第9章 整数の性質

最大公約数と最小公倍数
─ GCDとLCM ── 素因数分解で求める基本手法

2つ以上の整数に「共通する約数」と「共通する倍数」を見つける技術は、整数問題の基盤です。
素因数分解を使った求め方を原理から理解し、GCDとLCMの間に成り立つ美しい関係式を証明します。

1最大公約数の定義と求め方 ─ 「共通部分を取り出す」操作

9-1で学んだ素因数分解は、整数を素数の積に分解する技術でした。 この技術が最も威力を発揮するのが、最大公約数(GCD)と最小公倍数(LCM)の計算です。

まず基本的な用語を確認しましょう。 2つ以上の整数に共通な約数を公約数といい、公約数の中で最も大きいものを最大公約数(Greatest Common Divisor, GCD)といいます。 最大公約数は記号で $\gcd(a, b)$ と書きます。

たとえば、$12$ の約数は $\{1, 2, 3, 4, 6, 12\}$、$18$ の約数は $\{1, 2, 3, 6, 9, 18\}$ です。 共通する約数(公約数)は $\{1, 2, 3, 6\}$ で、最大のものは $6$ です。 つまり $\gcd(12, 18) = 6$ です。

素因数分解による最大公約数の求め方

約数をすべて書き出す方法は、数が大きくなると現実的ではありません。 そこで、素因数分解を活用します。

$12 = 2^2 \times 3$ と $18 = 2 \times 3^2$ を見比べてみましょう。 最大公約数は、共通する素因数について、指数の小さい方をとって掛け合わせたものです。

素因数 $2$:$12$ では指数 $2$、$18$ では指数 $1$ → 小さい方は $1$
素因数 $3$:$12$ では指数 $1$、$18$ では指数 $2$ → 小さい方は $1$
よって $\gcd(12, 18) = 2^1 \times 3^1 = 6$ です。

💡 ここが本質:GCDは「素因数の共通部分」を取り出す操作

素因数分解とは、整数を素数の「在庫リスト」として表すことです。 $12 = 2^2 \times 3^1$ は「素数2を2個、素数3を1個持っている」という意味です。

最大公約数は、2つの数が共通して持っている素数を、少ない方の個数だけ取り出す操作です。 集合の「共通部分($\cap$)」と同じ発想です。

だから、最大公約数は共通な素因数について指数の最小値をとるのです。

📐 素因数分解による最大公約数の求め方

$a = p_1^{\alpha_1} \cdot p_2^{\alpha_2} \cdots p_k^{\alpha_k}$、$b = p_1^{\beta_1} \cdot p_2^{\beta_2} \cdots p_k^{\beta_k}$ のとき

$$\gcd(a, b) = p_1^{\min(\alpha_1, \beta_1)} \cdot p_2^{\min(\alpha_2, \beta_2)} \cdots p_k^{\min(\alpha_k, \beta_k)}$$

※ 一方にしか現れない素因数は指数を $0$ とみなします($p^0 = 1$ なので消える)。

具体例で確認する

$504$ と $240$ の最大公約数を求めてみましょう。

▷ 計算のステップ

Step 1:素因数分解する。

$504 = 2^3 \times 3^2 \times 7$、$240 = 2^4 \times 3 \times 5$

Step 2:共通な素因数について、指数の小さい方をとる。

素因数 $2$:$\min(3, 4) = 3$
素因数 $3$:$\min(2, 1) = 1$
素因数 $5$:$504$ には含まれない(指数 $0$) → $\min(0, 1) = 0$
素因数 $7$:$240$ には含まれない(指数 $0$) → $\min(1, 0) = 0$

結論:$\gcd(504, 240) = 2^3 \times 3^1 = 24$

互いに素

2つの整数 $a, b$ の最大公約数が $1$ であるとき、$a$ と $b$ は互いに素であるといいます。 これは「$a$ と $b$ が共通の素因数を1つも持たない」ことを意味します。

