第4章 微分法の応用

方程式の実数解の個数
─ グラフによる解析

方程式 $f(x) = 0$ の実数解の個数を調べるには、$y = f(x)$ のグラフと $x$ 軸の共有点の個数を数えます。さらに、方程式を $f(x) = k$ の形に変形し、$y = f(x)$ のグラフと直線 $y = k$ の交点の個数から解の個数を判定する「定数分離法」は、入試で最も重要なテクニックの一つです。

1実数解の個数とグラフの共有点

方程式 $f(x) = g(x)$ の実数解の個数は、2つの曲線 $y = f(x)$ と $y = g(x)$ の共有点の個数に等しくなります。これは微分法で学んだグラフの概形を活用する場面です。

📐 基本原理

方程式 $f(x) = g(x)$ の実数解の個数

$= y = f(x)$ と $y = g(x)$ のグラフの共有点の個数

方程式 $h(x) = 0$ の実数解の個数

$= y = h(x)$ のグラフと $x$ 軸($y = 0$)の共有点の個数

※ 共有点の $x$ 座標が実数解に対応する。接する場合は重解。

📌 2つのアプローチ

方法1:$h(x) = f(x) - g(x)$ とおき、$y = h(x)$ のグラフと $x$ 軸の交点を調べる

方法2:方程式を $f(x) = k$(定数)の形に変形し、$y = f(x)$ と $y = k$ の交点を調べる(定数分離法)

パラメータ $k$ を含む方程式では方法2が有効。$k$ の値によって交点の個数が変わる様子を読み取れる。

📝 例題:グラフと $x$ 軸の共有点

問題:方程式 $x^3 - 3x + k = 0$ の実数解の個数を、定数 $k$ の値によって調べよ。

$f(x) = x^3 - 3x$ とおき、方程式を $f(x) = -k$ と変形する。

$f'(x) = 3x^2 - 3 = 3(x+1)(x-1)$

$f'(x) = 0$ とすると $x = -1, 1$

$f(-1) = -1 + 3 = 2$(極大値)、$f(1) = 1 - 3 = -2$(極小値)

$y = f(x)$ と $y = -k$ の交点の個数を調べると:

$-k > 2$($k < -2$)のとき:1個

$-k = 2$($k = -2$)のとき:2個(極大値に接する)

$-2 < -k < 2$($-2 < k < 2$)のとき:3個

$-k = -2$($k = 2$)のとき:2個(極小値に接する)

$-k < -2$($k > 2$)のとき:1個

2定数分離法(パラメータ分離)

定数分離法は、方程式に含まれるパラメータ $k$ を一方の辺に分離し、$f(x) = k$ の形にする手法です。$y = f(x)$ のグラフと水平線 $y = k$ の交点を数えることで、$k$ の値に応じた解の個数が一目でわかります。

📐 定数分離法の手順

手順 1:方程式を $f(x) = k$ の形に変形する

手順 2:$y = f(x)$ の増減・極値・極限を調べてグラフを描く

手順 3:水平線 $y = k$ を動かし、交点の個数が変わる $k$ の境界値を求める

※ 境界値は $f(x)$ の極大値・極小値・端点の値・極限値に対応する。

📝 例題:定数分離法の基本

問題:方程式 $x^3 - 3x^2 = k$ の異なる実数解の個数を、定数 $k$ の値で分類せよ。

$f(x) = x^3 - 3x^2$ とおく。$f'(x) = 3x^2 - 6x = 3x(x - 2)$

$f'(x) = 0$ のとき $x = 0, 2$

$f(0) = 0$(極大値)、$f(2) = 8 - 12 = -4$(極小値)

$\displaystyle\lim_{x \to -\infty} f(x) = -\infty$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} f(x) = +\infty$

よって $y = f(x)$ と $y = k$ の交点の個数は:

$k$ の範囲実数解の個数
$k < -4$ または $k > 0$1個
$k = -4$ または $k = 0$2個
$-4 < k < 0$3個
💡 定数分離のコツ

$k$ を含む項だけを右辺に移し、左辺が $x$ のみの式になるようにします。

ただし、$k$ と $x$ が複雑に絡んでいる場合は、両辺を適切な関数で割る必要があることもあります(例:$e^x = kx$ を $\dfrac{e^x}{x} = k$ に変形)。

⚠️ 定義域の確認

✗ 定数分離の際に $x$ で割ったのに $x = 0$ の場合を検討しない

✓ $x$ で割るときは $x = 0$ が元の方程式の解かどうかを別に確認する

分離の過程で定義域が変わることがあるので注意。

33次方程式の実数解の個数

3次方程式 $ax^3 + bx^2 + cx + d = 0$ は、最大で3つの実数解をもちます。極大値と極小値の符号によって解の個数が決まります。

📐 3次方程式の解の個数の判定

$f(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d$($a > 0$)が極大値 $M$、極小値 $m$ をもつとき:

