第5章 指数関数と対数関数

累乗根の定義と計算
─ 「$n$ 乗すると $a$ になる数」を正しく扱う

「$\sqrt{4} = 2$」は知っている。では「$\sqrt[3]{-8}$ は?」「$\sqrt[4]{16}$ はいくつある?」── 平方根の一般化が累乗根です。
$n$ が奇数か偶数かで振る舞いが変わるところを、原理から理解しましょう。

1累乗根とは何か ─ 平方根の自然な拡張

数学Iで学んだ平方根は、「2乗すると $a$ になる数」でした。これを一般化して、「$n$ 乗すると $a$ になる数」を考えるのが累乗根です。

平方根の復習

$x^2 = a$ を満たす $x$ を $a$ の平方根(2乗根)といいました。$a > 0$ のとき、正の方を $\sqrt{a}$、負の方を $-\sqrt{a}$ と書きます。

では、「$x^3 = 8$ を満たす $x$ は?」と聞かれたら、$x = 2$ です。「$x^4 = 81$ を満たす $x$ は?」と聞かれたら、$x = 3$ と $x = -3$ です。このように、累乗の逆演算として「$n$ 乗根」を定義できます。

累乗根の定義

$n$ を2以上の正の整数とします。

📐 累乗根の定義

$n$ 乗して実数 $a$ になる数、すなわち $x^n = a$ を満たす実数 $x$ を、$a$ の$n$ 乗根という。

$a$ の2乗根(平方根)、3乗根(立方根)、4乗根、...... をまとめて累乗根という。

💡 ここが本質:累乗根は「累乗の逆」

累乗とは「同じ数を繰り返しかけること」です。累乗根はその逆操作、つまり「何を $n$ 回かけたら $a$ になるか」を問うものです。

例えば、$2^3 = 8$ の逆として $8$ の3乗根は $2$、$3^4 = 81$ の逆として $81$ の4乗根は $\pm 3$ です。足し算に対する引き算、かけ算に対する割り算と同じように、累乗に対する逆操作が累乗根なのです。

具体例で確認

いくつかの累乗根を具体的に見てみましょう。

累乗の式 累乗根の表現
$3^2 = 9$、$(-3)^2 = 9$ $9$ の2乗根(平方根)は $3$ と $-3$
$2^3 = 8$ $8$ の3乗根(立方根)は $2$
$(-5)^3 = -125$ $-125$ の3乗根は $-5$
$2^4 = 16$、$(-2)^4 = 16$ $16$ の4乗根は $2$ と $-2$
$2^5 = 32$ $32$ の5乗根は $2$

この表をよく見ると、$n$ が奇数か偶数かで「$n$ 乗根がいくつあるか」が変わっていることに気づきます。これが累乗根の最大のポイントです。

🔬 深掘りTips:複素数の世界での $n$ 乗根

実数の範囲では「$-4$ の4乗根は存在しない」ですが、複素数の範囲に広げると、$x^n = a$ は($a \neq 0$ のとき)ちょうど $n$ 個の解を持ちます。これは代数学の基本定理の帰結で、大学の代数学で詳しく学びます。

例えば $x^4 = -4$ の複素数解は $1+i$、$-1+i$、$-1-i$、$1-i$ の4つです。高校では実数の範囲で考えますが、背後には複素数の豊かな世界が広がっています。

2$n$ 乗根の存在と記号 ─ 奇数・偶数で何が変わるか

なぜ奇数と偶数で場合分けが必要なのか

$x^n = a$ の実数解の個数は、$n$ が奇数か偶数かで大きく異なります。これは $y = x^n$ のグラフの形から理解できます。

$n$ が奇数のとき:$y = x^n$ のグラフは原点に関して対称で、$x$ が $-\infty$ から $+\infty$ まで動くと $y$ も $-\infty$ から $+\infty$ まで動きます。したがって、$y = a$ の直線と必ず1か所で交わり、$n$ 乗根はちょうど1つ存在します。

$n$ が偶数のとき:$y = x^n$ のグラフは $y$ 軸に関して対称で、$y \geq 0$ の範囲しかとりません。したがって、

  • $a > 0$ のとき:正と負の2つの $n$ 乗根がある
  • $a = 0$ のとき:$n$ 乗根は $0$ のみ
  • $a < 0$ のとき:(実数の範囲では)$n$ 乗根は存在しない
💡 ここが本質:グラフで考えれば場合分けは自然

