第4章 微分法の応用

曲線外の点からの接線

前記事では曲線上の点における接線を求めました。本記事では、曲線上にない点(外部の点)から曲線に引いた接線の方程式を求める方法を学びます。接点の座標を $t$ とおいて方程式を立てるのがポイントです。$t$ の方程式の解の個数が、引ける接線の本数を決定します。

1曲線外の点からの接線の考え方

曲線 $y = f(x)$ 上にない点 $\mathrm{P}(p, q)$ から曲線に接線を引く問題では、接点の座標をパラメータ $t$ で表すのが定石です。

曲線外の点からの接線の求め方

Step 1. 曲線 $y = f(x)$ 上の接点を $(t,\, f(t))$ とおく

Step 2. 接線の方程式を立てる:$y - f(t) = f'(t)(x - t)$

Step 3. この接線が点 $\mathrm{P}(p, q)$ を通る条件を代入:

$$q - f(t) = f'(t)(p - t) \quad \cdots (\ast)$$

Step 4. $(\ast)$ を $t$ の方程式として解く

$(\ast)$ の実数解の個数が、点 $\mathrm{P}$ から引ける接線の本数を与える。

注意:よくある間違い

間違い:外部の点 $(p, q)$ と曲線上の点を結ぶ直線の傾きを $f'(x)$ とおく

この方法では「曲線上のどの点で接するか」が特定できません。

正しい方法:接点を $(t, f(t))$ と明確にパラメータで置き、接線が外部の点を通る条件を立てる

この方法のポイントは、まず接線の方程式を「接点のパラメータ $t$ を使って一般的に書く」ことです。その後、与えられた外部の点の座標を代入することで、$t$ に関する方程式が得られます。

2放物線への接線

例題:原点から放物線への接線

原点 $(0, 0)$ から曲線 $y = x^2 + 1$ に引いた接線の方程式を求めます。

Step 1. 接点を $(t,\, t^2 + 1)$ とおく

Step 2. $f'(x) = 2x$ より、接線の方程式は

$$y - (t^2 + 1) = 2t(x - t)$$

整理すると $y = 2tx - t^2 + 1$

Step 3. 原点 $(0, 0)$ を通るので $0 = 2t \cdot 0 - t^2 + 1$ すなわち

$$t^2 = 1 \quad \Longrightarrow \quad t = \pm 1$$

Step 4. $t = 1$ のとき $y = 2x$, $t = -1$ のとき $y = -2x$

よって、原点から曲線 $y = x^2 + 1$ に引ける接線は $y = 2x$ と $y = -2x$ の 2本 です。

例題:3次曲線への接線

点 $(0, -2)$ から曲線 $y = x^3$ に引いた接線の方程式を求めます。

接点を $(t,\, t^3)$ とおくと、$f'(x) = 3x^2$ より接線は

$$y - t^3 = 3t^2(x - t) \quad \Longrightarrow \quad y = 3t^2 x - 2t^3$$

点 $(0, -2)$ を通るので $-2 = -2t^3$ より $t^3 = 1$、$t = 1$

接線は $y = 3x - 2$ の 1本 です。

接線の本数は $t$ の方程式の解の個数で決まる

$t$ の方程式が $n$ 個の実数解をもてば、外部の点から $n$ 本の接線が引けます。2次方程式なら判別式 $D$ の符号で場合分けし、3次以上なら増減表やグラフを利用して解の個数を調べます。

3指数・対数曲線への接線

例題:原点から $y = e^x$ への接線

原点 $(0, 0)$ から曲線 $y = e^x$ に引いた接線の方程式を求めます。

接点を $(t,\, e^t)$ とおくと、接線は

$$y - e^t = e^t(x - t) \quad \Longrightarrow \quad y = e^t x - te^t + e^t = e^t(x - t + 1)$$

