空間ベクトルの基本操作を習得した次のステップとして、正射影ベクトル、直線と平面の交点、2平面の交線、空間図形の計量といった応用的なテーマに取り組みます。これらは入試でも頻出であり、平面ベクトルの手法を3次元に拡張する力が問われます。「何を求めたいのか」を明確にしてからベクトルの式を立てる ── この原則を徹底しましょう。
平面ベクトルで学んだ正射影ベクトルは、空間においても全く同じ原理で定義されます。ベクトル $\vec{a}$ をベクトル $\vec{b}$ の方向に射影する操作は、次元に依存しない内積の性質に基づいているからです。
ベクトル $\vec{a}$ の $\vec{b}$ 方向への正射影ベクトルは:
$$\text{proj}_{\vec{b}}\vec{a} = \frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{b}|^2}\vec{b}$$
※ 平面でも空間でも同じ公式です。内積の定義 $\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$ が次元に依存しないことが理由です。
平面では2方向への分解で十分でしたが、空間では「ある平面への射影」や「ある直線への射影」が必要になります。直線方向への射影は上の公式そのものですが、平面への射影は少し工夫が要ります。
平面の法線ベクトルを $\vec{n}$ とするとき、ベクトル $\vec{a}$ の法線方向成分は $\text{proj}_{\vec{n}}\vec{a}$ です。したがって、平面に平行な成分(平面への射影)は:
$$\vec{a} - \text{proj}_{\vec{n}}\vec{a} = \vec{a} - \frac{\vec{a} \cdot \vec{n}}{|\vec{n}|^2}\vec{n}$$
正射影ベクトルの本質は、任意のベクトルを「ある方向の成分」と「それに垂直な成分」に分解することです。空間では、この分解を「直線方向 + 垂直成分」や「法線方向 + 平面成分」として使い分けます。
分解の根拠は $\vec{a} = \text{proj}_{\vec{b}}\vec{a} + (\vec{a} - \text{proj}_{\vec{b}}\vec{a})$ という恒等式であり、右辺の第2項は $\vec{b}$ と直交します。
点 $A(1, 2, 3)$ から $xy$ 平面(法線ベクトル $\vec{n} = (0, 0, 1)$)に下ろした垂線の足を考えてみましょう。位置ベクトル $\vec{a} = (1, 2, 3)$ の法線方向成分は:
$$\text{proj}_{\vec{n}}\vec{a} = \frac{(1, 2, 3) \cdot (0, 0, 1)}{|(0, 0, 1)|^2}(0, 0, 1) = 3(0, 0, 1) = (0, 0, 3)$$
したがって、$xy$ 平面への射影は $\vec{a} - (0, 0, 3) = (1, 2, 0)$ です。これは直感と一致しますね。$z$ 座標を $0$ にしたものです。
✗ 誤:「平面への射影」に法線方向の正射影公式をそのまま使う
○ 正:法線方向の成分を引き算する。$\vec{a} - \text{proj}_{\vec{n}}\vec{a}$ が平面への射影
法線方向への射影と平面への射影は補関係にあります。問題文で「直線に射影」か「平面に射影」かを必ず確認しましょう。
正射影を繰り返し適用して互いに直交するベクトルの組を作る手法をグラム・シュミットの正規直交化法と呼びます。大学の線形代数で中心的に扱われる手法で、正射影が「直交分解の基本ツール」であることがわかります。
空間における直線と平面の交点を求める問題は、入試で非常に高い頻度で出題されます。基本的な考え方は「直線をパラメータ表示し、平面の方程式に代入する」というシンプルなものです。
点 $A$ を通り方向ベクトル $\vec{d}$ に平行な直線上の点は:
$$\vec{p} = \vec{a} + t\vec{d} \quad (t \text{ は実数})$$
と表されます。ここで $t$ がパラメータです。$t$ の値を動かすことで直線上の全ての点を表現できます。
