第9章 整数の性質

合同式
─ 余りの世界の計算 ── $a \equiv b \pmod{m}$ の意味

「余りで分類する」という考え方を、式の形で表したのが合同式です。
合同式を使いこなせば、余りに関する複雑な議論が、まるで普通の等式のようにスッキリ扱えます。

1合同式の定義と基本性質 ─ 「余りが等しい」を式で表す

9-1で学んだ「余りによる整数の分類」を思い出しましょう。 たとえば、整数を $3$ で割った余りで分類すると、すべての整数は「余り $0$」「余り $1$」「余り $2$」の3つのグループに分かれます。 $23$ と $5$ は同じグループ(余り $2$)、$17$ と $8$ は同じグループ(余り $2$)です。

この「余りが等しい」という関係を、数学的に簡潔に表す記法が合同式です。

📐 合同式の定義

$a, b$ を整数、$m$ を正の整数とする。$a - b$ が $m$ の倍数であるとき、

$$a \equiv b \pmod{m}$$

と書き、「$a$ と $b$ は $m$ をとして合同である」と読む。

※ $a \equiv b \pmod{m}$ は「$a$ を $m$ で割った余り」と「$b$ を $m$ で割った余り」が等しいことと同値です。 mod は modulus(法)の略。

具体例を見てみましょう。

  • $23 \equiv 5 \pmod{3}$ ← $23 - 5 = 18 = 3 \times 6$($3$ の倍数)
  • $13 \equiv -8 \pmod{7}$ ← $13 - (-8) = 21 = 7 \times 3$($7$ の倍数)
  • $100 \equiv 2 \pmod{7}$ ← $100 - 2 = 98 = 7 \times 14$($7$ の倍数)
💡 ここが本質:合同式は「同値関係」── 余りでグループ分けする

合同式 $\equiv$ は、普通の等号 $=$ と似た性質を持っています。 数学的に言えば、$\equiv \pmod{m}$ は同値関係です。 同値関係とは、次の3つの性質を満たす関係のことです。

1. 反射律:$a \equiv a \pmod{m}$(自分自身と合同)

2. 対称律:$a \equiv b \pmod{m}$ ならば $b \equiv a \pmod{m}$

3. 推移律:$a \equiv b \pmod{m}$ かつ $b \equiv c \pmod{m}$ ならば $a \equiv c \pmod{m}$

これらの性質のおかげで、$\equiv$ を $=$ と同じ感覚で使えるのです。 合同式の世界では、余りが等しい数を「同じもの」とみなすのです。

▷ 同値関係の証明

反射律:$a - a = 0 = m \times 0$ は $m$ の倍数。よって $a \equiv a \pmod{m}$。

対称律:$a \equiv b \pmod{m}$ のとき、$a - b = mk$($k$ は整数)。 よって $b - a = m(-k)$ も $m$ の倍数。ゆえに $b \equiv a \pmod{m}$。

推移律:$a - b = mk$, $b - c = ml$ とすると、 $a - c = (a - b) + (b - c) = m(k + l)$ は $m$ の倍数。よって $a \equiv c \pmod{m}$。

⚠️ 落とし穴:$\equiv$ と $=$ は違う記号

✕ 誤:$23 = 5 \pmod{3}$ と書く

○ 正:$23 \equiv 5 \pmod{3}$ と書く

$23 = 5$ は明らかに偽ですが、$23 \equiv 5 \pmod{3}$ は真です。 合同式は「余りの世界での等しさ」を表す別の記号であり、通常の等号とは区別して書きます。 解答で $=$ と $\equiv$ を混同すると減点されることがあります。

合同式の2つの同値な言い換え

次の3つの条件は、すべて同じことを意味します。 問題に応じて使い分けると便利です。

$a \equiv b \pmod{m}$ の3つの言い換え

① $a - b$ が $m$ の倍数 (定義)

② $a = mq + b$(ある整数 $q$ が存在)

