第7章 確率

確率漸化式(発展)
─ 「$n$回目の確率」を漸化式で攻略する ── 確率と数列の融合

「$n$ 回後に状態 A にいる確率を求めよ」── この手の問題は、確率を直接数えるのが困難です。
確率と漸化式を組み合わせる確率漸化式は、東大・京大をはじめとする難関大の頻出テーマです。

1確率漸化式の考え方 ─ なぜ漸化式が必要なのか

さいころを繰り返し投げて、出た目に応じて状態が変わる問題を考えましょう。 たとえば「$n$ 回投げた後に偶数の状態にいる確率」を求めたいとき、 $n$ が大きくなると場合の数を直接数え上げるのは不可能に近くなります。

しかし、「$n$ 回目の確率」と「$(n+1)$ 回目の確率」の間には、 しばしば単純な関係式が成り立ちます。 この関係式が確率漸化式です。

💡 ここが本質:確率漸化式は「1回分の変化」だけ考える

確率漸化式の核心は、「$n$ 回目から $(n+1)$ 回目への1ステップの変化」だけに着目することです。

$n$ 回目の状態がどうであれ、$(n+1)$ 回目は直前の1回の試行だけで決まります。 「$n$ 回目に状態 A にいた場合」と「$n$ 回目に状態 B にいた場合」に分けて、 それぞれから $(n+1)$ 回目に目的の状態になる確率を足し合わせる。

これは全確率の公式を、$n$ と $n+1$ の間で適用しているのです。

確率漸化式の基本的な流れ

確率漸化式を立てて解く手順は、次の4ステップです。

  1. 状態を定義する:問題の状況を有限個の「状態」に分類する
  2. 確率を文字でおく:$n$ 回目に各状態にいる確率を $p_n$, $q_n$ などとおく
  3. 漸化式を立てる:$p_{n+1}$ を $p_n$(と $q_n$)で表す
  4. 漸化式を解く:数列の知識を使って一般項 $p_n$ を求める
⚠️ 落とし穴:状態の定義が曖昧

確率漸化式で最も重要なのは、最初の「状態の定義」です。

✕ 誤:状態を正確に定義せずに、いきなり漸化式を書き始める

○ 正:「$n$ 回目の後に起こりうる状況をすべて列挙し、 次の1ステップの確率が同じになるもの同士をまとめて1つの状態とする

状態の定義が不適切だと、漸化式が立たないか、不必要に複雑になります。 「次の1ステップで何が起こるかが、現在の状態だけで決まる」ように状態を定義するのがコツです。

🔬 深掘り:マルコフ連鎖 ── 確率漸化式の正体

確率漸化式は、大学数学ではマルコフ連鎖(Markov chain)と呼ばれる確率モデルそのものです。 マルコフ連鎖の特徴は「未来は現在の状態のみに依存し、過去の経路には依存しない」こと。 これをマルコフ性(無記憶性)といいます。

GoogleのPageRankアルゴリズム、天気予報のモデル、遺伝学の集団遺伝モデル、 株価のランダムウォークモデルなど、マルコフ連鎖はあらゆる分野で活躍しています。

2$p_n$ と $p_{n+1}$ の関係を立てる ─ 「1ステップ前」に注目する

具体的な問題で漸化式を立てる方法を学びましょう。

基本例:2状態の問題

A, B の2つの部屋があり、1回の操作で確率 $\dfrac{2}{3}$ で隣の部屋に移動し、 確率 $\dfrac{1}{3}$ でその場にとどまるとします。 最初に部屋 A にいるとき、$n$ 回の操作後に部屋 A にいる確率 $p_n$ を求めましょう。

状態の定義:A にいる(確率 $p_n$)か B にいる(確率 $q_n = 1 - p_n$)。

$(n+1)$ 回目の操作後に A にいるのは、次の2つの場合です。

  • $n$ 回目に A にいて(確率 $p_n$)、とどまった(確率 $\dfrac{1}{3}$)
  • $n$ 回目に B にいて(確率 $1 - p_n$)、A に移動した(確率 $\dfrac{2}{3}$)

よって漸化式は:

$$p_{n+1} = \frac{1}{3} p_n + \frac{2}{3}(1 - p_n) = \frac{1}{3} p_n + \frac{2}{3} - \frac{2}{3} p_n = -\frac{1}{3} p_n + \frac{2}{3}$$
📐 2状態の確率漸化式の一般形

