第9章 複素数平面

複素数の積・商と回転
─ かけ算は「回して伸ばす」操作

複素数のかけ算を直交形式($a + bi$)で計算すると、展開して整理するだけの作業です。しかし極形式を使うと、かけ算の幾何学的意味が鮮明に見えてきます。「絶対値はかけ算、偏角は足し算」── この法則を理解すれば、複素数の積・商は「回転と拡大」にほかならないことがわかります。

1極形式での積 ─ なぜ偏角が足されるのか

$z_1 = r_1(\cos\theta_1 + i\sin\theta_1)$、$z_2 = r_2(\cos\theta_2 + i\sin\theta_2)$ の積を計算してみましょう。

▷ 極形式の積の導出

$z_1 z_2 = r_1 r_2 (\cos\theta_1 + i\sin\theta_1)(\cos\theta_2 + i\sin\theta_2)$

$= r_1 r_2 [(\cos\theta_1\cos\theta_2 - \sin\theta_1\sin\theta_2) + i(\sin\theta_1\cos\theta_2 + \cos\theta_1\sin\theta_2)]$

加法定理から:

$$z_1 z_2 = r_1 r_2 [\cos(\theta_1 + \theta_2) + i\sin(\theta_1 + \theta_2)]$$

📐 極形式の積

$$z_1 z_2 = r_1 r_2 [\cos(\theta_1 + \theta_2) + i\sin(\theta_1 + \theta_2)]$$

すなわち:$|z_1 z_2| = |z_1| \cdot |z_2|$、$\arg(z_1 z_2) = \arg z_1 + \arg z_2$

※ 偏角の等式は $2\pi$ の整数倍を除いて成立します。

💡 積の本質:絶対値はかけ算、偏角は足し算

この公式は加法定理の帰結ですが、その意味はもっと深いものです。

複素数のかけ算は「回転して拡大する」操作です。$z_2$ をかけると、$z_1$ を原点の周りに角度 $\theta_2$ だけ回転させ、長さを $r_2$ 倍にします。かけ算に「回転」という幾何学的意味があることが、複素数の最も美しい性質です。

具体例で確認

$z_1 = 1 + i$、$z_2 = \sqrt{3} + i$ の積を極形式で計算してみます。

$z_1 = \sqrt{2}\!\left(\cos\dfrac{\pi}{4} + i\sin\dfrac{\pi}{4}\right)$、$z_2 = 2\!\left(\cos\dfrac{\pi}{6} + i\sin\dfrac{\pi}{6}\right)$ だから:

$$z_1 z_2 = 2\sqrt{2}\!\left(\cos\frac{5\pi}{12} + i\sin\frac{5\pi}{12}\right)$$

直交形式で計算すると $z_1 z_2 = (1+i)(\sqrt{3}+i) = (\sqrt{3}-1) + (\sqrt{3}+1)i$ です。極形式を使えば、絶対値と偏角が瞬時にわかります。

⚠️ 落とし穴:偏角の和が $2\pi$ を超える場合

✗ $\arg z_1 = \dfrac{5\pi}{4}$, $\arg z_2 = \dfrac{5\pi}{4}$ のとき、$\arg(z_1 z_2) = \dfrac{5\pi}{2}$ とそのまま答える

○ $\dfrac{5\pi}{2} = \dfrac{\pi}{2} + 2\pi$ なので、主値は $\arg(z_1 z_2) = \dfrac{\pi}{2}$

偏角は $2\pi$ ごとに同じ角度を表すので、$0 \le \theta < 2\pi$ の範囲に収めましょう。

2極形式での商 ─ 割り算は逆回転

積の公式から、商の公式は自然に導かれます。$z_2 \neq 0$ のとき:

📐 極形式の商

$$\frac{z_1}{z_2} = \frac{r_1}{r_2}[\cos(\theta_1 - \theta_2) + i\sin(\theta_1 - \theta_2)]$$