原点を通るので $0 = e^t(0 - t + 1)$。$e^t > 0$ なので $-t + 1 = 0$、$t = 1$

$$y = e^1(x - 1 + 1) = ex$$

よって接線は $y = ex$ の 1本 です。

例題:原点から $y = \log x$ への接線

原点 $(0, 0)$ から曲線 $y = \log x$ に引いた接線の方程式を求めます。

接点を $(t,\, \log t)$($t > 0$)とおくと、$f'(t) = \dfrac{1}{t}$ より接線は

$$y - \log t = \frac{1}{t}(x - t) \quad \Longrightarrow \quad y = \frac{1}{t}x + \log t - 1$$

原点を通るので $0 = 0 + \log t - 1$ より $\log t = 1$、$t = e$

$$y = \frac{1}{e}x$$

よって接線は $y = \dfrac{x}{e}$ の 1本 です。

$y = e^x$ と $y = \log x$ の接線の関係

$y = e^x$ と $y = \log x$ は逆関数の関係($y = x$ に関して対称)にあります。原点から $y = e^x$ への接線が $y = ex$ で、原点から $y = \log x$ への接線が $y = \frac{x}{e}$ となることは、この対称性から理解できます。

4接線の本数と条件

外部の点の位置によって引ける接線の本数が変わります。この本数を求める問題は入試で頻出です。

例題:$y = x^3 - 3x$ への接線の本数

点 $(0, a)$ から曲線 $y = x^3 - 3x$ に引ける接線がちょうど3本となるような定数 $a$ の値の範囲を求めます。

接点を $(t,\, t^3 - 3t)$ とおくと、$f'(t) = 3t^2 - 3$ より接線は

$$y - (t^3 - 3t) = (3t^2 - 3)(x - t)$$

点 $(0, a)$ を通るので

$$a - t^3 + 3t = (3t^2 - 3)(0 - t) = -3t^3 + 3t$$

$$a = -3t^3 + 3t + t^3 - 3t = -2t^3$$

すなわち $a = -2t^3$

これは $t$ について単調な関数なので、$a$ の値に対して $t$ はちょうど1つ決まります。

実は上の計算を見直すと、接点が曲線上にある任意の点について成り立つため、$y$ 軸上の点から引ける接線はすべて1本です。ここでは問題設定を修正して別の例を示しましょう。

例題:接線の本数(修正版)

点 $(a, 0)$ から曲線 $y = e^x$ に引ける接線の本数を $a$ の値によって分類せよ。

接点を $(t, e^t)$ とおくと、接線は $y = e^t(x - t + 1)$

点 $(a, 0)$ を通るので $0 = e^t(a - t + 1)$。$e^t > 0$ より $a - t + 1 = 0$、$t = a + 1$

$t$ はつねに一意に定まるので、どんな $a$ の値に対しても接線はちょうど 1本 です。

例題:$y = x^2$ への接線の本数

点 $(0, a)$ から曲線 $y = x^2$ に引ける接線の本数を $a$ で分類します。

接点 $(t, t^2)$ における接線は $y = 2tx - t^2$

点 $(0, a)$ を通るので $a = -t^2$、すなわち $t^2 = -a$

  • $a < 0$ のとき:$t^2 = -a > 0$ より $t = \pm\sqrt{-a}$ で 2本
  • $a = 0$ のとき:$t = 0$ で 1本(原点における接線 $y = 0$)
  • $a > 0$ のとき:$t^2 = -a < 0$ は実数解なしで 0本
接線の本数の分析方法

1. 接点を $(t, f(t))$ とおいて、外部の点を通る条件から $t$ の方程式 $g(t) = 0$ を導く

2. $g(t)$ の実数解の個数を調べる(判別式、増減表、グラフの利用)