$a$ の $n$ 乗根とは、方程式 $x^n = a$ の実数解、つまり曲線 $y = x^n$ と直線 $y = a$ の交点の $x$ 座標です。

奇数次の曲線は全範囲を覆うので必ず1つ交わり、偶数次の曲線は $y \geq 0$ しか通らないので $a < 0$ だと交わらない。このグラフの対称性が、場合分けの根本的な理由です。

$n$ 乗根の記号 $\sqrt[n]{a}$

$n$ 乗根を表す記号を正確に定義しましょう。

📐 $n$ 乗根の記号

$n$ が奇数のとき:任意の実数 $a$ に対して、$a$ の $n$ 乗根はただ1つ存在し、これを $\sqrt[n]{a}$ と書く。

$n$ が偶数のとき:$a > 0$ に対して、正の $n$ 乗根を $\sqrt[n]{a}$、負の $n$ 乗根を $-\sqrt[n]{a}$ と書く。$a = 0$ のとき $\sqrt[n]{0} = 0$ とする。

$n = 2$ のとき $\sqrt[2]{a}$ は $\sqrt{a}$ と書く(根号の左上の $2$ は省略)。

⚠️ 落とし穴:「$a$ の $n$ 乗根」と「$\sqrt[n]{a}$」は別物

この2つを混同すると大きなミスにつながります。

「$16$ の4乗根」は $2$ と $-2$ の2つあります。

「$\sqrt[4]{16}$」は $2$ という1つの値を指します(正の方だけ)。

✗ 誤り:$\sqrt[4]{16} = \pm 2$

✓ 正しい:$\sqrt[4]{16} = 2$($16$ の4乗根は $\pm 2$)

これは平方根で「$4$ の平方根は $\pm 2$ だが、$\sqrt{4} = 2$」と学んだのと全く同じです。

$n$ 乗根の存在と個数のまとめ

$n$ が奇数 $n$ が偶数
$a > 0$ ただ1つ($\sqrt[n]{a}$) 2つ($\pm\sqrt[n]{a}$)
$a = 0$ $0$ のみ $0$ のみ
$a < 0$ ただ1つ($\sqrt[n]{a} < 0$) 存在しない
⚠️ 落とし穴:$n$ が偶数で $a < 0$ のとき

$n$ が偶数のとき、$\sqrt[n]{a}$ は $a \geq 0$ のときのみ定義されます。

✗ 誤り:$\sqrt[4]{-16} = (-16)^{\frac{1}{4}}$ を計算する

✓ 正しい:$\sqrt[4]{-16}$ は実数の範囲で定義されない

「$(-2)^4 = 16$ だから $\sqrt[4]{-16} = -2$」と考えてはいけません。$(-2)^4 = 16$ であって $(-2)^4 = -16$ ではないのです。

$n$ が奇数のときの負の数の累乗根

$n$ が奇数のとき、$\sqrt[n]{-a} = -\sqrt[n]{a}$($a > 0$)が成り立ちます。これは $y = x^n$($n$:奇数)のグラフが原点対称であることから従います。

例えば、$\sqrt[3]{-8} = -\sqrt[3]{8} = -2$ です。確認すると $(-2)^3 = -8$ なので正しいです。

🔬 深掘りTips:偶数乗根と絶対値の関係

$n$ が偶数のとき、$\sqrt[n]{a^n} = |a|$ が成り立ちます。なぜなら、$a < 0$ でも $a^n > 0$ であり、$\sqrt[n]{a^n}$ は「正の $n$ 乗根」なので $|a|$ になるからです。特に $\sqrt{a^2} = |a|$ は数学Iで学びました。これは「偶数次の累乗根には絶対値がつく」という一般的な性質の特殊ケースです。

