第6章 微分法

微分法の融合問題
─ 他分野との横断的な出題パターン

微分法は単独で出題されるだけでなく、図形と方程式・三角関数・指数対数など他の分野と融合して出題されます。本記事では、入試頻出の融合パターンを整理し、分野横断的な思考力を養います。

1微分と図形(面積・長さの最大最小)

💡 本質:図形量を関数で表し、微分で最適化

「図形の中で面積や長さが最大・最小になる条件」を求める問題は、変数を1つ設定してその量を関数で表し、微分で最大最小を求めます。

例題:曲線 $y = x^2$ と直線 $y = 2x + 3$ で囲まれた部分に内接する長方形の面積の最大値

放物線と直線の交点:$x^2 = 2x + 3$、$x^2 - 2x - 3 = 0$、$(x-3)(x+1) = 0$ → $x = -1, 3$

長方形の底辺の位置を $x = t$ としてパラメータを設定し、面積を $t$ の関数として微分します。このような問題では、変数の設定と定義域の確認がポイントです。

⚠️ つまずきポイント:変数の設定ミス

図形の問題では、どの量を変数にするかで計算の複雑さが大きく変わります。「対称性を利用できる変数」を選ぶと計算が簡単になることが多いです。

2微分と方程式・不等式の融合

「すべての $x$ で成り立つ不等式」とパラメータの範囲

$f(x) \geq g(x)$ がすべての $x$ で成り立つ条件は、$h(x) = f(x) - g(x)$ の最小値 $\geq 0$。最小値がパラメータを含む場合、パラメータの範囲が求まります。

「方程式が実数解をもつ条件」

$f(x) = k$ が実数解をもつ条件は、$k$ が $f(x)$ の値域に含まれること。値域は最大値・最小値で決まり、これを微分で求めます。

📐 値域の求め方

関数 $y = f(x)$($x \in D$)の値域は:

方程式 $f(x) = k$ が $D$ 内に少なくとも1つの解をもつような $k$ の範囲

これは $y = f(x)$ のグラフと $y = k$ の交点の存在条件です。

3微分と三角関数

三角関数を含む多項式の微分

数学IIの範囲では三角関数の微分($(\sin x)' = \cos x$)は直接扱いませんが、$t = \sin x$ などの置換で多項式に帰着させるパターンは頻出です。

例:$f(t) = 2t^3 - 3t^2 + 1$($-1 \leq t \leq 1$)の最大最小

$t = \cos \theta$ とおくと $-1 \leq t \leq 1$ の範囲での最大最小問題になります。三角関数の置換により定義域が制限された多項式の問題になるのがポイントです。

🔗 数IIIへの接続

数IIIでは $(\sin x)' = \cos x$, $(\cos x)' = -\sin x$ を直接使って三角関数のグラフの概形を描き、最大最小を求めます。数IIの段階では置換による帰着が主な手法です。

4微分と指数・対数

対数を含む最大最小

$y = x^n \cdot a^x$ のような関数の最大最小は数IIIの範囲ですが、$t = a^x$ の置換で多項式関数に帰着できる場合は数IIで扱えます。

例:$f(t) = t^3 - 3t$($t = 2^x$, $x \in [-1, 2]$)

$t = 2^x$ より $t \in [1/2, 4]$。$f'(t) = 3t^2 - 3 = 3(t+1)(t-1)$。$t > 0$ で $f'(t) = 0$ のとき $t = 1$。

$f(1/2) = 1/8 - 3/2 = -11/8$、$f(1) = -2$、$f(4) = 52$

最大値 $52$($t = 4$, $x = 2$)、最小値 $-2$($t = 1$, $x = 0$)

💡 置換で多項式に帰着

指数・対数・三角関数を含む問題でも、適切な置換で多項式関数の最大最小に帰着できれば、微分法がそのまま使えます。置換後の変数の定義域を正確に求めることが重要です。

5融合問題の攻略法

📐 融合問題の解法フレームワーク

Step 1: 問題を「何を求めるか」で分類する(最大最小?解の個数?不等式?)

Step 2: 求めたい量を1変数の関数で表す(変数の設定)

Step 3: 定義域を確認する(置換による制約)

Step 4: 微分して増減表を書く

Step 5: 結論を元の問題の文脈に翻訳する

⚠️ つまずきポイント:定義域の見落とし

置換によって変数の範囲が制限されることを忘れがちです。例えば $t = \sin x$ なら $-1 \leq t \leq 1$、$t = 2^x$ なら $t > 0$。この制約のもとで最大最小を求めないと誤答になります。

まとめ

  • 図形との融合:図形量を変数の関数で表し、微分で最適化する。変数の設定が鍵。
  • 方程式・不等式:値域の問題や「すべてのxで成立」の問題に微分が活躍する。
  • 三角関数:$t = \sin x$ 等の置換で $|t| \leq 1$ の多項式問題に帰着。
  • 指数・対数:$t = a^x$ 等の置換で $t > 0$ の多項式問題に帰着。
  • 攻略法:変数設定 → 定義域確認 → 微分 → 増減表 → 元の文脈に翻訳。