$M > 0$ かつ $m < 0$:異なる3つの実数解

$M = 0$ または $m = 0$:異なる2つの実数解(重解を含む)

$M < 0$ または $m > 0$:ただ1つの実数解

$f'(x) = 0$ が重解:極値をもたず、ただ1つの実数解

📝 例題:3次方程式が3つの実数解をもつ条件

問題:方程式 $x^3 - 3ax + 2 = 0$($a > 0$)が異なる3つの実数解をもつための $a$ の条件を求めよ。

$f(x) = x^3 - 3ax + 2$ とおく。$f'(x) = 3x^2 - 3a = 3(x^2 - a)$

$a > 0$ より $f'(x) = 0$ のとき $x = \pm\sqrt{a}$

極大値:$f(-\sqrt{a}) = -a\sqrt{a} + 3a\sqrt{a} + 2 = 2a\sqrt{a} + 2$

極小値:$f(\sqrt{a}) = a\sqrt{a} - 3a\sqrt{a} + 2 = -2a\sqrt{a} + 2$

極大値は常に正($a > 0$ より $2a\sqrt{a} + 2 > 0$)なので、条件は極小値が負であること:

$-2a\sqrt{a} + 2 < 0$、すなわち $a\sqrt{a} > 1$、$a^{3/2} > 1$、$a > 1$

よって $a > 1$

📌 極大値・極小値の積による判定

3次関数 $f(x)$ が極大値 $M$ と極小値 $m$ をもつとき、$f(x) = 0$ が異なる3つの実数解をもつ条件は $M \cdot m < 0$(異符号)と同値です。

これは、グラフが $x$ 軸を3回横切るためには、極大値が正で極小値が負(または逆)である必要があるからです。

4指数・対数方程式の実数解

$e^x = ax$ のような指数関数を含む方程式では、定数分離法が威力を発揮します。$\dfrac{e^x}{x} = a$ のように変形してグラフで判定します。

📝 例題:$e^x = ax$ の実数解の個数

問題:方程式 $e^x = ax$ の異なる実数解の個数を、正の定数 $a$ の値で分類せよ。

$x \neq 0$ のとき $\dfrac{e^x}{x} = a$ と変形する。$x = 0$ は $e^0 = 0$ となり不適。

$f(x) = \dfrac{e^x}{x}$ とおく。$f'(x) = \dfrac{e^x(x-1)}{x^2}$

$f'(x) = 0$ のとき $x = 1$

$x < 0$ の範囲:$f'(x) = \dfrac{e^x(x-1)}{x^2}$。$x < 0$ のとき $x - 1 < 0$ なので $f'(x) < 0$(単調減少)

$\displaystyle\lim_{x \to -\infty} f(x) = 0$, $\displaystyle\lim_{x \to -0} f(x) = -\infty$

$0 < x < 1$ で $f'(x) < 0$(減少)、$x > 1$ で $f'(x) > 0$(増加)

$\displaystyle\lim_{x \to +0} f(x) = +\infty$, $f(1) = e$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} f(x) = +\infty$

よって $y = a$($a > 0$)との交点の個数は:

$a$ の範囲実数解の個数
$0 < a < e$0個
$a = e$1個
$a > e$2個
📝 例題:対数方程式の実数解

問題:$0 < x < 2\pi$ における方程式 $\log(\sin x + 2) = k$ の実数解の個数を、定数 $k$ の値で分類せよ。

$\sin x + 2 = e^k$、すなわち $\sin x = e^k - 2$ と変形する。

$0 < x < 2\pi$ で $-1 \leq \sin x \leq 1$ だから、$\sin x = e^k - 2$ が解をもつ条件は $-1 \leq e^k - 2 \leq 1$、すなわち $1 \leq e^k \leq 3$、$0 \leq k \leq \log 3$