3累乗根の基本性質 ─ なぜこの公式が成り立つのか

累乗根の計算で使う基本性質を整理しましょう。以下では $a > 0$、$b > 0$、$m$, $n$ は2以上の正の整数とします。

📐 累乗根の基本性質

$a > 0$、$b > 0$、$m$, $n$ は正の整数($n \geq 2$)のとき、

$$\text{(1)}\ (\sqrt[n]{a})^n = a$$

$$\text{(2)}\ \sqrt[n]{ab} = \sqrt[n]{a}\,\sqrt[n]{b}$$

$$\text{(3)}\ \sqrt[n]{\frac{a}{b}} = \frac{\sqrt[n]{a}}{\sqrt[n]{b}}$$

$$\text{(4)}\ (\sqrt[n]{a})^m = \sqrt[n]{a^m}$$

$$\text{(5)}\ \sqrt[m]{\sqrt[n]{a}} = \sqrt[mn]{a}$$

すべて $a > 0$, $b > 0$ のもとで成り立ちます。$a < 0$ の場合は $n$ が奇数のときのみ成立に注意。

性質(1):累乗根の定義そのもの

$(\sqrt[n]{a})^n = a$ は、$\sqrt[n]{a}$ が「$n$ 乗して $a$ になる正の数」であるという定義をそのまま式にしたものです。

性質(2):積の累乗根 = 累乗根の積

▷ 性質(2)の導出

$\sqrt[n]{a} > 0$、$\sqrt[n]{b} > 0$ より $\sqrt[n]{a}\,\sqrt[n]{b} > 0$ です。

$(\sqrt[n]{a}\,\sqrt[n]{b})^n = (\sqrt[n]{a})^n \cdot (\sqrt[n]{b})^n = a \cdot b = ab$

つまり $\sqrt[n]{a}\,\sqrt[n]{b}$ は「$n$ 乗して $ab$ になる正の数」なので、定義から $\sqrt[n]{ab}$ に等しい。

💡 ここが本質:性質の証明は「定義に戻る」

累乗根の性質の証明はすべて同じパターンです。「右辺を $n$ 乗すると $a$(や $ab$ など)になることを確認し、かつ正であることを確認する」だけ。

$\sqrt[n]{a}$ は「$n$ 乗すると $a$ になる正の数」として一意に定まるので、ある正の数が $n$ 乗して $a$ になることを示せば、それが $\sqrt[n]{a}$ に等しいと結論できるのです。この論法は累乗根に限らず、数学全般で使う重要な考え方です。

性質(5):累乗根の累乗根

$\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}} = \sqrt[mn]{a}$ は、「$n$ 乗根の $m$ 乗根は $mn$ 乗根」という意味です。

▷ 性質(5)の導出

$\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}} > 0$ であり、

$$(\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}})^{mn} = \{(\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}})^m\}^n = (\sqrt[n]{a})^n = a$$

つまり $\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}}$ は「$mn$ 乗して $a$ になる正の数」なので $\sqrt[mn]{a}$ に等しい。

⚠️ 落とし穴:$a < 0$ で偶数乗根を含む計算

累乗根の性質は $a > 0$、$b > 0$ が前提です。$a < 0$ のとき、$n$ が偶数なら $\sqrt[n]{a}$ 自体が定義されません。

✗ 誤り:$\sqrt[6]{(-2)^6} = \sqrt[6]{64} = 2$ だから $\sqrt[6]{(-2)^6} = -2$ ?

✓ 正しい:$\sqrt[6]{(-2)^6} = \sqrt[6]{64} = 2 = |-2|$

$n$ が偶数のとき $\sqrt[n]{a^n} = |a|$ であることを忘れないでください。

🔬 深掘りTips:累乗根と群論

性質(2) $\sqrt[n]{ab} = \sqrt[n]{a}\,\sqrt[n]{b}$ は、「$n$ 乗根を取る操作がかけ算を保つ」ことを意味します。このような「演算構造を保つ写像」を大学数学では準同型写像(homomorphism)と呼びます。群論はこのアイデアを基盤とする代数学の一分野で、物理学の対称性の理論にも深く関わっています。

4累乗根の計算 ─ 指数表記への変換が鍵

分数指数との関係

累乗根の計算を効率的に行うための最大の武器は、累乗根を分数指数で表すことです。

📐 累乗根と分数指数の関係

$a > 0$、$m$ は整数、$n$ は正の整数($n \geq 2$)のとき、

$$\sqrt[n]{a} = a^{\frac{1}{n}}$$

$$\sqrt[n]{a^m} = a^{\frac{m}{n}}$$

この変換により、累乗根の計算は指数法則 $a^p \cdot a^q = a^{p+q}$、$(a^p)^q = a^{pq}$ を使って統一的に処理できます。

💡 ここが本質:なぜ分数指数で書くと便利なのか

累乗根の記号 $\sqrt[n]{\ }$ のまま計算しようとすると、性質(1)〜(5)を個別に使い分ける必要があります。しかし $a^{\frac{m}{n}}$ と書けば、指数法則という1つのルールですべて統一できます。