3. パラメータ $a$ の値で場合分けを行う

5傾きが与えられた接線

「傾きが $m$ の接線」を求める問題も、接点をパラメータでおくアプローチが有効です。

傾きが $m$ の接線の求め方

曲線 $y = f(x)$ に傾き $m$ で接する直線を求めるには

Step 1. $f'(t) = m$ を解いて接点の $x$ 座標 $t$ を求める

Step 2. 接線は $y - f(t) = m(x - t)$

例題:$y = \sqrt{x-1}$ に傾き $1$ の接線

曲線 $y = \sqrt{x-1}$ の接線で、傾きが $1$ であるものの方程式を求めます。

$f'(x) = \dfrac{1}{2\sqrt{x-1}}$ とおいて $f'(t) = 1$ とすると

$$\frac{1}{2\sqrt{t-1}} = 1 \quad \Longrightarrow \quad \sqrt{t-1} = \frac{1}{2} \quad \Longrightarrow \quad t - 1 = \frac{1}{4} \quad \Longrightarrow \quad t = \frac{5}{4}$$

接点は $\left(\dfrac{5}{4},\, \dfrac{1}{2}\right)$ なので

$$y - \frac{1}{2} = 1 \cdot \left(x - \frac{5}{4}\right) \quad \Longrightarrow \quad y = x - \frac{3}{4}$$

例題:$y = x^3$ に傾き $3$ の接線

$f'(t) = 3t^2 = 3$ より $t^2 = 1$、$t = \pm 1$

$t = 1$:接線は $y - 1 = 3(x-1)$ すなわち $y = 3x - 2$

$t = -1$:接線は $y + 1 = 3(x+1)$ すなわち $y = 3x + 2$

傾き $3$ の接線は 2本 あります。

注意:「外部の点からの接線」と「傾き指定の接線」の違い

外部の点からの接線:接線が通る点(外部の点)が与えられている。$t$ の方程式から接点を決定。

傾き指定の接線:接線の傾きが与えられている。$f'(t) = m$ から接点を決定。

どちらも「接点を $(t, f(t))$ とおく」という共通のアプローチですが、立てる方程式が異なります。

*まとめ

  • 基本戦略:接点を $(t, f(t))$ とおき、接線の方程式を $t$ で表す
  • 外部の点の条件:接線が外部の点 $(p, q)$ を通る条件から $t$ の方程式を導く
  • 接線の本数:$t$ の方程式の実数解の個数に等しい
  • 傾き指定の接線:$f'(t) = m$ を解いて接点を決定する
  • 解の個数分析:判別式、増減表、グラフを活用して場合分けする

確認テスト

Q1. 曲線外の点からの接線を求めるとき、まず何をパラメータとしておくか。

▶ クリックして解答を表示 接点の $x$ 座標を $t$ とおく。接点は $(t, f(t))$ となる。

Q2. 原点から曲線 $y = x^2 - 1$ に接線を引け。

▶ クリックして解答を表示 接点 $(t, t^2-1)$ における接線は $y = 2tx - t^2 - 1$。原点を通るので $0 = -t^2-1$、$t^2 = -1$。実数解なしなので、原点から接線は引けない(0本)。

Q3. 点 $(0, -1)$ から曲線 $y = x^2$ に引ける接線の本数を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 接点 $(t, t^2)$ の接線 $y = 2tx - t^2$ が $(0,-1)$ を通るので $-1 = -t^2$、$t^2 = 1$、$t = \pm 1$。接線は2本。

Q4. 曲線 $y = \log x$ に傾き $2$ で接する接線の方程式を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 $f'(t) = \frac{1}{t} = 2$ より $t = \frac{1}{2}$。接点 $(\frac{1}{2}, \log\frac{1}{2})$。接線は $y - \log\frac{1}{2} = 2(x - \frac{1}{2})$ すなわち $y = 2x - 1 - \log 2$。

