物理で「力」や「速度」を表すとき、数値だけでは不十分です。「どちらの方向に、どれだけの大きさで」という情報が必要になります。ベクトルは、この「大きさ」と「向き」を一つにまとめた数学の道具です。この記事では、ベクトルの基本的な定義から、和・差・スカラー倍といった演算の幾何学的な意味までを丁寧に解説します。
日常生活で「5 km 歩いた」と言っても、東に歩いたのか西に歩いたのかで到着地はまるで違います。このように、大きさだけでなく向きも重要な量を扱うために生まれたのがベクトルです。
数学では、ベクトルを有向線分(向きのある線分)で表します。始点 $A$ から終点 $B$ へ向かう有向線分を $\overrightarrow{AB}$ と書きます。また、文字 $\vec{a}$ のように矢印を付けて表すこともあります。
ベクトルの本質は「どの方向に、どれだけ動け」という移動の指示です。始点がどこであっても、同じ方向に同じ距離だけ動く指示なら、それは「同じベクトル」です。
つまりベクトルは位置に依存しない量であり、平行移動しても変わりません。この「自由に動かせる」性質が、ベクトルを強力な道具にしています。
ベクトル $\vec{a}$ には、次の2つの属性があります。
✗ 誤:$\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{CD}$ は始点が違うから別のベクトル
○ 正:大きさと向きが同じなら、始点が違っても同じベクトル
ベクトルの相等は「始点の位置」ではなく「大きさと向きの一致」で判定します。図で見ると、平行移動で重なる有向線分はすべて同じベクトルを表しています。
温度や質量のように大きさだけで決まる量をスカラー(scalar)と呼びます。一方、力や速度のように大きさと向きの両方を持つ量がベクトル(vector)です。物理学では、この区別が本質的に重要です。大学の線形代数では、ベクトルの概念はさらに抽象化され、「ベクトル空間の元」として一般的に定義されます。
2つのベクトル $\vec{a}$ と $\vec{b}$ が相等(等しい)であるとは、大きさが等しく、向きが同じであることを意味します。これを $\vec{a} = \vec{b}$ と書きます。
具体的に、$\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{CD}$ が等しいとは、四角形 $ABDC$ が平行四辺形になることと同値です($AB // CD$ かつ $AB = CD$)。
$$\vec{a} = \vec{b} \iff \begin{cases} |\vec{a}| = |\vec{b}| \\ \vec{a} \text{ と } \vec{b} \text{ の向きが同じ} \end{cases}$$
※ 始点の位置は関係ありません。大きさと向きの2条件のみで判定します。
ベクトル $\vec{a}$ と大きさが等しく、向きが反対のベクトルを $\vec{a}$ の逆ベクトルと呼び、$-\vec{a}$ と書きます。
有向線分で考えると、$\overrightarrow{AB}$ の逆ベクトルは $\overrightarrow{BA}$ です。つまり、矢印の向きを逆転させたものが逆ベクトルです。
$$-\overrightarrow{AB} = \overrightarrow{BA}$$
始点と終点が一致するベクトル $\overrightarrow{AA}$ を零ベクトルと呼び、$\vec{0}$ と書きます。零ベクトルの大きさは $0$ です。
✗ 誤:零ベクトルには向きがないので、他のベクトルと平行とは言えない
○ 正:零ベクトルはすべてのベクトルに平行であると約束する
零ベクトルの「向き」は定義できませんが、数学の便宜上、任意のベクトルと平行と定めます。この約束により、「$\vec{a} // \vec{b}$ ⇔ $\vec{b} = k\vec{a}$ となる実数 $k$ が存在する」という命題が $\vec{a} = \vec{0}$ の場合にも成立します。
✗ 誤:$\vec{a} + (-\vec{a}) = 0$
○ 正:$\vec{a} + (-\vec{a}) = \vec{0}$
ベクトルの計算結果はベクトルです。スカラーの $0$ とベクトルの $\vec{0}$ は異なる対象なので、必ず矢印を付けて区別しましょう。
2つのベクトル $\vec{a}$ と $\vec{b}$ の和 $\vec{a} + \vec{b}$ は、「$\vec{a}$ の移動をした後に、続けて $\vec{b}$ の移動をする」という連続した移動を表します。
