高校数学IIの「図形と方程式」では、直線や円を方程式で表し、交点の座標を連立方程式で求めます。
この計算は実用的ですが、「なぜ図形を方程式で表せるのか」「方程式のどの性質が図形のどの性質に対応するのか」は深く問われません。
大学数学では、デカルトが導入した座標という仕組みを幾何学から代数への翻訳装置として捉えます。
点を数の組 $(x, y)$ に対応させることで、「2点間の距離」は差の2乗和の平方根に、「直線上にある」は1次方程式を満たすことに、「円上にある」は2次方程式を満たすことに翻訳されます。
この翻訳が成り立つ理由を理解すると、高校で個別に覚えていた公式 ── 点と直線の距離、円の接線の条件、軌跡の方程式 ── がすべて一つの原理から導かれることがわかります。
高校数学IIの「図形と方程式」では、座標平面上の図形を方程式で表す方法を学びます。主な内容は次の通りです。
これらは「公式」として提示され、問題を解く道具として使われます。 たとえば、2つの円の交点を求めるには連立方程式を解き、軌跡の問題では「動点 $P(x, y)$ が条件を満たすとき、$x, y$ の関係式を求めよ」という手順で進めます。
高校の扱いは計算の道具としては十分ですが、次のような問いに対しては答えを用意していません。 なぜ2点間の距離が差の2乗和の平方根で表されるのか。 なぜ直線の方程式は1次式で、円の方程式は特定の形の2次式なのか。 点と直線の距離公式はどこから出てくるのか。 次のセクションでは、これらの問いに統一的に答える視点を導入します。
17世紀、フランスの数学者デカルトは、平面上に直交する2本の数直線(座標軸)を設定し、各点に数の組 $(x, y)$ を対応させるという方法を導入しました。 この発想は、それ以前のギリシャ幾何学とは根本的に異なるものです。
ギリシャ幾何学では、「直線」「円」「角度」といった幾何学的な対象をそのまま扱い、コンパスと定規による作図で問題を解きました。 デカルトの座標は、これらの幾何学的対象を数と方程式に翻訳する仕組みを提供します。 この翻訳によって、図形の性質を調べる問題が、方程式を操作する問題に変わります。
座標の導入は、次の対応関係(翻訳辞書)を確立します。
1. 点 $\longleftrightarrow$ 数の組 $(x, y) \in \mathbb{R}^2$
2. 2点間の距離 $\longleftrightarrow$ 差のベクトルの内積から定まるノルム
3. 直線上にある $\longleftrightarrow$ 1次方程式 $ax + by + c = 0$ を満たす
4. 円上にある $\longleftrightarrow$ 2次方程式 $(x-a)^2 + (y-b)^2 = r^2$ を満たす
5. 図形の交わり $\longleftrightarrow$ 連立方程式の共通解
この対応を通じて、図形の問題はすべて方程式の問題に帰着します。
この翻訳の鍵を握るのが距離の概念です。 座標平面上の「距離」がどのように代数的に表されるかを理解すれば、直線の方程式も円の方程式も点と直線の距離公式も、すべて自然に導かれます。 次のセクションでは、距離の代数的な表現を、ベクトルの内積を用いて整理します。
座標平面上の点 $P$ に対し、原点 $O$ から $P$ への矢印を位置ベクトル $\mathbf{p}$ と呼ぶことは、高校数学Cのベクトルで学んでいます。 点 $P(x_1, y_1)$ の位置ベクトルは $\mathbf{p} = \begin{pmatrix} x_1 \\ y_1 \end{pmatrix}$ です。
2点 $A(x_1, y_1)$, $B(x_2, y_2)$ が与えられたとき、$A$ から $B$ へのベクトルは
$$\overrightarrow{AB} = \mathbf{b} - \mathbf{a} = \begin{pmatrix} x_2 - x_1 \\ y_2 - y_1 \end{pmatrix}$$
です。この差のベクトルが、2点の位置関係を代数的に表す基本的な道具になります。
高校数学Cで、2つのベクトル $\mathbf{u} = \begin{pmatrix} u_1 \\ u_2 \end{pmatrix}$, $\mathbf{v} = \begin{pmatrix} v_1 \\ v_2 \end{pmatrix}$ の内積を
$$\mathbf{u} \cdot \mathbf{v} = u_1 v_1 + u_2 v_2$$