$e^k - 2 = 1$ つまり $k = \log 3$ のとき $\sin x = 1$ で解は $x = \dfrac{\pi}{2}$:1個

$0 < e^k - 2 < 1$ つまり $\log 2 < k < \log 3$ のとき:2個

$e^k - 2 = 0$ つまり $k = \log 2$ のとき $\sin x = 0$ で $x = \pi$:1個

$-1 < e^k - 2 < 0$ つまり $0 < k < \log 2$ のとき:2個

$e^k - 2 = -1$ つまり $k = 0$ のとき $\sin x = -1$ で $x = \dfrac{3\pi}{2}$:1個

💡 $\lim_{x \to \infty} \dfrac{e^x}{x}$ の活用

$e^x$ の増加が $x$ より圧倒的に速いため $\dfrac{e^x}{x} \to +\infty$($x \to \infty$)。

一方、$x = 1$ で最小値 $e$ をとることから、$a \geq e$ のときのみ $e^x = ax$ が正の解をもちます。

5グラフの交点と定数の範囲

方程式の解の個数だけでなく、解が特定の範囲にある条件を求める問題も重要です。

📝 例題:解が特定の区間にある条件

問題:方程式 $e^x - 2x - k = 0$ が $0 < x < 1$ の範囲にただ1つの実数解をもつための $k$ の条件を求めよ。

$k = e^x - 2x$ と変形する。$g(x) = e^x - 2x$ とおく。

$g'(x) = e^x - 2$、$g'(x) = 0$ のとき $x = \log 2$

$0 < \log 2 < 1$ であるから、$g(x)$ は $0 < x < \log 2$ で減少、$\log 2 < x < 1$ で増加。

$g(0) = 1$, $g(\log 2) = 2 - 2\log 2$, $g(1) = e - 2$

$2 - 2\log 2 \approx 0.614$, $e - 2 \approx 0.718$

$y = g(x)$ と $y = k$ が $0 < x < 1$ で1つの交点をもつ条件は:

$$2 - 2\log 2 \leq k < 1 \quad \text{または} \quad 2 - 2\log 2 \leq k < e - 2$$

$g(0) = 1 > e - 2 = g(1)$ であるから、「ただ1つ」の条件は:

$$2 - 2\log 2 \leq k < e - 2 \quad \text{のとき2個、}$$

$$e - 2 \leq k < 1 \quad \text{のとき1個}$$

よって $e - 2 \leq k < 1$

⚠️ 「ただ1つ」と「少なくとも1つ」の違い

✗ 「少なくとも1つ」と「ただ1つ」を混同し、端点を含めてしまう

✓ 「ただ1つ」の場合は、2つ以上の解が存在する $k$ の範囲を除外する

📌 定数分離法のまとめ

定数分離法は、パラメータを含む方程式の実数解を視覚的に把握できる強力な手法です。特に以下の点が重要:

1. グラフの極値が水平線との交点の個数の境界となる

2. 端点の値と極限値も忘れずに考慮する

3. 等号(接する場合)の扱いに注意する

まとめ

  • 基本原理 ─ 方程式 $f(x) = g(x)$ の実数解の個数 $=$ グラフ $y = f(x)$ と $y = g(x)$ の共有点の個数
  • 定数分離法 ─ $f(x) = k$ の形に変形し、$y = f(x)$ のグラフと水平線 $y = k$ の交点で判定
  • 3次方程式 ─ 極大値と極小値の符号(積が負)で3つの実数解をもつ条件を判定
  • 指数・対数方程式 ─ $e^x = ax$ は $e^x/x = a$ に変形。$x = 1$ で最小値 $e$
  • 解の存在範囲 ─ 特定区間での解の個数は、その区間でのグラフの挙動と端点の値から判定

確認テスト

Q1. 方程式 $f(x) = k$ の実数解の個数は、何と何の共有点の個数に等しいか。

▶ クリックして解答を表示 曲線 $y = f(x)$ と直線 $y = k$ の共有点の個数に等しい。

Q2. 方程式 $x^3 - 3x = k$ が異なる3つの実数解をもつための $k$ の範囲を答えよ。

▶ クリックして解答を表示 $-2 < k < 2$。$f(x) = x^3 - 3x$ の極大値 $2$($x = -1$)と極小値 $-2$($x = 1$)の間。

Q3. 定数分離法とはどのような手法か、簡潔に説明せよ。

▶ クリックして解答を表示 方程式に含まれる定数(パラメータ)$k$ を一方の辺に分離し、$f(x) = k$ の形にして、$y = f(x)$ のグラフと水平線 $y = k$ の交点で実数解の個数を判定する手法。

Q4. $f(x) = \dfrac{e^x}{x}$($x > 0$)の最小値を答えよ。

▶ クリックして解答を表示 $x = 1$ で最小値 $e$。$f'(x) = \dfrac{e^x(x-1)}{x^2} = 0$ より $x = 1$。

Q5. 3次関数 $f(x)$ が極大値 $M$、極小値 $m$ をもつとき、$f(x) = 0$ が異なる3つの実数解をもつ条件は何か。

▶ クリックして解答を表示 $M \cdot m < 0$(極大値と極小値が異符号であること)。

入試問題演習

問題 1 A 基礎 定数分離

方程式 $x^3 - 6x^2 + 9x = k$ の異なる実数解の個数を、定数 $k$ の値によって分類せよ。

解答

$f(x) = x^3 - 6x^2 + 9x$ とおく。$f'(x) = 3x^2 - 12x + 9 = 3(x-1)(x-3)$

$f'(x) = 0$ のとき $x = 1, 3$

$f(1) = 1 - 6 + 9 = 4$(極大値)、$f(3) = 27 - 54 + 27 = 0$(極小値)