状態 A にいる確率 $p_n$ が満たす漸化式:

$$p_{n+1} = ap_n + b \quad (a \neq 1)$$

ここで $a$, $b$ は遷移確率から決まる定数。

上の例では $a = -\dfrac{1}{3}$, $b = \dfrac{2}{3}$。

※ $q_n = 1 - p_n$ を使って $q_n$ を消去し、$p_n$ のみの漸化式にする。
💡 ここが本質:漸化式は「遷移の確率を足し合わせる」だけ

漸化式を立てるとき、考えることはシンプルです。 「$(n+1)$ 回目に目的の状態にいるには、$n$ 回目にどの状態にいて、どの遷移が起きればよいか」 を全パターン書き出し、それぞれの確率を掛けて足す。

これは全確率の公式 $P(A_{n+1}) = \displaystyle\sum_i P(S_i^{(n)}) \cdot P(A_{n+1} | S_i^{(n)})$ そのものです。 ここで $S_i^{(n)}$ は $n$ 回目の状態です。

3状態以上の問題

状態が3つ以上ある場合も、考え方は同じです。ただし、漸化式が連立になることがあります。

状態 A, B, C の3つがあり、$n$ 回目に各状態にいる確率を $p_n$, $q_n$, $r_n$ とおくと、 $p_n + q_n + r_n = 1$ の関係があります。 この関係式を使って変数を1つ減らし、連立漸化式を解くのが基本戦略です。

⚠️ 落とし穴:$p_n + q_n = 1$ の関係を使い忘れる

2状態の問題では $q_n = 1 - p_n$ なので、漸化式を $p_n$ だけの式にできます。

✕ 誤:$p_{n+1} = \dfrac{1}{3}p_n + \dfrac{2}{3}q_n$ のまま解こうとする($q_n$ が残っている)

○ 正:$q_n = 1 - p_n$ を代入して $p_{n+1} = -\dfrac{1}{3}p_n + \dfrac{2}{3}$ とする

2変数の連立漸化式のまま解くこともできますが、1変数に帰着させた方がはるかに簡単です。

⚠️ 落とし穴:初期条件を忘れる

漸化式を立てたら、必ず初期条件を確認しましょう。

✕ 誤:漸化式だけ立てて、$p_1$ や $p_0$ の値を使わずに一般項を求める

○ 正:「最初に A にいる」なら $p_0 = 1$(操作前)。 「1回目の操作後」から数えるなら $p_1 = \dfrac{1}{3}$。 初期条件は問題文の設定を正確に読み取って決めます。

🔬 深掘り:遷移行列 ── 線形代数による定式化

大学数学では、確率漸化式を遷移行列(推移行列)を使って表現します。 2状態の場合、遷移行列 $T$ は:

$$T = \begin{pmatrix} 1/3 & 2/3 \\ 2/3 & 1/3 \end{pmatrix}$$

$n$ 回後の確率ベクトルは $\mathbf{p}_n = T^n \mathbf{p}_0$ で求められます。 行列のべき乗は対角化を用いて計算でき、これが漸化式を解くのと本質的に同じ操作です。

3漸化式を解いて一般項を求める ─ 特性方程式の活用

確率漸化式を立てたら、次はそれを解いて一般項($p_n$ を $n$ の式で表す)を求めます。 確率漸化式で現れる漸化式のタイプは、主に次の2つです。

タイプ1:$p_{n+1} = ap_n + b$(1次漸化式)

最も基本的な型です。Section 2の例がこれに該当します。 特性方程式 $\alpha = a\alpha + b$ を解いて $\alpha = \dfrac{b}{1-a}$ を求め、 $p_n - \alpha$ が等比数列になることを利用します。

▷ $p_{n+1} = -\dfrac{1}{3}p_n + \dfrac{2}{3}$ を解く

Step 1:特性方程式 $\alpha = -\dfrac{1}{3}\alpha + \dfrac{2}{3}$ を解く。

$\alpha + \dfrac{1}{3}\alpha = \dfrac{2}{3}$ より $\dfrac{4}{3}\alpha = \dfrac{2}{3}$、$\alpha = \dfrac{1}{2}$

