「$1$ から $100$ までの自然数の和を求めよ」。少年ガウスが一瞬で答えたというこの問題の背後にある発想は、等差数列の和の公式そのものです。この記事では等差数列の和の公式を導出し、その使い方を丁寧に学びます。
$1 + 2 + 3 + \cdots + 100$ を計算する方法を考えましょう。ガウスの方法は、この和を「逆順にも書いて加える」というものです。
$S = 1 + 2 + 3 + \cdots + 99 + 100$
$S = 100 + 99 + 98 + \cdots + 2 + 1$
辺々加えると
$2S = 101 + 101 + 101 + \cdots + 101 + 101 = 101 \times 100$
$S = \frac{101 \times 100}{2} = 5050$
ガウスの方法の本質は、「先頭の項と末尾の項のペアを作ると、すべてのペアの和が等しくなる」という等差数列の性質を利用することです。
$a_1 + a_n = a_2 + a_{n-1} = a_3 + a_{n-2} = \cdots$
この性質は、等差数列の定義から直接従います。
等差数列の初項から第 $n$ 項までの和 $S_n = a_1 + a_2 + \cdots + a_n$ には、2つの便利な公式があります。
公式I(初項と末項がわかるとき):
$$S_n = \frac{n(a_1 + a_n)}{2}$$
公式II(初項と公差がわかるとき):
$$S_n = \frac{n\{2a + (n-1)d\}}{2}$$
※ 公式I は「(項数) × (初項 + 末項) ÷ 2」、公式II は公式I に $a_n = a + (n-1)d$ を代入したものです。
公式I:末項 $a_n$ がわかっている、またはすぐ計算できるとき → こちらが簡単
公式II:初項 $a$ と公差 $d$ が与えられ、$n$ の式として $S_n$ を求めたいとき → こちらが便利
迷ったら公式II を使えば、初項と公差から常に計算できます。
ガウスの方法を一般化して、公式を証明します。
$S_n = a_1 + a_2 + a_3 + \cdots + a_{n-1} + a_n$ ... ①
逆順に書くと
$S_n = a_n + a_{n-1} + a_{n-2} + \cdots + a_2 + a_1$ ... ②
①+② より
$2S_n = (a_1 + a_n) + (a_2 + a_{n-1}) + \cdots + (a_n + a_1)$
等差数列の性質 $a_k + a_{n+1-k} = a_1 + a_n$(一定)より
$2S_n = n(a_1 + a_n)$
$$\therefore\ S_n = \frac{n(a_1 + a_n)}{2}$$
ここに $a_n = a + (n-1)d$ を代入すると
$S_n = \frac{n\{a + a + (n-1)d\}}{2} = \frac{n\{2a + (n-1)d\}}{2}$
$S_n = \frac{n\{2a + (n-1)d\}}{2} = \frac{d}{2}n^2 + \left(a - \frac{d}{2}\right)n$
✗ $S_n$ は $n$ の1次式(等差数列の一般項が1次式だから)
✓ $d \neq 0$ のとき $S_n$ は $n$ の2次式(定数項は $0$)
等差数列の和は $n$ の2次式になります($d = 0$ のときは $S_n = na$ で1次式)。
具体的な等差数列の和を求めてみましょう。
問:$1 + 2 + 3 + \cdots + 50$ を求めよ。
初項 $1$、末項 $50$、項数 $50$。公式I より
$S_{50} = \frac{50(1 + 50)}{2} = \frac{50 \cdot 51}{2} = 1275$
問:初項 $3$、公差 $4$ の等差数列の初項から第 $20$ 項までの和を求めよ。
公式II より
$S_{20} = \frac{20\{2 \cdot 3 + 19 \cdot 4\}}{2} = \frac{20(6 + 76)}{2} = \frac{20 \cdot 82}{2} = 820$
問:$100$ 以下の正の $3$ の倍数の和を求めよ。
$3, 6, 9, \ldots, 99$ は初項 $3$、公差 $3$、末項 $99$ の等差数列。
項数:$\frac{99 - 3}{3} + 1 = 33$
$S = \frac{33(3 + 99)}{2} = \frac{33 \cdot 102}{2} = 1683$
初項 $a$、公差 $d$、末項 $l$ の等差数列の項数 $n$ は
$$n = \frac{l - a}{d} + 1$$
※ 「(末項 − 初項) ÷ 公差 + 1」で覚えましょう。
初項から第 $n$ 項までの和 $S_n$ がわかれば、逆に一般項 $a_n$ を求めることができます。
$$a_n = \begin{cases} S_1 & (n = 1) \\ S_n - S_{n-1} & (n \geq 2) \end{cases}$$
※ $S_1 = a_1$ が $S_n - S_{n-1}$ に $n = 1$ を代入した式と一致するかどうか、確認が必要です。
