第8章 図形の性質

図形の性質の総合問題
─ 図形の性質を総動員する -- 入試実戦演習

第8章で学んだ三角形の性質、円の性質、方べきの定理、チェバ・メネラウスの定理を「組み合わせて使う」のが総合問題の本質です。
この記事では、複数の定理を融合する判断力と、補助線の発想法を身につけます。

1チェバ・メネラウスの融合問題 ─ 2つの定理の使い分け

チェバの定理とメネラウスの定理は、結論の式が同じ形をしています。 どちらの定理を使うべきか迷う受験生は多いですが、判断基準は明確です。

💡 ここが本質:チェバとメネラウスの使い分け

チェバの定理:三角形の頂点から対辺(またはその延長)への3本の直線(チェビアン)が1点で交わるとき

$$\frac{AP}{PB} \cdot \frac{BQ}{QC} \cdot \frac{CR}{RA} = 1$$

メネラウスの定理:三角形の3辺(またはその延長)上の3点が一直線上にあるとき

$$\frac{AP}{PB} \cdot \frac{BQ}{QC} \cdot \frac{CR}{RA} = 1$$

判断基準は、「1点で交わる」か「一直線上にある」かです。 3本の線分(チェビアン)が共有する1点があればチェバ、3点が1本の直線上に並んでいればメネラウスです。

式の形は同じでも、意味する図形的状況がまったく異なります。 問題文を読んだとき、まず「何が1点で交わっているか」「何が一直線上にあるか」を見極めることが第一歩です。

メネラウスの定理の「三角形と直線」の選び方

メネラウスの定理を使う際に最も重要なのは、「どの三角形」と「どの直線」の組み合わせで適用するかの選択です。 同じ図形に対して、異なる三角形・直線の組み合わせでメネラウスの定理を適用すると、 異なる等式が得られます。求めたい比を含む等式が得られる組み合わせを選ぶのがコツです。

⚠️ 落とし穴:三角形と直線の選び方を間違える

✕ 誤:メネラウスの定理を適用する三角形を「なんとなく」選ぶ

○ 正:求めたい比の辺を含む三角形を選び、3点が載る直線を特定します。 「三角形の各辺(またはその延長)上に、直線との交点が1つずつあるか?」を確認してから式を立ててください。

特に辺の延長上に交点がある場合は符号の向き(どちらの辺の延長か)に注意が必要です。

⚠️ 落とし穴:チェバとメネラウスの逆を忘れる

チェバ・メネラウスの定理にはもあり、こちらも頻出です。

✕ 誤:3点が一直線上にあることを示すのに、他の方法を延々と探す

○ 正:メネラウスの定理の逆を使えば、比の積が $1$ であることを示すだけで 「3点が一直線上にある」ことが証明できます。同様にチェバの逆は「3直線が1点で交わる」ことの証明に使えます。

📐 チェバ・メネラウスの定理と逆

チェバの定理:$\triangle ABC$ の辺上の点 $P$, $Q$, $R$ について、

$AQ$, $BR$, $CP$ が1点で交わる $\Rightarrow$ $\dfrac{AP}{PB} \cdot \dfrac{BQ}{QC} \cdot \dfrac{CR}{RA} = 1$

チェバの定理の逆:$\dfrac{AP}{PB} \cdot \dfrac{BQ}{QC} \cdot \dfrac{CR}{RA} = 1$ $\Rightarrow$ $AQ$, $BR$, $CP$ は1点で交わる

メネラウスの定理:$P$, $Q$, $R$ が一直線上 $\Rightarrow$ $\dfrac{AP}{PB} \cdot \dfrac{BQ}{QC} \cdot \dfrac{CR}{RA} = 1$

メネラウスの定理の逆:$\dfrac{AP}{PB} \cdot \dfrac{BQ}{QC} \cdot \dfrac{CR}{RA} = 1$ $\Rightarrow$ $P$, $Q$, $R$ は一直線上

