第8章 図形の性質

三角形の五心(重心・垂心・傍心)
─ 重心は2:1に内分する ── 残り3つの中心を理解する

三角形には5つの「中心」があります。前回学んだ外心・内心に続いて、この記事では重心・垂心・傍心を扱います。
それぞれの中心が「なぜ1点で交わるのか」を原理から理解し、5つの中心の関係を俯瞰しましょう。

1重心の定義と性質 ─ なぜ中線は1点で交わり、2:1に内分するのか

三角形の各頂点と、その対辺の中点を結んだ線分を中線(メディアン)といいます。 $\triangle ABC$ には3本の中線がありますが、驚くべきことに、この3本は必ず1点で交わります。 その交点を重心($G$)といいます。

しかも、重心は各中線を頂点側から 2:1 に内分します。 なぜ「2:1」という特別な比が現れるのでしょうか。これを中点連結定理を使って証明しましょう。

▷ 3本の中線が1点で交わり、各中線を2:1に内分することの証明

$\triangle ABC$ において、辺 $BC$, $CA$, $AB$ の中点をそれぞれ $L$, $M$, $N$ とします。

Step 1:まず、2本の中線 $BM$ と $CN$ の交点を $G$ とします。

$M$, $N$ はそれぞれ辺 $CA$, $AB$ の中点なので、中点連結定理により $MN \parallel BC$ かつ $MN = \dfrac{1}{2}BC$ です。

Step 2:$\triangle GMN$ と $\triangle GBC$ に注目すると、$MN \parallel BC$ なので この2つの三角形は相似で、相似比は $MN : BC = 1 : 2$ です。

よって $BG : GM = CG : GN = 2 : 1$ となります。

Step 3:同様に、2本の中線 $BM$ と $AL$ の交点を $G'$ とすると、 辺 $LM$ と辺 $AB$ に中点連結定理を適用し、$BG' : G'M = 2 : 1$ が得られます。

Step 4:$G$ も $G'$ も中線 $BM$ を $B$ 側から $2:1$ に内分する点なので、 $G$ と $G'$ は一致します。

したがって、3本の中線 $AL$, $BM$, $CN$ はすべて1点 $G$ で交わり、 $G$ は各中線を頂点側から $2:1$ に内分します。 $\blacksquare$

💡 ここが本質:重心は「重さの中心」── 2:1の意味

「重心」という名前は物理に由来します。もし三角形の板を一様な材質で作ったら、 その板を1点で支えてバランスをとれる点が重心です。

なぜ $2:1$ なのか、直感的に理解しましょう。中線 $AL$($A$ と辺 $BC$ の中点 $L$ を結ぶ)を考えます。 点 $L$ は辺 $BC$ の中点なので、$L$ 側には $B$ と $C$ の2頂点ぶんの「重さ」が集まっています。 一方、$A$ 側には $A$ の1頂点ぶんだけです。

したがって、バランスをとる点(重心)は $A$ 側に寄るのではなく、 $L$(2頂点ぶん)に近い側に寄るのです。 重さの比が $A : L = 1 : 2$ なので、支点は $A$ から $\dfrac{2}{3}$、$L$ から $\dfrac{1}{3}$ の位置、 つまり $AG : GL = 2 : 1$ となります。

📐 重心の性質

$\triangle ABC$ の3本の中線は1点(重心 $G$)で交わる。

重心は各中線を頂点側から $2:1$ に内分する。

すなわち、辺 $BC$ の中点を $L$ とすると:

$$AG : GL = 2 : 1$$
※ 他の2本の中線についても同様に $BM : MG = 2 : 1$、$CN : NG = 2 : 1$ が成り立つ。
⚠️ 落とし穴:2:1の比の向きを間違える

✕ 誤:重心は中線を $1:2$ に内分する(頂点側が1)

○ 正:重心は中線を頂点側から $2:1$ に内分する。 つまり「頂点に近い側」が長く、「対辺の中点に近い側」が短い。

覚え方:頂点から出発して重心に至る距離は中線全体の $\dfrac{2}{3}$、 重心から対辺の中点までは $\dfrac{1}{3}$ です。 「重心は頂点から $\dfrac{2}{3}$ の位置」と覚えると間違えにくいでしょう。