問:$S_n = 2n^2 + 3n$ のとき $a_n$ を求めよ。
$n \geq 2$ のとき $a_n = S_n - S_{n-1} = (2n^2+3n) - \{2(n-1)^2+3(n-1)\}$
$= 2n^2+3n - (2n^2-4n+2+3n-3) = 2n^2+3n - 2n^2+n+1 = 4n+1$
$n = 1$ のとき $a_1 = S_1 = 2+3 = 5$。$4 \cdot 1 + 1 = 5$ と一致。
よって $a_n = 4n + 1$($n \geq 1$)
✗ $n \geq 2$ で求めた式をそのまま $a_n$ とする
✓ 必ず $n = 1$ を代入して $S_1 = a_1$ と一致するか確認する
一致しない場合は場合分けが必要です(等差数列では通常一致しますが、他の数列では一致しないこともあります)。
$S_n = An^2 + Bn$(定数項 $0$)の形なら、$a_n = S_n - S_{n-1}$ は $n$ の1次式になり、$\{a_n\}$ は等差数列です。
逆に、$S_n = An^2 + Bn + C$($C \neq 0$)の場合は $a_1 = S_1 = A + B + C$ と $n \geq 2$ での $a_n = 2An + (B-A)$ が一致しないことがあり、等差数列にはなりません。
Q1. $1 + 2 + 3 + \cdots + 100$ を求めよ。
Q2. 初項 $10$、公差 $-3$、項数 $8$ の等差数列の和を求めよ。
Q3. $1$ から $200$ までの偶数の和を求めよ。
Q4. $S_n = 3n^2 - n$ のとき $a_n$ を求めよ。
Q5. 等差数列 $50, 47, 44, \ldots$ の初項から第 $n$ 項までの和が最大になる $n$ を求めよ。
次の等差数列の和を求めよ。
(1) 初項 $2$、末項 $50$、項数 $25$
(2) 初項 $-5$、公差 $3$、項数 $15$
(1) $S = \frac{25(2+50)}{2} = \frac{25 \cdot 52}{2} = 650$
(2) $S = \frac{15\{2 \cdot (-5) + 14 \cdot 3\}}{2} = \frac{15(-10+42)}{2} = \frac{15 \cdot 32}{2} = 240$
$1$ から $1000$ までの自然数のうち、$7$ で割ると $3$ 余る数の和を求めよ。
$7$ で割ると $3$ 余る数:$3, 10, 17, \ldots$ 初項 $3$、公差 $7$。
末項:$a_n = 7n - 4 \leq 1000$ より $n \leq \frac{1004}{7} \approx 143.4$。末項は $a_{143} = 7 \cdot 143 - 4 = 997$。
$S = \frac{143(3 + 997)}{2} = \frac{143 \cdot 1000}{2} = 71500$
数列 $\{a_n\}$ の初項から第 $n$ 項までの和が $S_n = n^2 + 5n$ であるとき、次の問いに答えよ。
(1) 一般項 $a_n$ を求めよ。
(2) $\{a_n\}$ が等差数列であることを示し、初項と公差を答えよ。
(1) $n \geq 2$ のとき $a_n = S_n - S_{n-1} = n^2+5n - (n-1)^2 - 5(n-1)$
$= n^2+5n-n^2+2n-1-5n+5 = 2n+4$
$n = 1$:$a_1 = S_1 = 1+5 = 6$。$2 \cdot 1 + 4 = 6$ ✓。よって $a_n = 2n+4$。
(2) $a_{n+1} - a_n = 2(n+1)+4 - (2n+4) = 2$(定数)。等差数列。初項 $a_1 = 6$、公差 $d = 2$。
等差数列 $\{a_n\}$ において $a_1 = 50$, $d = -3$ とする。
(1) $S_n$ を $n$ の式で表せ。
(2) $S_n$ が最大となる $n$ の値と、そのときの $S_n$ の値を求めよ。
(1) $S_n = \frac{n\{2 \cdot 50 + (n-1)(-3)\}}{2} = \frac{n(100-3n+3)}{2} = \frac{n(103-3n)}{2}$
$= -\frac{3}{2}n^2 + \frac{103}{2}n$
(2) $a_n = 50 + (n-1)(-3) = 53 - 3n$。
$a_n \geq 0$ のとき:$53-3n \geq 0$、$n \leq \frac{53}{3} \approx 17.67$。
$a_{17} = 53-51 = 2 > 0$、$a_{18} = 53-54 = -1 < 0$。
$S_n$ は $n = 17$ で最大。$S_{17} = \frac{17(103-51)}{2} = \frac{17 \cdot 52}{2} = 442$
公差が負の等差数列の和は、正の項を足しているうちは増加し、負の項を足し始めると減少します。したがって、「最後の非負の項まで足した」ときに和は最大になります。$a_n \geq 0$ かつ $a_{n+1} < 0$ となる $n$ が答えです。