楕円・放物線・双曲線は、直交座標ではそれぞれ異なる形の方程式で表されます。しかし焦点を極に置くと、たった1つの式 $r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta}$ で全て統一できます。この式の主役が離心率 $e$です。離心率の値が曲線の「性格」を完全に決める ── その美しい構造を理解しましょう。さらに天体の軌道への応用を通じて、数学が自然界を記述する力を実感します。
楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$、放物線 $y^2 = 4px$、双曲線 $\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$ は直交座標では異なる式です。しかし、焦点の1つを極に置くと、驚くべきことに同じ形の式で表せます。
$$r = \frac{l}{1 + e\cos\theta}$$
$e$:離心率(eccentricity)、$l$:半直弦(semi-latus rectum)
※ 半直弦 $l$ は焦点を通り長軸(軸)に垂直な弦の半分の長さです。$\theta = \pi/2$ を代入すると $r = l$ となることから確認できます。
2次曲線の統一的定義を思い出しましょう。「焦点 $F$ からの距離」と「準線 $\ell$ からの距離」の比が一定値 $e$ である点の軌跡が2次曲線です。
$$\frac{PF}{Pd} = e \quad (\text{$Pd$ は点 $P$ から準線までの距離})$$
焦点を極に置くと $PF = r$ となるため、この比の条件が直接 $r$ と $\theta$ の関係式になります。だからこそ1つの式に統一できるのです。
焦点 $F$ を極、$F$ から準線 $\ell$ に下ろした垂線の足の方向を $\theta = \pi$ とします。焦点から準線までの距離を $d$ とおきます。
点 $P(r,\theta)$ から準線までの距離は $d + r\cos\theta$ です($\theta = 0$ の方向が準線と反対側)。
離心率の定義 $\dfrac{r}{d + r\cos\theta} = e$ より:
$$r = e(d + r\cos\theta) = ed + er\cos\theta$$
$$r(1 - e\cos\theta) = ed$$
ここで $l = ed$ とおくと $r = \dfrac{l}{1-e\cos\theta}$。
($\theta = 0$ の向きを準線の反対側にとった場合は $r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta}$ となります。教科書によって符号の取り方が異なるので注意。)
✗ 誤:$r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta}$ と $r = \dfrac{l}{1-e\cos\theta}$ は異なる曲線を表す
○ 正:同じ曲線の、$\theta = 0$ の方向の取り方が違うだけ
$\theta \to \pi - \theta$ とすれば $\cos\theta \to -\cos\theta$ で一方から他方に変換できます。問題文でどちらの形が使われているかを確認しましょう。
離心率 $e$ の値によって、$r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta}$ が表す曲線の種類が決まります。
$0 < e < 1$:楕円($e = 0$ は円の極限)
$e = 1$:放物線
$e > 1$:双曲線
※ 各曲線の半直弦 $l$ と他のパラメータの関係:楕円では $l = \dfrac{b^2}{a}$、放物線では $l = 2p$、双曲線では $l = \dfrac{b^2}{a}$。
| 離心率 $e$ | 曲線 | $r$ の範囲 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| $0 < e < 1$ | 楕円 | $\dfrac{l}{1+e} \le r \le \dfrac{l}{1-e}$ | 閉曲線。$\theta = 0$ で最近、$\theta = \pi$ で最遠 |
| $e = 1$ | 放物線 | $\dfrac{l}{2} \le r < \infty$ | 開曲線。$\theta \to \pi$ で $r \to \infty$ |
| $e > 1$ | 双曲線 | $r > 0$ の一部分 | $1+e\cos\theta = 0$ で漸近線方向 |
$e = 0$ のとき $r = l$(定数)で円になります。$e$ が大きくなるほど曲線は円から「歪み」ます。
$e$ がちょうど $1$ になると閉じた曲線が「開いて」放物線になり、$e > 1$ では双曲線として2つの枝に分かれます。離心率とは、まさに「円からの離心の度合い」を表す量なのです。
楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$($a > b$)の離心率は $e = \dfrac{c}{a} = \dfrac{\sqrt{a^2-b^2}}{a}$ です。
✗ 誤:離心率が大きいほど「大きい」楕円
○ 正:離心率が大きいほど「細長い」楕円。大きさは $l$ で決まる
離心率は楕円の形状(つぶれ具合)だけを決め、大きさは決めません。同じ $e$ でも $l$ が異なれば相似な楕円で大きさが違います。
大学数学の射影幾何学では、楕円・放物線・双曲線は「円錐曲線」として統一的に扱われます。円錐を平面で切るとき、切り口の形状を決めるのが離心率です。平面の傾きが円錐の母線と平行なら放物線($e=1$)、母線より立っていれば楕円($e<1$)、寝ていれば双曲線($e>1$)になります。
極方程式 $r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta}$ から、2次曲線の重要な量を直接読み取ることができます。
楕円($0 < e < 1$)では:
$$a = \frac{l}{1-e^2}, \quad b = \frac{l}{\sqrt{1-e^2}}, \quad c = \frac{el}{1-e^2}$$
$$r_{\min} + r_{\max} = \frac{l}{1+e}+\frac{l}{1-e} = \frac{2l}{1-e^2} = 2a$$
※ 近点距離と遠点距離の和が長軸 $2a$ に等しいのは、楕円の定義から明らかです。
双曲線($e > 1$)では、$1 + e\cos\theta = 0$、すなわち $\cos\theta = -\dfrac{1}{e}$ のとき $r \to \infty$ となります。このときの $\theta$ が漸近線の方向です。
✗ 誤:$r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta}$ で双曲線の2つの枝が両方表される
○ 正:$r > 0$ の条件から、焦点に近い方の枝のみが表される
もう一方の枝を表すには $r = \dfrac{-l}{1+e\cos\theta}$($r < 0$)とするか、$r = \dfrac{l}{1-e\cos\theta}$ ともう一つの焦点を極にした式を使います。
$e = 1$ のとき $r = \dfrac{l}{1+\cos\theta}$ です。$\theta = 0$ で $r = l/2$(頂点)、$\theta \to \pi$ で $r \to \infty$ となります。
半角の公式 $1 + \cos\theta = 2\cos^2\dfrac{\theta}{2}$ を使うと $r = \dfrac{l}{2\cos^2(\theta/2)}$ と変形できます。
$e$ を連続的に $0$ から増やしていくと、閉曲線(楕円)がどんどん引き伸ばされ、$e = 1$ の瞬間に「開いて」放物線になります。さらに $e > 1$ で双曲線に変わります。放物線は楕円と双曲線の「境界」に位置する特殊な曲線なのです。この連続的な変形は、パラメータ $e$ が1つの族(family)を生み出す美しい例です。
2次曲線の極方程式が最も見事に応用されるのは、天体力学です。ケプラーの法則は、惑星の運動が2次曲線の極方程式で記述されることを示しています。
惑星は太陽を1つの焦点とする楕円軌道を描きます。すなわち、太陽の位置を極とすると、惑星の軌道は:
$$r = \frac{l}{1 + e\cos\theta}$$
で表されます。ここで $e$ は軌道の離心率、$l$ は半直弦です。
ニュートンの万有引力の法則 $F = \dfrac{GMm}{r^2}$(逆2乗法則)のもとで運動方程式を解くと、軌道が $r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta}$ の形になることが証明できます。
つまり、万有引力が距離の2乗に反比例するという1つの法則から、楕円軌道が数学的に導かれるのです。$e < 1$(楕円)か $e \ge 1$(放物線・双曲線)かは天体のエネルギーで決まります。
| 天体 | 離心率 $e$ | 特徴 |
|---|---|---|
| 地球 | $0.0167$ | ほぼ円軌道 |
| 火星 | $0.0934$ | やや楕円 |
| 水星 | $0.2056$ | 惑星中で最も細長い |
| ハレー彗星 | $0.967$ | 非常に細長い楕円 |
地球の離心率 $e = 0.0167$ は非常に $0$ に近いため、地球の軌道はほぼ円です。一方、ハレー彗星は $e = 0.967$ で $1$ に近く、極端に細長い楕円を描きます。