重心と面積の関係

重心には「面積を等分する」という重要な性質もあります。 重心 $G$ と3頂点を結ぶと、$\triangle ABC$ は $\triangle GBC$, $\triangle GCA$, $\triangle GAB$ の3つに分割されます。 この3つの三角形の面積はすべて等しく、$\triangle ABC$ の面積の $\dfrac{1}{3}$ になります。

💡 ここが本質:重心は三角形を3等分する

重心 $G$ が中線 $AL$ 上にあり $AG : GL = 2:1$ なので、$\triangle ABL$ と $\triangle ACL$ のそれぞれについて、 $G$ が底辺($AL$)を $2:1$ に分けます。

まず、$L$ は $BC$ の中点なので $\triangle ABL = \triangle ACL = \dfrac{1}{2}\triangle ABC$。 次に、$\triangle GBL$ は $\triangle ABL$ の底辺 $AL$ のうち $GL = \dfrac{1}{3}AL$ を底辺とみなせるので、 $\triangle GBL = \dfrac{1}{3}\triangle ABL = \dfrac{1}{6}\triangle ABC$。同様に $\triangle GCL = \dfrac{1}{6}\triangle ABC$。

よって $\triangle GBC = \triangle GBL + \triangle GCL = \dfrac{1}{3}\triangle ABC$。 他の2つも同様に $\dfrac{1}{3}\triangle ABC$ となります。

🔬 深掘り:重心座標(バリセントリック座標)

大学数学では、三角形の3頂点に「重み」をつけて点を表す重心座標(バリセントリック座標)が登場します。 三角形の各頂点 $A$, $B$, $C$ に重み $\alpha$, $\beta$, $\gamma$ を割り当てたとき、 重心座標 $(\alpha : \beta : \gamma)$ で表される点は

$$P = \frac{\alpha \cdot A + \beta \cdot B + \gamma \cdot C}{\alpha + \beta + \gamma}$$

重心は $(\alpha, \beta, \gamma) = (1, 1, 1)$、つまり3頂点に等しい重みを割り当てた点です。 内心は $(a, b, c)$(辺の長さが重み)、外心はさらに複雑な重みになります。 この座標系はコンピュータグラフィックスでも広く使われています。

2重心の座標計算 ─ 3頂点の平均で求まる理由

座標平面上で $\triangle ABC$ の3頂点が $A(x_1, y_1)$, $B(x_2, y_2)$, $C(x_3, y_3)$ のとき、 重心 $G$ の座標は非常にシンプルな公式で求まります。

📐 重心の座標公式

$\triangle ABC$ の頂点が $A(x_1, y_1)$, $B(x_2, y_2)$, $C(x_3, y_3)$ のとき、重心 $G$ の座標は

$$G\left(\frac{x_1 + x_2 + x_3}{3}, \, \frac{y_1 + y_2 + y_3}{3}\right)$$
※ 3頂点の $x$ 座標の平均、$y$ 座標の平均が重心の座標。
▷ 重心の座標公式の導出

辺 $BC$ の中点 $L$ の座標は $L\left(\dfrac{x_2 + x_3}{2}, \, \dfrac{y_2 + y_3}{2}\right)$ です。

重心 $G$ は中線 $AL$ を $A$ 側から $2:1$ に内分する点なので、内分の公式より

$$G_x = \frac{1 \cdot x_1 + 2 \cdot \dfrac{x_2 + x_3}{2}}{1 + 2} = \frac{x_1 + x_2 + x_3}{3}$$

$y$ 座標も同様に $G_y = \dfrac{y_1 + y_2 + y_3}{3}$ です。 $\blacksquare$

⚠️ 落とし穴:内分の公式の適用ミス

重心は $AL$ を $2:1$ に内分するので、内分の公式で $A$ 側の比が $2$、$L$ 側の比が $1$ です。

✕ 誤:$G_x = \dfrac{2 \cdot x_1 + 1 \cdot \dfrac{x_2+x_3}{2}}{3}$ ($A$ に重み $2$ をかけてしまう)

