楕円・双曲線・放物線という3種の2次曲線に対して、接線の公式を統一的に理解します。曲線上の点における接線だけでなく、曲線外の点から引いた接線の求め方まで、原理から丁寧に解説します。接線公式の背後にある「$x_0 x$ 置換」の仕組みを理解すれば、暗記に頼らず自力で公式を導けるようになります。
2次曲線の接線公式には、美しい統一法則があります。それは、曲線の方程式に対して特定の「置換」を行うと接線の方程式が得られるというものです。
たとえば楕円 $\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1$ の点 $(x_0, y_0)$ における接線は $\dfrac{x_0 x}{a^2} + \dfrac{y_0 y}{b^2} = 1$ です。もとの方程式で $x^2 \to x_0 x$、$y^2 \to y_0 y$ と「置換」しただけに見えます。なぜこれで接線が出るのでしょうか。
2次曲線 $F(x, y) = 0$ の点 $(x_0, y_0)$ における接線は、$F$ の各変数について「1つを $x_0$(または $y_0$)に、もう1つをそのまま残す」操作で得られます。
具体的には:$x^2 \to x_0 x$、$y^2 \to y_0 y$、$xy \to \dfrac{x_0 y + y_0 x}{2}$、$x \to \dfrac{x_0 + x}{2}$、$y \to \dfrac{y_0 + y}{2}$
これは微分の連鎖ではなく、2次形式の極(polar)と呼ばれる代数的操作です。結果的に陰関数微分と同じ接線を与えます。
この「置換」が正しいことを確認するために、陰関数微分で接線を導出してみましょう。$F(x, y) = \dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} - 1 = 0$ の両辺を $x$ で微分すると:
$$\frac{2x}{a^2} + \frac{2y}{b^2} \cdot \frac{dy}{dx} = 0 \quad \Rightarrow \quad \frac{dy}{dx} = -\frac{b^2 x}{a^2 y}$$
点 $(x_0, y_0)$ における接線は $y - y_0 = -\dfrac{b^2 x_0}{a^2 y_0}(x - x_0)$ です。これを整理すると:
$$\frac{x_0 x}{a^2} + \frac{y_0 y}{b^2} = \frac{x_0^2}{a^2} + \frac{y_0^2}{b^2} = 1$$
最後の等号は $(x_0, y_0)$ が楕円上の点であることから成り立ちます。確かに「$x_0 x$ 置換」の結果と一致しました。
✗ 誤:曲線外の点 $(x_0, y_0)$ を接線公式に代入すれば接線が出る
○ 正:$x_0 x$ 置換で得られるのは「極線」であり、$(x_0, y_0)$ が曲線上にあるときのみ接線となる
曲線外の点からの接線は、別のアプローチ(接点を未知数とおく方法)が必要です。これはセクション5で扱います。
楕円の接線公式は、2次曲線の接線の中で最も基本的な形です。
楕円 $\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1$ 上の点 $(x_0, y_0)$ における接線:
$$\frac{x_0 x}{a^2} + \frac{y_0 y}{b^2} = 1$$
※ 傾き $m$ の接線として求める場合:$y = mx \pm \sqrt{a^2 m^2 + b^2}$
楕円に傾き $m$ で接する直線 $y = mx + n$ を考えます。楕円の式に代入して:
$$\frac{x^2}{a^2} + \frac{(mx+n)^2}{b^2} = 1$$
整理すると $(b^2 + a^2 m^2)x^2 + 2a^2 mnx + a^2(n^2 - b^2) = 0$ となります。接する条件は判別式 $D = 0$ なので:
$$4a^4 m^2 n^2 - 4(b^2 + a^2 m^2) \cdot a^2(n^2 - b^2) = 0$$
計算を進めると $n^2 = a^2 m^2 + b^2$ を得ます。よって $n = \pm\sqrt{a^2 m^2 + b^2}$ です。
$D/4 = a^4 m^2 n^2 - (b^2 + a^2 m^2) \cdot a^2(n^2 - b^2) = 0$ を展開すると:
$a^4 m^2 n^2 - a^2 b^2 n^2 + a^2 b^4 - a^4 m^2 n^2 + a^4 m^2 b^2 = 0$
$-a^2 b^2 n^2 + a^2 b^4 + a^4 m^2 b^2 = 0$
$a^2 b^2(-n^2 + b^2 + a^2 m^2) = 0$
$a^2 b^2 \neq 0$ より $n^2 = a^2 m^2 + b^2$
✗ 誤:任意の傾き $m$ に対して楕円の接線が2本ある
