px$ より $x = pt^2$ が自然に出てきます。放物線は「2次曲線」なので、$y$ を1次式で表せば $x$ は2次式になるのです。
✗ 誤:$y = ax^2$ の媒介変数表示も $x = pt^2$, $y = 2pt$ の形
○ 正:$y = ax^2$ なら素直に $x = t$, $y = at^2$ とおけばよい
$y^2 = 4px$ 型と $y = ax^2$ 型では媒介変数表示の形が異なります。どちらの形で与えられているかを確認してから表示を書きましょう。
ここまでは既知の曲線(円・楕円・双曲線・放物線)の媒介変数表示を見てきましたが、媒介変数表示の真価は「$y = f(x)$ では書けない曲線」を表現できることにあります。その代表例がサイクロイドです。
半径 $a$ の円が $x$ 軸上を滑らずに転がるとき、円周上の定点が描く曲線:
$$x = a(t - \sin t), \quad y = a(1 - \cos t)$$
※ $t$ は円の回転角。$t = 2n\pi$($n$ は整数)で点は $x$ 軸に接する(カスプ)。
円が角度 $t$ だけ回転したとき、円の中心は $(at, a)$ にあります。定点は中心からの相対位置が $(-a\sin t, -a\cos t)$ なので:
$x = at - a\sin t = a(t - \sin t)$
$y = a - a\cos t = a(1 - \cos t)$
「中心の位置」+「中心からの相対位置」という分解の考え方が、サイクロイドに限らずあらゆる回転体の運動の基本です。
$\dfrac{dx}{dt} = a(1 - \cos t)$, $\dfrac{dy}{dt} = a\sin t$ より:
$$\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dy}{dt}\right)^2 = a^2(1 - 2\cos t + \cos^2 t + \sin^2 t) = 2a^2(1 - \cos t)$$
半角の公式 $1 - \cos t = 2\sin^2\dfrac{t}{2}$ を用いると:
$$\sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dy}{dt}\right)^2} = 2a\left|\sin\frac{t}{2}\right|$$
$0 \le t \le 2\pi$ で $\sin(t/2) \ge 0$ なので、1アーチの弧長は:
$$L = \int_0^{2\pi} 2a\sin\frac{t}{2}\,dt = 2a\left[-2\cos\frac{t}{2}\right]_0^{2\pi} = 2a \cdot (2 + 2) = 8a$$
重力のもとで点 $A$ から点 $B$ へ最も短い時間で到達するすべり台の形は何か ── これが最速降下線問題(ブラキストクローネ問題)です。答えは直線でも円弧でもなく、逆さまのサイクロイドです。1696年にヨハン・ベルヌーイが提出し、ニュートンやライプニッツも解きました。この問題は変分法の出発点となり、現代物理学の基礎を築きました。
✗ 誤:$t = 0$ で $\dfrac{dy}{dx} = \dfrac{dy/dt}{dx/dt} = \dfrac{a\sin 0}{a(1-\cos 0)} = \dfrac{0}{0}$、接線は不定
○ 正:$\dfrac{0}{0}$ 型なのでロピタルの定理を適用。$\lim_{t \to 0} \dfrac{\sin t}{1-\cos t} = \lim_{t \to 0} \dfrac{\cos t}{\sin t} = \infty$ で接線は鉛直
カスプでは接線が $y$ 軸に平行になります。$\dfrac{dy}{dx}$ が $0/0$ になったら安易に「不定」としないで、極限を計算しましょう。
Q1. 楕円 $\dfrac{x^2}{9} + \dfrac{y^2}{4} = 1$ の媒介変数表示は?
Q2. 媒介変数表示 $x = 2\cos t$, $y = 2\sin t$($0 \le t \le \pi/2$)はどんな曲線のどの部分?
Q3. サイクロイド $x = a(t-\sin t)$, $y = a(1-\cos t)$ の最高点の座標は?
Q4. 放物線 $y^2 = 12x$ の媒介変数表示は?
Q5. 双曲線の媒介変数表示で $x = a\cosh t$, $y = b\sinh t$ が表すのは双曲線のどの部分?