③ $a$ を $m$ で割った余りと $b$ を $m$ で割った余りが等しい

🔬 深掘り:剰余類 ── 余りの世界の「住所」

$m$ で割った余りが同じ整数をまとめたグループを剰余類(residue class)と呼びます。 たとえば $m = 3$ なら、すべての整数は $\{0, 3, 6, \ldots\}$、$\{1, 4, 7, \ldots\}$、$\{2, 5, 8, \ldots\}$ の3つの剰余類に分かれます。

大学の代数学では、この剰余類の集合 $\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$($m$ を法とする剰余環)が重要な研究対象になります。 合同式の計算は、この剰余環での計算にほかなりません。 高校の合同式は、抽象代数学の入口に立っているのです。

2合同式の四則演算 ─ 足し算・引き算・掛け算はできる、でも割り算は?

合同式の最大の強みは、加法・減法・乗法が普通の等式と同じように使えることです。 両辺に同じ数を足す、引く、掛ける、さらにべき乗も取れます。

📐 合同式の演算法則

$a \equiv b \pmod{m}$, $c \equiv d \pmod{m}$ のとき:

1. 加法:$a + c \equiv b + d \pmod{m}$

2. 減法:$a - c \equiv b - d \pmod{m}$

3. 乗法:$ac \equiv bd \pmod{m}$

4. べき乗:$a^n \equiv b^n \pmod{m}$($n$ は自然数)

※ 4 は 3 を繰り返し適用したもの。$a \equiv b$ のとき $a \cdot a \equiv b \cdot b$、つまり $a^2 \equiv b^2$。これを繰り返すと $a^n \equiv b^n$。
▷ 加法と乗法の証明

$a \equiv b \pmod{m}$, $c \equiv d \pmod{m}$ とすると、$a - b = mk$, $c - d = ml$($k, l$ は整数)。

加法:$(a + c) - (b + d) = (a - b) + (c - d) = m(k + l)$。$k + l$ は整数なので $a + c \equiv b + d \pmod{m}$。

乗法:$a = b + mk$ より $ac = (b + mk)c = bc + mkc$。同様に $c = d + ml$ より $ac = bc + mkc = b(d + ml) + mkc = bd + bml + mkc = bd + m(bl + kc)$。$bl + kc$ は整数なので $ac \equiv bd \pmod{m}$。

💡 ここが本質:合同式の演算 = 「余りだけで計算できる」

合同式の演算法則が意味するのは、余りの計算は、余りだけを使ってできるということです。

たとえば $23 \times 17$ を $5$ で割った余りを知りたいとき、わざわざ $23 \times 17 = 391$ を計算してから $5$ で割る必要はありません。 $23 \equiv 3 \pmod{5}$, $17 \equiv 2 \pmod{5}$ なので $23 \times 17 \equiv 3 \times 2 = 6 \equiv 1 \pmod{5}$。余りは $1$ です。

このように、大きな数を小さな余りに「縮めて」から計算できるのが合同式の威力です。

割り算(除法)の注意

加法・減法・乗法は自由にできますが、割り算は常にできるわけではありません。 これは合同式で最も注意すべきポイントです。

⚠️ 落とし穴:合同式の両辺を安易に割ってはいけない

✕ 誤:$6 \equiv 0 \pmod{6}$ の両辺を $2$ で割って $3 \equiv 0 \pmod{6}$

しかし $3 - 0 = 3$ は $6$ の倍数ではないので、$3 \equiv 0 \pmod{6}$ はです。

○ 正:$ac \equiv bc \pmod{m}$ のとき $a \equiv b \pmod{m}$ が成り立つのは、$c$ と $m$ が互いに素な場合に限ります。

上の例では $c = 2$ と $m = 6$ は $\gcd(2, 6) = 2 \neq 1$ なので互いに素でなく、割ることができません。

📐 合同式での除法(割り算)の条件

$ac \equiv bc \pmod{m}$ のとき:

$\gcd(c, m) = 1$($c$ と $m$ が互いに素)ならば $a \equiv b \pmod{m}$

※ 一般には、$ac \equiv bc \pmod{m}$ のとき $a \equiv b \pmod{\dfrac{m}{\gcd(c, m)}}$ が成り立ちます。
⚠️ 落とし穴:$\pmod{m}$ の $m$ は変えてはいけない