平面が法線ベクトル $\vec{n}$ と通る点 $B$ で定まるとき、平面上の点 $\vec{p}$ は $(\vec{p} - \vec{b}) \cdot \vec{n} = 0$ を満たします。直線の式を代入すると:
$$(\vec{a} + t\vec{d} - \vec{b}) \cdot \vec{n} = 0$$
$$t = \frac{(\vec{b} - \vec{a}) \cdot \vec{n}}{\vec{d} \cdot \vec{n}}$$
点 $A$ を通り方向ベクトル $\vec{d}$ の直線と、点 $B$ を通り法線ベクトル $\vec{n}$ の平面の交点は:
$$t = \frac{(\vec{b} - \vec{a}) \cdot \vec{n}}{\vec{d} \cdot \vec{n}}$$
で求まる $t$ を $\vec{p} = \vec{a} + t\vec{d}$ に代入すれば得られます。
※ $\vec{d} \cdot \vec{n} = 0$ のとき、直線は平面に平行(交点なし、または直線が平面上にある)です。
空間の問題でパラメータ表示を使う最大の利点は、問題を1変数の方程式に帰着できることです。直線は1つのパラメータ $t$ で、平面は2つのパラメータ $s, t$ で表現でき、条件式を代入することでパラメータの値が定まります。
入試で頻出なのは、四面体 $OABC$ において辺や対角線が対面と交わる点を求める問題です。この場合、平面の方程式の代わりに「平面上の点を $s\vec{a} + t\vec{b} + u\vec{c}$($s + t + u = 1$)と表す」方法が有効です。
例えば、辺 $OA$ 上の点 $P$($\overrightarrow{OP} = p\vec{a}$)と頂点 $B$ を結ぶ直線が平面 $OAC$ と交わる点を求めるには、直線 $PB$ 上の点を $\vec{q} = (1-t)p\vec{a} + t\vec{b}$ と表し、平面 $OAC$ 上にある条件($\vec{b}$ の係数が $0$)から $t$ を求めます。
✗ 誤:$\vec{q} = s\vec{a} + t\vec{b} + u\vec{c}$ と表して「平面上の点」と判断する
○ 正:$s + t + u = 1$ の条件を忘れずに課す(始点が原点の場合)
$s + t + u = 1$ は「点が3点 $A, B, C$ を通る平面上にある」ための条件です。始点を頂点 $O$ にとった場合の共面条件として不可欠です。
✗ 誤:交点のパラメータを求めて終わり
○ 正:$0 \le t \le 1$ など、交点が線分上・三角形内部にあるかを確認する
「直線の交点」と「線分の交点」は異なります。パラメータの範囲を確認しないと、図形の外側にある点を答えてしまいます。
空間において、平行でない2つの平面は必ず1本の直線で交わります。この交線を求める問題は、連立方程式の考え方と密接に関わっています。
平面は1つの方程式 $ax + by + cz = d$ で表されます。2つの平面の交わりとは、2つの方程式を同時に満たす点の集合です。3変数に対して2つの方程式があるので、自由度は $3 - 2 = 1$ です。この「自由度1」が直線を意味します。
$n$ 個の変数に対して独立な方程式が $k$ 個あると、解の自由度は $n - k$ です。空間(3変数)で1つの方程式は平面(自由度2)、2つの方程式は直線(自由度1)、3つの方程式は点(自由度0)を定めます。
この考え方は大学の線形代数における解空間の次元に直結します。
2平面の法線ベクトルをそれぞれ $\vec{n}_1, \vec{n}_2$ とすると、交線は両方の平面に含まれるので、交線の方向ベクトル $\vec{d}$ は両方の法線に垂直です。つまり:
$$\vec{d} = \vec{n}_1 \times \vec{n}_2$$
ここで $\times$ は外積(ベクトル積)です。外積は高校の教科書では扱いませんが、入試では「2つのベクトルの両方に垂直なベクトル」として知っておくと有用です。
