第2章 複素数と方程式

高次方程式の解法
─ 3次・4次方程式を攻略する

3次以上の方程式を解くには、因数定理で次数を下げて2次方程式に帰着させるのが基本戦略です。
置換や対称性を活用するテクニックも身につけましょう。

1高次方程式の基本戦略

📐 高次方程式を解く3つの戦略

戦略1(因数定理):$P(a) = 0$ となる $a$ を見つけ、$(x-a)$ で割って次数を下げる

戦略2(置換):$t = x^2$ や $t = x + \dfrac{1}{x}$ などで2次方程式に帰着

戦略3(因数分解の工夫):グループ分け、共通因数のくくり出しで直接因数分解

🌱 本質理解:「次数を下げる」が核心

高次方程式は直接の解の公式がない(5次以上は原理的に存在しない:アーベル-ルフィニの定理)ため、何らかの方法で次数を下げて、最終的に2次方程式に帰着させるのが唯一の方法です。因数定理は「1次因数を引き抜いて次数を1下げる」、置換は「一気に2次に落とす」手法です。

23次方程式の解法

基本手順

例1:$x^3 - 4x^2 + x + 6 = 0$ を解け。

📝 解法

$P(x) = x^3 - 4x^2 + x + 6$。有理根の候補 $\pm 1, \pm 2, \pm 3, \pm 6$ を試す。

$P(-1) = -1 - 4 - 1 + 6 = 0$ ✓

組立除法:$P(x) = (x+1)(x^2 - 5x + 6) = (x+1)(x-2)(x-3)$

$x = -1, 2, 3$

例2:$x^3 + 3x^2 + 3x + 2 = 0$ を解け。

📝 解法

$P(-2) = -8 + 12 - 6 + 2 = 0$ ✓

$(x+2)(x^2 + x + 1) = 0$

$x^2 + x + 1 = 0$ の解は $x = \dfrac{-1 \pm \sqrt{3}\,i}{2}$

$x = -2, \dfrac{-1 + \sqrt{3}\,i}{2}, \dfrac{-1 - \sqrt{3}\,i}{2}$

⚠️ 「解け」の意味に注意

✗ $x^2 + x + 1 = 0$ は解なし(実数の範囲で)

✓ 問題文の指定を確認。「複素数の範囲で解け」なら虚数解も求める

特に指示がない場合は、数学IIの文脈では複素数の範囲で解くのが標準です。

34次方程式の解法(置換型)

複2次方程式

$x$ の偶数乗のみで構成される4次方程式は $t = x^2$ で2次方程式になります。

例:$x^4 - 5x^2 + 4 = 0$

$t = x^2$ とおくと $t^2 - 5t + 4 = (t-1)(t-4) = 0$

$t = 1$ のとき $x = \pm 1$、$t = 4$ のとき $x = \pm 2$

$x + \dfrac{1}{x}$ 型の置換

$x^4 + ax^3 + bx^2 + ax + 1 = 0$(係数が左右対称:相反方程式)の場合は特別な解法があります。

📐 相反方程式の解法

$x \neq 0$ で両辺を $x^2$ で割り、$t = x + \dfrac{1}{x}$ と置換する。

$x^2 + \dfrac{1}{x^2} = t^2 - 2$ を利用して $t$ の2次方程式に帰着。

例:$x^4 - 3x^3 + 4x^2 - 3x + 1 = 0$

📝 解法

$x \neq 0$ で $x^2$ で割る:$x^2 - 3x + 4 - \dfrac{3}{x} + \dfrac{1}{x^2} = 0$

$\left(x^2 + \dfrac{1}{x^2}\right) - 3\left(x + \dfrac{1}{x}\right) + 4 = 0$

$t = x + \dfrac{1}{x}$ とおくと $t^2 - 2 - 3t + 4 = 0$

$t^2 - 3t + 2 = (t-1)(t-2) = 0$ より $t = 1$ または $t = 2$

$t = 1$:$x + \dfrac{1}{x} = 1$ → $x^2 - x + 1 = 0$ → $x = \dfrac{1 \pm \sqrt{3}\,i}{2}$

$t = 2$:$x + \dfrac{1}{x} = 2$ → $x^2 - 2x + 1 = 0$ → $x = 1$(重解)

💡 相反方程式の見分け方

係数を左から右に読んでも右から左に読んでも同じ(回文のような)方程式が相反方程式です。$1, -3, 4, -3, 1$ のように対称的な係数が目印です。奇数次の相反方程式では $x = -1$ が必ず解になるのも覚えておくと便利です。

4虚数解と共役解の性質

📐 実数係数の方程式の虚数解

実数係数の方程式 $P(x) = 0$ が虚数 $\alpha = p + qi$($q \neq 0$)を解にもつならば、その共役複素数 $\bar{\alpha} = p - qi$ も解である。

