2次曲線の軌跡問題、媒介変数の消去、極座標と直交座標の変換 ── これらは個別には理解していても、問題として出題されると「どこから手を付けるか」に迷いがちです。この記事では、応用問題に取り組む中で、第8章で学んだ技法を実戦的に使いこなす力を養います。
軌跡問題の核心は、幾何学的な条件を代数的な方程式に翻訳することです。2次曲線の軌跡では、「距離の和が一定」「距離の差が一定」「距離と直線からの距離の比が一定」といった条件が中心になります。
Step 1(設定):求める点を $(x,y)$ とおく。必要なら媒介変数も導入する。
Step 2(翻訳):幾何学的条件を $x, y$ の等式・不等式に書き下す。
Step 3(整理):方程式を標準形に変形し、曲線の種類を同定する。存在範囲の確認を忘れない。
2次曲線の多くは「距離の条件」から定義されます。
| 条件 | 曲線 | 標準形 |
|---|---|---|
| 2定点 $F_1, F_2$ からの距離の和が一定 $2a$ | 楕円 | $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ |
| 2定点 $F_1, F_2$ からの距離の差の絶対値が一定 $2a$ | 双曲線 | $\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$ |
| 1定点と1直線からの距離が等しい | 放物線 | $y^2 = 4px$ |
| 2定点からの距離の積が一定 | レムニスケート | $r^2 = a^2\cos 2\theta$ |
✗ 誤:条件から $\dfrac{x^2}{9}+\dfrac{y^2}{5}=1$ を導いて終わり
○ 正:元の条件(例:$PF_1 + PF_2 = 6$)が成り立つ範囲を確認する。$F_1F_2 = 4$ なら $6 > 4$ で三角不等式を満たし、軌跡は楕円全体
特に $|PF_1 - PF_2| = 2a$ の場合、$2a < F_1F_2$ が必要です。等号のとき点 $P$ は線分上の点のみになり双曲線にはなりません。
「直線上を動く点 $P$ から定点 $A$ に下ろした垂線の足 $H$ の軌跡」のような問題では、$P$ の座標を媒介変数 $t$ で表し、$H$ の座標を $t$ で表してから $t$ を消去する方法が有効です。
✗ 誤:$t$ を消去して $x^2+y^2=r^2$ を得たので「円全体」と答える
○ 正:$t$ の範囲(例:$t > 0$)に対応する $(x,y)$ の範囲を確認し、「円の一部」などの制限を付ける
軌跡の問題では、最後に「逆の確認(十分性)」も重要です。得られた曲線上の全ての点が、元の条件を満たすかどうかをチェックしましょう。
大学数学では、軌跡を「パラメータ空間からの写像の像」として捉えます。媒介変数 $t$ が動く空間(パラメータ空間)から $(x,y)$ 平面への写像を考え、その像集合が軌跡です。この視点に立つと、パラメータの範囲制限が軌跡の範囲を決めることが自然に理解できます。
媒介変数表示 $x = f(t)$, $y = g(t)$ から $t$ を消去して $F(x,y)=0$ を得ることは、曲線の全体像を把握するために有効です。しかし、常に消去すればよいわけではありません。
消すべきとき:曲線の種類の判定、他の曲線との交点、図形の全体像の把握
残すべきとき:曲線上の特定の点の計算、接線の方程式($\dfrac{dy}{dx} = \dfrac{dy/dt}{dx/dt}$ が便利)、弧長・面積の計算
消去のコストが高い(無理式が出るなど)場合は、媒介変数のまま計算する方が効率的なことが多いです。
$x = a\cos\theta$, $y = b\sin\theta$ のとき、$\cos^2\theta + \sin^2\theta = 1$ を使って:
$$\frac{x^2}{a^2} + \frac{y^2}{b^2} = 1$$
$x = a\sec\theta$, $y = b\tan\theta$ のとき、$\sec^2\theta - \tan^2\theta = 1$ を使って:
$$\frac{x^2}{a^2} - \frac{y^2}{b^2} = 1$$
$\cos^2\theta + \sin^2\theta = 1$ → 楕円
$\sec^2\theta - \tan^2\theta = 1$(すなわち $\dfrac{1}{\cos^2\theta} - \tan^2\theta = 1$)→ 双曲線
$\cosh^2 t - \sinh^2 t = 1$ → 双曲線(双曲線関数による媒介変数表示)
$x = \dfrac{2t}{1+t^2}$, $y = \dfrac{1-t^2}{1+t^2}$ の場合は $x^2 + y^2 = 1$ となります。これは $t = \tan\dfrac{\theta}{2}$ のワイエルシュトラス置換に対応しています。
✗ 誤:$x = t^2$, $y = t^3$ から $t = x^{1/2}$ として $y = x^{3/2}$ → 「放物線状の曲線」
○ 正:$t$ が全実数を動くとき $x = t^2 \ge 0$ で $y = t^3$ は正にも負にもなる。正しくは $y^2 = x^3$($x \ge 0$)
$t$ から $x$ への対応が1対1でない場合($t$ と $-t$ が同じ $x$ を与えるなど)、消去で情報が失われることがあります。
$y^2 = x^3$ のような曲線は原点 $(0,0)$ で尖点を持ちます。大学数学の代数幾何学では、このような特異点を持つ曲線の分類が重要な研究テーマです。媒介変数表示 $x = t^2, y = t^3$ は特異点の構造を明瞭に示しています。
極座標と直交座標の間を自在に行き来できることは、応用問題を解く上で強力な武器になります。問題の形に応じて、最も計算が楽になる座標系を選びましょう。
極方程式が与えられたとき、直交座標に変換すると曲線の種類が判明することがあります。基本変換 $x = r\cos\theta$, $y = r\sin\theta$, $r^2 = x^2+y^2$ を使います。
$r(1-\cos\theta) = 2$ より $r - r\cos\theta = 2$。
$r = \sqrt{x^2+y^2}$, $r\cos\theta = x$ を代入して $\sqrt{x^2+y^2} - x = 2$。
$\sqrt{x^2+y^2} = x + 2$。両辺を2乗して $x^2+y^2 = x^2+4x+4$。
$y^2 = 4(x+1)$。これは頂点 $(-1,0)$ の放物線です。
(2乗する前に $x + 2 \ge 0$、すなわち $x \ge -2$ の条件も確認。)
逆に、直交座標の曲線を極方程式にすると見通しがよくなる場合もあります。
$r^2 = 2r\cos\theta$ より $r = 2\cos\theta$。
これは中心 $(1,0)$、半径 $1$ の円の極方程式です。極方程式のほうがはるかに簡潔です。
✗ 誤:$\sqrt{x^2+y^2} = x + 2$ の両辺を2乗して得た $y^2 = 4(x+1)$ が同値
○ 正:2乗すると $x+2 < 0$ の場合の偽解が混入する可能性がある
2乗の前に「$x + 2 \ge 0$」を確認するか、最後に範囲を検証する必要があります。放物線 $y^2 = 4(x+1)$ 全体のうち、$x \ge -2$ の部分が正しい軌跡です(この場合は放物線全体が $x \ge -1$ を満たすので問題ありません)。
直交座標と極座標は、同じ平面上の同じ曲線を異なるレンズで見ているだけです。曲線自体は変わりません。
問題は「どのレンズで見たときに最も見通しがよいか」です。原点からの距離が重要な曲線(円、カージオイドなど)は極座標、直線的な構造(接線、漸近線)は直交座標が有利です。
2次曲線上の点における接線の方程式を求める問題は、曲線の表現方法(標準形・媒介変数形・極方程式)によってアプローチが異なります。
楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ 上の点 $(x_0,y_0)$ での接線:$\dfrac{x_0 x}{a^2}+\dfrac{y_0 y}{b^2}=1$
