等比数列は日常生活の複利計算や、数学の漸化式にも深く関わっています。この記事では等比数列の知識を実際の問題に応用する方法を学びます。条件から初項 $a$ と公比 $r$ を決定する問題や、無限等比級数への導入にも触れます。
銀行に預けたお金が利子で増えていく複利計算は、等比数列の典型的な応用です。
元金 $A$ 円を年利率 $r$($0 < r < 1$)で複利運用すると、$n$ 年後の元利合計は:
$$A_n = A(1 + r)^n$$
これは初項 $A(1+r)$、公比 $(1+r)$ の等比数列です。
※ 年利 $5\%$ なら $r = 0.05$ として $(1+r) = 1.05$ が公比になります。
例:$100$ 万円を年利 $3\%$ の複利で $10$ 年間預けたときの元利合計を求めよ。
$A_{10} = 100 \times (1.03)^{10}$
$(1.03)^{10} \fallingdotseq 1.3439$ なので $A_{10} \fallingdotseq 134.39$ 万円
毎年末に $a$ 円ずつ積み立て、年利率 $r$ で複利運用する場合、$n$ 年後の合計額は:
$$S_n = a(1+r) + a(1+r)^2 + \cdots + a(1+r)^n = \frac{a(1+r)\{(1+r)^n - 1\}}{r}$$
これは初項 $a(1+r)$、公比 $(1+r)$ の等比数列の和です。
単利は毎年元金にだけ利子がつく(等差数列)。複利は利子にも利子がつく(等比数列)。
長期間になると複利の効果は非常に大きくなります。これが「複利のマジック」です。
等比数列の問題では、いくつかの条件から初項 $a$ と公比 $r$ を求める問題がよく出題されます。
例1:第 $3$ 項が $12$、第 $6$ 項が $96$ の等比数列の初項と公比を求めよ。
$a_3 = ar^2 = 12$ …①、$a_6 = ar^5 = 96$ …②
②÷①:$r^3 = 8$ より $r = 2$。①に代入:$4a = 12$ より $a = 3$
例2:第 $2$ 項が $6$、第 $4$ 項が $54$ の等比数列。
$ar = 6$, $ar^3 = 54$ より $r^2 = 9$、$r = \pm 3$
$r = 3$: $a = 2$。$r = -3$: $a = -2$。
✗ $r^2 = 9$ から $r = 3$ とだけ答える
✓ $r^2 = 9$ から $r = 3$ または $r = -3$ とし、両方の場合を検討する
偶数乗の方程式からは正負両方の解が出ます。問題の条件によっては片方が不適になることもありますが、必ず確認しましょう。
$a$, $b$, $c$ がこの順で等比数列をなすとき:
$$b^2 = ac$$
$b$ を $a$ と $c$ の等比中項といいます。
※ $b = \pm\sqrt{ac}$ であり、$a$ と $c$ が同符号であることが必要です。
等比数列は漸化式の最も基本的な形で表せます。
等比数列 $\{a_n\}$(初項 $a$、公比 $r$)は次の漸化式を満たします:
$$a_{n+1} = r \cdot a_n \quad (n = 1, 2, 3, \ldots), \quad a_1 = a$$
※「次の項 $=$ 公比 $\times$ 前の項」という関係式です。
例:$a_1 = 5$, $a_{n+1} = 3a_n$ で定まる数列の一般項を求めよ。
これは初項 $5$、公比 $3$ の等比数列なので:
$a_n = 5 \cdot 3^{n-1}$
漸化式とは「隣り合う項の関係」を式で表したものです。等比数列の $a_{n+1} = ra_n$ は最も単純な漸化式です。
今後学ぶ $a_{n+1} = pa_n + q$ のような漸化式も、等比数列に帰着させて解くことが多く、等比数列は漸化式の土台となります。
公比の絶対値が $1$ より小さい等比数列では、項数 $n$ を無限に大きくしたときの和を考えることができます。
$|r| < 1$ のとき $n \to \infty$ で $r^n \to 0$ なので:
$$S = \lim_{n \to \infty} S_n = \lim_{n \to \infty} \frac{a(1-r^n)}{1-r} = \frac{a}{1-r}$$
※ $|r| \geq 1$ のときは和が発散し、有限の値にはなりません。
例1:$1 + \frac{1}{2} + \frac{1}{4} + \frac{1}{8} + \cdots = \frac{1}{1 - 1/2} = 2$
例2:$3 - 1 + \frac{1}{3} - \frac{1}{9} + \cdots$($a = 3$, $r = -\frac{1}{3}$)
$S = \frac{3}{1-(-1/3)} = \frac{3}{4/3} = \frac{9}{4}$
✗ $1 + 2 + 4 + 8 + \cdots = \frac{1}{1-2} = -1$ と計算する
✓ $|r| = 2 \geq 1$ なので無限等比級数は発散。和は存在しない
無限等比級数の和の公式は $|r| < 1$ でなければ使えません。収束条件を必ず確認しましょう。
循環小数は無限等比級数で表せます。例えば $0.333\ldots = \frac{3}{10} + \frac{3}{100} + \frac{3}{1000} + \cdots = \frac{3/10}{1-1/10} = \frac{1}{3}$
