第1章で学んだ式の計算・恒等式・等式と不等式の証明を横断的に復習し、
入試本番で「どの武器を使うか」を瞬時に判断できる力を鍛えます。
第1章「式と計算」は大きく3つの柱で構成されています。全体の構造を俯瞰することで、問題に対するアプローチの選択肢が広がります。
柱1:式の計算(II-1-1 ~ II-1-5)
3次式の展開・因数分解、二項定理、多項式の割り算、分数式の計算
柱2:等式の証明(II-1-6 ~ II-1-8)
恒等式の定義と決定、等式の証明(条件付き等式を含む)
柱3:不等式の証明(II-1-9 ~ II-1-14)
実数の性質を用いた証明、相加相乗平均、コーシー・シュワルツ、絶対値の不等式、融合問題
各単元は独立しているように見えて、実は密接に関連しています。
| 場面 | 使う知識の組み合わせ |
|---|---|
| 不等式の証明で式変形が必要 | 因数分解 + 実数の2乗 $\geq 0$ |
| 恒等式の決定と等式の証明 | 係数比較法 + 条件付き等式変形 |
| 最大・最小問題 | 相加相乗平均 + 式の変形(通分・置換) |
| 条件付き不等式 | 等式条件の処理 + コーシー・シュワルツ |
| 二項定理と不等式 | 二項展開 + 各項の正負評価 |
総合問題では「どの道具を使うか」の判断が最も重要です。判断の指針は次の3つです。
(1) 等号条件に注目:求める結論に等号がいつ成立するかを考えると、使うべき不等式が見える。
(2) 式の構造を見る:積の和 → コーシー・シュワルツ、和と積 → 相加相乗、2乗の和 → 実数の性質。
(3) 条件式を活かす:条件式があれば、代入・消去して変数を減らすのが基本。
式の変形と証明は車の両輪です。変形のテクニックなしに証明は書けず、論証の方針なしに変形は方向を見失います。
次の形の問題は入試で非常に頻出です。
「条件 $a + b + c = k$(等式)のもとで、$a^2 + b^2 + c^2 \geq \dfrac{k^2}{3}$ を証明せよ」
このタイプは、条件式で1変数を消去して2変数の不等式に帰着させるか、コーシー・シュワルツを適用するのが定石。
【方法1:コーシー・シュワルツ】
$(1^2+1^2+1^2)(a^2+b^2+c^2) \geq (a+b+c)^2 = k^2$
$\therefore\; a^2+b^2+c^2 \geq \dfrac{k^2}{3}$ ■
等号:$a = b = c = \dfrac{k}{3}$
【方法2:$(差)^2 \geq 0$ の利用】
$3(a^2+b^2+c^2) - (a+b+c)^2 = (a-b)^2 + (b-c)^2 + (c-a)^2 \geq 0$
$\therefore\; 3(a^2+b^2+c^2) \geq k^2$、すなわち $a^2+b^2+c^2 \geq \dfrac{k^2}{3}$ ■
恒等式の知識は不等式の証明にも役立ちます。例えば次の恒等式を知っていれば、不等式の証明が一行で済むことがあります。
(1) $a^2 + b^2 + c^2 - ab - bc - ca = \dfrac{1}{2}\{(a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2\}$
(2) $a^3 + b^3 + c^3 - 3abc = (a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)$
(3) $(a^2+b^2)(c^2+d^2) = (ac+bd)^2 + (ad-bc)^2$(ラグランジュの恒等式)
恒等式(1)から直ちに $a^2 + b^2 + c^2 \geq ab + bc + ca$ が従います。恒等式(2)に $a, b, c \geq 0$ の条件を加えれば $a^3+b^3+c^3 \geq 3abc$ が得られます。恒等式(3)は2変数のコーシー・シュワルツそのものです。
誤:$a^3 + b^3 + c^3 \geq 3abc$ はつねに成立する。
正:$a, b, c \geq 0$(または $a+b+c \geq 0$)の条件が必要。恒等式(2)の右辺で $a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca \geq 0$ は常に成立するが、もう一方の因数 $(a+b+c)$ の符号は不定。$a = -3, b = 1, c = 1$ では $a^3+b^3+c^3 = -25 < -9 = 3abc$ となり不等式は成立しない。
不等式の証明にはさまざまな方法がありますが、問題の特徴に応じて最適な手法を選ぶことが重要です。ここでは第1章で学んだすべての手法を統合的に整理します。
(A) 差を取って符号を調べる:最も基本的。$P \geq Q$ を示すには $P - Q \geq 0$ を示す。
(B) 実数の2乗 $\geq 0$ の利用:差が2乗の和の形に変形できるとき。
(C) 相加相乗平均の不等式:$a > 0, b > 0$ のとき $a + b \geq 2\sqrt{ab}$。和と積の関係に使う。
(D) コーシー・シュワルツの不等式:$(a^2+b^2)(c^2+d^2) \geq (ac+bd)^2$。積の和の評価に強い。
(E) 三角不等式:$|a+b| \leq |a|+|b|$。絶対値を含む不等式に使う。
(F) 1変数関数とみて最大最小:条件式で変数を減らし、平方完成で評価。
問題を見たとき、次の順番でチェックすると方針が立ちやすくなります。