$\vec{a} = \overrightarrow{AB}$、$\vec{b} = \overrightarrow{BC}$ としたとき、$\vec{a} + \vec{b}$ は $A$ から $C$ への移動、すなわち $\overrightarrow{AC}$ になります。
$$\overrightarrow{AB} + \overrightarrow{BC} = \overrightarrow{AC}$$
※ 第1のベクトルの終点と第2のベクトルの始点をそろえて、全体の始点から終点へ引いた矢印が和になります。
ベクトルの和が「矢印をつなげる」操作になる理由は、ベクトルが移動の指示だからです。「東に3歩、次に北に4歩」は「北東方向に5歩」と同じ結果 ── この「同じ結果」がベクトルの和です。
三角形法則は暗記するルールではなく、移動の合成から自然に導かれる性質です。
$\vec{a}$ と $\vec{b}$ の始点をそろえて平行四辺形を作ると、その対角線が $\vec{a} + \vec{b}$ になります。これを平行四辺形法則と呼びます。
物理学で2つの力の合力を求める際に使われるのが、まさにこの平行四辺形法則です。三角形法則と平行四辺形法則は、見かけは違いますが表していることは同じです。三角形法則で $\vec{b}$ の始点を $\vec{a}$ の終点に移動したものが、平行四辺形の上半分になっています。
✗ 誤:$\overrightarrow{AB} + \overrightarrow{CB}$ をそのまま三角形法則で計算
○ 正:まず $\overrightarrow{CB} = -\overrightarrow{BC}$ と変換し、$\overrightarrow{AB} - \overrightarrow{BC}$ として処理する
三角形法則を使うには、「前のベクトルの終点 = 次のベクトルの始点」になっている必要があります。向きが合わないときは逆ベクトルを使って調整しましょう。
3つ以上のベクトルの和も、同じ原理で矢印をつなげていけば求まります。
$$\overrightarrow{AB} + \overrightarrow{BC} + \overrightarrow{CD} = \overrightarrow{AD}$$
特に、始点に戻ってくる場合(閉じた多角形を作る場合)は、和が零ベクトルになります。
$$\overrightarrow{AB} + \overrightarrow{BC} + \overrightarrow{CA} = \vec{0}$$
力の合成が平行四辺形法則に従うことは、実験的に確かめられた事実です。ニュートン力学において、複数の力が同時に働くとき、物体はそれらの合力(ベクトルの和)に従って運動します。この「重ね合わせの原理」は、物理学の多くの分野で本質的な役割を果たしています。
ベクトルの差 $\vec{a} - \vec{b}$ は、$\vec{a} + (-\vec{b})$ として定義されます。つまり、$\vec{b}$ の逆ベクトルを $\vec{a}$ に加えたものです。
幾何学的には、$\vec{a}$ と $\vec{b}$ の始点をそろえたとき、$\vec{b}$ の終点から $\vec{a}$ の終点へ向かうベクトルが $\vec{a} - \vec{b}$ です。
始点 $O$ を共有する $\vec{a} = \overrightarrow{OA}$、$\vec{b} = \overrightarrow{OB}$ に対して:
$$\vec{a} - \vec{b} = \overrightarrow{OA} - \overrightarrow{OB} = \overrightarrow{BA}$$
※ $\vec{b}$ の先端から $\vec{a}$ の先端へ向かう矢印が差のベクトルです。「引かれるベクトルの先端」が始点になります。
$\overrightarrow{OA} - \overrightarrow{OB} = \overrightarrow{BA}$ という関係は、共通の基準点 $O$ からの位置情報を使って、$B$ から $A$ への移動を計算していることに他なりません。
この考え方は、後に学ぶ「位置ベクトル」の基礎となります。2点間のベクトルは、位置ベクトルの差で表せるのです。
実数 $k$ とベクトル $\vec{a}$($\vec{a} \neq \vec{0}$)に対して、スカラー倍 $k\vec{a}$ を次のように定めます。
大きさについては、$|k\vec{a}| = |k| \cdot |\vec{a}|$ が成り立ちます。
✗ 誤:$|-3\vec{a}| = -3|\vec{a}|$