○ 正:内分の公式 $\dfrac{nA + mL}{m+n}$($m:n$ に内分するとき)を適用。 $AG:GL = 2:1$ なので $m = 2$, $n = 1$。 $G_x = \dfrac{1 \cdot x_1 + 2 \cdot L_x}{3}$ が正しい。

内分点の公式は「近い方に大きい重み」がつくことに注意しましょう。 $G$ は $L$ に近いので、$L$ の座標に大きい重み($2$)がかかります。

座標を使った計算例

$A(1, 5)$, $B(4, -1)$, $C(7, 2)$ のとき、重心 $G$ の座標を求めましょう。

公式に代入するだけです:

$$G\left(\frac{1+4+7}{3}, \, \frac{5+(-1)+2}{3}\right) = G(4, \, 2)$$

このように、重心の座標計算は非常に簡単です。 検算として、辺 $BC$ の中点 $L = \left(\dfrac{4+7}{2}, \dfrac{-1+2}{2}\right) = (5.5, \, 0.5)$ を求め、 $G$ が $AL$ を $2:1$ に内分するか確認してみましょう。 $\dfrac{1 \times 1 + 2 \times 5.5}{3} = 4$, $\dfrac{1 \times 5 + 2 \times 0.5}{3} = 2$。確かに一致します。

⚠️ 落とし穴:重心と外心を混同する

重心と外心はどちらも「三角形の中心」ですが、まったく異なる点です。

✕ 誤:重心は3頂点から等距離の点(それは外心の性質)

○ 正:重心は3本の中線の交点で、各中線を $2:1$ に内分する点。 外心は3辺の垂直二等分線の交点で、3頂点から等距離の点(外接円の中心)。

一般の三角形では、重心と外心は異なる位置にあります。 ただし正三角形に限り、重心・外心・内心・垂心はすべて一致します。

🔬 深掘り:ベクトルによる重心の表現

数学Bで学ぶベクトルを使うと、重心の位置ベクトルは次のように書けます:

$$\vec{OG} = \frac{\vec{OA} + \vec{OB} + \vec{OC}}{3}$$

これは「3つの位置ベクトルの算術平均」です。 大学の線形代数では、$n$ 個の点の重心(平均点)を $\dfrac{1}{n}\sum_{i=1}^n \vec{OP_i}$ と一般化します。 高校の「3頂点の平均」はその $n=3$ の特殊な場合です。

3垂心の定義と性質 ─ 垂線が1点で交わるカラクリ

$\triangle ABC$ の各頂点から対辺(またはその延長)に下ろした垂線が1点で交わることは、 直感的にはそれほど自明ではありません。 この交点を垂心($H$)といいます。

なぜ3本の垂線が1点で交わるのでしょうか。実は、その証明には「外心」が使えます。 一見無関係に見える垂心と外心が、巧みにつながっているのです。

💡 ここが本質:垂心の存在証明 = 外心の存在証明に帰着させる

垂心が1点で交わることを直接証明するのは難しそうに見えますが、 次のアイデアで「外心の問題」に変換できます。

各頂点を通り、対辺に平行な直線を引いて、新しい三角形 $\triangle PQR$ を作ります。 すると、$\triangle ABC$ の頂点 $A$ は辺 $QR$ の中点になり、 $\triangle ABC$ における $A$ からの垂線 $AD$ は辺 $QR$ の垂直二等分線になります。

つまり、$\triangle ABC$ の3本の垂線は $\triangle PQR$ の3辺の垂直二等分線にほかならず、 これらは $\triangle PQR$ の外心で1点に交わります。

▷ 3本の垂線が1点で交わることの証明

$\triangle ABC$ の頂点 $A$, $B$, $C$ を通り、それぞれの対辺に平行な直線を引き、 その交点で作られる三角形を $\triangle PQR$ とします($A$ が $QR$ 上、$B$ が $RP$ 上、$C$ が $PQ$ 上)。