すなわち:$\left|\dfrac{z_1}{z_2}\right| = \dfrac{|z_1|}{|z_2|}$、$\arg\dfrac{z_1}{z_2} = \arg z_1 - \arg z_2$

▷ 商の公式の導出

$\dfrac{z_1}{z_2} = z_1 \cdot z_2^{-1}$ と考える。

$z_2^{-1} = \dfrac{1}{r_2}(\cos(-\theta_2) + i\sin(-\theta_2)) = \dfrac{1}{r_2}(\cos\theta_2 - i\sin\theta_2)$

積の公式より $z_1 \cdot z_2^{-1} = \dfrac{r_1}{r_2}[\cos(\theta_1 - \theta_2) + i\sin(\theta_1 - \theta_2)]$。□

商では偏角が「引き算」になるので、割り算は逆回転に対応します。$z_2$ で割ることは、角度 $\theta_2$ だけ逆回転させ、長さを $\dfrac{1}{r_2}$ 倍にすることです。

⚠️ 落とし穴:$z_2^{-1}$ の偏角

✗ $z_2 = 2(\cos\dfrac{\pi}{3} + i\sin\dfrac{\pi}{3})$ の逆数の偏角を $\dfrac{1}{\pi/3}$ とする

○ $z_2^{-1}$ の偏角は $-\dfrac{\pi}{3}$(主値では $\dfrac{5\pi}{3}$)、絶対値は $\dfrac{1}{2}$

逆数の偏角は元の偏角の「符号を変えた」もの(逆回転)です。分数計算ではありません。

💡 逆数の幾何学的意味

$z^{-1} = \dfrac{\bar{z}}{|z|^2}$ という公式は、$z$ の逆数が「共役をとって(実軸で折り返して)、絶対値の2乗で割る」操作であることを示します。

単位円上($|z| = 1$)では $z^{-1} = \bar{z}$ となり、逆数と共役が一致するという美しい性質が成り立ちます。

3回転と拡大の幾何学的意味

極形式の積・商の公式を、幾何学の観点から掘り下げてみましょう。

$\alpha$ をかける = 原点中心に回転して拡大

複素数 $\alpha = r(\cos\phi + i\sin\phi)$ を $z$ にかける操作 $w = \alpha z$ を考えます。これは:

  • $z$ を原点中心に角度 $\phi$ だけ反時計回りに回転
  • さらに原点からの距離を $r$ 倍に拡大($r < 1$ なら縮小)

特に $|\alpha| = 1$($\alpha$ が単位円上)のとき、$\alpha$ をかける操作は純粋な回転になります。拡大・縮小は起こりません。

📐 原点中心の角度 $\phi$ の回転

点 $z$ を原点中心に角度 $\phi$ だけ回転した点は:

$$w = (\cos\phi + i\sin\phi)\,z$$

※ $i$ をかけることは $\phi = \dfrac{\pi}{2}$ の回転に対応します。$i \cdot z$ で点 $z$ は $90°$ 回転します。

$i$ をかけると $90°$ 回転する理由

$i = \cos\dfrac{\pi}{2} + i\sin\dfrac{\pi}{2}$ なので、$i$ をかけることは偏角を $\dfrac{\pi}{2}$ だけ増やすこと、すなわち $90°$ の反時計回りの回転に対応します。実際、$z = a + bi$ に $i$ をかけると $iz = -b + ai$ となり、$(a, b)$ が $(-b, a)$ に移ります。これは原点中心の $90°$ 回転そのものです。

⚠️ 落とし穴:回転の中心が原点でない場合

✗ 点 $z$ を点 $c$ 中心に角度 $\phi$ 回転 → $w = (\cos\phi + i\sin\phi)\,z$

○ $w - c = (\cos\phi + i\sin\phi)(z - c)$、すなわち $w = (\cos\phi + i\sin\phi)(z - c) + c$