例えば性質(4) $(\sqrt[n]{a})^m = \sqrt[n]{a^m}$ は、$a^{\frac{1}{n} \cdot m} = a^{\frac{m}{n}}$ と書けば指数法則 $(a^p)^q = a^{pq}$ そのもの。性質(5) $\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}} = \sqrt[mn]{a}$ も $(a^{\frac{1}{n}})^{\frac{1}{m}} = a^{\frac{1}{mn}}$ として同じ法則で導けます。

計算の基本テクニック

累乗根の計算では、次の手順が基本です。

  1. 累乗根を分数指数に変換する:$\sqrt[n]{a^m} = a^{\frac{m}{n}}$
  2. 指数法則で計算する:$a^p \cdot a^q = a^{p+q}$、$(a^p)^q = a^{pq}$
  3. 必要に応じて累乗根の記号に戻す

計算例1:$\sqrt[3]{4} \times \sqrt[3]{2}$ を計算する。

$$\sqrt[3]{4} \times \sqrt[3]{2} = \sqrt[3]{4 \times 2} = \sqrt[3]{8} = 2$$

性質(2) を使えば、中身同士をかけて根号にまとめるだけです。

計算例2:$\sqrt{2} \times \sqrt[3]{2}$ を計算する。

根号の次数が違うので、分数指数に変換します。

$$\sqrt{2} \times \sqrt[3]{2} = 2^{\frac{1}{2}} \times 2^{\frac{1}{3}} = 2^{\frac{1}{2} + \frac{1}{3}} = 2^{\frac{5}{6}} = \sqrt[6]{2^5} = \sqrt[6]{32}$$

計算例3:$\sqrt[3]{\sqrt{a}}$($a > 0$)を簡単にする。

$$\sqrt[3]{\sqrt{a}} = (a^{\frac{1}{2}})^{\frac{1}{3}} = a^{\frac{1}{6}} = \sqrt[6]{a}$$

⚠️ 落とし穴:根号の次数が異なる計算

$\sqrt{a} \times \sqrt[3]{a}$ のように根号の次数が異なるとき、性質(2)はそのまま使えません。性質(2)は同じ次数の根号同士の積にしか適用できません。

✗ 誤り:$\sqrt{a} \times \sqrt[3]{a} = \sqrt[?]{a^2}$(次数をどうする?)

✓ 正しい:$a^{\frac{1}{2}} \times a^{\frac{1}{3}} = a^{\frac{5}{6}} = \sqrt[6]{a^5}$(分数指数に変換)

根号の次数が違うときは、迷わず分数指数に変換しましょう。

分母の有理化

分母に累乗根が残っている場合は、有理化を行います。考え方は平方根のときと同じで、分母を「$n$ 乗して整数になる形」にします。

計算例4:$\dfrac{1}{\sqrt[3]{2}}$ を有理化する。

$$\frac{1}{\sqrt[3]{2}} = \frac{1}{\sqrt[3]{2}} \times \frac{\sqrt[3]{2^2}}{\sqrt[3]{2^2}} = \frac{\sqrt[3]{4}}{\sqrt[3]{2^3}} = \frac{\sqrt[3]{4}}{2}$$

$\sqrt[3]{2}$ に $\sqrt[3]{2^2}$ をかけると $\sqrt[3]{2^3} = 2$ となり、分母が有理化されます。

一般に、$\dfrac{1}{\sqrt[n]{a^k}}$ の分母を有理化するには、$\sqrt[n]{a^{n-k}}$ を分母・分子にかけます。

🔬 深掘りTips:指数の拡張の歴史

もともと「$a^n$」は「$a$ を $n$ 回かける」という意味で $n$ は正の整数でした。それを $a^0 = 1$、$a^{-n} = \frac{1}{a^n}$、$a^{\frac{m}{n}} = \sqrt[n]{a^m}$ と拡張し、さらに無理数の指数にまで広げたのが指数の拡張の歴史です。この拡張は「指数法則 $a^p \cdot a^q = a^{p+q}$ が常に成り立つように」という一貫した原理に基づいています。