と定義することを学びます。この内積から、ベクトルの長さ(ノルム)を
$$\|\mathbf{u}\| = \sqrt{\mathbf{u} \cdot \mathbf{u}} = \sqrt{u_1^2 + u_2^2}$$
と定義します。そして、2点 $A$, $B$ の距離を「差のベクトルの長さ」として
$$d(A, B) = \|\overrightarrow{AB}\| = \sqrt{(x_2 - x_1)^2 + (y_2 - y_1)^2}$$
と表します。これが高校で学ぶ2点間の距離の公式そのものです。
座標平面上の2点 $A(x_1, y_1)$, $B(x_2, y_2)$ の距離は、差のベクトル $\mathbf{v} = \mathbf{b} - \mathbf{a}$ の長さとして
$$d(A, B) = \|\mathbf{v}\| = \sqrt{\mathbf{v} \cdot \mathbf{v}}$$
で定義されます。ここで $\mathbf{v} \cdot \mathbf{v}$ はベクトルの自身との内積です。
この定義の要点は、距離が内積から派生するということです。内積を変えれば距離も変わります。座標幾何の計量構造(長さや角度に関する性質)は、すべて内積に由来しています。
内積はもう一つ重要な幾何学的情報を持っています。高校で学んだように、$\mathbf{u} \cdot \mathbf{v} = \|\mathbf{u}\| \|\mathbf{v}\| \cos\theta$ という関係があり($\theta$ は2つのベクトルのなす角)、特に
$$\mathbf{u} \cdot \mathbf{v} = 0 \iff \mathbf{u} \perp \mathbf{v}$$
が成り立ちます(ただし $\mathbf{u} \neq \mathbf{0}$, $\mathbf{v} \neq \mathbf{0}$ のとき)。つまり、内積が $0$ であることが直交の代数的な表現です。
ここまでで、座標の導入によって「距離」と「直交」が内積という一つの代数的道具で統一的に扱えることがわかりました。 次のセクションでは、この内積を使って、直線と円の方程式がどのような代数的構造を持つかを見ていきます。
直線の方程式 $ax + by + c = 0$ の代数的な意味を、内積の言葉で読み解きます。
ベクトル $\mathbf{n} = \begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}$ を導入すると、$ax + by$ は $\mathbf{n}$ と位置ベクトル $\mathbf{r} = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$ の内積 $\mathbf{n} \cdot \mathbf{r}$ に他なりません。したがって、直線の方程式は
$$\mathbf{n} \cdot \mathbf{r} + c = 0 \quad \Longleftrightarrow \quad \mathbf{n} \cdot \mathbf{r} = -c$$
と書けます。これは「位置ベクトル $\mathbf{r}$ とベクトル $\mathbf{n}$ の内積が定数 $-c$ である点の集合」を意味します。
この条件が直線を表す理由を、具体例で確認します。 直線上の任意の2点 $P_1$, $P_2$ に対して $\mathbf{n} \cdot \mathbf{r}_1 = -c$ かつ $\mathbf{n} \cdot \mathbf{r}_2 = -c$ が成り立つので、
$$\mathbf{n} \cdot (\mathbf{r}_2 - \mathbf{r}_1) = 0$$
です。$\mathbf{r}_2 - \mathbf{r}_1 = \overrightarrow{P_1 P_2}$ は直線に沿った方向のベクトルですから、$\mathbf{n}$ は直線上のどの方向ベクトルとも直交しています。 つまり $\mathbf{n} = \begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}$ は直線の法線ベクトル(直線に垂直なベクトル)です。