Step 1:四角形 $ABCQ$ は $BC \parallel AQ$, $AB \parallel QC$ より平行四辺形なので $AQ = BC$。

同様に、四角形 $ARBC$ も平行四辺形なので $AR = BC$。

よって $AQ = AR$、すなわち $A$ は辺 $QR$ の中点です。

Step 2:$BC \parallel QR$ かつ $AD \perp BC$ なので $AD \perp QR$。

$A$ は $QR$ の中点で、$AD \perp QR$ なので、$AD$ は辺 $QR$ の垂直二等分線です。

Step 3:同様に $BE$ は辺 $RP$ の、$CF$ は辺 $PQ$ の垂直二等分線です。

Step 4:$\triangle PQR$ の3辺の垂直二等分線は $\triangle PQR$ の外心で1点に交わるので、 $AD$, $BE$, $CF$ は1点で交わります。 $\blacksquare$

垂心の位置 ─ 鋭角三角形と鈍角三角形で異なる

垂心の位置は三角形の形状によって変わります。

  • 鋭角三角形:垂心は三角形の内部にある
  • 直角三角形:垂心は直角の頂点と一致する
  • 鈍角三角形:垂心は三角形の外部にある

直角三角形の場合、直角の頂点から対辺(斜辺)への垂線は高さですが、 他の2頂点からの垂線はそれぞれ直角を挟む辺そのものです。 3本の「垂線」はすべて直角の頂点を通るので、垂心は直角の頂点に一致します。

⚠️ 落とし穴:「垂心は三角形の内部にある」と思い込む

✕ 誤:垂心は常に三角形の内部にある(それは内心の性質)

○ 正:垂心は鋭角三角形では内部、直角三角形では直角の頂点、 鈍角三角形では外部にある。

五心のうち、常に三角形の内部にあるのは内心重心だけです。 外心と垂心は三角形の外部に出ることがあります。

垂心と外心の関係 ─ オイラー線

実は、垂心 $H$、重心 $G$、外心 $O$ の3点はつねに一直線上にあり、 しかも $G$ は $OH$ を $1:2$ に内分します。 すなわち $OG : GH = 1 : 2$ です。 この直線をオイラー線といいます(正三角形を除く)。

🔬 深掘り:オイラー線 ── 3つの中心が一直線に並ぶ

レオンハルト・オイラー(1707--1783)は、$\triangle ABC$ の外心 $O$、重心 $G$、垂心 $H$ が つねに一直線上にあり、$OG : GH = 1 : 2$ であることを発見しました。

さらに、九点円(三角形の各辺の中点、各頂点から対辺に下ろした垂線の足、 各頂点と垂心の中点の合計9点を通る円)の中心 $N$ もこのオイラー線上にあり、 $N$ は $OH$ の中点です。

たった3つの「中心」から、幾何学の深い構造が見えてくるのは面白いところです。

4傍心の定義と性質 ─ 三角形の「外側」に接する円

五心の最後は傍心です。 傍心は他の4つの中心と比べるとやや特殊で、1つの三角形に対して3つ存在します。

$\triangle ABC$ の頂点 $A$ に対する傍心 $J_A$ は、次の3本の直線の交点です:

  • $\angle A$ の内角の二等分線
  • $\angle B$ の外角の二等分線
  • $\angle C$ の外角の二等分線

なぜこの3本が1点で交わるのか、内心の証明と同じ考え方で示せます。

▷ 傍心が1点で交わることの証明(概略)

$\angle B$ の外角の二等分線と $\angle C$ の外角の二等分線の交点を $J$ とします。

$J$ から直線 $BC$, 直線 $CA$, 直線 $AB$ に下ろした垂線の足をそれぞれ $D$, $E$, $F$ とします。

Step 1:$J$ は $\angle B$ の外角の二等分線上にあるので、$JD = JF$。

Step 2:$J$ は $\angle C$ の外角の二等分線上にあるので、$JD = JE$。

Step 3:Step 1, 2 より $JE = JF$。 よって $J$ は辺 $CA$ と辺 $AB$(の延長)から等距離にあるので、 $J$ は $\angle A$ の二等分線上にもあります。