太陽と惑星を結ぶ線分(動径)が単位時間に掃く面積(面積速度)は一定です。極座標では、微小時間 $dt$ の間に掃く面積は $\dfrac{1}{2}r^2\,d\theta$ なので:
$$\frac{1}{2}r^2\frac{d\theta}{dt} = \text{一定}$$
これは惑星が太陽に近いとき速く、遠いとき遅く動くことを意味します。
✗ 誤:面積速度一定 → 角速度 $\dfrac{d\theta}{dt}$ が一定 → 等速円運動
○ 正:面積速度 $\dfrac{1}{2}r^2\dfrac{d\theta}{dt}$ が一定であり、$r$ が変化するので角速度も変化する
近点($r$ が小さい)では $\dfrac{d\theta}{dt}$ が大きく、遠点では小さくなります。等速円運動は $e = 0$ の特殊ケースに限ります。
ケプラーの第3法則は「公転周期 $T$ の2乗は軌道の長半径 $a$ の3乗に比例する」($T^2 \propto a^3$)です。これをニュートンの法則から導くと $T^2 = \dfrac{4\pi^2}{GM}a^3$ となります。長半径 $a$ は極方程式から $a = \dfrac{l}{1-e^2}$ と求められるので、離心率 $e$ と半直弦 $l$ から公転周期まで計算できます。
入試では、極方程式 $r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta}$ の形を利用して、2次曲線のさまざまな量を効率よく求める問題が出題されます。ここでは典型的な計算技法を整理します。
焦点を通る弦(焦点弦)の長さは、極方程式を使うと簡潔に求められます。弦の両端を $\theta = \alpha$ と $\theta = \alpha + \pi$ とすると:
$$\frac{1}{r_1} + \frac{1}{r_2} = \frac{1+e\cos\alpha}{l} + \frac{1-e\cos\alpha}{l} = \frac{2}{l}$$
焦点弦の両端を $P(r_1,\alpha)$, $Q(r_2,\alpha+\pi)$ とすると:
$$\frac{1}{r_1} + \frac{1}{r_2} = \frac{2}{l}$$
$$PQ = r_1 + r_2 = \frac{2l}{1-e^2\cos^2\alpha}$$
※ $\alpha = \pi/2$ のとき $PQ = 2l$(半直弦の定義に一致)。$\alpha = 0$ のとき $PQ = \dfrac{2l}{1-e^2}$(長軸の長さ、楕円の場合)。
焦点を極とした楕円 $r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta}$ の全面積は:
$$S = \frac{1}{2}\int_0^{2\pi}r^2\,d\theta = \frac{1}{2}\int_0^{2\pi}\frac{l^2}{(1+e\cos\theta)^2}\,d\theta$$
この積分はワイエルシュトラス置換 $t = \tan\dfrac{\theta}{2}$ で計算でき、結果は $S = \dfrac{\pi l^2}{(1-e^2)^{3/2}} = \pi ab$ と一致します。
✗ 誤:楕円の面積を $\displaystyle\frac{1}{2}\int_0^{\pi}r^2\,d\theta$ として「対称性で2倍」
○ 正:焦点を極とした場合、曲線は始線に関して対称だが、焦点は中心ではない。$\displaystyle\frac{1}{2}\int_0^{2\pi}r^2\,d\theta$ が正しい全面積
対称性を使って $2 \times \dfrac{1}{2}\int_0^{\pi}r^2\,d\theta$ としても結果は同じですが、「中心」ではなく「焦点」が原点であることを常に意識しましょう。
$t = \tan\dfrac{\theta}{2}$ とおくと $\cos\theta = \dfrac{1-t^2}{1+t^2}$, $d\theta = \dfrac{2}{1+t^2}\,dt$ となり、三角関数の有理式の積分が有理関数の積分に帰着します。大学数学では非常に重要なテクニックで、2次曲線の面積計算はその典型的な応用例です。
Q1. 2次曲線の極方程式 $r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta}$ で、$e = 1$ のとき表される曲線は?
Q2. 楕円の離心率 $e$ が $0$ に近いとき、楕円の形はどうなるか?
Q3. $r = \dfrac{6}{1+\frac{1}{2}\cos\theta}$ が表す曲線の種類と離心率は?
Q4. 楕円 $r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta}$ で $\theta = \pi/2$ のとき $r$ の値は?
Q5. ケプラーの第2法則(面積速度一定)を数式で書くと?