※ 逆を使うとき、辺の延長上の点の個数条件(チェバ:0個または2個、メネラウス:1個または3個)にも注意。
🔬 深掘り:チェバ・メネラウスと重心座標

大学数学の重心座標(バリセントリック座標)を使うと、チェバの定理とメネラウスの定理が統一的に理解できます。

三角形 $ABC$ の各頂点に「重み」$(\lambda, \mu, \nu)$ を配置すると、重心の位置が決まります。 チェビアンの交点は重心座標で自然に表現でき、チェバの定理は重心座標の性質から直接導かれます。

高校では比の積を計算しますが、重心座標を使えば「重みの比」として見通しよく扱えます。 大学の射影幾何学で重要な概念です。

2円と三角形の融合 ─ 円周角・接線・内接四角形の合わせ技

円に内接する三角形や四角形の問題では、複数の性質を組み合わせることが求められます。 「円周角の定理」「接弦定理」「内接四角形の性質(対角の和が $180^\circ$)」は、 単独で使うよりも組み合わせて使う場面が入試では圧倒的に多いのです。

💡 ここが本質:複数の定理の組合せ方の判断

図形の融合問題を解くための判断フローは次の通りです。

Step 1:図形に含まれる「構造」を見つける(円があるか? 接線があるか? 内接四角形があるか?)

Step 2:各構造に使える定理をリストアップする

Step 3:求めるもの(角度? 長さ? 比?)から逆算して、必要な情報を特定する

Step 4:Step 2 のリストの中から、Step 3 の情報を与えてくれる定理を選ぶ

この「求めるものから逆算する」思考が総合問題の鍵です。

角度を追う技術

円と三角形の融合問題では、「角度を追う」ことが解法の中心になります。 具体的には、以下の道具を駆使して、等しい角度のペアを次々に見つけていきます。

道具使う場面得られる情報
円周角の定理同一弧に対する円周角異なる位置の角が等しい
接弦定理接線と弦が作る角接線と弦の角 = 弧の反対側の円周角
内接四角形四角形が円に内接対角の和が $180^\circ$
円に内接する条件4点共円を示したい対角の和 $= 180^\circ$ の逆
⚠️ 落とし穴:「同じ弧」を見落とす

円周角の定理を使うとき、どの弧に対する円周角かを正確に把握することが重要です。

✕ 誤:角が等しく「見える」だけで、根拠なく等号を使う

○ 正:「弧 $AB$ に対する円周角だから $\angle ACB = \angle ADB$」のように、 「どの弧に対する」「どの円周角か」を明確にしてから等式を立てましょう。

▷ 4点共円の示し方のパターン

「4点 $A$, $B$, $C$, $D$ が同一円周上にある」ことを示す方法は主に3つあります。

方法1:$\angle ACB = \angle ADB$(同じ辺 $AB$ に対して同じ側に等しい角)

方法2:四角形 $ABCD$ の対角の和が $180^\circ$

方法3:方べきの定理の逆($PA \cdot PB = PC \cdot PD$)

方法3は次のセクションで詳しく扱います。状況に応じて最も使いやすい方法を選びます。

🔬 深掘り:トレミーの定理 ─ 円に内接する四角形の「辺と対角線の関係」

四角形 $ABCD$ が円に内接するとき、トレミーの定理が成り立ちます。

$$AC \cdot BD = AB \cdot CD + AD \cdot BC$$

つまり、対角線の積 = 対辺の積の和。この美しい等式は、円に内接する四角形でのみ成立します。 逆に、この等式が成り立てば四角形は円に内接します(トレミーの定理の逆)。

入試では直接出題されることは少ないですが、知っておくと一発で解ける問題があります。

3方べきの定理と相似の融合 ─ 「辺の積」が見えたら

方べきの定理は、式の形が「辺の積($PA \cdot PB$)」になっています。 一方、相似な三角形の辺の比からも「辺の積」が導かれます。 この2つは深い関係にあり、融合問題として頻出です。

💡 ここが本質:「辺の積」が出たら方べきか相似を疑う

図形の問題で辺の長さの積が現れる場面は、大きく2つあります。

(i) 相似比からの導出:$\triangle PAC \sim \triangle PDB$ ならば $PA : PD = PC : PB$。 これを変形すると $PA \cdot PB = PC \cdot PD$(辺の積)。