したがって、3本の直線は1点 $J$ で交わります。 $\blacksquare$

💡 ここが本質:傍心は「外側に接する円」の中心

傍心 $J_A$ から3辺(またはその延長)への距離がすべて等しいので、 $J_A$ を中心とする円が描けます。この円を傍接円(ぼうせつえん)といいます。

内接円は三角形の内部で3辺に接しますが、傍接円は1辺に内側から接し、 残り2辺の延長に外側から接するのが特徴です。

内心が「3つの内角の二等分線の交点」だったのに対し、 傍心は「1つの内角の二等分線 + 2つの外角の二等分線の交点」です。 内心との対比で覚えるとわかりやすいでしょう。

傍接円の半径

$\triangle ABC$ の面積を $S$、3辺の長さを $a = BC$, $b = CA$, $c = AB$、 半周長を $s = \dfrac{a+b+c}{2}$ とすると、 頂点 $A$ に対する傍接円の半径 $r_A$ は次の公式で求められます:

$$r_A = \frac{S}{s - a}$$

ちなみに、内接円の半径 $r$ は $r = \dfrac{S}{s}$ でした。 分母が $s$ から $s-a$ に変わっただけで、形がよく似ていることに注目してください。

⚠️ 落とし穴:傍心は1つしかないと思ってしまう

✕ 誤:「三角形の傍心」は1つ(他の4つの中心と同じように)

○ 正:傍心は3つある。 どの頂点の内角の二等分線を使うかによって、$J_A$, $J_B$, $J_C$ の3つが存在する。

重心・外心・内心・垂心はそれぞれ1つですが、 傍心だけは3つあります。これは傍心が「1つの内角 + 2つの外角」の組み合わせで定まるためです。

🔬 深掘り:傍接円と内接円の半径の関係

$\triangle ABC$ の内接円の半径を $r$、3つの傍接円の半径を $r_A$, $r_B$, $r_C$ とすると、 次の美しい関係が成り立ちます:

$$\frac{1}{r} = \frac{1}{r_A} + \frac{1}{r_B} + \frac{1}{r_C}$$

この等式は $r = \dfrac{S}{s}$, $r_A = \dfrac{S}{s-a}$, $r_B = \dfrac{S}{s-b}$, $r_C = \dfrac{S}{s-c}$ と $(s-a) + (s-b) + (s-c) = s$ から導けます。 4つの円(内接円と3つの傍接円)の半径が調和級数的な関係で結ばれているのは、幾何学の美しさの一例です。

5俯瞰マップ ─ 五心の比較まとめと全体像

ここまでに学んだ五心(重心・外心・内心・垂心・傍心)を一覧表で整理しましょう。

五心の比較表

名称定義(何の交点か)個数位置重要な性質
重心 $G$ 3本の中線の交点 1 常に内部 中線を $2:1$ に内分。座標は3頂点の平均
外心 $O$ 3辺の垂直二等分線の交点 1 鋭角:内部
直角:斜辺の中点
鈍角:外部
3頂点から等距離。外接円の中心
内心 $I$ 3つの内角の二等分線の交点 1 常に内部 3辺から等距離。内接円の中心
垂心 $H$ 各頂点からの垂線の交点 1 鋭角:内部
直角:直角の頂点
鈍角:外部
外心を利用して存在を証明
傍心 $J$ 1つの内角 + 2つの外角の二等分線の交点 3 常に外部 傍接円の中心。$r_A = \dfrac{S}{s-a}$
⚠️ 落とし穴:五心の定義を混同する

特に混同しやすいのは次の2つのペアです:

✕ 混同例1:「外心 = 3頂点から対辺への垂線の交点」(それは垂心)

○ 正:外心は「3辺の垂直二等分線の交点」、垂心は「3頂点からの垂線の交点」

✕ 混同例2:「内心 = 3本の中線の交点」(それは重心)