✕ 誤:$a \equiv b \pmod{5}$ と $c \equiv d \pmod{3}$ から $a + c \equiv b + d \pmod{???}$

○ 正:合同式の演算法則は、法(mod の数)が同じ場合にのみ使えます。 $\pmod{5}$ と $\pmod{3}$ の合同式を足すことはできません。 必ず法を揃えてから演算してください。

🔬 深掘り:逆元 ── 割り算を掛け算に変える

大学の代数学では、合同式での「割り算」を逆元の概念で扱います。 $\pmod{m}$ において $c$ の逆元とは、$cx \equiv 1 \pmod{m}$ を満たす $x$ のことです。

たとえば $\pmod{7}$ で $3$ の逆元は $5$ です($3 \times 5 = 15 \equiv 1 \pmod{7}$)。 $c$ で割ることは、$c$ の逆元を掛けることと同じです。

逆元が存在するのは $\gcd(c, m) = 1$ のときに限ります。 これが「互いに素なら割れる」の数学的な根拠です。 暗号理論(RSA暗号など)では、この逆元の計算が鍵の生成に使われています。

3合同式の応用(余りの周期性)─ $n^k$ を $m$ で割った余りを求める

合同式の最も典型的な応用は、大きなべき乗を $m$ で割った余りを求める問題です。 「$7^{100}$ を $5$ で割った余りを求めよ」── こんな問題をどう解くか、考えてみましょう。

$7^{100}$ を直接計算するのは不可能です。しかし、合同式を使えば余りだけを追跡できます。

💡 ここが本質:べき乗の余りには「周期性」がある

$n^1, n^2, n^3, \ldots$ を $m$ で割った余りの列を考えると、この列は必ず周期的になります。

理由は簡単です。余りは $0, 1, 2, \ldots, m-1$ の $m$ 種類しかないので、 $m + 1$ 個以上の項があれば、どこかで同じ余りが再び現れます。 同じ余りが現れたら、そこから先は同じパターンの繰り返しになります。

この周期を見つければ、$n^{100}$ でも $n^{1000}$ でも、余りを簡単に求められるのです。

▷ 具体例:$7^{100}$ を $5$ で割った余り

Step 1:$7 \equiv 2 \pmod{5}$ なので、$7^{100} \equiv 2^{100} \pmod{5}$。

Step 2:$2$ のべき乗を $\pmod{5}$ で追跡する。

$2^1 \equiv 2$、$2^2 \equiv 4$、$2^3 \equiv 8 \equiv 3$、$2^4 \equiv 16 \equiv 1 \pmod{5}$

Step 3:$2^4 \equiv 1 \pmod{5}$ が見つかった! 周期は $4$。

$100 = 4 \times 25$ なので $2^{100} = (2^4)^{25} \equiv 1^{25} = 1 \pmod{5}$

結論:$7^{100}$ を $5$ で割った余りは $\mathbf{1}$。

ポイントは、$n^k \equiv 1 \pmod{m}$ となる $k$(位数と呼ばれます)を見つけることです。 $1$ になれば、そこから先は元に戻って繰り返します。

余りの追跡テクニック

べき乗の余りを効率よく求めるテクニックをまとめます。

べき乗の余りを求める手順

1. 底をまず $m$ で割った余りに「縮める」($n \equiv r \pmod{m}$)

2. $r, r^2, r^3, \ldots$ の余りを順に計算し、$r^k \equiv 1 \pmod{m}$ となる $k$ を見つける

3. 指数を $k$ で割る:$\text{(指数)} = k \times q + s$ として $n^{\text{指数}} \equiv r^s \pmod{m}$