不等式の証明で最も強力な指針は等号条件から逆算することです。例えば $a + \dfrac{1}{a}$ の最小値を求めるとき、等号条件 $a = \dfrac{1}{a}$、つまり $a = 1$ が分かれば、相加相乗平均を使えばよいとすぐに判断できます。
同様に、コーシー・シュワルツの等号条件は「比が等しい」こと。問題文や結論から等号成立の条件が読み取れれば、使うべき不等式が自然に決まります。
高難度の問題では、1つの手法だけでは解けず、複数手法の組み合わせが必要になります。
【方法1:コーシー・シュワルツ】
$(a+b+c)\!\left(\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c}\right) \geq \left(1 + 1 + 1\right)^2 = 9$
(コーシー・シュワルツの分数形:$\displaystyle\sum \dfrac{1}{x_i} = \sum \dfrac{1^2}{x_i} \geq \dfrac{n^2}{\sum x_i}$ で $n=3$)
$a+b+c = 1$ より $\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c} \geq 9$ ■
【方法2:相加相乗平均の繰り返し】
相加相乗平均より $\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c} \geq \dfrac{3}{\sqrt[3]{abc}}$。
一方、$a+b+c \geq 3\sqrt[3]{abc}$ より $\sqrt[3]{abc} \leq \dfrac{1}{3}$。
$\therefore\;\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c} \geq \dfrac{3}{1/3} = 9$ ■
等号:$a = b = c = \dfrac{1}{3}$
誤:AM-GM で $abc \leq \dfrac{1}{27}$ を示した後、$\dfrac{3}{\sqrt[3]{abc}} \geq 9$ と結論する際に、$abc$ が小さいほど $\dfrac{1}{\sqrt[3]{abc}}$ が大きい、という単調性の確認を省略する。
正:$f(t) = \dfrac{1}{t}$ は $t > 0$ で単調減少なので、$\sqrt[3]{abc} \leq \dfrac{1}{3}$ ならば $\dfrac{1}{\sqrt[3]{abc}} \geq 3$。この一行を書くことで論理が完結する。
計算力と証明力が身についたとしても、入試本番では時間配分と方針決定の速さが合否を分けます。
| 問題の種類 | 目安時間 | 注意点 |
|---|---|---|
| 式の計算(展開・因数分解) | 3~5分 | 検算に1分かけても損はない |
| 恒等式の決定 | 5~8分 | 数値代入法で検算可能 |
| 等式の証明 | 5~10分 | 方針が見えなければ3分で切り替え |
| 不等式の証明 | 8~15分 | 手法選択に1分、等号条件の明記を忘れない |
大学数学では、相加相乗平均やコーシー・シュワルツは凸関数(convex function)の理論で統一的に理解されます。
関数 $f(x)$ が下に凸($f''(x) \geq 0$)のとき、イェンセンの不等式が成立します:
$$f\!\left(\frac{x_1+x_2+\cdots+x_n}{n}\right) \leq \frac{f(x_1)+f(x_2)+\cdots+f(x_n)}{n}$$
$f(x) = x^2$ とすれば $\left(\dfrac{a+b+c}{3}\right)^{\!2} \leq \dfrac{a^2+b^2+c^2}{3}$ となり、Section 2 の不等式が得られます。$f(x) = -\ln x$($x > 0$)とすれば相加相乗平均の不等式が導けます。高校数学で個別に覚えた不等式が、凸性という1つの概念で統一されるのは美しいことです。
減点1:等号条件を書かない。「$\geq$」を証明したのに、等号がいつ成立するかを示さない。
減点2:相加相乗平均で「正の数」の条件を確認しない。
減点3:「明らかに」「自明に」を多用する。採点者が自明と思わない可能性がある。
対策:等号条件は必ず明記する。不等式の適用条件は一行でよいので必ず書く。「明らかに」は具体的な根拠に置き換える。
第1章で培った式の変形力と論証力は、第2章「複素数と方程式」で直接活かされます。
複素数の計算:$i^2 = -1$ を用いた式の展開と整理 → 第1章の展開公式がそのまま使える。
高次方程式:$P(a) = 0$ なら $P(x)$ は $(x-a)$ で割り切れる → 多項式の割り算の応用。
解と係数の関係:$x^2 + px + q = 0$ の2解を $\alpha, \beta$ とすると $\alpha+\beta = -p, \alpha\beta = q$ → 恒等式の考え方。
実数解条件:判別式 $D \geq 0$ → 不等式の証明と直結。
数学IIでは、第1章で「計算と証明の基盤」を築き、第2章で「方程式の世界」に入り、第3章以降で「関数」「微積分」へ発展します。第1章の力が弱いと、後の章すべてに影響します。特に式を目的に応じて変形する力は、微分・積分の計算でも決定的に重要です。
第2章に入る前に、以下の項目を確認しておきましょう。
チェック1:3次式 $a^3 \pm b^3$ の因数分解が瞬時にできるか?