このように無限等比級数は「無限の操作に有限の答えを与える」美しい数学的道具です。
入試で頻出する等比数列の応用パターンを整理します。
例:$3$ つの数 $a-d$, $a$, $a+d$ が等比数列をなすとき、$a$ と $d$ の関係を求めよ。
等比中項の条件:$a^2 = (a-d)(a+d) = a^2 - d^2$
$d^2 = 0$ より $d = 0$。つまり等差数列かつ等比数列であるためには定数列でなければなりません。
例:和が $14$ で積が $64$ である $3$ つの正の数を求めよ。
$3$ 数を $\frac{a}{r}$, $a$, $ar$ とおく。積 $= a^3 = 64$ より $a = 4$。
和 $= \frac{4}{r} + 4 + 4r = 14$ より $\frac{4}{r} + 4r = 10$
$4r^2 - 10r + 4 = 0$、$2r^2 - 5r + 2 = 0$、$(2r-1)(r-2) = 0$
$r = \frac{1}{2}$ または $r = 2$。答:$2, 4, 8$(または $8, 4, 2$)
等比数列をなす $3$ 数は $\frac{a}{r}$, $a$, $ar$ とおくと、積が $a^3$ となり計算が簡潔になります。
これは等差数列で $3$ 数を $a-d$, $a$, $a+d$ とおくテクニックの等比版です。
Q1. $100$ 万円を年利 $2\%$ の複利で $n$ 年間預けたときの元利合計を式で表せ。
Q2. 第 $2$ 項が $10$、第 $5$ 項が $80$ である等比数列の初項と公比を求めよ。
Q3. $4$, $x$, $9$ がこの順で等比数列をなすとき、$x$ の値を求めよ。
Q4. $\frac{1}{4} + \frac{1}{8} + \frac{1}{16} + \cdots$ の無限等比級数の和を求めよ。
Q5. $a_1 = 2$, $a_{n+1} = -3a_n$ で定まる数列の一般項を求めよ。
毎年初めに $10$ 万円ずつ積み立て、年利 $5\%$ の複利で運用する。$5$ 年後の年末の合計額を求めよ。ただし $(1.05)^5 = 1.2763$ とする。
$k$ 年目初めの $10$ 万円は年末には $10 \times (1.05)^{5-k+1}$ 万円になる。
$S = 10(1.05)^5 + 10(1.05)^4 + 10(1.05)^3 + 10(1.05)^2 + 10(1.05)$
$= 10 \times 1.05 \times \frac{(1.05)^5 - 1}{1.05 - 1} = \frac{10.5 \times 0.2763}{0.05} = \frac{2.90115}{0.05} \fallingdotseq 58.02$ 万円
等比数列 $\{a_n\}$ において $a_2 + a_4 = 30$、$a_3 + a_5 = 60$ が成り立つとき、初項 $a$ と公比 $r$ を求めよ。
$a_2 + a_4 = ar + ar^3 = ar(1 + r^2) = 30$ …①
$a_3 + a_5 = ar^2 + ar^4 = ar^2(1 + r^2) = 60$ …②
②÷①:$r = 2$
①に代入:$2a(1 + 4) = 10a = 30$ より $a = 3$
$3$ つの正の数が等比数列をなし、その和が $26$、積が $216$ であるとき、この $3$ 数を求めよ。
$3$ 数を $\frac{a}{r}$, $a$, $ar$ とおく。
積 $= a^3 = 216$ より $a = 6$
和 $= \frac{6}{r} + 6 + 6r = 26$ より $\frac{6}{r} + 6r = 20$
$6r^2 - 20r + 6 = 0$、$3r^2 - 10r + 3 = 0$、$(3r-1)(r-3) = 0$
$r = \frac{1}{3}$ または $r = 3$
答:$2, 6, 18$(または $18, 6, 2$)
初項 $a$($a > 0$)、公比 $r$ の無限等比級数の和が $8$、各項の2乗からなる無限等比級数の和が $16$ であるとき、$a$ と $r$ を求めよ。
元の級数の和:$\frac{a}{1-r} = 8$ …①($|r| < 1$)
2乗の級数は初項 $a^2$、公比 $r^2$ の等比級数で、$|r^2| < 1$ より収束。
$\frac{a^2}{1-r^2} = 16$ …②
$1 - r^2 = (1-r)(1+r)$ なので②は $\frac{a^2}{(1-r)(1+r)} = 16$
①より $a = 8(1-r)$ を②に代入:
$\frac{64(1-r)^2}{(1-r)(1+r)} = \frac{64(1-r)}{1+r} = 16$
$4(1-r) = 1+r$ より $4 - 4r = 1 + r$、$5r = 3$、$r = \frac{3}{5}$
$a = 8(1 - \frac{3}{5}) = 8 \times \frac{2}{5} = \frac{16}{5}$
2乗の等比級数の公比は $r^2$ になることがポイント。$1 - r^2 = (1-r)(1+r)$ の因数分解を使って①と②を連立する。