⚠️ 落とし穴:$r^k \equiv 1$ にならない場合がある

$r$ と $m$ が互いに素でないとき、$r^k \equiv 1 \pmod{m}$ となる $k$ は存在しません。

✕ 誤:$2^n$ を $6$ で割った余りで $2^k \equiv 1 \pmod{6}$ を探す → 見つからない

○ 正:$2^1 \equiv 2$, $2^2 \equiv 4$, $2^3 \equiv 2$, $2^4 \equiv 4$, $\ldots \pmod{6}$。 余りは $2, 4, 2, 4, \ldots$ と周期 $2$ で繰り返しますが、$1$ にはなりません。 $\gcd(2, 6) = 2 \neq 1$ だからです。

この場合でも余りは周期的なので、周期さえ見つければ問題は解けます。 ただし $r^k \equiv 1$ の形にはなりません。

🔬 深掘り:時計の算術 ── 合同式の日常への応用

時計は $\pmod{12}$ の合同式です。今 $9$ 時で、$5$ 時間後は $9 + 5 = 14 \equiv 2 \pmod{12}$ で $2$ 時。 曜日は $\pmod{7}$ の合同式で、「今日は水曜日、$100$ 日後は何曜日?」は $100 \equiv 2 \pmod{7}$ なので金曜日です。

このように、日常の周期的な現象はすべて合同式で表現できます。 合同式は「周期的な構造を扱う言語」なのです。

4フェルマーの小定理(発展)─ 素数が生み出す美しい法則

Section 3で「$n^k \equiv 1 \pmod{m}$ となる $k$ を見つける」という話をしました。 法 $m$ が素数のとき、この $k$ について驚くほど美しい定理があります。 それがフェルマーの小定理です。

📐 フェルマーの小定理

$p$ を素数、$a$ を $p$ と互いに素な整数とするとき:

$$a^{p-1} \equiv 1 \pmod{p}$$

同値な表現として、すべての整数 $a$ に対して $a^p \equiv a \pmod{p}$ が成り立つ。

※ 「小定理」と呼ばれるのは、フェルマーの「最終定理」($x^n + y^n = z^n$ の $n \geq 3$ に解がない)と区別するためです。

具体例で確認してみましょう。$p = 5$, $a = 3$ のとき:

$$3^{5-1} = 3^4 = 81 = 16 \times 5 + 1 \equiv 1 \pmod{5} \quad \checkmark$$

$p = 7$, $a = 2$ のとき:

$$2^{7-1} = 2^6 = 64 = 9 \times 7 + 1 \equiv 1 \pmod{7} \quad \checkmark$$
💡 ここが本質:フェルマーの小定理は「周期の上限」を与える

Section 3で「$a^k \equiv 1 \pmod{m}$ となる $k$ を見つける」という作業をしました。 法 $m$ が素数 $p$ のとき、フェルマーの小定理は$k = p - 1$ で必ず $1$ に戻ることを保証します。

つまり、「$p - 1$ 乗すれば必ず $1$ になる」というのは、余りの周期が $p - 1$ の約数であることを意味します。 実際の周期はもっと短いかもしれませんが、$p - 1$ は周期の上限として使えるのです。

これにより、法が素数のときは周期を探す手間が省けることがあります。

▷ フェルマーの小定理の証明

$p$ を素数、$a$ を $p$ と互いに素な整数とする。$1, 2, 3, \ldots, p-1$ の各要素に $a$ を掛けた

$$a \cdot 1, \quad a \cdot 2, \quad a \cdot 3, \quad \ldots, \quad a \cdot (p-1)$$

を $\pmod{p}$ で考える。これら $p - 1$ 個の数を $p$ で割った余りは、$1, 2, \ldots, p-1$ の並べ替えになっていることを示す。

(1)どの余りも $0$ にならない:$a \cdot k \equiv 0 \pmod{p}$ なら $p \mid ak$。$\gcd(a, p) = 1$ なので $p \mid k$。しかし $1 \leq k \leq p-1$ より $p \nmid k$。矛盾。

(2)異なる $k$ からは異なる余りが出る:$a \cdot k_1 \equiv a \cdot k_2 \pmod{p}$ とすると $a(k_1 - k_2) \equiv 0 \pmod{p}$。$\gcd(a, p) = 1$ なので $k_1 \equiv k_2 \pmod{p}$。$1 \leq k_1, k_2 \leq p-1$ より $k_1 = k_2$。

