第6章 微分法

接線の方程式(曲線外の点から)
─ 接点が未知のときの接線の求め方

曲線上にない点から曲線に接線を引く ── 「接点」が分からない状況で接線を求めるには、接点を文字でおいて条件を立てる必要があります。
入試頻出のこのテーマを、解法の本質から理解しましょう。

1曲線外の点からの接線とは

前回は「曲線上の点」が接点として与えられていました。しかし、「ある点を通る接線を求めよ」という問題では、その点が曲線上にあるとは限りません

💡 ここが本質:接点をパラメータでおく

曲線外の点 $(p, q)$ から曲線 $y = f(x)$ に接線を引くとき、接点は未知です。そこで接点の $x$ 座標を $t$ とおくことで、問題を「$t$ の方程式を解く問題」に帰着させます。

$$\text{接点} = (t, f(t)) \quad \to \quad \text{接線の方程式を立てる} \quad \to \quad \text{通過点の条件から } t \text{ を決定}$$

これが「曲線外からの接線」の定石です。

2解法の手順(5ステップ)

📐 曲線外の点からの接線の求め方

Step 1:接点の $x$ 座標を $t$ とおく → 接点は $(t, f(t))$

Step 2:接線の傾きは $f'(t)$

Step 3:接線の方程式を立てる:$y - f(t) = f'(t)(x - t)$

Step 4:接線が点 $(p, q)$ を通る条件を代入:$q - f(t) = f'(t)(p - t)$

Step 5:$t$ の方程式を解いて、接線の方程式を確定する

⚠️ 落とし穴:通る点と接点の混同

最も多いミスは、通過点 $(p, q)$ を接点だと思い込むことです。

✗ 誤り:通過点 $(p, q)$ を直接 $a$ に代入して $f'(p)$ を傾きにする

✓ 正しい:接点 $(t, f(t))$ を文字でおいて、接線が $(p, q)$ を通る条件から $t$ を求める

特に $(p, q)$ が曲線上の点であっても、「$x = p$ での接線」とは限りません。

3具体的な計算例

例1:2次関数への接線

問:点 $(0, -1)$ から曲線 $y = x^2$ に引いた接線の方程式を求めよ。

接点を $(t, t^2)$ とおくと、接線は $y - t^2 = 2t(x - t)$ すなわち $y = 2tx - t^2$

$(0, -1)$ を通る条件:$-1 = -t^2$ より $t^2 = 1$、$t = \pm 1$

$t = 1$:$y = 2x - 1$、$t = -1$:$y = -2x - 1$

答え:$y = 2x - 1$ と $y = -2x - 1$ の2本

例2:3次関数への接線

問:点 $(0, 2)$ から曲線 $y = x^3$ に引いた接線の方程式を求めよ。

接点を $(t, t^3)$ とおくと、接線は $y - t^3 = 3t^2(x - t)$ すなわち $y = 3t^2 x - 2t^3$

$(0, 2)$ を通る条件:$2 = -2t^3$ より $t^3 = -1$、$t = -1$

$t = -1$:$y = 3x + 2$

答え:$y = 3x + 2$ の1本

💡 ここが本質:接線の本数は $t$ の方程式の解の個数

通過点の条件から得られる $t$ の方程式の実数解の個数が、そのまま接線の本数になります。

例1では $t^2 = 1$ の解が $2$ 個なので接線は $2$ 本。例2では $t^3 = -1$ の実数解が $1$ 個なので接線は $1$ 本です。

4接線の本数

放物線 $y = x^2$ への接線の本数

点 $(p, q)$ から $y = x^2$ に引く接線の本数を調べましょう。

接点 $(t, t^2)$ での接線 $y = 2tx - t^2$ が $(p, q)$ を通る条件:

$$q = 2tp - t^2 \quad \Longleftrightarrow \quad t^2 - 2pt + q = 0$$

判別式 $D = 4p^2 - 4q = 4(p^2 - q)$ より

条件接線の本数点の位置
$q < p^2$($D > 0$)2本放物線の外側
$q = p^2$($D = 0$)1本放物線上
$q > p^2$($D < 0$)0本放物線の内側