すなわち、虚数解は必ず共役ペアで現れる。

📝 証明

$P(x) = a_nx^n + a_{n-1}x^{n-1} + \cdots + a_0$($a_k$ はすべて実数)とする。

$P(\alpha) = 0$ の両辺の共役をとると $\overline{P(\alpha)} = 0$。

$\overline{P(\alpha)} = \overline{a_n\alpha^n + \cdots + a_0} = a_n\overline{\alpha^n} + \cdots + a_0 = a_n\bar{\alpha}^n + \cdots + a_0 = P(\bar{\alpha})$

($a_k$ は実数なので $\bar{a_k} = a_k$、$\overline{\alpha^k} = \bar{\alpha}^k$ を使った)

よって $P(\bar{\alpha}) = 0$。■

応用:解の個数の判定

この性質を使うと、実数係数の多項式方程式の解の構造が見えてきます。

  • 3次方程式(実数係数):実数解が少なくとも1つある(虚数解は2つペアで現れるので、残りの1つは実数)
  • 4次方程式(実数係数):実数解は0個、2個、または4個(虚数解のペア数により決まる)
🌱 本質理解:奇数次方程式は必ず実数解をもつ

実数係数の奇数次方程式は必ず少なくとも1つの実数解をもちます。虚数解が共役ペアで現れるので偶数個であり、奇数個の解のうち少なくとも1つは実数にならざるを得ないからです。これは中間値の定理からも分かります:奇数次の多項式は $x \to +\infty$ で $+\infty$、$x \to -\infty$ で $-\infty$(最高次の係数が正の場合)なので、途中で必ず $0$ を通過します。

5高次方程式の解の個数と重解

$n$ 次方程式の解の個数

📐 代数学の基本定理(高校版)

$n$ 次方程式は複素数の範囲で重複を含めてちょうど $n$ 個の解をもつ。

$$a_nx^n + a_{n-1}x^{n-1} + \cdots + a_0 = a_n(x - \alpha_1)(x - \alpha_2)\cdots(x - \alpha_n)$$

重解の判定

$P(x) = 0$ が $x = \alpha$ を $k$ 重解にもつとは、$P(x) = (x - \alpha)^k Q(x)$($Q(\alpha) \neq 0$)が成り立つことです。

例:$x^3 - 3x + 2 = 0$ で $P(1) = 0$ かつ $P'(x) = 3x^2 - 3$ より $P'(1) = 0$ なので $x = 1$ は2重解。

$x^3 - 3x + 2 = (x-1)^2(x+2)$

⚠️ 重解のカウントに注意

✗ $(x-1)^2(x+2) = 0$ の解は $x = 1, -2$ の2個

✓ 異なる解は2個だが、重複を含めると $x = 1, 1, -2$ の3個

「$n$ 次方程式の解は $n$ 個」は重複を含めた数です。問題文の「異なる解の個数」と「重複を含めた解の個数」を区別しましょう。

🔭 大学数学への橋渡し

カルダノの公式(3次)やフェラーリの公式(4次)は存在しますが、5次以上の一般的な解の公式は存在しないことが19世紀に証明されました(アーベル-ルフィニの定理)。ガロアはどのような方程式が根号で解けるかを完全に分類し、この研究が群論という現代数学の一大分野を生み出しました。

📋まとめ

  • 高次方程式の基本戦略は因数定理で次数を下げて2次方程式に帰着させること。
  • 複2次方程式は $t = x^2$ 置換、相反方程式は $t = x + 1/x$ 置換で2次に帰着。
  • 実数係数の方程式の虚数解は必ず共役ペアで現れる。
  • 奇数次の実数係数方程式は必ず少なくとも1つの実数解をもつ。
  • $n$ 次方程式は複素数の範囲で重複を含めて $n$ 個の解をもつ(代数学の基本定理)。

確認テスト

Q1. $x^3 - 7x + 6 = 0$ を解け。

▶ クリックして解答を表示 $P(1) = 0$ より $(x-1)(x^2+x-6) = (x-1)(x+3)(x-2) = 0$。$x = 1, 2, -3$

Q2. $x^4 - 13x^2 + 36 = 0$ を解け。

▶ クリックして解答を表示 $t = x^2$:$t^2 - 13t + 36 = (t-4)(t-9) = 0$。$x = \pm 2, \pm 3$

Q3. 実数係数の3次方程式の一つの解が $1 + i$ のとき、残りの虚数解を答えよ。

▶ クリックして解答を表示 共役複素数 $1 - i$

Q4. $x^4 + x^3 + x^2 + x + 1 = 0$ はどのような型の方程式か。

▶ クリックして解答を表示 係数が左右対称なので相反方程式。$t = x + 1/x$ の置換で解ける。

Q5. $x^3 - 6x^2 + 12x - 8 = 0$ を解け。

▶ クリックして解答を表示 $(x-2)^3 = 0$ より $x = 2$(3重解)