○ 正:内心は「3つの角の二等分線の交点」、重心は「3本の中線の交点」

「垂直二等分線」と「垂線」、「角の二等分線」と「中線」は似て非なるものです。 どの線の交点なのかを正確に覚えましょう。

つながりマップ

  • ← 8-1/8-2 外心・内心:外心は垂直二等分線の交点、内心は角の二等分線の交点。垂心の存在証明に外心を利用した。傍心は内心の「外角版」。
  • → 8-4 チェバの定理:3本の中線が1点(重心)で交わることは、チェバの定理の典型的な応用。重心の存在はチェバの定理からも示せる。
  • → 数学B ベクトル:重心の座標 $G = \dfrac{A+B+C}{3}$ はベクトルの位置ベクトルの平均。ベクトルを使うと五心の性質をより簡潔に証明できる。
  • → 第4章 三角比:正弦定理 $\dfrac{a}{\sin A} = 2R$ の $R$ は外接円の半径。三角比を通じて外心・内心の性質と深くつながる。
  • → 大学数学:重心座標・オイラー線・九点円は大学の幾何学で発展的に扱う。五心は射影幾何学やコンピュータグラフィックスでも重要。

📋まとめ

  • 重心:3本の中線の交点。各中線を頂点側から $2:1$ に内分する。座標は $\left(\dfrac{x_1+x_2+x_3}{3}, \dfrac{y_1+y_2+y_3}{3}\right)$
  • 重心と面積:重心は三角形を面積の等しい3つの三角形に分割する(各 $\dfrac{1}{3}$)
  • 垂心:各頂点から対辺に下ろした垂線の交点。存在証明は外心に帰着できる
  • 垂心の位置:鋭角三角形では内部、直角三角形では直角の頂点、鈍角三角形では外部
  • 傍心:1つの内角 + 2つの外角の二等分線の交点。1つの三角形に3つ存在。傍接円の中心
  • 五心の識別:重心(中線)、外心(垂直二等分線)、内心(角の二等分線)、垂心(垂線)、傍心(内角+外角の二等分線)
  • オイラー線:外心 $O$、重心 $G$、垂心 $H$ は一直線上に並び、$OG:GH = 1:2$

確認テスト

Q1. 三角形の重心は、各中線を頂点側からどのような比に内分しますか?

▶ クリックして解答を表示$2:1$ に内分する。頂点から重心までが $\dfrac{2}{3}$、重心から対辺の中点までが $\dfrac{1}{3}$。

Q2. $A(2, 7)$, $B(-1, 1)$, $C(5, 4)$ を頂点とする三角形の重心の座標を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$G\left(\dfrac{2+(-1)+5}{3}, \dfrac{7+1+4}{3}\right) = G(2, 4)$

Q3. 垂心が三角形の外部に位置するのは、三角形がどのような形のときですか?

▶ クリックして解答を表示鈍角三角形のとき。鈍角の対辺への垂線の足が辺の延長上にあるため、垂心は三角形の外部に出る。

Q4. 傍心は1つの三角形に対していくつ存在しますか? また、傍心を中心とする円を何といいますか?

▶ クリックして解答を表示傍心は3つ存在する。傍心を中心とする円を傍接円という。傍接円は1辺に内側から接し、残り2辺の延長に外側から接する。

Q5. 外心 $O$、重心 $G$、垂心 $H$ が一直線上に並ぶとき、その直線を何といいますか? また、$OG:GH$ の比は?

▶ クリックして解答を表示オイラー線という。$OG:GH = 1:2$。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

8-3-1 A 基礎 重心 座標

$\triangle ABC$ の頂点が $A(3, 6)$, $B(-3, 0)$, $C(6, -3)$ であるとき、重心 $G$ の座標と、 中線 $AL$($L$ は辺 $BC$ の中点)の長さを求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$G(2, 1)$、$AL = \dfrac{3\sqrt{10}}{2}$

解説

方針:重心の座標公式を適用し、中線の長さは2点間の距離で求める。

$G\left(\dfrac{3+(-3)+6}{3}, \dfrac{6+0+(-3)}{3}\right) = G(2, 1)$

$L = \left(\dfrac{-3+6}{2}, \dfrac{0+(-3)}{2}\right) = \left(\dfrac{3}{2}, -\dfrac{3}{2}\right)$

$AL = \sqrt{\left(3-\dfrac{3}{2}\right)^2 + \left(6-\left(-\dfrac{3}{2}\right)\right)^2} = \sqrt{\dfrac{9}{4} + \dfrac{225}{4}} = \sqrt{\dfrac{234}{4}} = \dfrac{3\sqrt{26}}{2}$