回転の中心が原点でないときは、一度中心を原点に移動してから回転し、元に戻す手順が必要です。

🔬 深掘り:行列表現との対応

$(\cos\phi + i\sin\phi)(a + bi) = (a\cos\phi - b\sin\phi) + (a\sin\phi + b\cos\phi)i$ は、行列で書くと $\begin{pmatrix}\cos\phi & -\sin\phi \\ \sin\phi & \cos\phi\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a \\ b\end{pmatrix}$ と同じです。つまり、複素数のかけ算は回転行列そのものなのです。大学の線形代数では、この対応がさらに深く探求されます。

4絶対値の積・商の公式

極形式から導かれる絶対値の性質を整理します。これらは直交形式でも直接証明できますが、極形式なら自明です。

📐 絶対値に関する基本公式

(1) $|z_1 z_2| = |z_1| \cdot |z_2|$(絶対値の積)

(2) $\left|\dfrac{z_1}{z_2}\right| = \dfrac{|z_1|}{|z_2|}$($z_2 \neq 0$)(絶対値の商)

(3) $|z^n| = |z|^n$($n$ は整数)

(4) $|z_1 z_2 \cdots z_n| = |z_1| \cdot |z_2| \cdots |z_n|$

▷ 直交形式での (1) の証明

$z_1 = a + bi$, $z_2 = c + di$ とする。

$|z_1 z_2|^2 = z_1 z_2 \cdot \overline{z_1 z_2} = z_1 z_2 \cdot \bar{z}_1 \bar{z}_2 = (z_1 \bar{z}_1)(z_2 \bar{z}_2) = |z_1|^2 |z_2|^2$

両辺正なので $|z_1 z_2| = |z_1| \cdot |z_2|$。□

この証明では $\overline{z_1 z_2} = \bar{z}_1 \bar{z}_2$(前節の性質)を使いました。このように、共役複素数の性質と絶対値の性質は密接に結びついています。

応用:$|z_1 + z_2|^2$ の展開

内積のように展開できる公式を紹介します。

$$|z_1 + z_2|^2 = (z_1 + z_2)(\bar{z}_1 + \bar{z}_2) = |z_1|^2 + z_1\bar{z}_2 + \bar{z}_1 z_2 + |z_2|^2 = |z_1|^2 + 2\operatorname{Re}(z_1\bar{z}_2) + |z_2|^2$$

ここで $\operatorname{Re}(w)$ は $w$ の実部を表します。$z_1\bar{z}_2 + \overline{z_1\bar{z}_2} = 2\operatorname{Re}(z_1\bar{z}_2)$ を使いました。

💡 $z\bar{w}$ の実部は「内積」に対応する

$z_1 = a + bi$, $z_2 = c + di$ のとき $\operatorname{Re}(z_1\bar{z}_2) = ac + bd$。これはベクトル $(a, b)$ と $(c, d)$ の内積そのものです。

したがって $|z_1 + z_2|^2 = |z_1|^2 + 2\operatorname{Re}(z_1\bar{z}_2) + |z_2|^2$ は、ベクトルの「余弦定理」に対応しています。

⚠️ 落とし穴:$|z_1 + z_2|^2 \neq |z_1|^2 + |z_2|^2$

✗ $|z_1 + z_2|^2 = |z_1|^2 + |z_2|^2$ → 交差項 $2\operatorname{Re}(z_1\bar{z}_2)$ を忘れている

○ $|z_1 + z_2|^2 = |z_1|^2 + 2\operatorname{Re}(z_1\bar{z}_2) + |z_2|^2$

$|z_1 + z_2|^2 = |z_1|^2 + |z_2|^2$ が成り立つのは $\operatorname{Re}(z_1\bar{z}_2) = 0$、つまり $z_1$ と $z_2$ が「直交」(偏角の差が $\dfrac{\pi}{2}$)するときだけです。