双曲線 $\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$ 上の点 $(x_0,y_0)$ での接線:$\dfrac{x_0 x}{a^2}-\dfrac{y_0 y}{b^2}=1$
放物線 $y^2 = 4px$ 上の点 $(x_0,y_0)$ での接線:$y_0 y = 2p(x+x_0)$
※ 全て「$x^2 \to x_0 x$, $y^2 \to y_0 y$, $x \to \dfrac{x+x_0}{2}$, $y \to \dfrac{y+y_0}{2}$」の置き換え規則(接線の $x_0 y_0$ 置換)で覚えられます。
$x = f(t)$, $y = g(t)$ のとき、$t = t_0$ における接線の傾きは $\dfrac{dy}{dx} = \dfrac{g'(t_0)}{f'(t_0)}$ です($f'(t_0) \neq 0$ のとき)。
✗ 誤:楕円の接線を求めるのに、陰関数の微分で $\dfrac{dy}{dx}$ を求めて点を代入
○ 正:それでも正しいが、接線公式 $\dfrac{x_0 x}{a^2}+\dfrac{y_0 y}{b^2}=1$ を使えば一発
接線公式を知っていれば計算量を大幅に削減できます。ただし、曲線外の点から引く接線の本数を求める場合は、微分で傾きを $m$ とおいて判別式を使う方法が必要です。
接線公式の置き換え規則「$x^2 \to x_0 x$」を曲線外の点に適用すると、その点の極線(ポーラー)が得られます。大学数学では、極と極線の理論(pole-polar duality)として体系化され、射影幾何学の美しい対称性を示します。
平面上の曲線を扱うとき、私たちは3つの表現手段を持っています:直交座標、媒介変数表示、極座標。どの表現を選ぶかが解法の効率を大きく左右します。
直交座標:曲線の種類の判定、直線との交点、接線の方程式(接線公式が使えるとき)
媒介変数表示:曲線上の点を1つのパラメータで動かすとき、$\dfrac{dy}{dx}$ の計算、弧長・面積の積分
極座標:原点(極)を中心とする対称性がある曲線、2次曲線の焦点弦、面積の計算(扇形の足し合わせ)
| 問題のタイプ | 推奨される表現 | 理由 |
|---|---|---|
| 「曲線 $C$ 上の点 $P$ における接線」 | 媒介変数 or 直交 | 接線公式 or $\dfrac{dy/dt}{dx/dt}$ |
| 「2曲線の交点を求めよ」 | 直交座標 | 連立方程式の解法が標準的 |
| 「曲線で囲まれた面積」 | 状況による | 極対称なら極座標、他は直交 or 媒介変数 |
| 「焦点弦の長さ」 | 極座標 | $\dfrac{1}{r_1}+\dfrac{1}{r_2}=\dfrac{2}{l}$ |
| 「軌跡を求めよ」 | 直交座標 | 曲線の種類を判定するため |
✗ 誤:最初に選んだ座標系で最後まで無理やり計算する
○ 正:計算の途中で「この先は別の座標系の方が楽」と気づいたら、柔軟に切り替える
例えば、直交座標で曲線の種類を判定した後、面積計算は極座標に切り替える ── このような柔軟性が応用問題では重要です。
座標系を変えても変わらない量(面積、弧長、曲率など)を不変量といいます。問題で求められている量が不変量であれば、最も計算が楽な座標系で計算すればよいのです。大学数学の微分幾何学では、この「不変量」の考え方が体系化されます。
Q1. 2定点 $(\pm 2, 0)$ からの距離の和が $6$ である点の軌跡は?
Q2. $x = 3\cos\theta$, $y = 2\sin\theta$ から $\theta$ を消去して得られる方程式は?
Q3. 楕円 $\dfrac{x^2}{4}+y^2=1$ 上の点 $(1,\frac{\sqrt{3}}{2})$ における接線の方程式は?
Q4. 極方程式 $r = 4\sin\theta$ を直交座標に変換すると?
Q5. $x = t^2$, $y = 2t$ から $t$ を消去すると?