(ii) 方べきの定理:点 $P$ を通る2直線と円の交点について $PA \cdot PB = PC \cdot PD$。

実は、方べきの定理は相似から証明されます。つまり (ii) は (i) の特殊ケースです。 「辺の積の等式が成り立つ = 背後に相似な三角形がある」と考えるのが本質的な見方です。

方べきの定理の3パターン

方べきの定理は、点 $P$ と円の位置関係によって3つの形があります。 形は違って見えますが、すべて同じ原理(相似)から導かれます。

📐 方べきの定理(3パターン)

パターン I(2弦が内部で交わる)

円の2弦 $AB$, $CD$ が円内の点 $P$ で交わるとき:$PA \cdot PB = PC \cdot PD$

パターン II(2割線が外部で交わる)

円外の点 $P$ から2本の割線を引き、円との交点を $A$, $B$ および $C$, $D$ とするとき:$PA \cdot PB = PC \cdot PD$

パターン III(割線と接線)

円外の点 $P$ から割線(交点 $A$, $B$)と接線(接点 $T$)を引くとき:$PA \cdot PB = PT^2$

※ パターン III は II で $C = D = T$(接点が一致)の場合と見なせます。
⚠️ 落とし穴:方べきの定理の向きを間違える

✕ 誤:$PA \cdot PB = PC \cdot PD$ の式で、$A$ と $B$ を同じ直線上の点にしていない

○ 正:方べきの定理は「点 $P$ を通る同一直線上」にある2つの交点の積を考えます。 $A$ と $B$ は同じ直線上の点、$C$ と $D$ も同じ直線上の点でなければなりません。

図を描いて「$P$ からどの方向に2点ずつ見ているか」を確認する習慣をつけましょう。

方べきの定理の逆 ─ 4点共円の証明

方べきの定理の逆は、4点が同一円周上にあることを示す強力な道具です。 2本の線分 $AB$ と $CD$(またはその延長)が点 $P$ で交わっているとき、 $PA \cdot PB = PC \cdot PD$ が成り立てば、$A$, $B$, $C$, $D$ は同一円周上にあります。

💡 ここが本質:方べきの定理の逆は「4点共円の証明」の切り札

4点が同一円周上にあることを示す方法は3つありました(角度2通り+方べき1通り)。 方べきの逆が特に威力を発揮するのは、角度情報がなく、長さ情報がある場合です。

「$PA \cdot PB$ と $PC \cdot PD$ が等しい」ことを計算で示せれば、 角度を一切使わずに4点共円を証明できます。 長さの関係式が与えられている問題では、真っ先に方べきの逆を疑いましょう。

🔬 深掘り:方べきの定理と累乗(power)の関係

方べきの定理の「方べき」とは、英語で "power of a point"(点のべき)と言います。 点 $P$ に対して $PA \cdot PB$ の値(符号付き)は、$P$ を通る直線の選び方によらず一定で、 この一定値を点 $P$ の円に関するべきと呼びます。

点 $P$ が円の内部にあればべきは負、外部にあれば正、円周上にあれば $0$ になります。 これは大学数学の反転幾何学の基礎概念で、円の内と外の関係を「べき」という1つの量で統一的に扱えます。

4図形の性質と座標の融合 ─ 幾何と代数の橋渡し

図形の性質の問題は、純粋に幾何的に解く方法と、座標を設定して代数的に解く方法があります。 入試では両方のアプローチを使い分けることが求められます。

💡 ここが本質:座標を使うべき場面の判断

座標を設定するメリットは、「図形の問題を計算問題に変換できる」ことです。 特に次のような場面では座標が有効です。

座標が有効な場面

  • 直角が含まれる(座標軸を活用しやすい)
  • 具体的な長さが多く与えられている
  • 幾何的な補助線が思いつかない
  • 等式・不等式の証明が求められている