$ax + by + c = 0$ は、「法線ベクトル $\mathbf{n} = \begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}$ に対して、位置ベクトルとの内積が一定値 $-c$ であるような点の集合」を表します。
法線ベクトルの方向が直線の「向き」を、定数 $c$ が直線の「位置」(原点からのずれ)を決めます。
直線 $3x + 4y - 12 = 0$ を考えます。法線ベクトルは $\mathbf{n} = \begin{pmatrix} 3 \\ 4 \end{pmatrix}$ です。 この直線上の点、たとえば $(4, 0)$ と $(0, 3)$ をとり、方向ベクトル $\overrightarrow{P_1 P_2} = \begin{pmatrix} -4 \\ 3 \end{pmatrix}$ を計算すると、
$$\mathbf{n} \cdot \overrightarrow{P_1 P_2} = 3 \cdot (-4) + 4 \cdot 3 = -12 + 12 = 0$$
となり、確かに法線ベクトルと方向ベクトルは直交しています。
円は「中心からの距離が一定な点の集合」と定義されます。中心 $C(a, b)$、半径 $r$ の円上の点 $P(x, y)$ は
$$d(P, C) = r$$
を満たします。セクション3で導入した距離の代数的定義を使うと、$d(P, C)^2 = \|\mathbf{r} - \mathbf{c}\|^2 = (\mathbf{r} - \mathbf{c}) \cdot (\mathbf{r} - \mathbf{c})$ ですから、
$$(\mathbf{r} - \mathbf{c}) \cdot (\mathbf{r} - \mathbf{c}) = r^2$$
成分で書くと $(x - a)^2 + (y - b)^2 = r^2$ となり、高校で学ぶ円の方程式が得られます。
この式を展開すると、$x^2 + y^2 - 2ax - 2by + (a^2 + b^2 - r^2) = 0$ となります。 $\mathbf{r} \cdot \mathbf{r} = x^2 + y^2$ はベクトルの自身との内積ですから、円の方程式は
$$\mathbf{r} \cdot \mathbf{r} - 2\mathbf{c} \cdot \mathbf{r} + (\mathbf{c} \cdot \mathbf{c} - r^2) = 0$$
と表せます。ここに現れるのはすべて内積の演算です。
高校では「$x^2 + y^2 + Dx + Ey + F = 0$ の形の方程式は円を表す」と習いますが、これは不正確です。
この式を変形すると $\left(x + \frac{D}{2}\right)^2 + \left(y + \frac{E}{2}\right)^2 = \frac{D^2 + E^2 - 4F}{4}$ となります。
右辺が正のとき:中心 $\left(-\frac{D}{2}, -\frac{E}{2}\right)$、半径 $\frac{\sqrt{D^2 + E^2 - 4F}}{2}$ の円。
右辺が $0$ のとき:1点 $\left(-\frac{D}{2}, -\frac{E}{2}\right)$ のみ(点円)。
右辺が負のとき:条件を満たす実数の点は存在しない(空集合)。
方程式が図形を表す(解集合が空でない)ためには、$D^2 + E^2 - 4F \ge 0$ という条件が必要です。
ここまでの議論をまとめると、座標平面上の基本的な図形は内積を用いて次のように分類できます。
| 図形 | 方程式の形 | 内積による表現 |
|---|---|---|
| 直線 | $ax + by + c = 0$(1次式) | $\mathbf{n} \cdot \mathbf{r} = -c$ |
| 円 | $(x-a)^2 + (y-b)^2 = r^2$(2次式) | $\|\mathbf{r} - \mathbf{c}\|^2 = r^2$ |
どちらも内積の操作だけで記述されています。直線は「法線ベクトルとの内積が一定」、円は「中心からの距離の2乗(内積)が一定」です。 次のセクションでは、この内積の言葉を使って、点と直線の距離公式を導出します。
高校では、点 $(x_0, y_0)$ と直線 $ax + by + c = 0$ の距離が
$$d = \frac{|ax_0 + by_0 + c|}{\sqrt{a^2 + b^2}}$$