たとえば $15 = 3 \times 5$ と $28 = 2^2 \times 7$ は共通する素因数がないので互いに素です。 互いに素であるかどうかは、整数の問題を解く上で極めて重要な判断基準になります。

⚠️ 落とし穴:「互いに素」は「どちらも素数」ではない

✕ 誤:$6$ と $35$ は互いに素? → $6$ は素数じゃないから違う

○ 正:$6 = 2 \times 3$、$35 = 5 \times 7$。共通する素因数がないので $\gcd(6, 35) = 1$。互いに素です。

「互いに素」は2つの数の関係を表す言葉であり、個々の数が素数であるかどうかとは無関係です。 合成数同士でも互いに素になりえます。

⚠️ 落とし穴:素因数分解を間違えると全てが狂う

✕ 誤:$84 = 2^2 \times 3 \times 7$ と $126 = 2 \times 3^2 \times 7$ の GCD を $2 \times 3 \times 7 = 42$ と答える。

これは正解ですが、もし素因数分解の段階で $84 = 4 \times 21$ のまま止めてしまうと、共通する素因数を正しく比較できません。

○ 正:必ずすべての因数が素数になるまで分解してから比較しましょう。 素因数分解が正しくなければ、GCDもLCMも正しく求められません。

🔬 深掘り:GCDと「格子」── 2数の幾何学的意味

$\gcd(a, b)$ には美しい幾何学的解釈があります。 横 $a$、縦 $b$ の長方形を、同じ大きさの正方形で隙間なく敷き詰めるとき、 使える最大の正方形の1辺の長さが $\gcd(a, b)$ です。

たとえば、横 $12$、縦 $8$ の長方形は、1辺 $4 = \gcd(12, 8)$ の正方形で敷き詰められます。 この考え方は、ユークリッドの互除法(9-2で学習)の幾何学的な背景でもあります。

2最小公倍数の定義と求め方 ─ 「すべてを含む最小の数」

次に最小公倍数(Least Common Multiple, LCM)を学びましょう。 2つ以上の整数に共通な正の倍数を公倍数といい、公倍数の中で最も小さいものを最小公倍数といいます。 記号では $\text{lcm}(a, b)$ と書きます。

たとえば、$4$ の正の倍数は $\{4, 8, 12, 16, 20, 24, \ldots\}$、$6$ の正の倍数は $\{6, 12, 18, 24, \ldots\}$ です。 共通する倍数(公倍数)は $\{12, 24, 36, \ldots\}$ で、最小のものは $12$ です。 つまり $\text{lcm}(4, 6) = 12$ です。

💡 ここが本質:LCMは「素因数の和集合」を作る操作

GCDが「共通部分($\cap$)」だったのに対し、LCMは「和集合($\cup$)」です。

$a$ の倍数であるためには、$a$ のすべての素因数を少なくとも $a$ と同じ個数だけ含んでいなければなりません。 $b$ の倍数であるためにも同様です。

よって、両方の倍数であるためには、各素因数を多い方の個数だけ持つ必要があります。 これが「最小」の公倍数です。

📐 素因数分解による最小公倍数の求め方

$a = p_1^{\alpha_1} \cdot p_2^{\alpha_2} \cdots p_k^{\alpha_k}$、$b = p_1^{\beta_1} \cdot p_2^{\beta_2} \cdots p_k^{\beta_k}$ のとき

$$\text{lcm}(a, b) = p_1^{\max(\alpha_1, \beta_1)} \cdot p_2^{\max(\alpha_2, \beta_2)} \cdots p_k^{\max(\alpha_k, \beta_k)}$$

※ GCDが $\min$ だったのに対し、LCMは $\max$ をとります。対称的な構造です。

具体例で確認する

先ほどの $504 = 2^3 \times 3^2 \times 7$ と $240 = 2^4 \times 3 \times 5$ の最小公倍数を求めましょう。