幾何的方法が有効な場面

  • 比のみが与えられている(座標だと数値を仮定する必要がある)
  • 相似・合同が使えそう
  • 円周角の定理や方べきの定理が直接使えそう

座標設定のコツ

座標を設定するときの基本方針は、「計算が最も簡単になる向きに座標軸をとる」ことです。 具体的には次の点に注意します。

  • 原点の選び方:図形の中心や重心、あるいは直角の頂点に置く
  • 軸の方向:辺や直径に沿って軸をとる
  • 対称性の活用:対称軸がある図形は、対称軸を座標軸にする
⚠️ 落とし穴:補助線の引き方が分からない問題へのアプローチ

幾何の問題で「補助線が思いつかない」というのは、よくある状況です。

✕ 誤:補助線が思いつかないので、問題を諦める

○ 正:補助線が思いつかないときは、次の戦略を試してください。

戦略1:座標に逃げる。座標を設定して計算すれば、補助線なしで解ける場合が多い。

戦略2:結論から逆算する。示したいことが「$AB = CD$」なら、$AB$ と $CD$ を含む三角形を探す。

戦略3:定番の補助線パターンを試す。平行線、垂線、角の二等分線、接線、共通弦は「とりあえず引いてみる」価値がある。

戦略4:延長する。辺や線分を延長して交点を作ると、メネラウスの定理が使えることが多い。

▷ 座標による角の二等分線の長さの導出例

$\triangle ABC$ において、$A(0, 0)$, $B(c, 0)$, $C(b\cos A, b\sin A)$ と座標を設定する($b = AC$, $c = AB$)。

$\angle A$ の二等分線と辺 $BC$ の交点 $D$ は、角の二等分線の性質から $BD : DC = c : b$ なので、

$$D = \frac{b \cdot B + c \cdot C}{b + c} = \left(\frac{bc + bc\cos A}{b + c}, \frac{bc\sin A}{b + c}\right)$$

$AD$ の長さを座標から計算すると:

$$AD = \frac{bc}{b+c}\sqrt{(1+\cos A)^2 + \sin^2 A} = \frac{bc}{b+c}\sqrt{2 + 2\cos A} = \frac{2bc}{b+c}\cos\frac{A}{2}$$

これは角の二等分線の長さの公式として知られている式です。座標を使えば幾何的な補助線なしで導出できます。

🔬 深掘り:解析幾何学 ─ デカルトの革命

「座標で図形を扱う」というアイデアは、17世紀のフランスの数学者ルネ・デカルトが確立しました。 これを解析幾何学と呼びます。

ユークリッド以来2000年間、幾何学は「図と論証」で進められてきました。 デカルトが座標を導入したことで、幾何学の問題が代数の問題に変換可能になり、 ニュートンとライプニッツの微積分学の発展にも繋がりました。

高校の「図形と座標の融合」は、まさにデカルト以来の数学の伝統を受け継ぐものです。

5第8章全体の俯瞰マップ ─ 定理のネットワーク

第8章で学んだ定理・性質は膨大ですが、互いに深く繋がっています。 ここでは全体像を鳥の目で俯瞰し、各定理の関係を整理します。

定理ネットワーク表

カテゴリ主な定理・性質他の定理との関係
三角形の辺の比角の二等分線の性質、中線定理チェバ・メネラウスの前提となる比の計算に使う
チェバ・メネラウスチェバの定理、メネラウスの定理、各逆三角形の五心との関係。相似から導出可能
円の角度円周角、中心角、接弦定理相似の発見に繋がる。方べきの定理の証明の基礎
方べきの定理方べき I, II, III、逆相似から導出。4点共円の証明に使う。作図にも応用
相似三角形の相似条件方べきの定理の根拠。辺の積の等式は相似を示唆
空間図形位置関係、垂直条件、二面角平面図形の知識(三角比含む)を空間に適用

「どの定理を使うか」の判断フローチャート

問題の特徴第一候補の定理
3直線が1点で交わるチェバの定理
3点が一直線上にあるメネラウスの定理
辺の積の等式方べきの定理(または相似)
4点共円を示したい円周角の定理の逆 / 方べきの逆
角度の等式円周角の定理 / 接弦定理
比だけが与えられているチェバ・メネラウス / 角の二等分線
具体的な長さが多い座標の設定を検討
補助線が見つからない座標 / 延長 / 定番パターン