$\displaystyle\lim_{x \to -\infty} f(x) = -\infty$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} f(x) = +\infty$

したがって:

$k < 0$ または $k > 4$ のとき:1個

$k = 0$ または $k = 4$ のとき:2個

$0 < k < 4$ のとき:3個

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問題 2 B 標準 指数方程式

方程式 $e^x = kx^2$($k > 0$)の正の実数解の個数を、$k$ の値で分類せよ。

解答

$x > 0$ のとき $\dfrac{e^x}{x^2} = k$ と変形する。$g(x) = \dfrac{e^x}{x^2}$ とおく。

$g'(x) = \dfrac{e^x \cdot x^2 - e^x \cdot 2x}{x^4} = \dfrac{e^x(x-2)}{x^3}$

$x > 0$ のとき、$g'(x) = 0$ とすると $x = 2$

$0 < x < 2$ で $g'(x) < 0$(減少)、$x > 2$ で $g'(x) > 0$(増加)

$g(2) = \dfrac{e^2}{4}$(最小値)

$\displaystyle\lim_{x \to +0} g(x) = +\infty$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} g(x) = +\infty$

したがって:

$0 < k < \dfrac{e^2}{4}$ のとき:0個

$k = \dfrac{e^2}{4}$ のとき:1個

$k > \dfrac{e^2}{4}$ のとき:2個

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問題 3 B 標準 3次方程式の条件

方程式 $x^3 + 3x^2 - 9x + a = 0$ が異なる3つの正の実数解をもつような定数 $a$ の値の範囲を求めよ。

解答

$f(x) = x^3 + 3x^2 - 9x$ とおくと、方程式は $f(x) = -a$

$f'(x) = 3x^2 + 6x - 9 = 3(x+3)(x-1)$

$f'(x) = 0$ のとき $x = -3, 1$

$f(-3) = -27 + 27 + 27 = 27$(極大値)、$f(1) = 1 + 3 - 9 = -5$(極小値)

3つの正の実数解をもつには、$y = -a$ が $x > 0$ の範囲で $y = f(x)$ と3つの交点をもつ必要がある。

$x > 0$ では $x = 1$ のみが極値点(極小値 $-5$)であり、$f(0) = 0$ である。

$0 < x < 1$ で $f'(x) < 0$(減少)、$x > 1$ で $f'(x) > 0$(増加)

$f(0) = 0$ であるから、$y = -a$ が $x > 0$ で3つの交点をもつことは不可能(極値が1つしかないため最大2つ)。

よって、異なる3つの正の実数解をもつ $a$ は存在しない

解説

$x > 0$ での $f(x)$ の極値点は $x = 1$ の1つのみなので、この範囲でグラフが水平線と3つの交点をもつことは不可能です。3つの解をもつには $x < 0$ の解も含む必要があります。

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問題 4 C 発展 指数と直線

方程式 $2^x = ax$($a > 0$)について:

(1) この方程式が相異なる2つの正の実数解をもつための $a$ の条件を求めよ。

(2) この方程式がただ1つの正の実数解をもつための $a$ の条件を求めよ。

解答

$x > 0$ で $\dfrac{2^x}{x} = a$ と変形する。$g(x) = \dfrac{2^x}{x}$ とおく。

$g'(x) = \dfrac{2^x \log 2 \cdot x - 2^x}{x^2} = \dfrac{2^x(x \log 2 - 1)}{x^2}$

$g'(x) = 0$ のとき $x = \dfrac{1}{\log 2}$

$0 < x < \dfrac{1}{\log 2}$ で $g'(x) < 0$(減少)、$x > \dfrac{1}{\log 2}$ で $g'(x) > 0$(増加)

$g\!\left(\dfrac{1}{\log 2}\right) = \dfrac{2^{1/\log 2}}{1/\log 2} = e \log 2$($\because 2^{1/\log 2} = e$)

$\displaystyle\lim_{x \to +0} g(x) = +\infty$, $\displaystyle\lim_{x \to \infty} g(x) = +\infty$

(1) $y = a$ と $y = g(x)$ が2つの交点をもつ条件:$a > e\log 2$

(2) ただ1つの交点をもつ条件:$a = e\log 2$

解説

$2^{1/\log 2} = e$ となることの確認:$2^{1/\log 2} = (e^{\log 2})^{1/\log 2} = e^1 = e$。定数分離法で $g(x)$ の最小値を正確に求めることが鍵となる。

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