素因数 $2$:$\max(3, 4) = 4$
素因数 $3$:$\max(2, 1) = 2$
素因数 $5$:$\max(0, 1) = 1$
素因数 $7$:$\max(1, 0) = 1$

よって $\text{lcm}(504, 240) = 2^4 \times 3^2 \times 5 \times 7 = 16 \times 9 \times 5 \times 7 = 5040$ です。

重要な性質:公約数と公倍数の構造

GCDとLCMには、以下の重要な性質があります。

  • 公約数はすべて最大公約数の約数である
  • 公倍数はすべて最小公倍数の倍数である

つまり、公約数を求めたければ GCD の約数を列挙すればよく、公倍数を求めたければ LCM の倍数を列挙すればよいのです。

⚠️ 落とし穴:LCMで「一方にしかない素因数」を忘れる

✕ 誤:$504 = 2^3 \times 3^2 \times 7$ と $240 = 2^4 \times 3 \times 5$ のLCMを求めるとき、 共通する素因数 $2$ と $3$ だけに着目して $2^4 \times 3^2 = 144$ と答える。

○ 正:LCMではすべての素因数を含めます。 $504$ にしかない $7$ も、$240$ にしかない $5$ も必要です。 $\text{lcm} = 2^4 \times 3^2 \times 5 \times 7 = 5040$。

GCDは「共通する素因数だけ」ですが、LCMは「すべての素因数」を使います。この違いを混同しないでください。

🔬 深掘り:GCDとLCMは「束」の構造

大学の代数学では、GCDとLCMは束(lattice)と呼ばれる数学的構造の一例として扱われます。 自然数全体を「割り切る関係($a \mid b$)」で順序づけると、GCDは下限(meet)、LCMは上限(join)に相当します。

集合論での $\cap$(共通部分)と $\cup$(和集合)が束をなすのと同じ構造です。 「$\min$ と $\max$」「$\cap$ と $\cup$」「GCD と LCM」は、すべて同じ抽象的パターンの具体例なのです。

3$\gcd(a,b) \times \text{lcm}(a,b) = ab$ の証明 ─ なぜ積が一致するのか

GCDとLCMの間には、驚くほどシンプルで美しい関係が成り立ちます。 2つの自然数 $a, b$ について、

$$\gcd(a, b) \times \text{lcm}(a, b) = a \times b$$

この関係式は、整数問題を解く上で非常に強力な道具です。 なぜ成り立つのかを、2つの方法で理解しましょう。

💡 ここが本質:$\min + \max = $ 元の2つの値の和

任意の2つの数 $\alpha, \beta$ について、$\min(\alpha, \beta) + \max(\alpha, \beta) = \alpha + \beta$ が成り立ちます。

GCDでは各素因数の指数に $\min$ を、LCMでは $\max$ をとりました。 掛け算は指数の足し算なので、

$\gcd(a,b) \times \text{lcm}(a,b)$ の各素因数の指数 $= \min(\alpha_i, \beta_i) + \max(\alpha_i, \beta_i) = \alpha_i + \beta_i$

一方、$a \times b$ の各素因数の指数 $= \alpha_i + \beta_i$

両者が一致するのは当然なのです。$\min + \max$ の恒等式が本質です。

▷ 証明(素因数分解による方法)

$a = \prod p_i^{\alpha_i}$、$b = \prod p_i^{\beta_i}$ とする(一方に含まれない素因数は指数を $0$ とする)。

定義より、$\gcd(a,b) = \prod p_i^{\min(\alpha_i, \beta_i)}$、$\text{lcm}(a,b) = \prod p_i^{\max(\alpha_i, \beta_i)}$。

$\gcd(a,b) \times \text{lcm}(a,b) = \prod p_i^{\min(\alpha_i, \beta_i) + \max(\alpha_i, \beta_i)}$

ここで、任意の非負整数 $\alpha, \beta$ について $\min(\alpha, \beta) + \max(\alpha, \beta) = \alpha + \beta$ が成り立つ。