であるという公式を学びます。この公式は暗記の対象になりがちですが、セクション3, 4で整えた道具を使うと、自然に導出できます。
点 $P_0(x_0, y_0)$ から直線 $\ell : ax + by + c = 0$ に下ろした垂線の足を $H$ とします。 $P_0$ から直線 $\ell$ への距離は $d(P_0, H) = \|P_0 H\|$ です。
ここで、$\overrightarrow{P_0 H}$ は法線ベクトル $\mathbf{n} = \begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}$ の方向を向いています(垂線は直線に垂直だから)。 したがって、$\overrightarrow{P_0 H}$ の長さは、$\overrightarrow{P_0 H}$ の $\mathbf{n}$ 方向への正射影の長さそのものです。
示すこと:点 $P_0(x_0, y_0)$ と直線 $ax + by + c = 0$ の距離は $\dfrac{|ax_0 + by_0 + c|}{\sqrt{a^2 + b^2}}$ である。
Step 1:直線上の任意の点 $Q(x_1, y_1)$ をとります。$Q$ は直線上にあるので $ax_1 + by_1 + c = 0$ を満たします。
Step 2:$P_0$ から直線への距離は、ベクトル $\overrightarrow{QP_0} = \begin{pmatrix} x_0 - x_1 \\ y_0 - y_1 \end{pmatrix}$ の法線ベクトル $\mathbf{n} = \begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}$ 方向への正射影の長さです。なぜなら、直線に垂直な方向の成分だけが「直線からの距離」に寄与し、直線に平行な成分は距離に影響しないからです。
Step 3:高校数学Cで学んだ正射影の公式を使います。ベクトル $\mathbf{u}$ の $\mathbf{n}$ 方向への正射影の長さは $\dfrac{|\mathbf{u} \cdot \mathbf{n}|}{\|\mathbf{n}\|}$ です。
Step 4:$\mathbf{u} = \overrightarrow{QP_0}$ として内積を計算します。
$$\mathbf{u} \cdot \mathbf{n} = a(x_0 - x_1) + b(y_0 - y_1) = (ax_0 + by_0) - (ax_1 + by_1)$$
$Q$ は直線上にあるので $ax_1 + by_1 = -c$ です。したがって、
$$\mathbf{u} \cdot \mathbf{n} = (ax_0 + by_0) - (-c) = ax_0 + by_0 + c$$
Step 5:$\|\mathbf{n}\| = \sqrt{a^2 + b^2}$ なので、
$$d = \frac{|\mathbf{u} \cdot \mathbf{n}|}{\|\mathbf{n}\|} = \frac{|ax_0 + by_0 + c|}{\sqrt{a^2 + b^2}}$$
が得られます。$\blacksquare$
この導出の要点は、点と直線の距離が正射影(内積の応用)として計算されるということです。 内積という一つの道具が、距離(セクション3)、直線の方程式(セクション4)、そして点と直線の距離(このセクション)をすべてつなげています。
点 $P_0(1, 2)$ と直線 $3x + 4y - 12 = 0$ の距離を求めます。
$$d = \frac{|3 \cdot 1 + 4 \cdot 2 - 12|}{\sqrt{3^2 + 4^2}} = \frac{|3 + 8 - 12|}{\sqrt{9 + 16}} = \frac{|-1|}{\sqrt{25}} = \frac{1}{5}$$
法線ベクトルは $\mathbf{n} = \begin{pmatrix} 3 \\ 4 \end{pmatrix}$ で $\|\mathbf{n}\| = 5$ です。 分子の $|ax_0 + by_0 + c| = |3 + 8 - 12| = 1$ は、$P_0$ が直線からどれだけ「ずれているか」を法線方向で測った量(にノルムをかける前の値)です。