5累乗根の大小比較 ─ 指数関数の単調性を利用する

$\sqrt[3]{5}$ と $\sqrt[4]{7}$、どちらが大きいでしょうか? 次数の異なる累乗根の大小比較は、指数関数の性質を使って解決します。

同じ底・同じ次数の場合

最も基本的な性質は次の通りです。

📐 累乗根の大小関係

$a > 0$、$b > 0$、$n$ は正の整数($n \geq 2$)のとき、

$$\sqrt[n]{a} < \sqrt[n]{b} \iff a < b$$

$n$ 乗根を取る操作は大小関係を保ちます。指数 $\frac{1}{n} > 0$ なので、$a^{\frac{1}{n}}$ は $a$ の増加関数です。

次数の異なる累乗根の比較

$\sqrt[3]{5}$ と $\sqrt[4]{7}$ のように底も次数も異なる場合、直接比較はできません。そこで、分数指数で表してから共通の指数に揃える方法を使います。

計算例:$\sqrt[3]{5}$ と $\sqrt[4]{7}$ の大小を比較する。

$$\sqrt[3]{5} = 5^{\frac{1}{3}} = 5^{\frac{4}{12}}, \quad \sqrt[4]{7} = 7^{\frac{1}{4}} = 7^{\frac{3}{12}}$$

指数を $\frac{1}{12}$ に統一すると、

$$5^{\frac{4}{12}} = (5^4)^{\frac{1}{12}} = 625^{\frac{1}{12}} = \sqrt[12]{625}$$

$$7^{\frac{3}{12}} = (7^3)^{\frac{1}{12}} = 343^{\frac{1}{12}} = \sqrt[12]{343}$$

$625 > 343$ なので $\sqrt[12]{625} > \sqrt[12]{343}$。よって $\sqrt[3]{5} > \sqrt[4]{7}$ です。

💡 ここが本質:「共通の土俵」に揃える

次数の異なる累乗根を比較するとは、分数指数の「分母を通分」することと同じです。$\frac{1}{3}$ と $\frac{1}{4}$ の通分が $\frac{4}{12}$ と $\frac{3}{12}$ であるように、12乗根に揃えれば中身(底の累乗)の大小だけで比較できます。

この「共通の形に変換してから比較する」という考え方は、分数の通分、不等式の変形など、数学の至るところに現れる普遍的な戦略です。

大小比較の手順

  1. 累乗根を分数指数に変換する
  2. 指数の分母を通分し、同じ指数に揃える
  3. 底(真数部分)の大小を比較する
⚠️ 落とし穴:底が1より小さい場合

底が1より大きい正の数なら「指数が大きいほど値が大きい」ですが、$0 < a < 1$ のときは逆です。

例:$\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{1}{3}}$ と $\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{1}{2}}$ の大小は?

$\frac{1}{3} < \frac{1}{2}$ で底 $\frac{1}{2} < 1$ なので、指数が小さい方が値が大きい。

$\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{1}{3}} > \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{1}{2}}$、すなわち $\sqrt[3]{\frac{1}{2}} > \sqrt{\frac{1}{2}}$

底が1より小さいときは、指数関数が減少関数であることに注意しましょう。

🔬 深掘りTips:平均律と累乗根

ピアノの鍵盤で隣り合う音の周波数比は $\sqrt[12]{2}$ です。1オクターブ(周波数が2倍)を12等分するために12乗根が使われているのです。これが平均律(equal temperament)と呼ばれる音律で、18世紀以降の西洋音楽の基盤となっています。累乗根は音楽という意外な場面でも活躍しています。

📋まとめ

  • 累乗根の定義:$n$ 乗して $a$ になる数を $a$ の $n$ 乗根という。2乗根(平方根)、3乗根(立方根)、4乗根……の総称が累乗根。
  • 奇数・偶数の違い:$n$ が奇数 → 任意の実数 $a$ に対して $n$ 乗根はただ1つ。$n$ が偶数 → $a > 0$ のとき正負2つ、$a < 0$ のとき存在しない。
  • 記号の意味:$\sqrt[n]{a}$ は、$n$ が偶数のとき「正の $n$ 乗根」のみを指す。「$a$ の $n$ 乗根」とは意味が異なることに注意。
  • 基本性質:$(\sqrt[n]{a})^n = a$、$\sqrt[n]{ab} = \sqrt[n]{a}\,\sqrt[n]{b}$、$\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}} = \sqrt[mn]{a}$。証明は「定義に戻って $n$ 乗を確認」で統一。
  • 計算の鍵:$\sqrt[n]{a^m} = a^{\frac{m}{n}}$ と分数指数に変換すれば、指数法則で統一的に計算できる。次数の異なる累乗根の大小比較は指数の通分で解決。