○ 正:$|-3\vec{a}| = |-3| \cdot |\vec{a}| = 3|\vec{a}|$
ベクトルの大きさ(長さ)は常に $0$ 以上です。スカラー倍の大きさでは $k$ の絶対値を取ることを忘れないでください。
$\vec{a} \neq \vec{0}$ のとき、$\vec{b}$ が $\vec{a}$ に平行であるとは、ある実数 $k$ が存在して $\vec{b} = k\vec{a}$ と書けることを意味します。
$\vec{a} \neq \vec{0}$ のとき:
$$\vec{a} \mathbin{/\!/} \vec{b} \iff \vec{b} = k\vec{a} \text{ となる実数 } k \text{ が存在する}$$
※ $k > 0$ なら同じ向き、$k < 0$ なら逆向きです。
$\vec{b} = k\vec{a}$ と書けるとき、$\vec{a}$ と $\vec{b}$ は「1次従属」(linearly dependent)であると言います。これは大学の線形代数で登場する重要概念です。逆に、平行でない2つのベクトルは「1次独立」(linearly independent)であり、平面上のすべてのベクトルをそれらの1次結合で表すことができます。
ベクトルの和とスカラー倍は、実数の計算と同様の法則を満たします。これにより、ベクトルの式を数式と同じ感覚で変形できます。
和に関する法則:
$$\vec{a} + \vec{b} = \vec{b} + \vec{a} \quad \text{(交換法則)}$$
$$(\vec{a} + \vec{b}) + \vec{c} = \vec{a} + (\vec{b} + \vec{c}) \quad \text{(結合法則)}$$
$$\vec{a} + \vec{0} = \vec{a}, \quad \vec{a} + (-\vec{a}) = \vec{0}$$
スカラー倍に関する法則:
$$k(l\vec{a}) = (kl)\vec{a}$$
$$(k + l)\vec{a} = k\vec{a} + l\vec{a} \quad \text{(分配法則1)}$$
$$k(\vec{a} + \vec{b}) = k\vec{a} + k\vec{b} \quad \text{(分配法則2)}$$
交換法則 $\vec{a} + \vec{b} = \vec{b} + \vec{a}$ は、平行四辺形法則から直ちにわかります。平行四辺形の対角線は、$\vec{a}$ の後に $\vec{b}$ を足しても、$\vec{b}$ の後に $\vec{a}$ を足しても同じだからです。
$\vec{a} + \vec{b}$ で作られる三角形を考えます。この三角形全体を $k$ 倍に拡大($k > 0$ の場合)すると、各辺も $k$ 倍になります。
したがって、$\vec{a}$ は $k\vec{a}$ に、$\vec{b}$ は $k\vec{b}$ に、そして $\vec{a} + \vec{b}$ は $k(\vec{a} + \vec{b})$ になります。
拡大後の三角形で三角形法則を適用すると $k\vec{a} + k\vec{b} = k(\vec{a} + \vec{b})$ が成り立ちます。
これらの法則を使えば、ベクトルの式は通常の文字式と同じように展開・整理できます。
$$3(\vec{a} + 2\vec{b}) - 2(2\vec{a} - \vec{b}) = 3\vec{a} + 6\vec{b} - 4\vec{a} + 2\vec{b} = -\vec{a} + 8\vec{b}$$
ただし、ベクトルどうしの「かけ算」は通常の意味では定義されていません。$\vec{a} \times \vec{b}$ や $\vec{a} \cdot \vec{b}$ には特別な意味があり(内積・外積)、次の記事以降で学びます。
ベクトルの等式 $\vec{a} + \vec{x} = \vec{b}$ を解くと $\vec{x} = \vec{b} - \vec{a}$ です。これは数の方程式 $a + x = b$ を解くのと全く同じ操作です。
ベクトルの演算法則が実数と同じ構造を持つおかげで、ベクトルの等式も普通の方程式と同様に扱えます。この「同じ構造を持つ」ことを、数学では「ベクトル空間の公理を満たす」と表現します。
大学の線形代数では、上の演算法則(8つの公理)を満たすものを一般に「ベクトル空間」と定義します。矢印だけでなく、関数の集合や行列の集合も、同じ演算法則を満たせばベクトル空間になります。高校で学ぶ「矢印のベクトル」は、ベクトル空間の最も直感的な例なのです。