○ 正:$a^2 m^2 + b^2 > 0$ は常に成立するので、楕円では任意の傾きに対して確かに2本の接線が存在する
ただし双曲線では事情が異なります($a^2 m^2 - b^2$ が負になる場合がある)。曲線の種類ごとに接線の存在条件を確認しましょう。
楕円 $\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1$ の接線全体は、$\dfrac{u^2}{1/a^2} + \dfrac{v^2}{1/b^2} = 1$(ただし接線を $ux + vy = 1$ と表す)という「双対楕円」を成します。これは射影幾何学における双対原理の一例で、点と直線の役割を入れ替えても同じ構造が保たれます。
双曲線の接線公式は、楕円の公式で符号が1箇所変わるだけです。しかし、その符号の違いが接線の存在条件に大きな影響を与えます。
双曲線 $\dfrac{x^2}{a^2} - \dfrac{y^2}{b^2} = 1$ 上の点 $(x_0, y_0)$ における接線:
$$\frac{x_0 x}{a^2} - \frac{y_0 y}{b^2} = 1$$
傾き $m$ の接線:$y = mx \pm \sqrt{a^2 m^2 - b^2}$(ただし $a^2 m^2 - b^2 > 0$)
※ 漸近線の傾き $m = \pm\dfrac{b}{a}$ のとき $a^2m^2 - b^2 = 0$ となり、接線は存在しない(漸近線に平行な直線は双曲線と交わらないか1点で交わる)。
双曲線で傾き $\pm\dfrac{b}{a}$ の接線が存在しないのは、漸近線が「無限遠の点における接線」だからです。
漸近線に平行な直線を双曲線に近づけていくと、接点はどんどん遠ざかります。傾きが漸近線の傾きに一致した瞬間、接点が無限遠に飛んでしまうのです。
| 曲線 | 傾き $m$ の接線 | 存在条件 |
|---|---|---|
| 楕円 | $y = mx \pm \sqrt{a^2m^2 + b^2}$ | 常に存在($a^2m^2+b^2 > 0$) |
| 双曲線 | $y = mx \pm \sqrt{a^2m^2 - b^2}$ | $|m| > \dfrac{b}{a}$(漸近線より急な傾き) |
| 放物線 | (次セクションで扱う) | $m \neq 0$ |
✗ 誤:$\dfrac{x_0 x}{a^2} + \dfrac{y_0 y}{b^2} = 1$(楕円と同じ符号)
○ 正:$\dfrac{x_0 x}{a^2} - \dfrac{y_0 y}{b^2} = 1$(もとの双曲線の符号と一致)
接線公式の符号は、もとの曲線の方程式の符号をそのまま引き継ぐと覚えましょう。楕円が「$+$」なら接線も「$+$」、双曲線が「$-$」なら接線も「$-$」です。
放物線の接線公式は、楕円・双曲線とは少し形が異なりますが、同じ「$x_0 x$ 置換」の原理で導けます。
放物線 $y^2 = 4px$ 上の点 $(x_0, y_0)$ における接線:
$$y_0 y = 2p(x + x_0)$$
※ $y^2 \to y_0 y$、$x \to \dfrac{x+x_0}{2}$ の置換と対応しています。
放物線 $y^2 = 4px$ を陰関数微分すると $2y \cdot \dfrac{dy}{dx} = 4p$ より $\dfrac{dy}{dx} = \dfrac{2p}{y}$ です。点 $(x_0, y_0)$ における接線は:
$$y - y_0 = \frac{2p}{y_0}(x - x_0)$$
両辺に $y_0$ をかけて整理すると:
$$y_0 y - y_0^2 = 2p(x - x_0) \quad \Rightarrow \quad y_0 y = 2px - 2px_0 + y_0^2$$
$y_0^2 = 4px_0$ を用いると $y_0 y = 2px + 2px_0 = 2p(x + x_0)$ を得ます。
すべての2次曲線の接線公式は「もとの方程式で $x^2 \to x_0 x$、$y^2 \to y_0 y$、$x \to \frac{x+x_0}{2}$、$y \to \frac{y+y_0}{2}$ と置換する」という1つのルールで統一されます。
楕円:$\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 \;\to\; \dfrac{x_0 x}{a^2}+\dfrac{y_0 y}{b^2}=1$
双曲線:$\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1 \;\to\; \dfrac{x_0 x}{a^2}-\dfrac{y_0 y}{b^2}=1$
放物線:$y^2=4px \;\to\; y_0 y=2p(x+x_0)$
✗ 誤:頂点 $(0, 0)$ で公式に代入すると $0 = 2p(x + 0)$ つまり $x = 0$。これは接線ではなく $y$ 軸では?