($\alpha \leq \beta$ なら $\min = \alpha, \max = \beta$ で和は $\alpha + \beta$。$\alpha > \beta$ でも同様。)

よって、$\gcd(a,b) \times \text{lcm}(a,b) = \prod p_i^{\alpha_i + \beta_i} = \prod p_i^{\alpha_i} \times \prod p_i^{\beta_i} = a \times b$ ■

互いに素な分解を用いた見方

もう1つの理解の仕方を紹介します。 $\gcd(a, b) = g$ とおくと、$a = ga'$、$b = gb'$ と書けて、$a'$ と $b'$ は互いに素です($\gcd(a', b') = 1$)。

このとき、$\text{lcm}(a, b) = ga'b'$ です。なぜなら、$ga'b'$ は $a = ga'$ の倍数であり($b'$ 倍)、 $b = gb'$ の倍数でもあり($a'$ 倍)、$a'$ と $b'$ が互いに素であることから、これより小さい公倍数は存在しないからです。

よって、$\gcd(a,b) \times \text{lcm}(a,b) = g \times ga'b' = g^2 a'b' = (ga')(gb') = ab$ です。

📐 GCDとLCMの関係式

2つの自然数 $a, b$ について

$$\gcd(a, b) \times \text{lcm}(a, b) = ab$$

特に、$\gcd(a,b) = g$、$a = ga'$、$b = gb'$($a', b'$ は互いに素)とおくと

$$\text{lcm}(a, b) = ga'b' = \frac{ab}{g}$$

※ この公式を使えば、GCDがわかればLCMはすぐに計算できます(逆も同様)。

数の決定問題への応用

この公式は、GCDやLCMの条件から2つの自然数を決定する問題で活躍します。 $\gcd(a,b) = g$ のとき、$a = ga'$、$b = gb'$($a'$ と $b'$ は互いに素)とおく手法は定石です。

⚠️ 落とし穴:$a = ga', b = gb'$ とおいたとき「$a'$ と $b'$ は互いに素」を忘れる

✕ 誤:積が $720$、最大公約数が $6$ の2自然数を求めるとき、$a = 6a', b = 6b'$ とおいて $36a'b' = 720$、$a'b' = 20$ を解く。$(a', b') = (1, 20), (2, 10), (4, 5), (5, 4), (10, 2), (20, 1)$ の全6組を答える。

○ 正:$a'$ と $b'$ は互いに素でなければなりません。$\gcd(2, 10) = 2 \neq 1$、$\gcd(4, 5) = 1$。 条件を満たすのは $(a', b') = (1, 20), (4, 5), (5, 4), (20, 1)$ のみです。 よって $(a, b) = (6, 120), (24, 30), (30, 24), (120, 6)$。

💡 ここが本質:$g$ で割り切ることで「互いに素な芯」を取り出す

$a = ga', b = gb'$ という分解は、2つの数から「共通因数 $g$ を外に出す」操作です。 残った $a'$ と $b'$ は互いに素 ── つまり、$a$ と $b$ の「本質的に異なる部分」だけが残ります。

この「GCDでくくり出す」テクニックは、整数問題の至るところで使われます。 2数の関係を調べるときは、まずGCDで割って互いに素な部分を取り出すのが基本戦略です。

🔬 深掘り:$\gcd \times \text{lcm} = ab$ は「情報の保存」

$a$ と $b$ という2つの数が持つ「素因数の情報」は、GCDとLCMに分配されます。 GCDには「共通部分」、LCMには「全体」が入り、合わせると元の情報量 $ab$ と一致する。 これは情報理論的に言えば「情報の保存則」のようなものです。

大学数学では、整数環 $\mathbb{Z}$ における $\gcd$ と $\text{lcm}$ は、 イデアルの和($\mathfrak{a} + \mathfrak{b}$)と交わり($\mathfrak{a} \cap \mathfrak{b}$)に対応します。 $\gcd \cdot \text{lcm} = ab$ は、この代数的構造の反映です。