Q1. ベクトル $\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{CD}$ が等しいための条件を2つ述べよ。
Q2. $\overrightarrow{AB} + \overrightarrow{BC} + \overrightarrow{CA}$ を簡単にせよ。
Q3. $|-5\vec{a}|$ を $|\vec{a}|$ を用いて表せ。
Q4. $\vec{a} \neq \vec{0}$ のとき、$\vec{b} = -3\vec{a}$ ならば $\vec{a}$ と $\vec{b}$ の向きの関係を述べよ。
Q5. $2(\vec{a} - 3\vec{b}) + 3(2\vec{b} - \vec{a})$ を整理せよ。
平行四辺形 $ABCD$ において、$\overrightarrow{AB} = \vec{a}$、$\overrightarrow{AD} = \vec{b}$ とする。次のベクトルを $\vec{a}$、$\vec{b}$ で表せ。
(1) $\overrightarrow{AC}$
(2) $\overrightarrow{BD}$
(3) 対角線の交点を $M$ とするとき、$\overrightarrow{AM}$
(1) $\overrightarrow{AC} = \overrightarrow{AB} + \overrightarrow{BC} = \overrightarrow{AB} + \overrightarrow{AD} = \vec{a} + \vec{b}$
(平行四辺形なので $\overrightarrow{BC} = \overrightarrow{AD} = \vec{b}$)
(2) $\overrightarrow{BD} = \overrightarrow{BA} + \overrightarrow{AD} = -\vec{a} + \vec{b} = \vec{b} - \vec{a}$
(3) $M$ は対角線 $AC$ の中点なので:
$\overrightarrow{AM} = \dfrac{1}{2}\overrightarrow{AC} = \dfrac{1}{2}(\vec{a} + \vec{b})$
三角形 $ABC$ において、辺 $BC$ の中点を $M$、辺 $AC$ を $2:1$ に内分する点を $D$ とする。$\overrightarrow{AB} = \vec{b}$、$\overrightarrow{AC} = \vec{c}$ とするとき、次のベクトルを $\vec{b}$、$\vec{c}$ で表せ。
(1) $\overrightarrow{AM}$
(2) $\overrightarrow{AD}$
(3) $\overrightarrow{DM}$
(1) $M$ は $BC$ の中点なので:
$$\overrightarrow{AM} = \frac{1}{2}(\overrightarrow{AB} + \overrightarrow{AC}) = \frac{1}{2}(\vec{b} + \vec{c}) = \frac{\vec{b} + \vec{c}}{2}$$
(2) $D$ は $AC$ を $2:1$ に内分するので:
$$\overrightarrow{AD} = \frac{2}{3}\overrightarrow{AC} = \frac{2}{3}\vec{c}$$
(3) $\overrightarrow{DM} = \overrightarrow{AM} - \overrightarrow{AD} = \dfrac{\vec{b} + \vec{c}}{2} - \dfrac{2}{3}\vec{c} = \dfrac{\vec{b}}{2} + \dfrac{\vec{c}}{2} - \dfrac{2\vec{c}}{3} = \dfrac{\vec{b}}{2} - \dfrac{\vec{c}}{6} = \dfrac{3\vec{b} - \vec{c}}{6}$
三角形 $OAB$ において、$\overrightarrow{OA} = \vec{a}$、$\overrightarrow{OB} = \vec{b}$ とする。辺 $OA$ を $1:2$ に内分する点を $P$、辺 $OB$ の中点を $Q$ とする。
(1) $\overrightarrow{PQ}$ を $\vec{a}$、$\vec{b}$ で表せ。
(2) $\overrightarrow{AB}$ を $\vec{a}$、$\vec{b}$ で表し、$PQ$ と $AB$ が平行であることを示せ。