以上より、$\{a \cdot 1, a \cdot 2, \ldots, a \cdot (p-1)\}$ を $\pmod{p}$ で見ると $\{1, 2, \ldots, p-1\}$ の並べ替え。

よって全部を掛け合わせると:

$$(a \cdot 1)(a \cdot 2) \cdots (a \cdot (p-1)) \equiv 1 \cdot 2 \cdots (p-1) \pmod{p}$$

$$a^{p-1} \cdot (p-1)! \equiv (p-1)! \pmod{p}$$

$(p-1)!$ と $p$ は互いに素($p$ は素数なので $(p-1)!$ の因数にならない)なので、両辺を $(p-1)!$ で割れる:

$$a^{p-1} \equiv 1 \pmod{p}$$

フェルマーの小定理の活用例

▷ 活用例:$7^{203}$ を $5$ で割った余り

$5$ は素数で、$\gcd(7, 5) = 1$ なのでフェルマーの小定理が使える。

$7^{5-1} = 7^4 \equiv 1 \pmod{5}$

$203 = 4 \times 50 + 3$ なので:

$7^{203} = (7^4)^{50} \cdot 7^3 \equiv 1^{50} \cdot 7^3 \equiv 7^3 \pmod{5}$

$7 \equiv 2 \pmod{5}$ より $7^3 \equiv 2^3 = 8 \equiv 3 \pmod{5}$

答え:余りは $\mathbf{3}$。

⚠️ 落とし穴:フェルマーの小定理は「法が素数」のときだけ

✕ 誤:$a^{m-1} \equiv 1 \pmod{m}$ はどんな $m$ でも成り立つ

○ 正:フェルマーの小定理は法 $p$ が素数のときにのみ成り立ちます。 合成数 $m$ に対しては一般に $a^{m-1} \equiv 1 \pmod{m}$ は成り立ちません。

たとえば $m = 4$(合成数), $a = 2$:$2^3 = 8 \equiv 0 \pmod{4}$($1$ ではない)。

合成数の場合は、オイラーの定理($a^{\varphi(m)} \equiv 1 \pmod{m}$、$\varphi$ はオイラー関数)が一般化になりますが、これは大学の範囲です。

🔬 深掘り:RSA暗号 ── フェルマーの小定理が守る現代のセキュリティ

インターネットで使われるRSA暗号は、フェルマーの小定理(とその一般化であるオイラーの定理)に基づいています。 大きな素数 $p, q$ の積 $n = pq$ に対して、$m^{ed} \equiv m \pmod{n}$ という関係式が暗号化と復号に使われます。

この関係式が成り立つ根拠がフェルマーの小定理です。 17世紀にフェルマーが発見した純粋数学の定理が、21世紀のインターネットセキュリティを支えているのは、数学の不思議な力です。

5俯瞰マップ ─ 合同式と整数の性質のつながり

合同式は整数論の多くの概念を「余りの言語」で統一的に扱う道具です。 全体像を整理しましょう。

パターン分類表

パターン問題の特徴解法のポイント
A:余りの計算$n^k$ を $m$ で割った余りを求める底を余りに縮めてからべき乗の周期を見つける
B:整除の証明$n^k - a$ が $m$ の倍数であることを示す$n^k \equiv a \pmod{m}$ を示す
C:余りの分類$n^2$ や $n^3$ の余りのパターンを調べる$n \equiv 0, 1, \ldots, m-1$ を全部試す
D:合同方程式$ax \equiv b \pmod{m}$ を解く$\gcd(a, m) = 1$ なら逆元を使う
E:フェルマー応用大きなべき乗の余り(法が素数)$a^{p-1} \equiv 1$ で指数を縮める