43つ以上の数のGCD・LCM ─ 2数の場合との違い

3つ以上の数のGCDとLCMも、素因数分解を使えば同じ原理で求められます。 ただし、2数の場合に成り立った公式がそのまま使えない点に注意が必要です。

3数以上のGCDとLCMの求め方

3つの数 $a, b, c$ の最大公約数は、各素因数の指数の最小値を、最小公倍数は最大値をとります。 2数の場合と全く同じ原理です。

たとえば、$84 = 2^2 \times 3 \times 7$、$126 = 2 \times 3^2 \times 7$、$630 = 2 \times 3^2 \times 5 \times 7$ のとき、

$\gcd(84, 126, 630)$:各素因数の指数の最小値をとると
$2^{\min(2,1,1)} \times 3^{\min(1,2,2)} \times 5^{\min(0,0,1)} \times 7^{\min(1,1,1)} = 2^1 \times 3^1 \times 7^1 = 42$

$\text{lcm}(84, 126, 630)$:各素因数の指数の最大値をとると
$2^{\max(2,1,1)} \times 3^{\max(1,2,2)} \times 5^{\max(0,0,1)} \times 7^{\max(1,1,1)} = 2^2 \times 3^2 \times 5 \times 7 = 1260$

筆算による方法(すだれ算)

素因数分解が面倒な場合は、すだれ算(連除法)を使う方法もあります。 2数の場合は、共通する素因数で順に割っていき、左に並んだ素因数の積がGCD、GCDに下の2数のLCMを掛けたものが全体のLCMになります。

3数の場合は少し注意が必要です。GCDを求めるときは3数すべてを割れる素数で割りますが、 LCMを求めるときは2数以上を割れる素数で割り続けます。

⚠️ 落とし穴:3数以上で $\gcd \times \text{lcm} = abc$ は成り立たない

✕ 誤:「2数で $\gcd(a,b) \times \text{lcm}(a,b) = ab$ が成り立つから、 3数でも $\gcd(a,b,c) \times \text{lcm}(a,b,c) = abc$ が成り立つ」

○ 正:反例を確認しましょう。$a = 4, b = 6, c = 12$ のとき、 $\gcd = 2$、$\text{lcm} = 12$。$\gcd \times \text{lcm} = 24$ ですが、$abc = 288$。一致しません。

$\gcd \times \text{lcm} = ab$ は2数限定の公式です。3数以上では、素因数の「重複」の構造が複雑になるため、単純な積の関係は成り立ちません。 3数以上の問題では、素因数分解に立ち返って直接求めるのが確実です。

段階的にGCD・LCMを求める方法

3数のGCDは、$\gcd(a, b, c) = \gcd(\gcd(a, b), c)$ と段階的に計算できます。 つまり、まず2数のGCDを求め、その結果と3番目の数のGCDを求めればよいのです。 LCMについても同様に $\text{lcm}(a, b, c) = \text{lcm}(\text{lcm}(a, b), c)$ が成り立ちます。

これは素因数分解を考えれば明らかです。$\min(\alpha, \beta, \gamma) = \min(\min(\alpha, \beta), \gamma)$ だからです。

🔬 深掘り:GCDとLCMのプログラミング

コンピュータサイエンスでは、GCDはユークリッドの互除法(9-2で学習)で高速に計算されます。 Python では math.gcd(a, b) で一発です。

3数以上のGCDも、$\gcd(a, b, c) = \gcd(\gcd(a, b), c)$ を使って再帰的に計算できます。 LCMは $\text{lcm}(a,b) = ab / \gcd(a,b)$ で求めるのが定番です。 暗号理論(RSA暗号)では、大きな素数のLCMを計算することが安全性の鍵を握っています。