📝入試問題演習

問題 1 A 基礎

次の方程式を複素数の範囲で解け。

(1) $x^3 - 2x^2 - 5x + 6 = 0$

(2) $x^3 + 8 = 0$

▶ クリックして解答を表示
解答

(1) $P(1) = 1-2-5+6 = 0$。$(x-1)(x^2-x-6) = (x-1)(x-3)(x+2) = 0$

$x = 1, 3, -2$

(2) $x^3 + 8 = (x+2)(x^2-2x+4) = 0$

$x = -2$ または $x = \dfrac{2 \pm \sqrt{4-16}}{2} = 1 \pm \sqrt{3}\,i$

問題 2 B 標準

実数係数の3次方程式 $x^3 + ax^2 + bx + c = 0$ の一つの解が $2 + i$ であるとき、$a, b, c$ の値を求めよ。ただし、残りの実数解は $-1$ である。

▶ クリックして解答を表示
解答

3つの解は $2+i, 2-i, -1$(共役解の性質)。

解と係数の関係より

$\alpha+\beta+\gamma = (2+i)+(2-i)+(-1) = 3 = -a$ → $a = -3$

$\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha = (2+i)(2-i) + (2-i)(-1) + (-1)(2+i)$

$= 5 + (-2+i) + (-2-i) = 1 = b$

$\alpha\beta\gamma = 5 \times (-1) = -5 = -c$ → $c = 5$

$a = -3, b = 1, c = 5$

採点のポイント
  • 共役解 $2-i$ の導出(3点)
  • 3解の和・積の計算(4点)
  • $a, b, c$ の決定(3点)
問題 3 B 標準

方程式 $2x^4 - 5x^3 + 5x - 2 = 0$ を解け。

▶ クリックして解答を表示
解答

係数が $2, -5, 0, 5, -2$ で左右が反対称(符号込みで対称:$a_k = -a_{n-k}$)。

$P(1) = 2-5+5-2 = 0$ より $(x-1)$ が因数。

$P(-1) = 2+5-5-2 = 0$ より $(x+1)$ も因数。

$(x-1)(x+1) = x^2 - 1$ で割る:$2x^4-5x^3+5x-2 = (x^2-1)(2x^2-5x+2)$

$2x^2-5x+2 = (2x-1)(x-2) = 0$ より $x = \dfrac{1}{2}, 2$

$x = -1, \dfrac{1}{2}, 1, 2$

問題 4 C 発展

$x^4 + x^3 + x^2 + x + 1 = 0$ を複素数の範囲で解け。

▶ クリックして解答を表示
解答

相反方程式。$x \neq 0$ で $x^2$ で割ると

$x^2 + x + 1 + \dfrac{1}{x} + \dfrac{1}{x^2} = 0$

$\left(x^2 + \dfrac{1}{x^2}\right) + \left(x + \dfrac{1}{x}\right) + 1 = 0$

$t = x + \dfrac{1}{x}$ とおくと $t^2 - 2 + t + 1 = 0$

$t^2 + t - 1 = 0$ → $t = \dfrac{-1 \pm \sqrt{5}}{2}$

$t = \dfrac{-1+\sqrt{5}}{2}$ のとき $x + \dfrac{1}{x} = \dfrac{-1+\sqrt{5}}{2}$ → $x^2 - \dfrac{-1+\sqrt{5}}{2}x + 1 = 0$

$x = \dfrac{(-1+\sqrt{5}) \pm \sqrt{(-1+\sqrt{5})^2 - 16}}{4} = \dfrac{(-1+\sqrt{5}) \pm \sqrt{6-2\sqrt{5}-16}}{4}$

$= \dfrac{(-1+\sqrt{5}) \pm \sqrt{-10-2\sqrt{5}}}{4} = \dfrac{-1+\sqrt{5} \pm i\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4}$

$t = \dfrac{-1-\sqrt{5}}{2}$ のとき同様に

$x = \dfrac{-1-\sqrt{5} \pm i\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4}$

別の見方

$x^5 - 1 = (x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1) = 0$ なので、この方程式の解は $x^5 = 1$ の解のうち $x \neq 1$ のもの、すなわち1の5乗根(原始5乗根)です。

採点のポイント
  • 相反方程式の認識と $t$ の置換(3点)
  • $t$ の2次方程式の解(3点)
  • $x$ の2次方程式への変換と解(4点)