$\vec{n}_1 = (a_1, b_1, c_1)$、$\vec{n}_2 = (a_2, b_2, c_2)$ のとき:
$$\vec{n}_1 \times \vec{n}_2 = (b_1 c_2 - c_1 b_2,\; c_1 a_2 - a_1 c_2,\; a_1 b_2 - b_1 a_2)$$
※ 外積は高校範囲を超えますが、交線の方向ベクトルや平面の法線ベクトルを求めるときに極めて便利です。
外積を使わない方法として、2平面の方程式を連立し、1つの変数をパラメータとして他の2変数を表す方法があります。
例えば、平面 $x + y + z = 3$ と $2x - y + z = 1$ の交線を求めるには、2式を連立して $z = t$ とおけば $x = \dfrac{4+2t}{3} - t = \dfrac{4 - t}{3}$、$y = \dfrac{5 - t}{3}$ と媒介変数表示が得られます。
✗ 誤:「交線を求めよ」に対して方向ベクトルだけを答える
○ 正:交線上の1点と方向ベクトルの両方を示す(パラメータ表示または通る点を明記)
直線を特定するには「通る1点」と「方向ベクトル」の両方が必要です。方向だけでは直線の位置が決まりません。
外積の成分表示は $3 \times 3$ 行列式の展開と一致しています。$\vec{n}_1 \times \vec{n}_2$ は形式的に $\begin{vmatrix} \vec{e}_1 & \vec{e}_2 & \vec{e}_3 \\ a_1 & b_1 & c_1 \\ a_2 & b_2 & c_2 \end{vmatrix}$ の余因子展開です。大学の線形代数で行列式を学ぶと、外積の公式が自然に導かれます。
空間ベクトルの最も実用的な応用は、距離・角度・面積・体積といった計量の計算です。内積を使えば、座標を設定せずとも多くの量が計算できます。
点 $P$ から平面 $\alpha$(法線ベクトル $\vec{n}$、平面上の点 $A$)への距離は、正射影の大きさそのものです:
$$d = \frac{|(\vec{p} - \vec{a}) \cdot \vec{n}|}{|\vec{n}|}$$
これは平面の方程式 $ax + by + cz = d$ を使えば $\dfrac{|ax_0 + by_0 + cz_0 - d|}{\sqrt{a^2 + b^2 + c^2}}$ という公式と一致します。正射影の考え方が距離の公式の背景にあることを理解しておきましょう。
空間では2直線が交わらなくても角度を定義できます(ねじれの位置にある2直線)。方向ベクトル $\vec{d}_1, \vec{d}_2$ のなす角 $\theta$($0 \le \theta \le \dfrac{\pi}{2}$)は:
$$\cos\theta = \frac{|\vec{d}_1 \cdot \vec{d}_2|}{|\vec{d}_1||\vec{d}_2|}$$
✗ 誤:$\cos\theta = \dfrac{\vec{d}_1 \cdot \vec{d}_2}{|\vec{d}_1||\vec{d}_2|}$ として負の値も許容
○ 正:2直線のなす角は $0 \le \theta \le \dfrac{\pi}{2}$ なので、分子に絶対値をつける
方向ベクトルの向きを逆にすれば内積の符号は変わりますが、2直線のなす角は変わりません。だから絶対値が必要です。
4頂点 $O, A, B, C$ の四面体の体積は、3辺のベクトル $\vec{a} = \overrightarrow{OA}$, $\vec{b} = \overrightarrow{OB}$, $\vec{c} = \overrightarrow{OC}$ を用いて:
$$V = \frac{1}{6}|(\vec{a} \times \vec{b}) \cdot \vec{c}|$$
高校の範囲では外積を使わず、$\vec{a} \times \vec{b}$ の大きさが「$\vec{a}$ と $\vec{b}$ が作る平行四辺形の面積」であることを利用して段階的に計算します。具体的には:
$\vec{a}$ と $\vec{b}$ が作る三角形の面積は:
$$S = \frac{1}{2}\sqrt{|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2 - (\vec{a} \cdot \vec{b})^2}$$
※ $|\vec{a} \times \vec{b}| = \sqrt{|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2 - (\vec{a} \cdot \vec{b})^2}$ が背景にあります。ラグランジュの恒等式と呼ばれる関係です。
距離 = 正射影の大きさ、角度 = 内積からの逆算、面積 = 内積を使った公式、体積 = 面積 $\times$ 高さ。空間図形の計量はすべて内積と正射影という2つの道具に帰着します。この統一的な視点を持つことが、問題を見通しよく解く鍵です。
$(\vec{a} \times \vec{b}) \cdot \vec{c}$ はスカラー三重積と呼ばれ、3つのベクトルを列に並べた $3 \times 3$ 行列の行列式に等しくなります。行列式の絶対値が平行六面体の体積を与えるという幾何学的意味は、大学数学で中心的な話題です。
空間ベクトルの応用問題では、どの手法を使うかの判断が重要です。問題のタイプ別に解法の指針を整理しましょう。
| 問題タイプ | 主な手法 | ポイント |
|---|---|---|
| 点と平面の距離 | 正射影ベクトル | 法線ベクトルの方向に射影 |
| 直線と平面の交点 | パラメータ表示 | 直線の式を平面の条件に代入 |
| 2平面の交線 | 連立方程式 or 外積 | 1変数をパラメータに設定 |
| 四面体の体積 | 底面積 $\times$ 高さ | 底面を選び、対頂点からの距離 |
| ねじれ2直線の距離 | 共通法線への射影 | 両方の方向ベクトルに垂直な方向 |
空間の問題には「座標を設定して計算する方法」と「$\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$ を基底として内積のみで処理する方法」があります。
一般に、対称性が高い図形(正四面体など)では基底ベクトルと内積の組み合わせが効率的です。一方、座標が自然に設定できる問題(直方体・立方体など)では座標を使う方が計算ミスを防げます。
直線 $\ell_1$(点 $A$、方向 $\vec{d}_1$)と直線 $\ell_2$(点 $B$、方向 $\vec{d}_2$)がねじれの位置にあるとき、
共通法線方向は $\vec{n} = \vec{d}_1 \times \vec{d}_2$ です(外積を使う場合)。
2直線間の距離は $\overrightarrow{AB}$ の $\vec{n}$ 方向成分の大きさ:
$$d = \frac{|\overrightarrow{AB} \cdot \vec{n}|}{|\vec{n}|}$$
外積を使わない場合は、$\vec{d}_1$ と $\vec{d}_2$ の両方に垂直なベクトル $\vec{n} = (p, q, r)$ を $\vec{d}_1 \cdot \vec{n} = 0$、$\vec{d}_2 \cdot \vec{n} = 0$ の連立方程式から求めます。
✗ 誤:何も考えずに最初に目についた面を底面にする
○ 正:高さが求めやすい面(直角がある面、座標軸に平行な面)を底面に選ぶ
四面体の体積計算では、底面の選び方で計算量が大きく変わります。頂点から底面に垂線が下ろしやすい組み合わせを探しましょう。
Q1. ベクトル $\vec{a} = (1, 2, 3)$ の $\vec{b} = (1, 0, 0)$ 方向への正射影ベクトルは?
Q2. 点 $A(2, 1, 3)$ と平面 $x + y + z = 1$ の距離は?
Q3. 方向ベクトル $(1, 1, 0)$ と $(0, 1, 1)$ をもつ2直線のなす角 $\theta$ について、$\cos\theta$ は?
Q4. $\vec{a} = (1, 0, 0)$, $\vec{b} = (0, 1, 0)$ が作る三角形の面積は?
Q5. 2平面 $x + y = 1$, $y + z = 2$ の交線の方向ベクトルとして適切なものは?