2点 $A(3,0)$, $B(-3,0)$ からの距離の和が $10$ である点 $P$ の軌跡の方程式を求めよ。
$PA + PB = 10$ より、$2a = 10$, $a = 5$。
$c = 3$($A, B$ は焦点)より $b^2 = a^2 - c^2 = 25 - 9 = 16$。
$$\frac{x^2}{25}+\frac{y^2}{16}=1$$
曲線 $C$ が $x = 2\cos\theta + \cos 2\theta$, $y = 2\sin\theta - \sin 2\theta$ で媒介変数表示されている。
(1) $\theta = 0, \pi/2, \pi$ に対応する点の座標を求めよ。
(2) $\dfrac{dy}{dx}$ を $\theta$ で表し、$\theta = \pi/3$ における接線の方程式を求めよ。
(1)
$\theta = 0$:$x = 2+1 = 3$, $y = 0-0 = 0$ → $(3,0)$
$\theta = \pi/2$:$x = 0+(-1) = -1$, $y = 2-0 = 2$ → $(-1,2)$
$\theta = \pi$:$x = -2+1 = -1$, $y = 0-0 = 0$ → $(-1,0)$
(2) $\dfrac{dx}{d\theta} = -2\sin\theta - 2\sin 2\theta$, $\dfrac{dy}{d\theta} = 2\cos\theta - 2\cos 2\theta$
$$\frac{dy}{dx} = \frac{2\cos\theta - 2\cos 2\theta}{-2\sin\theta - 2\sin 2\theta} = \frac{\cos\theta - \cos 2\theta}{-\sin\theta - \sin 2\theta}$$
$\theta = \pi/3$ のとき:$\cos\dfrac{\pi}{3} = \dfrac{1}{2}$, $\cos\dfrac{2\pi}{3} = -\dfrac{1}{2}$, $\sin\dfrac{\pi}{3} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$, $\sin\dfrac{2\pi}{3} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$
$\dfrac{dy}{dx} = \dfrac{\frac{1}{2}-(-\frac{1}{2})}{-\frac{\sqrt{3}}{2}-\frac{\sqrt{3}}{2}} = \dfrac{1}{-\sqrt{3}} = -\dfrac{1}{\sqrt{3}}$
$\theta = \pi/3$ での座標:$x = 2 \cdot \dfrac{1}{2}+\cos\dfrac{2\pi}{3} = 1-\dfrac{1}{2} = \dfrac{1}{2}$, $y = 2\cdot\dfrac{\sqrt{3}}{2}-\sin\dfrac{2\pi}{3} = \sqrt{3}-\dfrac{\sqrt{3}}{2} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$
接線:$y - \dfrac{\sqrt{3}}{2} = -\dfrac{1}{\sqrt{3}}\left(x - \dfrac{1}{2}\right)$、整理して $x + \sqrt{3}y = 2$
極方程式 $r^2\cos 2\theta = 4$ を直交座標の方程式に変換し、どのような曲線か答えよ。
$\cos 2\theta = \cos^2\theta - \sin^2\theta$ より:
$r^2(\cos^2\theta - \sin^2\theta) = 4$
$r^2\cos^2\theta - r^2\sin^2\theta = 4$
$x^2 - y^2 = 4$
$$\frac{x^2}{4} - \frac{y^2}{4} = 1$$
$a = 2, b = 2$ の直角双曲線(漸近線が $y = \pm x$)。
楕円 $\dfrac{x^2}{4}+y^2=1$ の外部の点 $Q(a,0)$($a > 2$)から楕円に2本の接線を引く。2つの接点を $P_1, P_2$ とするとき、直線 $P_1P_2$ の方程式を $a$ を用いて表せ。また、$a \to \infty$ のとき直線 $P_1P_2$ はどこに近づくか答えよ。
楕円上の点 $(x_0, y_0)$ での接線は $\dfrac{x_0 x}{4}+y_0 y=1$。
これが $Q(a,0)$ を通るとき $\dfrac{x_0 a}{4}=1$、すなわち $x_0 = \dfrac{4}{a}$。
接点 $P_1, P_2$ の $x$ 座標はともに $\dfrac{4}{a}$ なので、直線 $P_1P_2$ は $x = \dfrac{4}{a}$($x$ 軸に垂直な直線)。
$a \to \infty$ のとき $x = \dfrac{4}{a} \to 0$、すなわち$y$ 軸に近づく。
点 $Q(a,0)$ の楕円 $\dfrac{x^2}{4}+y^2=1$ に関する極線が $\dfrac{ax}{4}=1$、すなわち $x = \dfrac{4}{a}$ です。極と極線の理論を知っていれば、接点を求めなくても直接答えが出ます。$Q$ の位置と極線は「$Q$ が遠ざかるほど極線は原点に近づく」という反比例の関係にあります。