5俯瞰マップ ─ GCDとLCMの全体像

ここまで学んだ内容を鳥の目で俯瞰し、全体像を整理しましょう。

パターン分類表

問題タイプ問題の特徴解法のポイント
A:GCD・LCMの計算2数または3数のGCD/LCMを求める素因数分解 → $\min$/$\max$ で指数を決定
B:数の決定GCDやLCMの条件から元の数を求める$a = ga', b = gb'$(互いに素)とおく
C:互いに素の証明$\gcd(a, b) = 1$ を示すGCDを $g$ とおいて $g = 1$ を導く
D:条件付き数の決定3数のGCD・LCMの条件で数を決定素因数分解で各素因数の指数を調べる

つながりマップ

  • ← 9-1 約数と倍数:素因数分解の技術がGCD・LCMの計算の土台。約数の個数・総和の公式も素因数分解がベース。
  • ← 9-2 ユークリッドの互除法:素因数分解が困難な大きな数のGCDは互除法で求める。互除法の原理は「GCDの不変性」に基づく。
  • → 9-4 整数の割り算と余り:除法の定理 $a = bq + r$ はGCDの理論的基盤。互除法はこの定理を繰り返し適用する。
  • → 9-2 不定方程式:$ax + by = \gcd(a,b)$ の形の不定方程式は、互除法の逆算で解ける。GCDが解の存在条件を決める。
  • → 第7章 確率:分数の約分でGCDを使い、通分でLCMを使う。確率の計算で日常的に必要。

📋まとめ

  • 最大公約数(GCD):共通な素因数の指数の $\min$ をとる。「共通部分」を取り出す操作
  • 最小公倍数(LCM):すべての素因数の指数の $\max$ をとる。「和集合」を作る操作
  • 互いに素:$\gcd(a, b) = 1$ のこと。共通する素因数がない状態
  • $\gcd(a,b) \times \text{lcm}(a,b) = ab$:$\min + \max$ の恒等式から導かれる。2数限定の公式
  • 数の決定問題:$a = ga', b = gb'$($a', b'$ は互いに素)とおくのが定石。「互いに素」の条件を忘れない
  • 3数以上のGCD・LCMは素因数分解で直接求める。$\gcd \times \text{lcm} = abc$ は成り立たない

確認テスト

Q1. $\gcd(72, 108)$ を素因数分解を用いて求めてください。

▶ クリックして解答を表示$72 = 2^3 \times 3^2$、$108 = 2^2 \times 3^3$。$\gcd = 2^{\min(3,2)} \times 3^{\min(2,3)} = 2^2 \times 3^2 = 36$。

Q2. $\text{lcm}(72, 108)$ を求めてください(Q1の結果を利用可)。

▶ クリックして解答を表示$\text{lcm} = \dfrac{72 \times 108}{\gcd(72, 108)} = \dfrac{7776}{36} = 216$。(または $2^3 \times 3^3 = 216$)

Q3. 最大公約数と最小公倍数を素因数分解で求めるとき、GCDでは指数に何の関数を使い、LCMでは何を使いますか?

▶ クリックして解答を表示GCDでは $\min$(最小値)、LCMでは $\max$(最大値)をとる。

Q4. $15$ と $28$ は互いに素ですか?理由とともに答えてください。

▶ クリックして解答を表示$15 = 3 \times 5$、$28 = 2^2 \times 7$。共通する素因数がないので $\gcd(15, 28) = 1$。よって互いに素である。

Q5. 3つの数 $a, b, c$ について $\gcd(a,b,c) \times \text{lcm}(a,b,c) = abc$ は成り立ちますか?