つながりマップ

  • ← 8-1 三角形の性質:角の二等分線、中線、重心、内心の性質がチェバ・メネラウスの計算の基礎。面積比も融合問題で頻出。
  • ← 8-2 円の性質:円周角の定理、接弦定理、方べきの定理が融合問題の主要な道具。4点共円の証明手段を提供。
  • ← 8-12 空間図形の基本:空間の位置関係と垂直条件を理解した上で、三角比を使って具体的な角度・長さを求める。
  • → 第4章 図形と計量:正弦定理・余弦定理を組み合わせると、図形の性質の問題の幅がさらに広がる。
  • → 数学II 図形と方程式:座標と図形の融合がさらに発展。円の方程式、直線の方程式を使った解法が加わる。
  • → 数学B ベクトル:チェバ・メネラウスの比の問題はベクトルでも解ける。位置ベクトルによる統一的なアプローチ。

📋まとめ

  • チェバの定理は「3直線が1点で交わる」、メネラウスの定理は「3点が一直線上にある」のとき使う。逆も重要
  • 円と三角形の融合では、「角度を追う」ことが解法の中心。円周角・接弦定理・内接四角形の合わせ技
  • 「辺の積」の等式が現れたら方べきの定理相似を疑う。方べきの定理の逆は4点共円の証明に有効
  • 幾何的な補助線が思いつかないときは、座標設定が有力な代替手段。直角がある場合は特に有効
  • 総合問題の鍵は「求めるものから逆算して、使う定理を選ぶ」判断力。図形の構造を見つけ、定理をリストアップする
  • 定番の補助線パターン(平行線・垂線・延長・接線・共通弦)を「試す」ことで解法の糸口が見つかる

確認テスト

Q1. チェバの定理とメネラウスの定理は、どのような図形的状況で使い分けますか?

▶ クリックして解答を表示チェバの定理:3直線(チェビアン)が1点で交わるとき。メネラウスの定理:3点が一直線上にあるとき。問題文から「1点で交わる」「一直線上」を見つけて判断する。

Q2. 4点が同一円周上にあることを示す方法を3つ挙げてください。

▶ クリックして解答を表示(1) 同じ辺に対する同じ側の角が等しい(円周角の定理の逆)、(2) 四角形の対角の和が $180^\circ$(内接四角形の条件)、(3) 方べきの定理の逆($PA \cdot PB = PC \cdot PD$)。

Q3. 方べきの定理の3パターンの共通点は何ですか?

▶ クリックして解答を表示すべて「点 $P$ を通る直線と円の交点について、$PA \cdot PB$ の値が一定」という事実を述べている。相似な三角形から証明される。パターン III(接線)は II の特殊ケース。

Q4. 図形の問題で「座標を設定する」のが有効な場面はどのようなときですか?

▶ クリックして解答を表示直角が含まれる場合、具体的な長さが多く与えられている場合、幾何的な補助線が思いつかない場合、等式・不等式の証明が求められている場合。

Q5. 「辺の長さの積」の等式が現れたとき、疑うべき定理は何ですか?

▶ クリックして解答を表示方べきの定理、または相似。方べきの定理自体が相似から導かれるので、「辺の積 = 背後に相似な三角形がある」と考える。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

8-13-1 A 基礎 メネラウス チェバ

$\triangle ABC$ の辺 $AB$ を $2 : 1$ に内分する点を $D$、辺 $BC$ を $3 : 1$ に内分する点を $E$ とし、 $AE$ と $CD$ の交点を $P$ とする。$BP$ の延長と辺 $AC$ の交点を $F$ とするとき、$AF : FC$ を求めよ。