絶対値を外した量 $\dfrac{ax_0 + by_0 + c}{\sqrt{a^2 + b^2}}$ を符号つき距離と呼ぶことがあります。この値の正負は、点が直線のどちら側にあるかを表します。
直線 $ax + by + c = 0$ は平面を2つの半平面に分けます。$ax + by + c > 0$ を満たす点と、$ax + by + c < 0$ を満たす点は直線の反対側にあります。この事実は、高校の「領域」の問題で「直線のどちら側にあるかを代入して判定する」方法の根拠です。
ここまでで、内積を軸にして距離の公式、直線の方程式、円の方程式、点と直線の距離公式を統一的に理解しました。 次のセクションでは、この枠組みを使って、軌跡、領域、接線の問題を代数的に解きます。
軌跡の問題は「ある条件を満たす点の集合を方程式で表せ」という形をしています。 座標幾何の枠組みでは、幾何学的な条件を代数的な等式・不等式に翻訳すればよいのです。
例題:2点 $A(0, 0)$, $B(6, 0)$ からの距離の比が $1 : 2$ である点 $P(x, y)$ の軌跡を求めます。
条件は $d(P, A) : d(P, B) = 1 : 2$、すなわち $2 \cdot d(P, A) = d(P, B)$ です。 距離の代数的定義(セクション3)を使うと、
$$2\sqrt{x^2 + y^2} = \sqrt{(x-6)^2 + y^2}$$
両辺を2乗して整理します。
$$4(x^2 + y^2) = (x-6)^2 + y^2$$
$$4x^2 + 4y^2 = x^2 - 12x + 36 + y^2$$
$$3x^2 + 3y^2 + 12x - 36 = 0$$
$$x^2 + y^2 + 4x - 12 = 0$$
$$(x+2)^2 + y^2 = 16$$
これは中心 $(-2, 0)$, 半径 $4$ の円です。このように、距離条件を代数に翻訳して式を変形するだけで、軌跡が円であることが判明します。
ギリシャ数学ではこのような問題を作図と論証で扱い、得られる図形が円であることを示すのに長い幾何学的推論が必要でした。座標幾何では、条件を方程式に翻訳し、代数的に変形するだけで結論に到達します。 この円はアポロニウスの円と呼ばれ、2点からの距離の比が一定な点の軌跡として古代ギリシャから知られていたものです。
円 $(x-a)^2 + (y-b)^2 = r^2$ の接線は、「円の中心からの距離がちょうど $r$ に等しい直線」です。 この条件を、セクション5で導出した点と直線の距離公式を使って代数化します。
直線 $\alpha x + \beta y + \gamma = 0$ が円に接する条件は、
$$\frac{|\alpha a + \beta b + \gamma|}{\sqrt{\alpha^2 + \beta^2}} = r$$
です。2乗して整理すると、
$$(\alpha a + \beta b + \gamma)^2 = r^2(\alpha^2 + \beta^2)$$
となります。
具体例:円 $x^2 + y^2 = 4$(中心 $(0,0)$, 半径 $2$)に接する傾き $1$ の直線を求めます。 直線を $y = x + k$、すなわち $x - y + k = 0$ とおくと、接線条件は
$$\frac{|0 - 0 + k|}{\sqrt{1^2 + (-1)^2}} = 2 \quad \Longrightarrow \quad \frac{|k|}{\sqrt{2}} = 2 \quad \Longrightarrow \quad |k| = 2\sqrt{2}$$
したがって $k = \pm 2\sqrt{2}$ で、接線は $y = x + 2\sqrt{2}$ と $y = x - 2\sqrt{2}$ の2本です。
2つの円 $C_1 : x^2 + y^2 + D_1 x + E_1 y + F_1 = 0$ と $C_2 : x^2 + y^2 + D_2 x + E_2 y + F_2 = 0$ の交点を通る直線は、2式を引き算するだけで得られます。
$$(D_1 - D_2)x + (E_1 - E_2)y + (F_1 - F_2) = 0$$
$x^2$ と $y^2$ の項が消えて、1次式(直線の方程式)が残ります。これを根軸と呼びます。