確認テスト

Q1. $\sqrt[3]{-27}$ の値を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 $(-3)^3 = -27$ より、$\sqrt[3]{-27} = -3$

Q2. $81$ の4乗根をすべて答えよ。また、$\sqrt[4]{81}$ の値を答えよ。

▶ クリックして解答を表示 $3^4 = 81$, $(-3)^4 = 81$ より、$81$ の4乗根は $3$ と $-3$。$\sqrt[4]{81} = 3$(正の方のみ)。

Q3. $\sqrt[3]{4} \times \sqrt[3]{2}$ を計算せよ。

▶ クリックして解答を表示 $\sqrt[3]{4} \times \sqrt[3]{2} = \sqrt[3]{4 \times 2} = \sqrt[3]{8} = 2$

Q4. $\sqrt[6]{(-3)^6}$ の値を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 $n = 6$ は偶数なので $\sqrt[6]{(-3)^6} = |-3| = 3$($\sqrt[n]{a^n} = |a|$($n$:偶数)を使う)

Q5. $\sqrt{3}$ を $\sqrt[6]{\ }$ の形で表せ。

▶ クリックして解答を表示 $\sqrt{3} = 3^{\frac{1}{2}} = 3^{\frac{3}{6}} = \sqrt[6]{3^3} = \sqrt[6]{27}$

📝入試問題演習

問題 1 A 基礎

次の計算をせよ。ただし $a > 0$, $b > 0$ とする。

(1) $\sqrt[4]{9} \times \sqrt[4]{3}$

(2) $\sqrt[3]{\sqrt{a}}$

(3) $\dfrac{\sqrt[3]{54}}{\sqrt[3]{2}}$

(4) $\sqrt[3]{a^2 b} \times \sqrt[3]{a b^2}$

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解答

(1) $\sqrt[4]{9} \times \sqrt[4]{3} = \sqrt[4]{9 \times 3} = \sqrt[4]{27} = \sqrt[4]{3^3} = 3^{\frac{3}{4}}$

(2) $\sqrt[3]{\sqrt{a}} = (a^{\frac{1}{2}})^{\frac{1}{3}} = a^{\frac{1}{6}} = \sqrt[6]{a}$

(3) $\dfrac{\sqrt[3]{54}}{\sqrt[3]{2}} = \sqrt[3]{\dfrac{54}{2}} = \sqrt[3]{27} = 3$

(4) $\sqrt[3]{a^2 b} \times \sqrt[3]{a b^2} = \sqrt[3]{a^2 b \times a b^2} = \sqrt[3]{a^3 b^3} = \sqrt[3]{(ab)^3} = ab$

問題 2 B 標準

次の計算をせよ。

(1) $\sqrt{2} \times \sqrt[3]{4}$

(2) $\dfrac{1}{\sqrt[3]{9}}$ を分母を有理化して簡単にせよ。

(3) $\sqrt[3]{54} + \sqrt[3]{-250} - \sqrt[3]{-16}$

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解答

(1) $\sqrt{2} \times \sqrt[3]{4} = 2^{\frac{1}{2}} \times (2^2)^{\frac{1}{3}} = 2^{\frac{1}{2}} \times 2^{\frac{2}{3}} = 2^{\frac{1}{2} + \frac{2}{3}} = 2^{\frac{7}{6}} = 2 \cdot 2^{\frac{1}{6}} = 2\sqrt[6]{2}$

(2) $\dfrac{1}{\sqrt[3]{9}} = \dfrac{1}{\sqrt[3]{3^2}} = \dfrac{\sqrt[3]{3}}{\sqrt[3]{3^2} \cdot \sqrt[3]{3}} = \dfrac{\sqrt[3]{3}}{\sqrt[3]{3^3}} = \dfrac{\sqrt[3]{3}}{3}$