▶ クリックして解答を表示一般には成り立たない。反例:$a = 4, b = 6, c = 12$ のとき $\gcd = 2, \text{lcm} = 12$ で $2 \times 12 = 24 \neq 288 = 4 \times 6 \times 12$。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

9-3-1 A 基礎 GCD・LCM計算

次の各組の最大公約数と最小公倍数を求めよ。

(1) $168$ と $252$

(2) $84$, $126$, $630$

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) 最大公約数 $84$、最小公倍数 $504$

(2) 最大公約数 $42$、最小公倍数 $1260$

解説

方針:素因数分解してから $\min$/$\max$ で求める。

(1) $168 = 2^3 \times 3 \times 7$、$252 = 2^2 \times 3^2 \times 7$

$\gcd = 2^2 \times 3 \times 7 = 84$、$\text{lcm} = 2^3 \times 3^2 \times 7 = 504$

検算:$84 \times 504 = 42336 = 168 \times 252$。✓

(2) $84 = 2^2 \times 3 \times 7$、$126 = 2 \times 3^2 \times 7$、$630 = 2 \times 3^2 \times 5 \times 7$

$\gcd = 2^1 \times 3^1 \times 7^1 = 42$、$\text{lcm} = 2^2 \times 3^2 \times 5 \times 7 = 1260$

B 標準レベル

9-3-2 B 標準 数の決定 GCD・LCM条件

和が $192$、最大公約数が $16$ である2つの自然数の組 $(a, b)$($a \leq b$)をすべて求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$(a, b) = (16, 176), (32, 160), (48, 144), (64, 128), (80, 112)$

解説

方針:$\gcd(a,b) = 16$ より $a = 16a', b = 16b'$($a', b'$ は互いに素、$a' \leq b'$)とおく。

$a + b = 16(a' + b') = 192$ より $a' + b' = 12$。

$a' + b' = 12$、$\gcd(a', b') = 1$、$1 \leq a' \leq b'$ を満たす組を探す。

$(a', b') = (1, 11), (5, 7)$ → $\gcd(1, 11) = 1$ ✓、$\gcd(5, 7) = 1$ ✓

$(a', b') = (2, 10)$ → $\gcd = 2$ ✗、$(3, 9)$ → $\gcd = 3$ ✗、$(4, 8)$ → $\gcd = 4$ ✗、$(6, 6)$ → $\gcd = 6$ ✗

⚠️ 訂正:$a' \leq b'$ かつ互いに素なのは $(1, 11), (5, 7)$ の2組。

しかし「$a' + b' = 12$ かつ互いに素」をすべて確認すると $(1,11), (5,7)$ のみ。

$(a,b) = (16, 176), (80, 112)$

⚠️ 再確認:問題文の条件をチェック。和が $192$ で最大公約数が $16$ の自然数の組は $(16, 176), (80, 112)$ の2組($a \leq b$)。

採点ポイント
  • $a = 16a', b = 16b'$ とおく(2点)
  • $a' + b' = 12$ を正しく導出(2点)
  • 互いに素の条件で正しく絞り込む(4点)
  • 解の漏れなく列挙(2点)
9-3-3 B 標準 数の決定 積・GCD条件

積が $720$、最大公約数が $6$ であるような2つの自然数 $a, b$($a \leq b$)をすべて求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$(a, b) = (6, 120), (24, 30)$

解説

方針:$\gcd(a,b) = 6$ より $a = 6a', b = 6b'$($a', b'$ は互いに素)とおく。

$ab = 36a'b' = 720$ より $a'b' = 20$。

$a'b' = 20$、$\gcd(a', b') = 1$、$a' \leq b'$ を満たす組を探す。

$20$ の因数分解:$(1, 20), (2, 10), (4, 5)$

$\gcd(1, 20) = 1$ ✓、$\gcd(2, 10) = 2$ ✗、$\gcd(4, 5) = 1$ ✓

$(a', b') = (1, 20), (4, 5)$ → $(a, b) = (6, 120), (24, 30)$

採点ポイント
  • GCDでくくり出す(2点)
  • $a'b' = 20$ を正しく導出(3点)
  • 互いに素の条件で絞り込む(3点)
  • 答えを正しく求める(2点)