なぜこの操作が有効なのでしょうか。$C_1$ と $C_2$ の交点は両方の方程式を同時に満たす点です。$C_1$ の式から $C_2$ の式を引いて得られる方程式も、交点では成立します(両辺がともに $0$ なので、差も $0$)。そして引き算の結果が1次式になるのは、$x^2$ と $y^2$ の係数が両方の円で同じ(ともに $1$)だからです。
具体例:$C_1 : x^2 + y^2 - 2x - 4y = 0$ と $C_2 : x^2 + y^2 + 2x - 2y - 8 = 0$ について、引き算すると
$$(-2 - 2)x + (-4 + 2)y + (0 + 8) = 0 \quad \Longrightarrow \quad -4x - 2y + 8 = 0 \quad \Longrightarrow \quad 2x + y - 4 = 0$$
これが2つの円の交点を通る直線(根軸)です。この直線と $C_1$(または $C_2$)を連立させれば、交点の座標が求まります。
座標幾何では、幾何学の操作が代数の操作に翻訳されます。
軌跡:距離条件を等式に翻訳 → 式の変形で図形の種類(円、直線など)が判明する
接線:「中心からの距離 $=$ 半径」を点と直線の距離公式で代数化する
交線:連立方程式の差をとる(2次の項が消えて1次式が残る)
いずれも、幾何的な直感ではなく代数的な計算で結論に到達しています。
座標平面上の2次方程式 $Ax^2 + Bxy + Cy^2 + Dx + Ey + F = 0$ が表す図形は、係数の値に応じて楕円、双曲線、放物線のいずれかになります(退化する場合を除く)。円はこのうち $A = C$, $B = 0$ の特殊な場合です。
2次方程式が表す図形の分類は、次の記事 M-16-2 円錐曲線の統一理論 で離心率を用いて統一的に扱います。
Q1. 直線 $ax + by + c = 0$ において、ベクトル $\begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}$ はこの直線に対してどのような関係にありますか。
Q2. 2点間の距離の公式 $\sqrt{(x_2-x_1)^2 + (y_2-y_1)^2}$ は、ベクトルのどのような演算から導かれますか。
Q3. 点と直線の距離公式の導出において、「正射影」はどのような役割を果たしますか。
Q4. $x^2 + y^2 + 6x - 2y + 15 = 0$ はどのような図形を表しますか。
3点 $A(1, 3)$, $B(4, 7)$, $C(5, 0)$ が与えられています。
(1) $d(A, B)$ と $d(A, C)$ を求めてください。
(2) $\overrightarrow{AB} \cdot \overrightarrow{AC}$ を計算し、$\angle BAC$ の余弦 $\cos\angle BAC$ を求めてください。
(1) $\overrightarrow{AB} = \begin{pmatrix} 3 \\ 4 \end{pmatrix}$ なので $d(A,B) = \sqrt{3^2 + 4^2} = \sqrt{25} = 5$。
$\overrightarrow{AC} = \begin{pmatrix} 4 \\ -3 \end{pmatrix}$ なので $d(A,C) = \sqrt{4^2 + (-3)^2} = \sqrt{25} = 5$。
(2) $\overrightarrow{AB} \cdot \overrightarrow{AC} = 3 \cdot 4 + 4 \cdot (-3) = 12 - 12 = 0$。
$\cos\angle BAC = \dfrac{\overrightarrow{AB} \cdot \overrightarrow{AC}}{\|\overrightarrow{AB}\| \|\overrightarrow{AC}\|} = \dfrac{0}{5 \cdot 5} = 0$。
内積が $0$ なので $\angle BAC = 90°$ です。$AB = AC = 5$ より、三角形 $ABC$ は直角二等辺三角形です。
直線 $\ell : 5x + 12y - 26 = 0$ について、以下の問いに答えてください。
(1) $\ell$ の法線ベクトル $\mathbf{n}$ とそのノルム $\|\mathbf{n}\|$ を求めてください。
(2) 原点 $O(0, 0)$ から $\ell$ への距離を、本記事で導出した公式を用いて求めてください。