5複素数による点の変換

ここまで学んだ積・商の幾何学的意味を使うと、複素数平面上の点の移動を簡潔に表現できます。

変換の一覧

変換複素数の式説明
原点中心の回転$w = (\cos\phi + i\sin\phi)\,z$角度 $\phi$ の回転
点 $c$ 中心の回転$w - c = (\cos\phi + i\sin\phi)(z - c)$$c$ を中心に回転
実軸対称$w = \bar{z}$共役をとる
原点対称$w = -z$$\pi$ 回転
拡大$w = rz$($r > 0$ の実数)原点中心に $r$ 倍
平行移動$w = z + \alpha$$\alpha$ だけ移動

正三角形や正方形の頂点を求める問題では、回転の式 $w - c = (\cos\phi + i\sin\phi)(z - c)$ が威力を発揮します。

正三角形の頂点を求める

2点 $z_1, z_2$ を2頂点とする正三角形の第3の頂点 $z_3$ を求めてみましょう。$z_1$ を中心に $z_2$ を $\pm 60°$ 回転させればよいので:

$$z_3 - z_1 = \left(\cos\frac{\pi}{3} + i\sin\frac{\pi}{3}\right)(z_2 - z_1) \quad \text{または} \quad z_3 - z_1 = \left(\cos\frac{\pi}{3} - i\sin\frac{\pi}{3}\right)(z_2 - z_1)$$

これにより $z_3$ の2つの候補が得られます($z_1, z_2$ を通る直線の両側に1つずつ)。

🔬 深掘り:メビウス変換

$w = \dfrac{az + b}{cz + d}$($ad - bc \neq 0$)の形の変換をメビウス変換(一次分数変換)と呼びます。回転・拡大・平行移動はすべてメビウス変換の特殊ケースです。大学の複素解析では、メビウス変換が円を円に移す(直線は半径無限大の円と見なす)という美しい性質が証明されます。

⚠️ 落とし穴:回転の向きと正三角形

✗ 正三角形の第3頂点は1つだけ → 2つの候補を忘れている

○ $+60°$ 回転と $-60°$ 回転で2つの候補が得られる。問題の条件でどちらかを選ぶ

「反時計回り」と指定があれば1つに定まりますが、指定がなければ2つとも答えましょう。

まとめ

✅ 確認テスト

Q1. $z_1 = 2(\cos\dfrac{\pi}{4} + i\sin\dfrac{\pi}{4})$, $z_2 = 3(\cos\dfrac{\pi}{6} + i\sin\dfrac{\pi}{6})$ のとき $z_1 z_2$ の絶対値と偏角は?

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$|z_1 z_2| = 6$、$\arg(z_1 z_2) = \dfrac{\pi}{4} + \dfrac{\pi}{6} = \dfrac{5\pi}{12}$

Q2. $z = 1 + i$ に $i$ をかけると、どの点に移るか。

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$iz = i(1+i) = i + i^2 = -1 + i$。$90°$ 回転して $(1,1)$ が $(-1,1)$ に移る。

Q3. $|z| = 1$ のとき、$z^{-1}$ を $\bar{z}$ で表せ。

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$z^{-1} = \dfrac{\bar{z}}{|z|^2} = \dfrac{\bar{z}}{1} = \bar{z}$

Q4. 点 $z$ を原点中心に $\dfrac{\pi}{3}$ 回転した点を複素数で表せ。

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$w = \left(\cos\dfrac{\pi}{3} + i\sin\dfrac{\pi}{3}\right)z = \left(\dfrac{1}{2} + \dfrac{\sqrt{3}}{2}i\right)z$

Q5. $|z_1 + z_2|^2$ を $|z_1|^2, |z_2|^2$ と $z_1\bar{z}_2$ で表せ。

▶ 答えを見る
$|z_1+z_2|^2 = |z_1|^2 + 2\operatorname{Re}(z_1\bar{z}_2) + |z_2|^2$

入試問題演習

問題 1 LEVEL A 積と商の計算

$z_1 = 1 + \sqrt{3}\,i$、$z_2 = \sqrt{3} + i$ のとき、$z_1 z_2$ と $\dfrac{z_1}{z_2}$ を極形式と直交形式の両方で求めよ。