確認テスト

Q1. $t = \cos\theta$($0 \leq \theta \leq \pi$)のとき $t$ の範囲を述べよ。

$-1 \leq t \leq 1$

▶ 解答を見る

Q2. $f(t) = t^3 - 3t$($0 \leq t \leq 2$)の最大値を求めよ。

$f'(t) = 3(t+1)(t-1)$。$t = 1$ で極小値 $-2$。$f(0) = 0$, $f(2) = 2$。最大値 $2$。

▶ 解答を見る

Q3. 融合問題の解法で最も重要な最初のステップは何か。

求めたい量を1変数の関数で表す(変数の設定)。

▶ 解答を見る

Q4. $t = 3^x$($-1 \leq x \leq 2$)のとき $t$ の範囲を求めよ。

$t = 3^x$ は単調増加。$3^{-1} = 1/3$, $3^2 = 9$。$\therefore 1/3 \leq t \leq 9$

▶ 解答を見る

Q5. 「すべての $x$ で $f(x) \geq k$」を示すには何を求めればよいか。

$f(x)$ の最小値を求め、最小値 $\geq k$ を示す。

▶ 解答を見る

入試問題演習

問題 1A 基礎

$f(t) = 2t^3 - 3t^2 - 12t + 5$($-1 \leq t \leq 3$)の最大値と最小値を求めよ。ただし $t = \sin x + 1$ である必要はなく、$t$ を独立変数とせよ。

解答

$f'(t) = 6t^2 - 6t - 12 = 6(t-2)(t+1)$

$f(-1) = -2 - 3 + 12 + 5 = 12$、$f(2) = 16 - 12 - 24 + 5 = -15$、$f(3) = 54 - 27 - 36 + 5 = -4$

最大値 $12$($t = -1$)、最小値 $-15$($t = 2$)

▶ 解答を見る
問題 2B 標準

方程式 $x^3 - 3x = k$ が $-1 \leq x \leq 2$ の範囲に少なくとも1つの実数解をもつような $k$ の範囲を求めよ。

解答

$f(x) = x^3 - 3x$($-1 \leq x \leq 2$)の値域を求めればよい。

$f'(x) = 3(x+1)(x-1)$。区間 $[-1, 2]$ 内で $f'(x) = 0$ のとき $x = -1, 1$

$f(-1) = 2$、$f(1) = -2$、$f(2) = 2$

値域は $[-2, 2]$。$\therefore -2 \leq k \leq 2$

▶ 解答を見る
問題 3B 標準

$0 \leq \theta \leq \pi$ のとき、$f(\theta) = 2\cos^3\theta - 3\cos^2\theta + 1$ の最大値と最小値を求めよ。

解答

$t = \cos\theta$($-1 \leq t \leq 1$)とおく。$g(t) = 2t^3 - 3t^2 + 1$

$g'(t) = 6t^2 - 6t = 6t(t-1) = 0$ のとき $t = 0, 1$

$g(-1) = -2 - 3 + 1 = -4$、$g(0) = 1$、$g(1) = 0$

最大値 $1$($t = 0$, $\theta = \pi/2$)、最小値 $-4$($t = -1$, $\theta = \pi$)

▶ 解答を見る
問題 4C 発展

点 $P(t, 0)$($0 < t < 3$)から曲線 $C: y = x^3 - 3x$ に引いた接線のうち、接点の $x$ 座標が正であるものの接点を $Q$ とする。三角形 $OPQ$($O$ は原点)の面積 $S(t)$ を求め、$S(t)$ の最大値を求めよ。

解答

接点 $(s, s^3 - 3s)$($s > 0$)での接線:$y = (3s^2 - 3)(x - s) + s^3 - 3s$

$(t, 0)$ を通る条件:$0 = (3s^2 - 3)(t - s) + s^3 - 3s$

$= 3s^2t - 3s^3 - 3t + 3s + s^3 - 3s = 3s^2t - 2s^3 - 3t$

$t(3s^2 - 3) = 2s^3$、$t = \dfrac{2s^3}{3(s^2 - 1)}$($s \neq 1$)

$Q = (s, s^3 - 3s)$。$S(t) = \dfrac{1}{2}|t| \cdot |s^3 - 3s| = \dfrac{t}{2}|s^3 - 3s|$

$s$ を $t$ の関数として表す必要があり、具体的な最大値の計算は $s$ についての関数として処理します。

$S$ を $s$ の関数として:$S = \dfrac{1}{2} \cdot \dfrac{2s^3}{3(s^2-1)} \cdot |s^3 - 3s| = \dfrac{s^3 \cdot s|s^2 - 3|}{3(s^2 - 1)}$($s > 0$, $s \neq 1$)

$0 < s < \sqrt{3}$, $s \neq 1$ で $s^2 - 3 < 0$:$S = \dfrac{s^4(3 - s^2)}{3(s^2 - 1)}$

この関数の最大値を微分で求める(計算が複雑なため、数値的に $s \approx 1.5$ 付近を調べる)。

採点のポイント
  • 接線の条件から $t$ と $s$ の関係式の導出
  • 面積の式の正確な立式
  • 定義域の制約の確認
▶ 解答を見る