(3) 点 $P(2, 3)$ は直線 $\ell$ に対して原点と同じ側にありますか、反対側にありますか。符号つき距離を用いて判定してください。
(1) 法線ベクトルは $\mathbf{n} = \begin{pmatrix} 5 \\ 12 \end{pmatrix}$、$\|\mathbf{n}\| = \sqrt{5^2 + 12^2} = \sqrt{169} = 13$。
(2) $d(O, \ell) = \dfrac{|5 \cdot 0 + 12 \cdot 0 - 26|}{\sqrt{5^2 + 12^2}} = \dfrac{|-26|}{13} = \dfrac{26}{13} = 2$。
(3) 原点の符号つき距離:$\dfrac{5 \cdot 0 + 12 \cdot 0 - 26}{13} = \dfrac{-26}{13} = -2$(負)。
点 $P(2, 3)$ の符号つき距離:$\dfrac{5 \cdot 2 + 12 \cdot 3 - 26}{13} = \dfrac{10 + 36 - 26}{13} = \dfrac{20}{13}$(正)。
符号が異なるので、原点と $P$ は直線 $\ell$ に対して反対側にあります。
円 $x^2 + y^2 = 9$ に接する傾き $-2$ の直線の方程式を、点と直線の距離公式を用いてすべて求めてください。
直線を $y = -2x + k$、すなわち $2x + y - k = 0$ とおきます。
中心 $(0, 0)$、半径 $3$ の円に接する条件は、
$$\frac{|2 \cdot 0 + 1 \cdot 0 - k|}{\sqrt{2^2 + 1^2}} = 3 \quad \Longrightarrow \quad \frac{|k|}{\sqrt{5}} = 3 \quad \Longrightarrow \quad |k| = 3\sqrt{5}$$
したがって $k = \pm 3\sqrt{5}$ で、求める接線は
$$y = -2x + 3\sqrt{5}, \quad y = -2x - 3\sqrt{5}$$
2つの円 $C_1 : x^2 + y^2 = 25$ と $C_2 : (x-7)^2 + y^2 = 25$ について、以下の問いに答えてください。
(1) 2つの円の交点を通る直線(根軸)の方程式を求めてください。
(2) 根軸と $C_1$ を連立して交点の座標を求めてください。
(3) 「$C_1$ と $C_2$ の両方に接する直線」が存在するための条件を、中心間の距離と半径の関係から説明してください。
(1) $C_1$ を展開すると $x^2 + y^2 - 25 = 0$。$C_2$ を展開すると $x^2 - 14x + 49 + y^2 - 25 = 0$、すなわち $x^2 + y^2 - 14x + 24 = 0$。
$C_1 - C_2$ を計算すると、
$$(x^2 + y^2 - 25) - (x^2 + y^2 - 14x + 24) = 0$$
$$14x - 49 = 0 \quad \Longrightarrow \quad x = \frac{7}{2}$$
根軸は $x = \dfrac{7}{2}$ です。これは2つの円の中心を結ぶ線分の垂直二等分線に一致しています。
(2) $x = \dfrac{7}{2}$ を $C_1$ に代入すると、
$$\frac{49}{4} + y^2 = 25 \quad \Longrightarrow \quad y^2 = \frac{51}{4} \quad \Longrightarrow \quad y = \pm\frac{\sqrt{51}}{2}$$
交点は $\left(\dfrac{7}{2}, \dfrac{\sqrt{51}}{2}\right)$ と $\left(\dfrac{7}{2}, -\dfrac{\sqrt{51}}{2}\right)$ です。
(3) 2つの中心間の距離は $d = 7$、半径はいずれも $r = 5$ です。$d = 7 < r_1 + r_2 = 10$ なので2つの円は交わります。共通外接線が存在するには $d \ge |r_1 - r_2| = 0$(常に成立)、共通内接線が存在するには $d > r_1 + r_2$ が必要ですが、$7 < 10$ なので共通内接線は存在しません。したがって、共通外接線のみ存在します。