つながりマップ

  • ← 9-1 約数と倍数:「$a - b$ が $m$ の倍数」が合同式の定義。約数・倍数の概念を記号化したもの。
  • ← 9-2 ユークリッドの互除法:$\gcd(a, m) = 1$ のとき合同式で割り算ができる。互除法で逆元を計算できる。
  • ← 9-7 n進法:n進表記の下1桁は $N \mod n$ に等しい。n進法は合同式の視覚的な表現。
  • → 大学 代数学:合同式の背後にある構造が「剰余環 $\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$」。群論・環論の出発点。
  • → 情報科学:RSA暗号、ハッシュ関数、誤り検出符号など、コンピュータサイエンスの至るところで合同式が使われる。

📋まとめ

  • 合同式の定義:$a \equiv b \pmod{m}$ ⟺ $a - b$ が $m$ の倍数 ⟺ $a, b$ を $m$ で割った余りが等しい
  • 同値関係:反射律・対称律・推移律を満たし、普通の等号と同じ感覚で使える
  • 加法・減法・乗法:合同式の両辺に自由に適用できる。べき乗も可能
  • 除法(割り算):$\gcd(c, m) = 1$ のときのみ可能。互いに素でなければ割れない
  • べき乗の余りには周期性がある。$a^k \equiv 1 \pmod{m}$ を見つけて指数を縮める
  • フェルマーの小定理:$p$ が素数、$\gcd(a, p) = 1$ のとき $a^{p-1} \equiv 1 \pmod{p}$

確認テスト

Q1. $47 \equiv \text{?} \pmod{7}$ の $\text{?}$ に入る $0$ 以上 $7$ 未満の整数を答えてください。

▶ クリックして解答を表示$47 = 6 \times 7 + 5$ より $47 \equiv 5 \pmod{7}$。答え:$5$

Q2. $a \equiv b \pmod{m}$, $c \equiv d \pmod{m}$ のとき、$ac \equiv \text{?} \pmod{m}$ ですか。

▶ クリックして解答を表示$ac \equiv bd \pmod{m}$。合同式の乗法が成り立つ。

Q3. $6a \equiv 6b \pmod{9}$ から $a \equiv b \pmod{9}$ は導けますか? 理由も述べてください。

▶ クリックして解答を表示導けない。$\gcd(6, 9) = 3 \neq 1$ なので $6$ で割ることはできない。反例:$a = 3, b = 0$ のとき $18 \equiv 0 \pmod{9}$ は真だが $3 \equiv 0 \pmod{9}$ は偽。

Q4. $3^{20}$ を $5$ で割った余りを求めてください。

▶ クリックして解答を表示$3^1 \equiv 3$, $3^2 \equiv 4$, $3^3 \equiv 2$, $3^4 \equiv 1 \pmod{5}$。周期 $4$。$20 = 4 \times 5$ より $3^{20} = (3^4)^5 \equiv 1^5 = 1 \pmod{5}$。余りは $1$。

Q5. フェルマーの小定理を使うための2つの条件は何ですか?

▶ クリックして解答を表示① 法 $p$ が素数であること。② $a$ と $p$ が互いに素($\gcd(a, p) = 1$)であること。この2つを満たすとき $a^{p-1} \equiv 1 \pmod{p}$。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

9-8-1 A 基礎 余りの計算 べき乗

$2^{50}$ を $7$ で割った余りを求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

余り $4$

解説

方針:$2$ のべき乗を $\pmod{7}$ で追跡し、周期を見つける。

$2^1 \equiv 2$, $2^2 \equiv 4$, $2^3 \equiv 1 \pmod{7}$

$2^3 \equiv 1 \pmod{7}$ より周期は $3$。

$50 = 3 \times 16 + 2$ なので $2^{50} = (2^3)^{16} \cdot 2^2 \equiv 1^{16} \cdot 4 = 4 \pmod{7}$

よって余りは $4$。

B 標準レベル

9-8-2 B 標準 整除の証明 合同式

$n$ を整数とするとき、$n^3 - n$ は $6$ の倍数であることを証明せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(証明は解説を参照)