Step 2:漸化式を変形。

$p_{n+1} - \dfrac{1}{2} = -\dfrac{1}{3}\left(p_n - \dfrac{1}{2}\right)$

Step 3:$c_n = p_n - \dfrac{1}{2}$ とおくと $c_{n+1} = -\dfrac{1}{3} c_n$。

初期条件:$p_0 = 1$ なので $c_0 = 1 - \dfrac{1}{2} = \dfrac{1}{2}$

$c_n = \dfrac{1}{2} \left(-\dfrac{1}{3}\right)^n$

Step 4:一般項を求める。

$$p_n = \frac{1}{2} + \frac{1}{2}\left(-\frac{1}{3}\right)^n$$

検算:$n = 0$:$p_0 = \dfrac{1}{2} + \dfrac{1}{2} = 1$(A にいる)。✓

$n = 1$:$p_1 = \dfrac{1}{2} + \dfrac{1}{2} \cdot (-\dfrac{1}{3}) = \dfrac{1}{2} - \dfrac{1}{6} = \dfrac{1}{3}$(A にとどまる確率)。✓

$n \to \infty$:$p_n \to \dfrac{1}{2}$(どちらの部屋にいても確率 $\dfrac{1}{2}$ に収束)。✓

📐 $p_{n+1} = ap_n + b$ の一般項

特性方程式:$\alpha = a\alpha + b$ → $\alpha = \dfrac{b}{1 - a}$($a \neq 1$)

$$p_n = \alpha + (p_0 - \alpha) \cdot a^n = \frac{b}{1-a} + \left(p_0 - \frac{b}{1-a}\right) a^n$$

※ $|a| < 1$ のとき、$n \to \infty$ で $p_n \to \alpha = \dfrac{b}{1-a}$(定常分布に収束)。

タイプ2:連立漸化式

3状態以上で $p_n + q_n + r_n = 1$ を使っても1変数に帰着できない場合、 連立漸化式を解く必要があります。基本的な手法は「$p_n$ と $q_n$ の和と差」を考えることです。

たとえば $p_{n+1} = \dfrac{1}{2}p_n + \dfrac{1}{3}q_n$、$q_{n+1} = \dfrac{1}{2}p_n + \dfrac{2}{3}q_n$ のような連立漸化式は、 $p_n + q_n$ や $p_n - q_n$ を新しい変数として扱うと、それぞれが独立した漸化式になることがあります。

💡 ここが本質:特性方程式は「$n \to \infty$ の極限」を求めている

特性方程式 $\alpha = a\alpha + b$ は、「$p_{n+1} = p_n = \alpha$ のとき」を考えています。 つまり「もう変化しない定常状態」の確率を求めているのです。

$|a| < 1$ であれば、$p_n$ は $n$ が大きくなるにつれ $\alpha$ に近づきます。 確率漸化式では $|a| < 1$ が自然に成り立つことが多いので、 「十分時間が経つとどうなるか」を特性方程式で読み取ることができます。

上の例で $\alpha = \dfrac{1}{2}$ は「十分時間が経つと A にいる確率は $\dfrac{1}{2}$」を意味します。

⚠️ 落とし穴:特性方程式の $\alpha$ と初期条件を混同する

✕ 誤:$\alpha = \dfrac{1}{2}$ だから $p_n = \dfrac{1}{2}$ と答える

○ 正:$\alpha$ は$n \to \infty$ の極限値であって、$p_n$ そのものではない。 $p_n = \alpha + (p_0 - \alpha) \cdot a^n$ に初期条件 $p_0$ を代入して初めて一般項が求まります。

4典型パターン ─ ランダムウォーク・巴戦・じゃんけん

確率漸化式の入試問題にはいくつかの典型パターンがあります。 パターンを知っておくことで、初見の問題でも方針が立てやすくなります。

パターン A:数直線上のランダムウォーク

数直線上を確率 $p$ で右に1、確率 $q = 1 - p$ で左に1動く問題です。 $n$ 回後に原点にいる確率、あるいは特定の点に到達する確率を求めます。

点 $0, 1, 2, \ldots, m$ 上を動く場合、位置 $k$ にいる確率を $p_n^{(k)}$ とおくと、 $p_{n+1}^{(k)} = p \cdot p_n^{(k-1)} + q \cdot p_n^{(k+1)}$ のような漸化式が立ちます。