(3) $\sqrt[3]{54} = \sqrt[3]{27 \cdot 2} = 3\sqrt[3]{2}$

$\sqrt[3]{-250} = -\sqrt[3]{250} = -\sqrt[3]{125 \cdot 2} = -5\sqrt[3]{2}$

$\sqrt[3]{-16} = -\sqrt[3]{16} = -\sqrt[3]{8 \cdot 2} = -2\sqrt[3]{2}$

$\therefore\ 3\sqrt[3]{2} - 5\sqrt[3]{2} - (-2\sqrt[3]{2}) = 3\sqrt[3]{2} - 5\sqrt[3]{2} + 2\sqrt[3]{2} = 0$

解説

(1) 根号の次数が異なるので分数指数に変換。通分して計算し、整数部分を取り出します。(2) $\sqrt[3]{3^2}$ に $\sqrt[3]{3}$ をかけると $\sqrt[3]{3^3} = 3$ になることを利用。(3) 各項を $\sqrt[3]{2}$ でくくり出すと、きれいに整理できます。

採点のポイント
  • (1) 分数指数の変換と通分の正確さ
  • (2) 有理化の操作が正しいか
  • (3) $\sqrt[3]{-a} = -\sqrt[3]{a}$ を正しく使えているか
問題 3 B 標準

次の3つの数の大小を比較せよ。

$$\sqrt{2},\quad \sqrt[3]{3},\quad \sqrt[6]{5}$$

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解答

分数指数に変換し、指数の分母を6に通分する。

$\sqrt{2} = 2^{\frac{1}{2}} = 2^{\frac{3}{6}} = (2^3)^{\frac{1}{6}} = \sqrt[6]{8}$

$\sqrt[3]{3} = 3^{\frac{1}{3}} = 3^{\frac{2}{6}} = (3^2)^{\frac{1}{6}} = \sqrt[6]{9}$

$\sqrt[6]{5} = \sqrt[6]{5}$

$5 < 8 < 9$ より $\sqrt[6]{5} < \sqrt[6]{8} < \sqrt[6]{9}$

$$\therefore\ \sqrt[6]{5} < \sqrt{2} < \sqrt[3]{3}$$

解説

根号の次数が $2$、$3$、$6$ と異なるので、最小公倍数 $6$ に揃えます。すべてを $\sqrt[6]{\ }$ の形にすると、中身の大小で比較できます。分数指数の「通分」が大小比較の定石です。

採点のポイント
  • 分数指数への変換が正しいか
  • 指数の通分が正しいか
  • $\sqrt[6]{\ }$ の中身の大小から正しく結論しているか
問題 4 C 発展

$a > 0$、$b > 0$ のとき、次の式を簡単にせよ。

$$\frac{(\sqrt[3]{a^2 b})^2 \times \sqrt[3]{a}}{\sqrt{a^3 b} \times \sqrt[6]{ab^2}}$$

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解答

すべてを分数指数で表す。

分子:

$(\sqrt[3]{a^2 b})^2 \times \sqrt[3]{a} = (a^{\frac{2}{3}} b^{\frac{1}{3}})^2 \times a^{\frac{1}{3}} = a^{\frac{4}{3}} b^{\frac{2}{3}} \times a^{\frac{1}{3}} = a^{\frac{5}{3}} b^{\frac{2}{3}}$

分母:

$\sqrt{a^3 b} \times \sqrt[6]{ab^2} = a^{\frac{3}{2}} b^{\frac{1}{2}} \times a^{\frac{1}{6}} b^{\frac{2}{6}} = a^{\frac{3}{2} + \frac{1}{6}} b^{\frac{1}{2} + \frac{1}{3}} = a^{\frac{10}{6}} b^{\frac{5}{6}} = a^{\frac{5}{3}} b^{\frac{5}{6}}$

全体:

$\dfrac{a^{\frac{5}{3}} b^{\frac{2}{3}}}{a^{\frac{5}{3}} b^{\frac{5}{6}}} = b^{\frac{2}{3} - \frac{5}{6}} = b^{\frac{4}{6} - \frac{5}{6}} = b^{-\frac{1}{6}} = \dfrac{1}{\sqrt[6]{b}}$

解説

複雑に見えますが、手順は一貫しています。(1) すべての累乗根を $a^{(\cdots)} b^{(\cdots)}$ の分数指数に変換、(2) 分子・分母それぞれで指数を整理、(3) 割り算は指数の引き算。分数指数への変換がすべての出発点です。

採点のポイント
  • 累乗根を分数指数に正しく変換できているか
  • 分子・分母の指数の計算(通分)が正確か
  • 最終結果を簡潔な形にまとめられているか