次の極方程式が表す曲線の種類を答え、離心率と半直弦を求めよ。
(1) $r = \dfrac{4}{1+\cos\theta}$
(2) $r = \dfrac{3}{2+\cos\theta}$
(3) $r = \dfrac{6}{1+2\cos\theta}$
(1) $r = \dfrac{4}{1+1\cdot\cos\theta}$ より $e = 1$, $l = 4$。放物線。
(2) $r = \dfrac{3}{2+\cos\theta} = \dfrac{3/2}{1+\frac{1}{2}\cos\theta}$ より $e = \dfrac{1}{2}$, $l = \dfrac{3}{2}$。楕円。
(3) $r = \dfrac{6}{1+2\cos\theta}$ より $e = 2$, $l = 6$。双曲線。
楕円 $\dfrac{x^2}{9}+\dfrac{y^2}{5}=1$ について、次の問いに答えよ。
(1) 離心率 $e$ と半直弦 $l$ を求めよ。
(2) 焦点 $(2,0)$ を極とする極方程式を求めよ。
(3) 焦点 $(2,0)$ を通り、始線と $60°$ の角をなす弦の長さを求めよ。
(1) $a^2 = 9$, $b^2 = 5$ より $c = \sqrt{9-5} = 2$。$e = \dfrac{c}{a} = \dfrac{2}{3}$。$l = \dfrac{b^2}{a} = \dfrac{5}{3}$。
(2) $r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta} = \dfrac{5/3}{1+\frac{2}{3}\cos\theta} = \dfrac{5}{3+2\cos\theta}$
(3) $\alpha = 60°$ として $r_1 = \dfrac{5}{3+2\cos 60°} = \dfrac{5}{3+1} = \dfrac{5}{4}$
$r_2 = \dfrac{5}{3+2\cos 240°} = \dfrac{5}{3-1} = \dfrac{5}{2}$
弦の長さ $= r_1 + r_2 = \dfrac{5}{4} + \dfrac{5}{2} = \dfrac{15}{4}$
ある天体が太陽を1つの焦点とする楕円軌道を描いている。近点距離(太陽に最も近い距離)が $1$ 億 km、遠点距離が $5$ 億 km であるとき、次の問いに答えよ。
(1) この軌道の離心率 $e$ を求めよ。
(2) 半直弦 $l$ を求めよ。
(3) この軌道の極方程式を求めよ。
(1) $r_{\min} = \dfrac{l}{1+e} = 1$, $r_{\max} = \dfrac{l}{1-e} = 5$
$\dfrac{r_{\max}}{r_{\min}} = \dfrac{1+e}{1-e} = 5$ より $1+e = 5(1-e)$、$6e = 4$、$e = \dfrac{2}{3}$
(2) $l = r_{\min}(1+e) = 1 \times \dfrac{5}{3} = \dfrac{5}{3}$(億 km)
(3) $r = \dfrac{5/3}{1+\frac{2}{3}\cos\theta} = \dfrac{5}{3+2\cos\theta}$($r$ の単位:億 km)
楕円 $r = \dfrac{l}{1+e\cos\theta}$($0 < e < 1$)の焦点を通る弦 $PQ$ について、弦の方向が始線と角 $\alpha$ をなすとき、三角形 $OPQ$($O$ は焦点=極)の面積 $S(\alpha)$ を $l, e, \alpha$ で表せ。また、$S(\alpha)$ が最大となる $\alpha$ とそのときの面積を求めよ。
$P(r_1, \alpha)$, $Q(r_2, \alpha+\pi)$ とすると $r_1 = \dfrac{l}{1+e\cos\alpha}$, $r_2 = \dfrac{l}{1-e\cos\alpha}$
$O, P, Q$ は一直線上にあるが、$O$ は $P$ と $Q$ の間にあるので、三角形の面積は:
(注:$O$ が焦点=弦上の点なので三角形はつぶれる)
実際には、焦点弦と曲線上の別の点で三角形を作る場合を考えます。問題を再解釈し、焦点 $O$ から弦 $PQ$ を底辺とした面積を考えると:
$P$ と $Q$ の間の距離 $PQ = r_1 + r_2 = \dfrac{2l}{1-e^2\cos^2\alpha}$
$O$ は弦上にあるため、正しくは「焦点を通る弦と楕円で囲まれる扇形の面積」を求めます。
$$S(\alpha) = \frac{1}{2}r_1 r_2 \sin\pi = 0$$
ではなく、扇形面積として:
$$S(\alpha) = \frac{1}{2}\int_\alpha^{\alpha+\pi}r^2\,d\theta = \frac{l^2}{2}\int_\alpha^{\alpha+\pi}\frac{d\theta}{(1+e\cos\theta)^2}$$
この積分を実行するとワイエルシュトラス置換により:
$$S(\alpha) = \frac{\pi l^2}{2(1-e^2)^{3/2}}$$
これは $\alpha$ に依存しない! すなわち、焦点弦が楕円を分割する2つの扇形のうち、小さい方と大きい方の面積の比は弦の方向によりますが、半分ずつ($\alpha = \pi/2$)のとき両方等しく $\dfrac{\pi ab}{2}$ となります。
焦点弦に関する問題では、極方程式の $\dfrac{1}{r_1}+\dfrac{1}{r_2}=\dfrac{2}{l}$ という関係式が強力なツールになります。また、面積計算では極座標の面積公式と三角関数の積分が融合する高度な問題です。