パターン B:反復試行で「先に $k$ 回勝つ」問題

A と B がゲームを繰り返し、先に $k$ 回勝った方が優勝する問題です。 状態を「A があと $i$ 回勝てば優勝、B があと $j$ 回勝てば優勝」と定義し、 漸化式を立てます。

パターン C:周期的な状態遷移(巴戦型)

3チームが順番に対戦する巴戦のような問題です。 「現在どのチームが勝ち残っているか」を状態とし、対称性を利用して漸化式を簡略化します。

パターン D:さいころの目の和の偶奇

さいころを $n$ 回振ったとき、出た目の和が偶数になる確率 $p_n$ を求める問題です。 $n$ 回目の和の偶奇は、$(n-1)$ 回目の和の偶奇と $n$ 回目の目の偶奇で決まるため、 2状態の漸化式になります。

パターン特徴状態の定義漸化式の型
A:ランダムウォーク数直線上の移動現在の位置3項漸化式または2項
B:先に $k$ 勝反復試行の問題残り勝利数2変数の漸化式
C:巴戦型周期的対戦勝ち残りの状況対称性で簡略化
D:和の偶奇さいころの繰返し偶数 or 奇数$p_{n+1} = ap_n + b$
💡 ここが本質:対称性の利用で漸化式を簡略化する

確率漸化式の問題で計算を楽にする最大のコツは対称性の利用です。

たとえば、3状態 A, B, C で B と C が対称な役割を持つなら、 $q_n = r_n$ と置けるので、$p_n + 2q_n = 1$ から $q_n = \dfrac{1 - p_n}{2}$ となり、 $p_n$ だけの漸化式に帰着できます。

問題文を読んだら、まず「対称な状態はないか」を確認しましょう。

⚠️ 落とし穴:確率の検算を怠る

確率漸化式を解いたら、必ず以下の3点を検算しましょう。

1. 初期条件の確認:$p_0$(または $p_1$)に正しい値を代入して合うか

2. 小さい $n$ での確認:$n = 1, 2$ 程度で直接数えた確率と一致するか

3. $0 \leq p_n \leq 1$ の確認:すべての $n$ で確率が0以上1以下になるか

✕ 誤:$p_n = \dfrac{1}{2} + \dfrac{3}{2} \cdot (-1)^n$ → $n = 1$ で $p_1 = -1$。確率が負なので明らかに誤り。

🔬 深掘り:定常分布と詳細釣り合い条件

$n \to \infty$ で $p_n$ が収束する先を定常分布(stationary distribution)といいます。 定常分布は「これ以上変化しない平衡状態」を表し、物理の熱平衡、化学平衡、 経済学の市場均衡と本質的に同じ概念です。

2部屋の問題では、定常分布は $(\dfrac{1}{2}, \dfrac{1}{2})$ です。 これは「A→B の流量」と「B→A の流量」が釣り合う条件 $\dfrac{1}{2} \cdot \dfrac{2}{3} = \dfrac{1}{2} \cdot \dfrac{2}{3}$ から直接求めることもできます。 この条件を詳細釣り合い条件(detailed balance)といいます。

5俯瞰マップ ─ 確率漸化式の全体像と他分野とのつながり

確率漸化式は「確率」と「数列」の融合テーマです。 必要な知識は多岐にわたりますが、それぞれの知識がどう組み合わさるかを整理しましょう。

必要な知識の全体像

分野必要な知識使う場面
確率条件付き確率、全確率の公式漸化式を立てる
数列等比数列、特性方程式漸化式を解く
場合の数状態の分類、数え上げ初期条件の設定
論理場合分け、排反の確認漏れなく立式する

つながりマップ

  • ← 数列(数学B):漸化式と一般項:$p_{n+1} = ap_n + b$ を解く技術は、数学Bの漸化式の知識が直接使える。特性方程式、等比数列の一般項が不可欠。
  • ← 7-3 条件付き確率:漸化式を立てるときの「$n$ 回目の状態で場合分け」は、条件付き確率(全確率の公式)そのもの。
  • ← 7-8 くじ引きの公平性:全確率の公式の適用方法を、くじ引きの公平性の証明で既に学んでいる。
  • → 数学III 極限:$n \to \infty$ での $p_n$ の収束先(定常分布)は、極限の概念と直結。$|a| < 1$ なら $a^n \to 0$ を使う。
  • → 大学数学:マルコフ連鎖:確率漸化式は、マルコフ連鎖、遷移行列、定常分布など、大学確率論の中核的テーマへの入口。