四面体 $OABC$ において $\overrightarrow{OA} = \vec{a}$, $\overrightarrow{OB} = \vec{b}$, $\overrightarrow{OC} = \vec{c}$ とする。$|\vec{a}| = |\vec{b}| = |\vec{c}| = 2$, $\vec{a} \cdot \vec{b} = \vec{b} \cdot \vec{c} = \vec{c} \cdot \vec{a} = 1$ のとき、頂点 $O$ から平面 $ABC$ に下ろした垂線の足 $H$ の位置ベクトルを求めよ。
$H$ は平面 $ABC$ 上なので $\overrightarrow{OH} = s\vec{a} + t\vec{b} + u\vec{c}$($s + t + u = 1$)と表せる。
$\overrightarrow{OH} \perp \overrightarrow{AB}$ かつ $\overrightarrow{OH} \perp \overrightarrow{AC}$ より:
$\overrightarrow{OH} \cdot (\vec{b} - \vec{a}) = 0$ …(i)
$\overrightarrow{OH} \cdot (\vec{c} - \vec{a}) = 0$ …(ii)
(i) を展開すると $s(\vec{a} \cdot \vec{b} - |\vec{a}|^2) + t(|\vec{b}|^2 - \vec{a} \cdot \vec{b}) + u(\vec{b} \cdot \vec{c} - \vec{a} \cdot \vec{c}) = 0$
$s(1 - 4) + t(4 - 1) + u(1 - 1) = 0$ より $-3s + 3t = 0$ すなわち $s = t$
(ii) を展開すると $s(\vec{a} \cdot \vec{c} - |\vec{a}|^2) + t(\vec{b} \cdot \vec{c} - \vec{a} \cdot \vec{b}) + u(|\vec{c}|^2 - \vec{a} \cdot \vec{c}) = 0$
$s(1 - 4) + t(1 - 1) + u(4 - 1) = 0$ より $-3s + 3u = 0$ すなわち $s = u$
$s = t = u$ と $s + t + u = 1$ より $s = t = u = \dfrac{1}{3}$
$$\overrightarrow{OH} = \frac{1}{3}(\vec{a} + \vec{b} + \vec{c})$$
これは三角形 $ABC$ の重心です。内積の対称性から $O$ が三角形 $ABC$ の「真上」に位置することがわかります。
四面体 $OABC$ において $\overrightarrow{OA} = \vec{a}$, $\overrightarrow{OB} = \vec{b}$, $\overrightarrow{OC} = \vec{c}$ とする。辺 $OA$ の中点を $M$、辺 $BC$ を $2:1$ に内分する点を $N$ とする。
(1) $\overrightarrow{ON}$ を $\vec{b}, \vec{c}$ で表せ。
(2) 直線 $MN$ と平面 $ABC$ の交点 $P$ の位置ベクトルを求めよ。
(1) $N$ は $BC$ を $2:1$ に内分するので:
$$\overrightarrow{ON} = \frac{1 \cdot \vec{b} + 2 \cdot \vec{c}}{2 + 1} = \frac{\vec{b} + 2\vec{c}}{3}$$
(2) $\overrightarrow{OM} = \dfrac{1}{2}\vec{a}$ なので、直線 $MN$ 上の点は:
$$\overrightarrow{OP} = (1-t)\overrightarrow{OM} + t\overrightarrow{ON} = \frac{1-t}{2}\vec{a} + \frac{t}{3}\vec{b} + \frac{2t}{3}\vec{c}$$
$P$ が平面 $ABC$ 上にある条件は、$\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$ の係数の和が $1$:
$$\frac{1-t}{2} + \frac{t}{3} + \frac{2t}{3} = 1$$
$$\frac{1-t}{2} + t = 1 \quad \Rightarrow \quad 1 - t + 2t = 2 \quad \Rightarrow \quad t = 1$$
$t = 1$ を代入すると $\overrightarrow{OP} = \dfrac{1}{3}\vec{b} + \dfrac{2}{3}\vec{c}$
つまり $P = N$ です。直線 $MN$ は点 $N$ で平面 $ABC$ と交わります。
$|\vec{a}| = 3$, $|\vec{b}| = 2$, $|\vec{c}| = 1$, $\vec{a} \cdot \vec{b} = 2$, $\vec{b} \cdot \vec{c} = 0$, $\vec{c} \cdot \vec{a} = 0$ とする。$\overrightarrow{OA} = \vec{a}$, $\overrightarrow{OB} = \vec{b}$, $\overrightarrow{OC} = \vec{c}$ とする四面体 $OABC$ の体積を求めよ。