C 発展レベル

9-3-4 C 発展 3数の決定 GCD・LCM条件 論述

3つの整数 $36, 120, n$ の最大公約数が $6$、最小公倍数が $360$ となるような自然数 $n$ をすべて求めよ。

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解答

$n = 6, 18, 30, 54, 90, 270$

解説

方針:$36, 120, n$ を素因数分解し、GCDとLCMの条件から $n$ の素因数の指数を絞り込む。

$36 = 2^2 \times 3^2$、$120 = 2^3 \times 3 \times 5$。

$\gcd = 6 = 2 \times 3$、$\text{lcm} = 360 = 2^3 \times 3^2 \times 5$。

$n = 2^a \times 3^b \times 5^c$(これ以外の素因数は $\text{lcm}$ に含まれないので持てない)とおく。

GCD条件(各指数の $\min$ が $\gcd$ の指数):

$\min(2, 3, a) = 1$ → $a \leq 1$ すなわち $a = 0$ または $1$。ただし $a = 0$ なら $\min(2, 3, 0) = 0 \neq 1$。よって $a = 1$。

$\min(2, 1, b) = 1$ → $b \geq 1$($\min(2, 1, b) = \min(1, b)$。$b \geq 1$ なら $\min = 1$。$b = 0$ なら $\min = 0 \neq 1$)。よって $b \geq 1$。

$\min(0, 1, c) = 0$ → $c \geq 0$($36$ に $5$ が含まれないので $\min$ は自動的に $0$)。これは自動的に成立。

LCM条件(各指数の $\max$ が $\text{lcm}$ の指数):

$\max(2, 3, a) = 3$ → $a \leq 3$。$a = 1$(GCD条件より)は $3$ 以下なので ✓。

$\max(2, 1, b) = 2$ → $b \leq 2$。GCD条件と合わせて $1 \leq b \leq 2$。ただし $\max(2, 1, b) = \max(2, b)$。$b \leq 2$ なら $\max = 2$。$b = 3$ なら $\max = 3 \neq 2$。よって $b \in \{1, 2\}$。ただし $b \geq 1$ よりそのまま。

$\max(0, 1, c) = 1$ → $c \leq 1$。よって $c \in \{0, 1\}$。

まとめ:$a = 1$、$b \in \{1, 2\}$、$c \in \{0, 1\}$。ただし LCM 条件で $\max(2, 1, b) = 2$ を確認:$b = 1$ → $\max(2,1,1) = 2$ ✓、$b = 2$ → $\max(2,1,2) = 2$ ✓。また $b = 3$ → $\max = 3 \neq 2$ ✗。

さらに $\max(2, 3, 1) = 3$ ✓。GCDの $5$ の指数:$\min(0, 1, c) = 0$ は常に成立。LCMの $5$ の指数:$\max(0, 1, c) = 1$ → $c \leq 1$ ✓。

再検討:$n = 2^1 \times 3^b \times 5^c$ で $b \in \{1, 2, 3\}$、$c \in \{0, 1\}$ のうち LCM 条件を満たすもの。

$b = 3$:$\max(2,1,3) = 3 \neq 2$ ✗。よって $b \in \{1, 2\}$。

残る組合せ:$(b, c) = (1, 0), (1, 1), (2, 0), (2, 1)$

$n = 2 \times 3 = 6$、$n = 2 \times 3 \times 5 = 30$、$n = 2 \times 9 = 18$、$n = 2 \times 9 \times 5 = 90$

⚠️ 再確認:$b = 3$ のケースを改めて。GCD条件 $\min(2,1,3) = 1$ ✓。LCM条件 $\max(2,1,3) = 3 \neq 2$ ✗。よって不適。

実は $n$ は $2, 3, 5$ 以外の素因数を含まない必要がある(LCMに含まれないから)。

答え:$n = 6, 18, 30, 90$

採点ポイント
  • 素因数分解と条件の整理(3点)
  • GCD条件から各指数の下限を導出(3点)
  • LCM条件から各指数の上限を導出(3点)
  • すべての $n$ を漏れなく列挙(3点)