(1) $\overrightarrow{OP} = \dfrac{1}{3}\vec{a}$、$\overrightarrow{OQ} = \dfrac{1}{2}\vec{b}$ より:
$$\overrightarrow{PQ} = \overrightarrow{OQ} - \overrightarrow{OP} = \frac{1}{2}\vec{b} - \frac{1}{3}\vec{a} = -\frac{1}{3}\vec{a} + \frac{1}{2}\vec{b}$$
(2) $\overrightarrow{AB} = \overrightarrow{OB} - \overrightarrow{OA} = \vec{b} - \vec{a} = -\vec{a} + \vec{b}$
ここで $\overrightarrow{PQ} = -\dfrac{1}{3}\vec{a} + \dfrac{1}{2}\vec{b}$ と $\overrightarrow{AB} = -\vec{a} + \vec{b}$ を比較する。
もし $\overrightarrow{PQ} = k\overrightarrow{AB}$ とすると、$-\dfrac{1}{3}\vec{a} + \dfrac{1}{2}\vec{b} = k(-\vec{a} + \vec{b})$ より $k = \dfrac{1}{3}$ かつ $k = \dfrac{1}{2}$。
これは矛盾するので、$PQ$ と $AB$ は一般には平行ではありません。
※ $PQ \mathbin{/\!/} AB$ となるのは $\overrightarrow{PQ} = k\overrightarrow{AB}$ が成り立つとき、すなわち $\dfrac{1}{3} = \dfrac{1}{2}$ となるときですが、これは成立しません。よって $PQ$ と $AB$ は平行ではありません。
$PQ \mathbin{/\!/} AB$ となるための条件は、$P$ と $Q$ がそれぞれの辺を同じ比で分けることです。$P$ が $OA$ を $1:2$、$Q$ が $OB$ を $1:1$ に分けているので、比が一致せず平行になりません。これが平行条件の典型的な確認方法です。
四角形 $ABCD$ の各辺の中点を順に $P$、$Q$、$R$、$S$ とする($P$ は $AB$ の中点、$Q$ は $BC$ の中点、$R$ は $CD$ の中点、$S$ は $DA$ の中点)。四角形 $PQRS$ が平行四辺形になることをベクトルを用いて証明せよ。
$\overrightarrow{AB} = \vec{b}$、$\overrightarrow{AC} = \vec{c}$、$\overrightarrow{AD} = \vec{d}$ とおく。
各中点の位置を $A$ を始点として表すと:
$\overrightarrow{AP} = \dfrac{1}{2}\vec{b}$、$\overrightarrow{AQ} = \dfrac{1}{2}(\vec{b} + \vec{c})$($Q$ は $BC$ の中点)
$\overrightarrow{AR} = \dfrac{1}{2}(\vec{c} + \vec{d})$($R$ は $CD$ の中点)、$\overrightarrow{AS} = \dfrac{1}{2}\vec{d}$
ここで:
$$\overrightarrow{PQ} = \overrightarrow{AQ} - \overrightarrow{AP} = \frac{1}{2}(\vec{b} + \vec{c}) - \frac{1}{2}\vec{b} = \frac{1}{2}\vec{c}$$
$$\overrightarrow{SR} = \overrightarrow{AR} - \overrightarrow{AS} = \frac{1}{2}(\vec{c} + \vec{d}) - \frac{1}{2}\vec{d} = \frac{1}{2}\vec{c}$$
$\overrightarrow{PQ} = \overrightarrow{SR} = \dfrac{1}{2}\vec{c}$ より、$PQ$ と $SR$ は平行かつ長さが等しい。
したがって、四角形 $PQRS$ は平行四辺形である。 $\square$
この定理は「中点連結定理の一般化」です。任意の四角形(凸でなくてもよい)の各辺の中点を結ぶと平行四辺形になるという美しい結果です。証明のポイントは、2つの対辺のベクトルが対角線 $\overrightarrow{AC}$ の半分 $\dfrac{1}{2}\vec{c}$ に一致することです。