(検算:$AG = \dfrac{2}{3}AL = \sqrt{(3-2)^2+(6-1)^2} = \sqrt{26}$。$AL = \dfrac{3}{2}\sqrt{26}$。✓)

B 標準レベル

8-3-2 B 標準 重心 面積比

$\triangle ABC$ の辺 $BC$, $CA$, $AB$ の中点をそれぞれ $L$, $M$, $N$ とし、重心を $G$ とする。

(1) $\triangle GBC$ の面積は $\triangle ABC$ の面積の何倍か。

(2) $\triangle LMN$ の面積は $\triangle ABC$ の面積の何倍か。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\dfrac{1}{3}$ 倍  (2) $\dfrac{1}{4}$ 倍

解説

(1) の方針:重心は三角形を面積の等しい3つの三角形に分割する性質を利用。

$\triangle GBC = \triangle GCA = \triangle GAB = \dfrac{1}{3}\triangle ABC$

(2) の方針:中点連結定理により $\triangle LMN \sim \triangle ABC$ で相似比 $1:2$。

面積比は相似比の2乗なので、$\triangle LMN : \triangle ABC = 1^2 : 2^2 = 1 : 4$

よって $\triangle LMN = \dfrac{1}{4}\triangle ABC$。

採点ポイント
  • (1) 重心が三角形を3等分する根拠を示す(3点)
  • (2) 中点連結定理の適用と相似比から面積比を導出(3点)
8-3-3 B 標準 垂心 論述

$\triangle ABC$ が直角三角形($\angle C = 90^\circ$)のとき、垂心 $H$ が頂点 $C$ に一致することを説明せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

垂心は頂点 $C$ と一致する。

解説

方針:各頂点から対辺への垂線が頂点 $C$ を通ることを示す。

$\angle C = 90^\circ$ なので、辺 $CA \perp$ 辺 $CB$ です。

頂点 $B$ から辺 $CA$ への垂線は辺 $CB$($CB \perp CA$)。同様に、頂点 $A$ から辺 $CB$ への垂線は辺 $CA$。

辺 $CA$ と辺 $CB$ はどちらも頂点 $C$ を通るので、これら2本の「垂線」は $C$ で交わる。

さらに、頂点 $C$ から辺 $AB$ への垂線も $C$ を通る($C$ 自身から出発する垂線)。

よって、3本の垂線はすべて $C$ を通り、垂心 $H = C$。 $\blacksquare$

採点ポイント
  • $CA \perp CB$ から2本の垂線が $C$ を通ることを正しく論じている(4点)
  • 3本目の垂線も $C$ を通ることに言及している(2点)

C 発展レベル

8-3-4 C 発展 五心 正三角形 論述

$\triangle ABC$ の重心 $G$ と外心 $O$ が一致するとき、$\triangle ABC$ は正三角形であることを証明せよ。

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解答

$\triangle ABC$ は正三角形である。

解説

方針:$G = O$ の仮定から $AB = BC = CA$ を導く。

辺 $BC$ の中点を $L$ とする。

外心 $O$ は辺 $BC$ の垂直二等分線上にあるので、$O$ と $L$ を結ぶ線分 $OL$ は $BC$ に垂直。

重心 $G$ は中線 $AL$ 上にある。$G = O$ なので、$G$ は $AL$ 上にあり、かつ $GL \perp BC$ である。

$GL$ は中線 $AL$ の一部なので、$AL \perp BC$。

つまり、中線 $AL$ は辺 $BC$ に垂直。$L$ は $BC$ の中点なので、$AL$ は辺 $BC$ の垂直二等分線である。

よって $AB = AC$。

同様に、辺 $CA$ の中点に関して $BC = BA$、辺 $AB$ の中点に関して $CA = CB$ が得られる。

したがって $AB = BC = CA$ となり、$\triangle ABC$ は正三角形。 $\blacksquare$

採点ポイント
  • 外心が垂直二等分線上にあることを正しく使う(3点)
  • 重心が中線上にあることから中線が垂直二等分線になることを導く(3点)
  • 3辺が等しいことの結論を正しく導く(2点)