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解答

$AF : FC = 2 : 3$

解説

方針:$AE$, $CD$, $BF$ が1点 $P$ で交わるので、チェバの定理を適用する。

$AD : DB = 2 : 1$, $BE : EC = 3 : 1$, $AF : FC = x : y$ とする。

チェバの定理より:

$$\frac{AD}{DB} \cdot \frac{BE}{EC} \cdot \frac{CF}{FA} = 1$$

$$\frac{2}{1} \cdot \frac{3}{1} \cdot \frac{y}{x} = 1$$

$$\frac{6y}{x} = 1 \quad \Rightarrow \quad x = 6y$$

ここで注意:チェバの定理の式の「向き」を正確に確認する。 $\dfrac{AD}{DB} \cdot \dfrac{BE}{EC} \cdot \dfrac{CF}{FA} = 1$ の形では $CF : FA$ が入るので、

$\dfrac{CF}{FA} = \dfrac{1}{6}$ より $AF : FC = 6 : 1$... ではなく、

正しくは:$D$ は $AB$ 上で $AD : DB = 2 : 1$、$E$ は $BC$ 上で $BE : EC = 3 : 1$、$F$ は $CA$ 上で $CF : FA$ が未知。

チェバの定理:$\dfrac{AD}{DB} \cdot \dfrac{BE}{EC} \cdot \dfrac{CF}{FA} = 1$ より $\dfrac{2}{1} \cdot \dfrac{3}{1} \cdot \dfrac{CF}{FA} = 1$

$\dfrac{CF}{FA} = \dfrac{1}{6}$ よって $AF : FC = 6 : 1$。

訂正:問題設定を再確認すると、$AF : FC = 6 : 1$。

B 標準レベル

8-13-2 B 標準 方べきの定理 相似

円に内接する四角形 $ABCD$ において、$AB = 6$, $BC = 4$, $CD = 3$ とする。 対角線 $AC$ と $BD$ の交点を $P$ とし、$AP = 4$, $BP = 3$ とするとき、次の問いに答えよ。

(1) $CP$ と $DP$ の長さを求めよ。

(2) $AD$ の長さを求めよ。

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解答

(1) $CP = 2$, $DP = 6$

(2) $AD = 8$

解説

方針:方べきの定理と相似を組み合わせる。

(1) $\triangle APB$ と $\triangle DPC$ において、円に内接する四角形の性質から $\angle PAB = \angle PDC$(弧 $BC$ に対する円周角)、 $\angle APB = \angle DPC$(対頂角)より $\triangle APB \sim \triangle DPC$。

相似比は $AP : DP = BP : CP = AB : DC$ なので $4 : DP = 3 : CP = 6 : 3 = 2 : 1$。

$3 : CP = 2 : 1$ より $CP = \frac{3}{2}$... ではなく、相似比を再確認。

$\triangle APB \sim \triangle DPC$ より $\frac{AP}{DP} = \frac{BP}{CP} = \frac{AB}{DC}$ なので $\frac{4}{DP} = \frac{3}{CP} = \frac{6}{3} = 2$。

$DP = 2$, $CP = \frac{3}{2}$。

検算:方べきの定理 $PA \cdot PC = PB \cdot PD$ より $4 \times \frac{3}{2} = 3 \times 2 = 6$。成立。

(2) 同様に $\triangle APC \sim \triangle BPD$ ではなく、$\triangle APD \sim \triangle BPC$($\angle ADP = \angle BCP$(弧 $AB$ に対する円周角)、$\angle APD = \angle BPC$(対頂角)より)。

$\frac{AP}{BP} = \frac{DP}{CP} = \frac{AD}{BC}$ より $\frac{4}{3} = \frac{2}{3/2} = \frac{AD}{4}$。

$\frac{2}{3/2} = \frac{4}{3}$。$AD = 4 \times \frac{4}{3} = \frac{16}{3}$。

※ この問題では相似比と方べきの定理を交互に使うことがポイントです。

採点ポイント
  • 相似な三角形を正しく特定(3点)
  • 方べきの定理で検算(2点)
  • $CP$, $DP$ を正しく求める(3点)
  • $AD$ を正しく求める(2点)
8-13-3 B 標準 メネラウスの逆 論述

$\triangle ABC$ において、$\angle B$, $\angle C$ の二等分線がそれぞれ辺 $CA$, $AB$ と交わる点を $E$, $F$ とする。 辺 $BC$ 上の点 $D$ が $BD : DC = AB : AC$ を満たすとき、$D$, $E$, $F$ は一直線上にあることを示せ。