3次関数への接線の本数

$y = x^3$ の場合、$t$ の方程式は3次方程式になるため、点の位置によって接線は 1本または3本 になります(2本になる境界の場合もある)。

🔬 深掘りTips:包絡線の概念

接線の本数が変化する境界線を包絡線(envelope)と呼びます。放物線 $y = x^2$ の場合、包絡線は放物線自身です(放物線上の点からは接線がちょうど1本引ける)。

一般に、曲線の接線族のパラメータ $t$ による方程式 $F(x, y, t) = 0$ と $\dfrac{\partial F}{\partial t} = 0$ を連立して $t$ を消去すると包絡線が得られます。

5共有点と接点の区別

接線と曲線の交点

接線は接点で曲線に「接する」だけでなく、別の点で曲線と「交わる」こともあります。

例:$y = x^3 - 3x$ の $x = 1$ での接線 $y = 0$ と曲線の交点

$x^3 - 3x = 0$ より $x(x-\sqrt{3})(x+\sqrt{3}) = 0$。$x = 0, \pm\sqrt{3}$ が交点

$x = 1$ は接点($f(1) = -2 \neq 0$ なのでこの例は不適切。修正します)。

例(修正):$y = x^3$ の原点での接線は $y = 0$($x$ 軸)。$x^3 = 0$ の解は $x = 0$ のみ(3重解)なので、接線は原点でのみ曲線と会います。

💡 ここが本質:接点は重解として現れる

接線と曲線の連立方程式 $f(x) = f'(t)(x-t)+f(t)$ において、$x = t$ は少なくとも重解になります。これが「接する」ことの代数的な意味です。

$$f(x) - \{f'(t)(x-t)+f(t)\} = (x-t)^2 \cdot g(x)$$

$g(x) = 0$ の解が「接線と曲線のもう一つの交点」を与えます。

具体例:$y = x^3$ での確認

$x = 1$ での接線:$y = 3x - 2$

$x^3 - (3x - 2) = x^3 - 3x + 2 = (x-1)^2(x+2) = 0$

$x = 1$(重解 = 接点)と $x = -2$(単解 = もう一つの交点)

📋まとめ

  • 曲線外からの接線:接点 $(t, f(t))$ を文字でおき、接線が通過点を通る条件から $t$ の方程式を立てて解く。
  • 5ステップの解法:接点をおく → 傾き $f'(t)$ → 接線の方程式 → 通過条件を代入 → $t$ を決定。
  • 接線の本数:$t$ の方程式の実数解の個数 = 接線の本数。放物線では0〜2本、3次曲線では1〜3本。
  • 通過点と接点:「点 $(p,q)$ を通る接線」では $(p,q)$ は接点ではない(接点は $t$ で表す)。この区別が最重要。
  • 接点と交点:接線と曲線の連立で接点は重解として現れる。$(x-t)^2$ の因子を持つ。

✅ 確認テスト

Q1. 点 $(1, -3)$ から曲線 $y = x^2$ に接線を引くとき、接点の $x$ 座標を $t$ として条件式を立てよ。

▶ クリックして解答を表示 接線 $y = 2tx - t^2$ が $(1, -3)$ を通る条件:$-3 = 2t - t^2$ → $t^2 - 2t - 3 = 0$

Q2. Q1 の方程式を解いて接線の方程式を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 $(t-3)(t+1)=0$ より $t=3,\,-1$。$t=3$: $y=6x-9$、$t=-1$: $y=-2x-1$

Q3. 点 $(0, 0)$ から $y = x^2 + 1$ に接線を引けるか。

▶ クリックして解答を表示 条件式 $0 = -t^2+1$ → $t^2=1$, $t=\pm1$。引ける。$y=2x$, $y=-2x$

Q4. 放物線 $y = x^2$ の内側($q > p^2$)にある点から接線は引けるか。

▶ クリックして解答を表示 引けない。$t^2 - 2pt + q = 0$ の判別式 $D = 4(p^2-q) < 0$ なので実数解なし。

Q5. $y = x^3$ の $x = 1$ での接線 $y = 3x - 2$ と曲線のもう一つの交点を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 $x^3 - 3x + 2 = (x-1)^2(x+2) = 0$ より $x = -2$。交点は $(-2, -8)$