$\vec{b} \cdot \vec{c} = 0$, $\vec{c} \cdot \vec{a} = 0$ より、$\vec{c}$ は $\vec{a}$ と $\vec{b}$ の両方に垂直です。
底面を三角形 $OAB$ とすると、$C$ から底面への高さは $|\vec{c}| = 1$($\vec{c}$ が底面に垂直なため)。
底面の面積:
$$S = \frac{1}{2}\sqrt{|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2 - (\vec{a} \cdot \vec{b})^2} = \frac{1}{2}\sqrt{9 \cdot 4 - 4} = \frac{1}{2}\sqrt{32} = 2\sqrt{2}$$
体積:
$$V = \frac{1}{3}Sh = \frac{1}{3} \cdot 2\sqrt{2} \cdot 1 = \frac{2\sqrt{2}}{3}$$
1辺の長さ $a$ の正四面体 $OABC$ について、辺 $OA$ と辺 $BC$ の距離を求めよ。
$\overrightarrow{OA} = \vec{a}$, $\overrightarrow{OB} = \vec{b}$, $\overrightarrow{OC} = \vec{c}$ とすると、正四面体より $|\vec{a}| = |\vec{b}| = |\vec{c}| = a$, $\vec{a} \cdot \vec{b} = \vec{b} \cdot \vec{c} = \vec{c} \cdot \vec{a} = \dfrac{a^2}{2}$
辺 $OA$ の方向ベクトルは $\vec{d}_1 = \vec{a}$、辺 $BC$ の方向ベクトルは $\vec{d}_2 = \vec{c} - \vec{b}$ です。
$\vec{d}_1 \cdot \vec{d}_2 = \vec{a} \cdot (\vec{c} - \vec{b}) = \vec{a} \cdot \vec{c} - \vec{a} \cdot \vec{b} = \dfrac{a^2}{2} - \dfrac{a^2}{2} = 0$
つまり辺 $OA$ と辺 $BC$ は直交しています。
$\overrightarrow{OB} = \vec{b}$ を $\vec{a}$ 方向と $(\vec{c} - \vec{b})$ 方向に垂直な成分に分解します。
$\vec{a}$ 方向の成分:$\text{proj}_{\vec{a}}\vec{b} = \dfrac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{a}|^2}\vec{a} = \dfrac{1}{2}\vec{a}$
$(\vec{c} - \vec{b})$ 方向の成分:$\text{proj}_{\vec{c}-\vec{b}}\vec{b} = \dfrac{\vec{b} \cdot (\vec{c} - \vec{b})}{|\vec{c} - \vec{b}|^2}(\vec{c} - \vec{b})$
$\vec{b} \cdot (\vec{c} - \vec{b}) = \dfrac{a^2}{2} - a^2 = -\dfrac{a^2}{2}$
$|\vec{c} - \vec{b}|^2 = |\vec{c}|^2 - 2\vec{b} \cdot \vec{c} + |\vec{b}|^2 = a^2 - a^2 + a^2 = a^2$
$\text{proj}_{\vec{c}-\vec{b}}\vec{b} = -\dfrac{1}{2}(\vec{c} - \vec{b})$
垂直成分:$\vec{h} = \vec{b} - \dfrac{1}{2}\vec{a} + \dfrac{1}{2}(\vec{c} - \vec{b}) = \dfrac{1}{2}\vec{b} - \dfrac{1}{2}\vec{a} + \dfrac{1}{2}\vec{c}$
距離は $|\vec{h}|$:
$|\vec{h}|^2 = \dfrac{1}{4}(|\vec{b}|^2 + |\vec{a}|^2 + |\vec{c}|^2 - 2\vec{a} \cdot \vec{b} + 2\vec{b} \cdot \vec{c} - 2\vec{a} \cdot \vec{c})$ $= \dfrac{1}{4}(3a^2 - a^2 + a^2 - a^2) = \dfrac{a^2}{2}$
$$d = |\vec{h}| = \frac{a}{\sqrt{2}} = \frac{a\sqrt{2}}{2}$$
正四面体の対辺は常に直交するという性質がポイントです。この直交性により、ねじれ2直線間の距離の計算が大幅に簡略化されます。
別解として、辺 $OA$ と辺 $BC$ の中点同士を結ぶ線分がこの距離に等しいことを利用する方法もあります(対辺の中点を結ぶ線分は両辺に垂直)。