チェック2:多項式の割り算で商と余りを正確に求められるか?
チェック3:$x^2 + bx + c = 0$ の解の公式を自在に使えるか?
チェック4:判別式 $D = b^2 - 4ac$ の意味を説明できるか?
不安がある項目は、該当する節に戻って復習してから第2章に進みましょう。
Q1. $a + b + c = 0$ のとき、$a^3 + b^3 + c^3$ を $a, b, c$ の積で表せ。
Q2. $x > 0$ のとき $x + \dfrac{4}{x}$ の最小値とそのときの $x$ を求めよ。
Q3. コーシー・シュワルツの不等式 $(a^2+b^2)(c^2+d^2) \geq (ac+bd)^2$ の等号条件を述べよ。
Q4. 不等式 $a^2 + b^2 + c^2 \geq ab + bc + ca$ を1行で証明せよ。
Q5. 第2章で因数定理を使うために必要な、多項式の割り算の基本等式を書け。
$a + b = 1$ のとき、次の問いに答えよ。
(1) $a^2 + b^2$ を $a$ を用いて表し、その最小値を求めよ。
(2) $a^2 + b^2 \geq \dfrac{1}{2}$ を、相加相乗平均を用いずに証明せよ。
(3) $a \geq 0, b \geq 0$ のとき $a^3 + b^3$ の最小値を求めよ。
(1) $b = 1 - a$ より
$$a^2+b^2 = a^2+(1-a)^2 = 2a^2-2a+1 = 2\!\left(a-\frac{1}{2}\right)^{\!2}+\frac{1}{2}$$
$a = \dfrac{1}{2}$($b = \dfrac{1}{2}$)のとき最小値 $\dfrac{1}{2}$。
(2) $a+b = 1$ より $(a-b)^2 = (a+b)^2 - 4ab = 1 - 4ab \geq 0$ なので $ab \leq \dfrac{1}{4}$。
$a^2+b^2 = (a+b)^2 - 2ab = 1 - 2ab \geq 1 - 2 \cdot \dfrac{1}{4} = \dfrac{1}{2}$ ■
等号:$a = b = \dfrac{1}{2}$。
(3) $a^3+b^3 = (a+b)^3-3ab(a+b) = 1-3ab$。
$a \geq 0, b \geq 0, a+b=1$ のとき $0 \leq ab \leq \dfrac{1}{4}$((2)の結果)。
$a^3+b^3 = 1-3ab$ は $ab$ が大きいほど小さくなるから、$ab = \dfrac{1}{4}$ のとき最小。
最小値 $= 1-3 \cdot \dfrac{1}{4} = \dfrac{1}{4}$。等号は $a = b = \dfrac{1}{2}$。
多項式 $P(x) = ax^2 + bx + c$($a \neq 0$)がすべての実数 $x$ に対して $P(x) \geq 0$ を満たすとする。
(1) $a > 0$ かつ $b^2 - 4ac \leq 0$ であることを示せ。
(2) $P(-1) \geq 0$ を用いて $a + c \geq b$ を示せ。
(3) 任意の実数 $s, t$ に対して $a\,s^2 + b\,st + c\,t^2 \geq 0$ を証明せよ。
(1) すべての $x$ で $P(x) \geq 0$ なので、まず $a > 0$ を示す。
もし $a < 0$ なら $|x| \to \infty$ のとき $P(x) \to -\infty$ となり、$P(x) \geq 0$ に矛盾する。よって $a > 0$。
$a > 0$ のとき平方完成すると $P(x) = a\!\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^{\!2} + \dfrac{4ac-b^2}{4a}$。
$\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^{\!2}$ は $x = -\dfrac{b}{2a}$ のとき $0$ になるから、すべての $x$ で $P(x) \geq 0$ であるためには $\dfrac{4ac-b^2}{4a} \geq 0$ が必要。$a > 0$ より $4ac - b^2 \geq 0$、すなわち $b^2 - 4ac \leq 0$。■
(2) すべての実数 $x$ で $P(x) \geq 0$ なので、特に $x = -1$ とすると