📝入試問題演習

問題 1 A 基礎

点 $(2, 0)$ から曲線 $y = x^2 - 2x$ に引いた接線の方程式を求めよ。

▶ クリックして解答を表示
解答

接点 $(t, t^2-2t)$、$f'(t)=2t-2$ より接線:$y-(t^2-2t)=(2t-2)(x-t)$

$y = (2t-2)x - t^2$

$(2, 0)$を代入:$0 = 2(2t-2) - t^2 = -t^2+4t-4 = -(t-2)^2$

$t = 2$(重解)。$f(2) = 0$、$(2,0)$ は曲線上の点。接線は $y = 2(x-2)$ すなわち $y = 2x - 4$

問題 2 B 標準

点 $(0, a)$ から曲線 $y = x^2$ に $2$ 本の接線が引けるような定数 $a$ の範囲を求めよ。

▶ クリックして解答を表示
解答

接線 $y = 2tx - t^2$ が $(0, a)$ を通る:$a = -t^2$ → $t^2 = -a$

$2$ つの実数解をもつ条件:$-a > 0$ すなわち $a < 0$

解説

$(0, a)$ が放物線の内側($a > 0$)なら接線0本、放物線上($a = 0$)なら1本、外側($a < 0$)なら2本です。

問題 3 B 標準

曲線 $y = x^3 - 3x$ について、点 $(2, -2)$ から引いた接線の方程式をすべて求めよ。

▶ クリックして解答を表示
解答

接点 $(t, t^3-3t)$、$f'(t)=3t^2-3$ より接線:$y = (3t^2-3)x - 2t^3$

$(2,-2)$を代入:$-2 = 2(3t^2-3) - 2t^3 = -2t^3 + 6t^2 - 6$

$2t^3 - 6t^2 + 4 = 0$ → $t^3 - 3t^2 + 2 = 0$

$(t-1)(t^2-2t-2) = 0$ → $t = 1, 1 \pm \sqrt{3}$

$t=1$: $y=-2$ (水平線)

$t=1+\sqrt{3}$: 傾き $3(4+2\sqrt{3})-3 = 9+6\sqrt{3}$, $y=(9+6\sqrt{3})x-2(1+\sqrt{3})^3-2$

$t=1-\sqrt{3}$: 同様に計算して3本の接線が得られる

問題 4 C 発展

曲線 $C: y = x^3$ と点 $\mathrm{P}(a, b)$ について、$\mathrm{P}$ から $C$ に引ける接線がちょうど $2$ 本であるための $a$, $b$ の条件を求めよ。

▶ クリックして解答を表示
解答

接点 $(t, t^3)$ での接線 $y = 3t^2 x - 2t^3$ が $(a, b)$ を通る条件:

$b = 3at^2 - 2t^3$ → $g(t) = 2t^3 - 3at^2 + b = 0$ の実数解が $2$ 個

$g'(t) = 6t^2 - 6at = 6t(t - a)$

$a \neq 0$ のとき、$g(t)$ は $t = 0$ で極値 $b$、$t = a$ で極値 $-a^3 + b$

接線がちょうど $2$ 本 ⟺ $g(t) = 0$ が重解と単解を持つ

⟺ $g(0) = 0$ または $g(a) = 0$

すなわち $b = 0$($a \neq 0$)または $b = a^3$($\mathrm{P}$ が曲線上)

採点のポイント
  • $t$ の3次方程式の実数解の個数問題に帰着する
  • $g(t)$ の増減を調べ、極値が $0$ になる条件を求める
  • $b = 0$ のとき $t = 0$ が重解、$b = a^3$ のとき $t = a$ が重解