媒介変数表示 $x = 1 + 2\cos t$, $y = -1 + 2\sin t$($0 \le t < 2\pi$)が表す曲線の方程式を求めよ。
$\cos t = \dfrac{x-1}{2}$, $\sin t = \dfrac{y+1}{2}$ より:
$$\cos^2 t + \sin^2 t = 1$$
$$\frac{(x-1)^2}{4} + \frac{(y+1)^2}{4} = 1$$
$$(x-1)^2 + (y+1)^2 = 4$$
中心 $(1, -1)$、半径 $2$ の円。
サイクロイド $x = a(t - \sin t)$, $y = a(1 - \cos t)$($0 \le t \le 2\pi$)と $x$ 軸で囲まれた部分の面積を求めよ。
$$S = \int_0^{2\pi a} y\,dx = \int_0^{2\pi} a(1-\cos t) \cdot a(1-\cos t)\,dt = a^2\int_0^{2\pi}(1-\cos t)^2\,dt$$
$(1-\cos t)^2 = 1 - 2\cos t + \cos^2 t = 1 - 2\cos t + \dfrac{1+\cos 2t}{2} = \dfrac{3}{2} - 2\cos t + \dfrac{\cos 2t}{2}$
$$S = a^2\left[\frac{3}{2}t - 2\sin t + \frac{\sin 2t}{4}\right]_0^{2\pi} = a^2 \cdot \frac{3}{2} \cdot 2\pi = 3\pi a^2$$
楕円 $x = 3\cos t$, $y = 2\sin t$ 上の $t = \dfrac{\pi}{3}$ に対応する点における接線の方程式を求めよ。
$t = \pi/3$ のとき:$x_0 = 3\cos(\pi/3) = \dfrac{3}{2}$、$y_0 = 2\sin(\pi/3) = \sqrt{3}$
$\dfrac{dy}{dx} = \dfrac{dy/dt}{dx/dt} = \dfrac{2\cos t}{-3\sin t}$
$t = \pi/3$ で $\dfrac{dy}{dx} = \dfrac{2 \cdot 1/2}{-3 \cdot \sqrt{3}/2} = \dfrac{1}{-3\sqrt{3}/2} = -\dfrac{2}{3\sqrt{3}} = -\dfrac{2\sqrt{3}}{9}$
接線:$y - \sqrt{3} = -\dfrac{2\sqrt{3}}{9}\left(x - \dfrac{3}{2}\right)$
整理:$9y - 9\sqrt{3} = -2\sqrt{3}\,x + 3\sqrt{3}$
$$2\sqrt{3}\,x + 9y = 12\sqrt{3} \quad \Leftrightarrow \quad \frac{x}{6} + \frac{\sqrt{3}\,y}{12\sqrt{3}} = 1$$
接線公式 $\dfrac{x_0 x}{9} + \dfrac{y_0 y}{4} = 1$ に代入しても $\dfrac{(3/2)x}{9} + \dfrac{\sqrt{3}\,y}{4} = 1$、すなわち $\dfrac{x}{6} + \dfrac{\sqrt{3}\,y}{4} = 1$ と一致する。
サイクロイド $x = a(t - \sin t)$, $y = a(1 - \cos t)$ 上を動く点の時刻 $t$ における速さ $v(t)$ を求めよ。また、$v(t)$ が最大となる $t$ とそのときの速さを求めよ。
$\dfrac{dx}{dt} = a(1-\cos t)$, $\dfrac{dy}{dt} = a\sin t$
$$v(t) = \sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dy}{dt}\right)^2} = a\sqrt{(1-\cos t)^2 + \sin^2 t}$$
$$= a\sqrt{2(1-\cos t)} = a\sqrt{4\sin^2\frac{t}{2}} = 2a\left|\sin\frac{t}{2}\right|$$
$0 < t < 2\pi$ において $\sin(t/2) > 0$ なので $v(t) = 2a\sin\dfrac{t}{2}$
$v(t)$ は $\sin(t/2) = 1$、すなわち $t/2 = \pi/2$ つまり $t = \pi$ のとき最大。
最大値 $v(\pi) = 2a$(サイクロイドの最高点で速さ最大)。
最高点で速さが最大というのは直感に反するかもしれませんが、カスプ($t = 0, 2\pi$)では点が $x$ 軸上に「接地」して一瞬停止することを思い出せば理解できます。最高点では慣性が最大で、カスプでは速度がゼロになるのです。