○ 正:$x = 0$ は確かに放物線 $y^2 = 4px$ の頂点における接線($y$ 軸そのもの)で正しい
放物線の頂点では接線が軸に垂直になるため、$x = 0$ という縦線になります。傾きは「$\pm\infty$」で、$y = mx + n$ の形では表せません。
放物線の焦点から来た光線は、放物線で反射すると軸に平行に進みます。これは「入射角=反射角」を接線で測ると証明できます。この性質がパラボラアンテナや車のヘッドライトに応用されています。接線の法線ベクトルと焦点方向のなす角を計算すると、見事に軸方向と等しくなることが示せます。
曲線上にない点 $(a, b)$ から2次曲線に接線を引く問題は、入試で非常に頻出です。この場合、接線公式を直接使うことはできません。
曲線外の点からの接線を求めるときは、次の手順に従います。
Step 1:接点を $(x_1, y_1)$ とおき、その点における接線の方程式を書く。
Step 2:接線が点 $(a, b)$ を通る条件を立式する。
Step 3:$(x_1, y_1)$ が曲線上にある条件と連立して解く。
楕円 $\dfrac{x^2}{4} + y^2 = 1$ に点 $(3, 0)$ から引いた接線を求めてみましょう。
接点を $(x_1, y_1)$ とおくと、接線は $\dfrac{x_1 x}{4} + y_1 y = 1$ です。これが $(3, 0)$ を通るので:
$$\frac{3x_1}{4} = 1 \quad \Rightarrow \quad x_1 = \frac{4}{3}$$
$(x_1, y_1)$ は楕円上なので $\dfrac{(4/3)^2}{4} + y_1^2 = 1$ より $y_1^2 = 1 - \dfrac{4}{9} = \dfrac{5}{9}$。
$y_1 = \pm\dfrac{\sqrt{5}}{3}$ なので、接線は $\dfrac{x}{3} \pm \dfrac{\sqrt{5}}{3}y = 1$、すなわち $x \pm \sqrt{5}\,y = 3$ です。
✗ 誤:接線を $y = m(x-3)$ とおいて判別式で解く(→ 傾き $m$ が存在しない接線を見落とす可能性)
○ 正:接点を $(x_1, y_1)$ とおく方法なら、縦線の接線も漏れなく扱える
例えば点 $(0, 2)$ から楕円に接線を引く場合、$y$ 軸に平行な接線が存在する可能性があります。$y = mx + n$ の方法ではこれを見落としてしまいます。接点を置く方法を第一選択にしましょう。
曲線外の点から引ける接線の本数は、点の位置によって変わります。楕円の場合、外部の点からは必ず2本の接線が引けます。双曲線の場合は、点が漸近線の内側(曲線の間の領域)にあるときは接線が引けない場合もあります。
判定の基本は「接点の条件を連立した方程式の実数解の個数」を調べることです。楕円 $\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1$ に対して、点 $(p, q)$ が楕円の外部にある($\dfrac{p^2}{a^2} + \dfrac{q^2}{b^2} > 1$)とき、接線はちょうど2本引けます。
点 $(x_0, y_0)$ に対して $\dfrac{x_0 x}{a^2} + \dfrac{y_0 y}{b^2} = 1$ を「$(x_0, y_0)$ の極線」、$(x_0, y_0)$ をこの直線の「極」と呼びます。$(x_0, y_0)$ が楕円上にあるとき極線は接線に一致し、楕円外にあるとき2つの接点を結ぶ直線に一致します。この極と極線の対応は射影幾何学の基本概念であり、大学の幾何学で深く学びます。
Q1. 楕円 $\dfrac{x^2}{9} + \dfrac{y^2}{4} = 1$ 上の点 $(3, 0)$ における接線の方程式は?
Q2. 双曲線 $\dfrac{x^2}{4} - \dfrac{y^2}{9} = 1$ の傾き $m$ の接線が存在するための条件は?
Q3. 放物線 $y^2 = 8x$ 上の点 $(2, 4)$ における接線の方程式は?
Q4. 2次曲線の接線公式における「$x_0 x$ 置換」で、$xy$ の項はどう置換される?
Q5. 楕円の外部の点から楕円に引ける接線は何本?