$P(-1) = a(-1)^2 + b(-1) + c = a - b + c \geq 0$
$\therefore\; a + c \geq b$ ■
(3) $t = 0$ のとき:$a\,s^2 \geq 0$($a > 0$ より成立)。
$t \neq 0$ のとき:$a\,s^2 + b\,st + c\,t^2 = t^2\!\left(a\!\left(\dfrac{s}{t}\right)^{\!2} + b\!\left(\dfrac{s}{t}\right) + c\right) = t^2 \cdot P\!\left(\dfrac{s}{t}\right)$。
$t^2 > 0$ かつ $P\!\left(\dfrac{s}{t}\right) \geq 0$(仮定より)なので、$t^2 \cdot P\!\left(\dfrac{s}{t}\right) \geq 0$。■
(3)の発想は「$t$ でくくって1変数関数に帰着させる」というもので、斉次式(各項の次数が等しい式)に対する定石です。$a\,s^2+b\,st+c\,t^2$ は $s, t$ について2次の斉次式であることに注目しましょう。
$a, b, c > 0$ とする。次の不等式を証明せよ。
(1) $(a+b)(b+c)(c+a) \geq 8abc$
(2) $\dfrac{a}{b+c} + \dfrac{b}{c+a} + \dfrac{c}{a+b} \geq \dfrac{3}{2}$
(1) $a, b, c > 0$ より、相加相乗平均を各因数に適用する。
$a+b \geq 2\sqrt{ab}$, $\;b+c \geq 2\sqrt{bc}$, $\;c+a \geq 2\sqrt{ca}$
3式はすべて正なので辺々掛けて
$(a+b)(b+c)(c+a) \geq 2\sqrt{ab} \cdot 2\sqrt{bc} \cdot 2\sqrt{ca} = 8\sqrt{a^2b^2c^2} = 8abc$ ■
等号:$a = b$ かつ $b = c$ かつ $c = a$、すなわち $a = b = c$。
(2) コーシー・シュワルツの不等式の分数形(チェビシェフ・エンゲル形式)を用いる。
$$\frac{a^2}{a(b+c)}+\frac{b^2}{b(c+a)}+\frac{c^2}{c(a+b)} \geq \frac{(a+b+c)^2}{a(b+c)+b(c+a)+c(a+b)}$$
左辺は $\dfrac{a}{b+c}+\dfrac{b}{c+a}+\dfrac{c}{a+b}$ に等しい。
分母を計算すると $a(b+c)+b(c+a)+c(a+b) = 2(ab+bc+ca)$。
よって $\dfrac{a}{b+c}+\dfrac{b}{c+a}+\dfrac{c}{a+b} \geq \dfrac{(a+b+c)^2}{2(ab+bc+ca)}$。
ここで $(a+b+c)^2 = a^2+b^2+c^2+2(ab+bc+ca) \geq 3(ab+bc+ca)$
($\because\; a^2+b^2+c^2 \geq ab+bc+ca$)
$\therefore\;\dfrac{(a+b+c)^2}{2(ab+bc+ca)} \geq \dfrac{3(ab+bc+ca)}{2(ab+bc+ca)} = \dfrac{3}{2}$ ■
等号:$a = b = c$。
各項から $\dfrac{1}{2}$ を引いて整理する。
$\dfrac{a}{b+c}-\dfrac{1}{2} = \dfrac{2a-(b+c)}{2(b+c)}$
$s = a+b+c$ とおくと $b+c = s-a$ なので $\dfrac{2a-(b+c)}{2(b+c)} = \dfrac{3a-s}{2(s-a)}$。
左辺全体 $-\dfrac{3}{2} = \dfrac{1}{2}\!\left(\dfrac{3a-s}{s-a}+\dfrac{3b-s}{s-b}+\dfrac{3c-s}{s-c}\right)$。
$u = s-a, v = s-b, w = s-c$($u,v,w > 0$, $u+v+w = 2s$)とおくと $3a-s = 2s-3u$ より