Q5. 外部の点からの接線の本数はどのように決まるか。

▶ クリックして解答を表示 接点のパラメータ $t$ に関する方程式の実数解の個数に等しい。2次なら判別式、3次以上なら増減表やグラフで調べる。

入試問題演習

問題 1 A 基礎 外部からの接線

点 $(0, -4)$ から曲線 $y = x^2$ に引いた接線の方程式を求めよ。

解答

接点を $(t, t^2)$ とおくと、接線は $y - t^2 = 2t(x - t)$ すなわち $y = 2tx - t^2$

点 $(0, -4)$ を通るので $-4 = -t^2$、$t^2 = 4$、$t = \pm 2$

$t = 2$:$y = 4x - 4$

$t = -2$:$y = -4x - 4$

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問題 2 B 標準 指数関数

曲線 $y = e^x$ の接線で、原点を通るものの方程式を求めよ。また、その接線の傾きを求めよ。

解答

接点を $(t, e^t)$ とおくと、接線は $y - e^t = e^t(x - t)$ すなわち $y = e^t(x - t + 1)$

原点を通るので $0 = e^t(0 - t + 1)$。$e^t > 0$ より $t = 1$

接線は $y = e^1(x - 1 + 1) = ex$

傾きは $e$

解説

$e^t > 0$ であることから、$t$ の方程式は $1-t = 0$ に帰着され、解は $t = 1$ のみです。したがって、原点から $y = e^x$ に引ける接線は1本だけです。

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問題 3 B 標準 接線の本数

点 $(a, 0)$ から曲線 $y = \log x$ に異なる2本の接線を引くことができるとき、定数 $a$ の値の範囲を求めよ。ただし、$\displaystyle\lim_{x \to +0} x\log x = 0$ を用いてよい。

解答

接点を $(t, \log t)$($t > 0$)とおくと、接線は $y - \log t = \dfrac{1}{t}(x - t)$

すなわち $y = \dfrac{1}{t}x + \log t - 1$

点 $(a, 0)$ を通るので $0 = \dfrac{a}{t} + \log t - 1$

$$a = t(1 - \log t) \quad \cdots (\ast)$$

$g(t) = t(1 - \log t) = t - t\log t$ とおいて解の個数を調べる。

$g'(t) = 1 - (\log t + 1) = -\log t$

$g'(t) = 0$ のとき $t = 1$。$t < 1$ で $g'(t) > 0$(増加)、$t > 1$ で $g'(t) < 0$(減少)。

$g(1) = 1$, $\displaystyle\lim_{t \to +0} g(t) = \lim_{t \to +0} t(1 - \log t) = 0$, $\displaystyle\lim_{t \to \infty} g(t) = -\infty$

$y = g(t)$ のグラフから、$y = a$ との交点が2個となるのは $0 < a < 1$ のとき。

解説

$(\ast)$ を $t$ の方程式として捉え直し、$a = g(t)$ のグラフを描くことで解の個数を視覚的に判定します。$g(t)$ の増減を調べることが本問の核心です。

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問題 4 C 発展 接線の本数と極限

曲線 $C\colon y = e^x$ について

(1) 曲線 $C$ の接線のうち原点を通るものの傾き $m$ を求めよ。

(2) (1) の $m$ に対して、$k$ を $0 < k < m$ を満たす定数とする。直線 $\ell\colon y = kx$ と曲線 $C$ の最短距離を $k$ を用いて表せ。

解答

(1) 問題2の結果より、$m = e$。

(2) $0 < k < e$ のとき、直線 $y = kx$ は曲線 $y = e^x$ と交わらない。

曲線上の点 $(t, e^t)$ と直線 $kx - y = 0$ の距離は $d(t) = \dfrac{|kt - e^t|}{\sqrt{k^2 + 1}}$

$0 < k < e$ のとき、$kt < e^t$(すべての $t$)なので $d(t) = \dfrac{e^t - kt}{\sqrt{k^2 + 1}}$

$\dfrac{d}{dt}(e^t - kt) = e^t - k = 0$ より $t = \log k$

$t = \log k$ で最小値 $e^{\log k} - k\log k = k - k\log k = k(1 - \log k)$

よって最短距離は $\dfrac{k(1 - \log k)}{\sqrt{k^2 + 1}}$

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