解説

方針:$n^3 - n = n(n-1)(n+1)$ と因数分解してもよいが、合同式で示す方法を紹介する。

$6 = 2 \times 3$ なので、$n^3 - n$ が $2$ の倍数かつ $3$ の倍数であることを示せばよい。

$\pmod{2}$ の確認:$n \equiv 0$ のとき $n^3 - n \equiv 0$。$n \equiv 1$ のとき $1 - 1 = 0$。

よって $n^3 - n \equiv 0 \pmod{2}$。✓

$\pmod{3}$ の確認:$n \equiv 0$ のとき $0 - 0 = 0$。$n \equiv 1$ のとき $1 - 1 = 0$。$n \equiv 2$ のとき $8 - 2 = 6 \equiv 0$。

よって $n^3 - n \equiv 0 \pmod{3}$。✓

$n^3 - n$ は $2$ の倍数かつ $3$ の倍数で、$\gcd(2, 3) = 1$ なので $6$ の倍数。(証明終)

※ 別解として、フェルマーの小定理より $n^3 \equiv n \pmod{3}$($p = 3$)を使えば $\pmod{3}$ の部分は一発です。

採点ポイント
  • $6 = 2 \times 3$ と分解する方針(2点)
  • $\pmod{2}$ で $0$ を確認(2点)
  • $\pmod{3}$ で全ての場合を確認(3点)
  • $2$ と $3$ の倍数 → $6$ の倍数の結論(3点)
9-8-3 B 標準 余りの周期 合同式

$3^{100} + 5^{100}$ を $8$ で割った余りを求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

余り $2$

解説

方針:$3^{100}$ と $5^{100}$ をそれぞれ $\pmod{8}$ で求めて足す。

$3^{100} \pmod{8}$:$3^1 \equiv 3$, $3^2 \equiv 9 \equiv 1 \pmod{8}$。周期 $2$。$100 = 2 \times 50$ より $3^{100} \equiv 1 \pmod{8}$。

$5^{100} \pmod{8}$:$5^1 \equiv 5$, $5^2 \equiv 25 \equiv 1 \pmod{8}$。周期 $2$。$100 = 2 \times 50$ より $5^{100} \equiv 1 \pmod{8}$。

$3^{100} + 5^{100} \equiv 1 + 1 = 2 \pmod{8}$

よって余りは $2$。

採点ポイント
  • $3^2 \equiv 1 \pmod{8}$ の発見(3点)
  • $5^2 \equiv 1 \pmod{8}$ の発見(3点)
  • 加法を正しく適用し答えを求める(4点)

C 発展レベル

9-8-4 C 発展 フェルマーの小定理 論述

$n$ を $5$ と互いに素な正の整数とするとき、$n^4 - 1$ は $5$ の倍数であることを証明せよ。

また、$7^{203}$ を $5$ で割った余りを求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(前半の証明は解説を参照)。$7^{203}$ を $5$ で割った余りは $3$。

解説

前半の方針:フェルマーの小定理を適用する。

$5$ は素数で、$n$ と $5$ は互いに素なので、フェルマーの小定理より:

$$n^{5-1} = n^4 \equiv 1 \pmod{5}$$

すなわち $n^4 - 1 \equiv 0 \pmod{5}$、つまり $n^4 - 1$ は $5$ の倍数。(証明終)

後半の方針:$\gcd(7, 5) = 1$ なのでフェルマーの小定理が使える。

$7^4 \equiv 1 \pmod{5}$。$203 = 4 \times 50 + 3$ より:

$7^{203} = (7^4)^{50} \cdot 7^3 \equiv 1^{50} \cdot 7^3 = 7^3 \pmod{5}$

$7 \equiv 2 \pmod{5}$ より $7^3 \equiv 2^3 = 8 \equiv 3 \pmod{5}$。

よって余りは $3$。

採点ポイント
  • フェルマーの小定理の適用条件を明記(2点)
  • $n^4 \equiv 1 \pmod{5}$ を正しく導く(3点)
  • $203 = 4 \times 50 + 3$ の指数の処理(3点)
  • $7^3 \equiv 3 \pmod{5}$ の計算(2点)