$= \dfrac{1}{2}\!\left(\dfrac{2s-3u}{u}+\dfrac{2s-3v}{v}+\dfrac{2s-3w}{w}\right) = \dfrac{1}{2}\!\left(2s\!\left(\dfrac{1}{u}+\dfrac{1}{v}+\dfrac{1}{w}\right)-9\right)$
AM-GM 分数形で $\dfrac{1}{u}+\dfrac{1}{v}+\dfrac{1}{w} \geq \dfrac{9}{u+v+w} = \dfrac{9}{2s}$ より
$= \dfrac{1}{2}\!\left(2s \cdot \dfrac{9}{2s}-9\right) = \dfrac{1}{2}(9-9) = 0$。よって $\geq 0$。■
$a, b, c$ は正の実数で $a + b + c = 1$ を満たす。次の問いに答えよ。
(1) $ab + bc + ca \leq \dfrac{1}{3}$ を証明せよ。
(2) $\dfrac{a^2}{b} + \dfrac{b^2}{c} + \dfrac{c^2}{a} \geq 1$ を証明せよ。
(3) $\sqrt{a+b} + \sqrt{b+c} + \sqrt{c+a} \leq \sqrt{6}$ を証明せよ。
(4) $(1-a)(1-b)(1-c) \geq 8abc$ を証明せよ。
(1) $(a+b+c)^2 = a^2+b^2+c^2+2(ab+bc+ca) = 1$ より
$ab+bc+ca = \dfrac{1-(a^2+b^2+c^2)}{2}$
コーシー・シュワルツの不等式より $(1^2+1^2+1^2)(a^2+b^2+c^2) \geq (a+b+c)^2 = 1$ なので $a^2+b^2+c^2 \geq \dfrac{1}{3}$。
$\therefore\;ab+bc+ca = \dfrac{1-(a^2+b^2+c^2)}{2} \leq \dfrac{1-\frac{1}{3}}{2} = \dfrac{1}{3}$ ■
等号:$a = b = c = \dfrac{1}{3}$。
コーシー・シュワルツの不等式の分数形より
$$\frac{a^2}{b}+\frac{b^2}{c}+\frac{c^2}{a} \geq \frac{(a+b+c)^2}{b+c+a} = \frac{(a+b+c)^2}{a+b+c} = a+b+c = 1$$
(分数形:$\displaystyle\sum \frac{x_i^2}{y_i} \geq \frac{(\sum x_i)^2}{\sum y_i}$($y_i > 0$)を $x_i = a,b,c$, $y_i = b,c,a$ で適用。)
■ 等号:$\dfrac{a}{b} = \dfrac{b}{c} = \dfrac{c}{a}$、すなわち $a = b = c = \dfrac{1}{3}$。
コーシー・シュワルツの不等式 $\left(\displaystyle\sum x_i\right)^{\!2} \leq n \displaystyle\sum x_i^2$ を利用する。
$$(\sqrt{a+b}+\sqrt{b+c}+\sqrt{c+a})^2 \leq 3\{(a+b)+(b+c)+(c+a)\}$$
$= 3 \cdot 2(a+b+c) = 3 \cdot 2 \cdot 1 = 6$
各項は正なので $\sqrt{a+b}+\sqrt{b+c}+\sqrt{c+a} \leq \sqrt{6}$ ■
等号:$a+b = b+c = c+a$、すなわち $a = b = c = \dfrac{1}{3}$。
$a+b+c = 1$ より $1-a = b+c$, $1-b = c+a$, $1-c = a+b$。
よって $(1-a)(1-b)(1-c) = (b+c)(c+a)(a+b)$。
問題3(1)より $(a+b)(b+c)(c+a) \geq 8abc$。
$\therefore\;(1-a)(1-b)(1-c) \geq 8abc$ ■
等号:$a = b = c = \dfrac{1}{3}$。
本問は第1章の主要テーマを横断的に問う総合問題です。(1)は「$(差)^2 \geq 0$」とCSの基本、(2)はCS分数形の典型、(3)はCSの「$(\sum x_i)^2 \leq n \sum x_i^2$」型、(4)は問題3(1)の結果と条件式 $a+b+c=1$ の組み合わせです。条件式を活かして式を変換する力、既知の不等式を的確に選ぶ力、そして前の小問の結果を後の小問で再利用する力が問われています。