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解答

$z_1 = 2\!\left(\cos\dfrac{\pi}{3} + i\sin\dfrac{\pi}{3}\right)$、$z_2 = 2\!\left(\cos\dfrac{\pi}{6} + i\sin\dfrac{\pi}{6}\right)$

積:$z_1 z_2 = 4\!\left(\cos\dfrac{\pi}{2} + i\sin\dfrac{\pi}{2}\right) = 4i$

直交形式:$(1+\sqrt{3}\,i)(\sqrt{3}+i) = \sqrt{3} + i + 3i + \sqrt{3}\,i^2 = (\sqrt{3}-\sqrt{3}) + (1+3)i = 4i$ ✓

商:$\dfrac{z_1}{z_2} = 1 \cdot \left(\cos\dfrac{\pi}{6} + i\sin\dfrac{\pi}{6}\right) = \dfrac{\sqrt{3}}{2} + \dfrac{1}{2}i$

採点ポイント
  • 各複素数の極形式変換 … 各2点
  • 積・商の極形式での計算 … 各2点
  • 直交形式との一致確認 … 2点
問題 2 LEVEL B 回転×正三角形

複素数平面上の3点 $A(z_1)$, $B(z_2)$, $C(z_3)$ が正三角形をなすとき、次の等式が成り立つことを示せ。

$$z_1^2 + z_2^2 + z_3^2 = z_1 z_2 + z_2 z_3 + z_3 z_1$$

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解答

$\omega = \cos\dfrac{2\pi}{3} + i\sin\dfrac{2\pi}{3}$ とおく($120°$ 回転)。

正三角形の重心を $g = \dfrac{z_1+z_2+z_3}{3}$ とすると、$z_k - g$($k=1,2,3$)は互いに $120°$ 回転の関係にある。

$z_2 - g = \omega(z_1 - g)$, $z_3 - g = \omega^2(z_1 - g)$ と書ける(頂点の番号付けを適切に選ぶ)。

$z_1 + z_2 + z_3 = 3g$ と $1 + \omega + \omega^2 = 0$ を使う。

$z_1^2 + z_2^2 + z_3^2 - z_1z_2 - z_2z_3 - z_3z_1 = \dfrac{1}{2}[(z_1-z_2)^2 + (z_2-z_3)^2 + (z_3-z_1)^2]$... (*)

$z_1 - z_2 = (z_1-g) - (z_2-g) = (1-\omega)(z_1-g)$

$z_2 - z_3 = (\omega-\omega^2)(z_1-g)$, $z_3 - z_1 = (\omega^2-1)(z_1-g)$

$(*)$ の右辺 $= \dfrac{|z_1-g|^2}{2}[(1-\omega)^2+(\omega-\omega^2)^2+(\omega^2-1)^2]$

$= \dfrac{|z_1-g|^2}{2} \cdot (1-\omega)^2[1+\omega^2+\omega^4]$

$\omega^3 = 1$ より $\omega^4 = \omega$ なので $1+\omega^2+\omega = 0$。よって $(*)=0$。□

採点ポイント
  • $\omega$ による回転関係の設定 … 3点
  • $1+\omega+\omega^2=0$ の利用 … 3点
  • 等式の証明完了 … 4点
問題 3 LEVEL B 回転×正方形

$z_1 = 2 + i$, $z_2 = -1 + 2i$ を隣り合う2頂点とする正方形の残り2頂点 $z_3, z_4$ を求めよ。ただし、$z_1, z_2, z_3, z_4$ はこの順に反時計回りに並ぶものとする。

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解答

$z_2 - z_1 = -3 + i$。$z_3 - z_2$ は $z_2 - z_1$ を $90°$ 回転した(反時計回りなので $i$ 倍した)ものなので:

$z_3 - z_2 = i(z_2 - z_1) = i(-3+i) = -3i + i^2 = -1 - 3i$

$z_3 = z_2 + (-1-3i) = (-1+2i) + (-1-3i) = -2 - i$

$z_4 - z_3 = i(z_3 - z_2) = i(-1-3i) = -i - 3i^2 = 3 - i$

$z_4 = z_3 + (3-i) = (-2-i) + (3-i) = 1 - 2i$

検証:$z_1 - z_4 = (2+i) - (1-2i) = 1 + 3i = i(z_4 - z_3) = i(3-i) = 3i + 1$ ✓

採点ポイント
  • $90°$ 回転が $i$ 倍であることの利用 … 3点
  • $z_3 = -2 - i$ の算出 … 3点
  • $z_4 = 1 - 2i$ の算出 … 3点
  • 検証 … 1点
問題 4 LEVEL C 偏角×最大最小

$|z| = 2$ を満たす複素数 $z$ に対して、$\arg\dfrac{z-1}{z+1}$ のとりうる値の範囲を求めよ。ただし偏角は $-\pi < \theta \le \pi$ とする。

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解答

$\arg\dfrac{z-1}{z+1} = \arg(z-1) - \arg(z+1)$

これは点 $z$ から見た点 $1$ と点 $-1$ のなす角に対応する。

$z$ は中心 $O$, 半径 $2$ の円上を動く。$A(1), B(-1)$ とすると、$\arg\dfrac{z-1}{z+1}$ は $\angle BzA$(符号付き)。

円周角の定理の逆を考える。$A(1), B(-1)$ を通る弦に対する円周角は、$z$ が $|z|=2$ の上半円上にあるとき正、下半円上にあるとき負。

$OA = OB = 1$, 円の半径 $R = 2$ なので $AB = 2$。

$z$ が虚軸上($z = 2i$)のとき角度が最大。$z - 1 = -1 + 2i$, $z + 1 = 1 + 2i$。

$\arg(z-1) = \pi - \arctan 2$, $\arg(z+1) = \arctan 2$

$\arg\dfrac{z-1}{z+1} = \pi - 2\arctan 2$

対称性より、$z$ が上半円を動くとき $0 < \arg\dfrac{z-1}{z+1} \le \pi - 2\arctan 2$ ではなく、正しくは $\sin\theta = \dfrac{1}{2}$ を使う。

$z = 2(\cos\alpha + i\sin\alpha)$ とおき、$\dfrac{z-1}{z+1} = \dfrac{2e^{i\alpha}-1}{2e^{i\alpha}+1}$ を $\alpha$ の関数として解析すると、

$\arg\dfrac{z-1}{z+1}$ のとりうる値の範囲は $-\dfrac{\pi}{6} \le \theta \le \dfrac{\pi}{6}$($z = \pm 2$ のとき $\theta = 0$)を除く $\left(-\dfrac{\pi}{6}, \dfrac{\pi}{6}\right)$ ではなく、

実は $|z|=2$ の円と $A(1), B(-1)$ の配置から、$\sin\angle AzB = \dfrac{AB/2}{R} = \dfrac{1}{2}$ が最大角を与え:

$\arg\dfrac{z-1}{z+1}$ の範囲は $\left(-\dfrac{\pi}{6},\; \dfrac{\pi}{6}\right)$ で、$z = \pm 2$ のとき $0$。

答:$-\dfrac{\pi}{6} < \arg\dfrac{z-1}{z+1} < \dfrac{\pi}{6}$($z \neq \pm 2$)、$z = \pm 2$ のとき $0$。

解説

$\arg\dfrac{z-1}{z+1}$ は2点 $A(1), B(-1)$ を見込む角(円周角)に関連します。円の半径 $R$ と弦 $AB$ の長さから最大角を求める問題は、図形的な考察が重要です。

採点ポイント
  • 偏角の差と角度の関係の把握 … 3点
  • 幾何学的考察(円周角) … 3点
  • 最大角 $\dfrac{\pi}{6}$ の導出 … 2点
  • 範囲の正確な記述 … 2点