楕円 $\dfrac{x^2}{16} + \dfrac{y^2}{9} = 1$ 上の点 $(2\sqrt{2},\;\dfrac{3}{\sqrt{2}})$ における接線の方程式を求めよ。
接線公式より:
$$\frac{2\sqrt{2}\,x}{16} + \frac{\frac{3}{\sqrt{2}}\,y}{9} = 1$$
$$\frac{\sqrt{2}\,x}{8} + \frac{y}{3\sqrt{2}} = 1$$
両辺に $3\sqrt{2}$ をかけて $\dfrac{3 \cdot 2 \cdot x}{8} + y = 3\sqrt{2}$、すなわち:
$$\frac{3x}{4} + y = 3\sqrt{2} \quad \Leftrightarrow \quad 3x + 4y = 12\sqrt{2}$$
放物線 $y^2 = 4x$ に点 $(-1, 0)$ から引いた2本の接線の方程式を求めよ。また、2つの接点間の距離を求めよ。
接点を $(t^2, 2t)$($y^2 = 4x$ 上の点を $x = t^2, y = 2t$ とパラメータ表示)とおく。
接線:$2t \cdot y = 2(x + t^2)$ つまり $ty = x + t^2$
$(-1, 0)$ を通る条件:$0 = -1 + t^2$ より $t^2 = 1$、$t = \pm 1$
$t = 1$:接点 $(1, 2)$、接線 $y = x + 1$
$t = -1$:接点 $(1, -2)$、接線 $-y = x + 1$ つまり $y = -x - 1$
2つの接点間の距離:$\sqrt{(1-1)^2 + (2-(-2))^2} = 4$
双曲線 $\dfrac{x^2}{3} - y^2 = 1$ に傾き $2$ で接する直線の方程式を求めよ。また、その接点の座標を求めよ。
$a^2 = 3$, $b^2 = 1$, $m = 2$ より:
$$y = 2x \pm \sqrt{3 \cdot 4 - 1} = 2x \pm \sqrt{11}$$
接線:$y = 2x + \sqrt{11}$ および $y = 2x - \sqrt{11}$
接点を求める。$y = 2x + \sqrt{11}$ を双曲線に代入:
$$\frac{x^2}{3} - (2x+\sqrt{11})^2 = 1$$
$$\frac{x^2}{3} - 4x^2 - 4\sqrt{11}\,x - 11 = 1$$
$$-\frac{11x^2}{3} - 4\sqrt{11}\,x - 12 = 0 \quad \Rightarrow \quad 11x^2 + 12\sqrt{11}\,x + 36 = 0$$
$D = 144 \cdot 11 - 4 \cdot 11 \cdot 36 = 0$(接するので当然)より $x = \dfrac{-12\sqrt{11}}{22} = \dfrac{-6\sqrt{11}}{11}$
$y = 2 \cdot \dfrac{-6\sqrt{11}}{11} + \sqrt{11} = \dfrac{-12\sqrt{11} + 11\sqrt{11}}{11} = \dfrac{-\sqrt{11}}{11}$
対称性から、もう1つの接点は $\left(\dfrac{6\sqrt{11}}{11},\;\dfrac{\sqrt{11}}{11}\right)$
楕円 $\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1$($a > b > 0$)上の点 $P(x_0, y_0)$($x_0 > 0$, $y_0 > 0$)における接線と $x$ 軸、$y$ 軸で囲まれた三角形の面積 $S$ の最小値を求めよ。
接線 $\dfrac{x_0 x}{a^2} + \dfrac{y_0 y}{b^2} = 1$ の $x$ 切片は $\dfrac{a^2}{x_0}$、$y$ 切片は $\dfrac{b^2}{y_0}$
三角形の面積は:
$$S = \frac{1}{2} \cdot \frac{a^2}{x_0} \cdot \frac{b^2}{y_0} = \frac{a^2 b^2}{2x_0 y_0}$$
$x_0 = a\cos\theta$, $y_0 = b\sin\theta$($0 < \theta < \dfrac{\pi}{2}$)とパラメータ表示すると:
$$S = \frac{a^2 b^2}{2 \cdot a\cos\theta \cdot b\sin\theta} = \frac{ab}{2\sin\theta\cos\theta} = \frac{ab}{\sin 2\theta}$$
$\sin 2\theta \le 1$ より $S \ge ab$。等号は $\theta = \dfrac{\pi}{4}$ のとき。
よって面積の最小値は $\boldsymbol{ab}$
楕円のパラメータ表示 $x = a\cos\theta$, $y = b\sin\theta$ を使うと、$x_0 y_0$ の積を三角関数の積に帰着できます。相加相乗平均の不等式を使う方法もありますが、媒介変数の方が見通しが良いです。
$\theta = \pi/4$ のとき、$P$ は楕円の「対角線方向」にあり、接線は $x$ 軸・$y$ 軸に対して最もバランスよく交わります。