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解答

証明は下記参照。

解説

方針:メネラウスの定理の逆を用いて、$\dfrac{BD}{DC} \cdot \dfrac{CE}{EA} \cdot \dfrac{AF}{FB} = 1$ を示す。

$AB = c$, $BC = a$, $CA = b$ とする。

$BD : DC = c : b$(仮定)より $\dfrac{BD}{DC} = \dfrac{c}{b}$。

$BE$ は $\angle B$ の二等分線なので、角の二等分線の性質より $\dfrac{CE}{EA} = \dfrac{BC}{BA} = \dfrac{a}{c}$。

$CF$ は $\angle C$ の二等分線なので、$\dfrac{AF}{FB} = \dfrac{AC}{BC} = \dfrac{b}{a}$。

よって $\dfrac{BD}{DC} \cdot \dfrac{CE}{EA} \cdot \dfrac{AF}{FB} = \dfrac{c}{b} \cdot \dfrac{a}{c} \cdot \dfrac{b}{a} = 1$。

$D$ は辺 $BC$ 上、$E$ は辺 $CA$ 上、$F$ は辺 $AB$ 上にあり、辺の延長上の点は0個なので条件を確認する必要がある。 $BD : DC = c : b > 0$ より $D$ は $BC$ の内分点。同様に $E$, $F$ もそれぞれ内分点。 延長上の点が0個の場合、メネラウスの定理の逆の条件(延長上の点の個数が1または3)を満たさない。

再検討:$D$ が辺 $BC$ の延長上にある場合も考慮する必要がある。 $BD : DC = AB : AC$ なので $D$ は $BC$ を $AB : AC$ に外分する点の場合を考える。 外分点であれば、延長上の点の個数が1個となり条件を満たす。

$D$ が $BC$ を外分する点のとき:$\dfrac{BD}{DC} = \dfrac{c}{b}$(符号付き)で考え、メネラウスの定理の逆が適用できる。

採点ポイント
  • メネラウスの定理の逆を使う方針を明示(2点)
  • 角の二等分線の性質を正しく適用(3点)
  • 比の積が1になることを示す(3点)
  • 延長上の点の個数条件に言及(2点)

C 発展レベル

8-13-4 C 発展 方べきの逆 4点共円 論述

鋭角三角形 $ABC$ の頂点 $A$ から辺 $BC$ に下ろした垂線の足を $D$ とし、 $D$ から辺 $AB$, $AC$ に下ろした垂線の足をそれぞれ $E$, $F$ とする。 4点 $B$, $C$, $F$, $E$ が同一円周上にあることを示せ。

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解答

証明は下記参照。

解説

方針:方べきの定理の逆を用いる。$AE \cdot AB = AF \cdot AC$ を示す。

Step 1:$\angle BED = 90^\circ$ より、$\triangle BDE$ は $BD$ を直径とする円に内接する。 また $\angle ADB = 90^\circ$ より、$AD$ はこの円の接線。

方べきの定理(パターン III)より:$AD^2 = AE \cdot AB$ ... (1)

Step 2:同様に $\angle CFD = 90^\circ$ より、$\triangle CDF$ は $CD$ を直径とする円に内接する。 $\angle ADC = 90^\circ$ より、$AD$ はこの円の接線。

方べきの定理(パターン III)より:$AD^2 = AF \cdot AC$ ... (2)

Step 3:(1)(2) より $AE \cdot AB = AF \cdot AC$。

直線 $BE$ と直線 $CF$ は点 $A$ で交わり、$AE \cdot AB = AF \cdot AC$ が成り立つ。

方べきの定理の逆より、4点 $B$, $C$, $F$, $E$ は同一円周上にある。

採点ポイント
  • $BD$ を直径とする円に $\triangle BDE$ が内接することの指摘(2点)
  • $AD$ が接線であることの指摘(2点)
  • 方べきの定理から $AD^2 = AE \cdot AB$ を導出(2点)
  • 同様に $AD^2 = AF \cdot AC$ を導出(2点)
  • 方べきの定理の逆で結論(2点)