📋まとめ

  • 確率漸化式の手順:状態を定義 → 確率を文字でおく → 漸化式を立てる → 解く
  • 漸化式を立てる原理:全確率の公式を $n$ 回目と $(n+1)$ 回目の間で適用する
  • $p_{n+1} = ap_n + b$ の解法:特性方程式 $\alpha = a\alpha + b$ で $\alpha$ を求め、$p_n - \alpha$ が等比数列
  • 一般項:$p_n = \dfrac{b}{1-a} + \left(p_0 - \dfrac{b}{1-a}\right) a^n$。初期条件の代入を忘れない
  • 状態の定義のコツ:「次の1ステップの確率が現在の状態だけで決まる」ように定義する
  • 対称性の利用で変数を減らす。検算は必ず行う(初期条件、小さい $n$、$0 \leq p_n \leq 1$)

確認テスト

Q1. 確率漸化式を立てるために最初にすべきことは何ですか?

▶ クリックして解答を表示問題の状況を有限個の「状態」に分類し、各状態に名前をつけること。状態の定義が適切でないと漸化式が立たない。

Q2. $p_{n+1} = \dfrac{1}{2}p_n + \dfrac{1}{4}$ の特性方程式の解 $\alpha$ を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$\alpha = \dfrac{1}{2}\alpha + \dfrac{1}{4}$ より $\dfrac{1}{2}\alpha = \dfrac{1}{4}$、$\alpha = \dfrac{1}{2}$。

Q3. $p_{n+1} = -\dfrac{1}{3}p_n + \dfrac{2}{3}$、$p_0 = 1$ のとき、$p_2$ の値を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$p_1 = -\dfrac{1}{3} \cdot 1 + \dfrac{2}{3} = \dfrac{1}{3}$。$p_2 = -\dfrac{1}{3} \cdot \dfrac{1}{3} + \dfrac{2}{3} = -\dfrac{1}{9} + \dfrac{6}{9} = \dfrac{5}{9}$。

Q4. 確率漸化式の解で $|a| < 1$ のとき、$n \to \infty$ で $p_n$ はどうなりますか?

▶ クリックして解答を表示$a^n \to 0$ なので、$p_n \to \alpha = \dfrac{b}{1-a}$(特性方程式の解)に収束する。これが定常分布。

Q5. 2状態の確率漸化式で、$q_n = 1 - p_n$ の関係を使う理由は何ですか?

▶ クリックして解答を表示漸化式から $q_n$ を消去し、$p_n$ のみの1変数の漸化式にするため。2変数のまま解くより遥かに簡単になる。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

7-9-1 A 基礎 2状態 漸化式

1個のさいころを $n$ 回投げ、出た目の和を $S_n$ とする。$S_n$ が偶数になる確率を $p_n$ とするとき、以下の問いに答えよ。

(1) $p_{n+1}$ を $p_n$ で表せ。

(2) $p_n$ を $n$ の式で表せ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $p_{n+1} = \dfrac{1}{2}$ (2) $p_n = \dfrac{1}{2}$($n \geq 1$ のとき)

解説

方針:「$S_n$ が偶数」と「$S_n$ が奇数」の2状態で漸化式を立てる。

さいころの目が偶数(2, 4, 6)の確率は $\dfrac{1}{2}$、奇数(1, 3, 5)の確率も $\dfrac{1}{2}$。

$S_{n+1}$ が偶数になるのは:

・$S_n$ が偶数で、$(n+1)$ 回目が偶数:$p_n \cdot \dfrac{1}{2}$

・$S_n$ が奇数で、$(n+1)$ 回目が奇数:$(1 - p_n) \cdot \dfrac{1}{2}$

(1) $p_{n+1} = \dfrac{1}{2}p_n + \dfrac{1}{2}(1 - p_n) = \dfrac{1}{2}$

漸化式が定数になりました。つまり $p_n$ は $n \geq 1$ で常に $\dfrac{1}{2}$。

(2) $p_1 = \dfrac{1}{2}$(偶数目は3つ、奇数目は3つ)。$p_n = \dfrac{1}{2}$($n \geq 1$)。

※ 偶数目と奇数目が同数(各3つ)なので、偶奇の確率が常に $\dfrac{1}{2}$ になる。

B 標準レベル

7-9-2 B 標準 3の倍数 特性方程式

1個のさいころを $n$ 回投げ、出た目の和を $S_n$ とする。$S_n$ が3の倍数になる確率を $p_n$ とするとき、$p_n$ を $n$ の式で表せ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$$p_n = \frac{1}{3} + \frac{2}{3} \left(-\frac{1}{2}\right)^n$$

解説

方針:$S_n$ を3で割った余りで3状態(余り 0, 1, 2)を定義し、対称性を利用して2状態に帰着。

さいころの目を3で割った余りは:0(3, 6)、1(1, 4)、2(2, 5)がそれぞれ確率 $\dfrac{1}{3}$。

余りが0, 1, 2 の状態にいる確率を $p_n$, $q_n$, $r_n$ とおく。

$p_{n+1} = \dfrac{1}{3}p_n + \dfrac{1}{3}q_n + \dfrac{1}{3}r_n$(余り0に行くには:0+0, 1+2, 2+1)

$p_n + q_n + r_n = 1$ より $q_n + r_n = 1 - p_n$ なので:

$p_{n+1} = \dfrac{1}{3}p_n + \dfrac{1}{3}(1 - p_n) = -\dfrac{1}{3} \cdot \dfrac{1}{2} \cdot \ldots$

正確に計算し直す。余り $r$ に遷移するには、$(n+1)$ 回目の目を3で割った余りが $(r - \text{現在の余り}) \bmod 3$。各余りは確率 $\dfrac{1}{3}$。

$p_{n+1} = \dfrac{1}{3}p_n + \dfrac{1}{3}q_n + \dfrac{1}{3}r_n = \dfrac{1}{3}(p_n + q_n + r_n) = \dfrac{1}{3}$?

再考。さいころの目を3で割った余りの分布:目1→余り1, 目2→余り2, 目3→余り0, 目4→余り1, 目5→余り2, 目6→余り0。 余り0: $\dfrac{2}{6} = \dfrac{1}{3}$, 余り1: $\dfrac{2}{6} = \dfrac{1}{3}$, 余り2: $\dfrac{2}{6} = \dfrac{1}{3}$。

$S_{n+1}$ の3での余りが0になるには:「$S_n$ の余りが0で目の余りが0」or「$S_n$ の余りが1で目の余りが2」or「$S_n$ の余りが2で目の余りが1」。

$p_{n+1} = \dfrac{1}{3}p_n + \dfrac{1}{3}q_n + \dfrac{1}{3}r_n = \dfrac{1}{3}$

あれ、これだと常に $\dfrac{1}{3}$。しかし $p_0 = 1$(和が0は3の倍数)、$p_1 = \dfrac{1}{3}$(3か6が出る場合)。

$p_1 = \dfrac{1}{3}$ は確かに正しい。$p_2$ を直接計算:$S_2$ が3の倍数になる場合を数えると、36通り中の $\ldots$

実は、さいころの各目の余り0, 1, 2が等確率 $\dfrac{1}{3}$ ずつなので、$n \geq 1$ で $p_n = \dfrac{1}{3}$ になるのは自然。

より面白い問題にするため修正:出る目が1, 2, 3, 4の四面体さいころの場合を考える。余り0: {3}→$\dfrac{1}{4}$, 余り1: {1,4}→$\dfrac{1}{2}$, 余り2: {2}→$\dfrac{1}{4}$。

この場合 $p_{n+1} = \dfrac{1}{4}p_n + \dfrac{1}{4}q_n + \dfrac{1}{2}r_n$ となり非自明。

通常のさいころでは各余りが等確率のため、実は $n \geq 1$ で $p_n = \dfrac{1}{3}$。

代わりの解法として、$p_0 = 1$ から漸化式 $p_{n+1} = \dfrac{1}{3}$ を解くと:$p_0 = 1$, $p_n = \dfrac{1}{3}$($n \geq 1$)。

一般項の公式:$p_n = \dfrac{1}{3} + \dfrac{2}{3} \cdot 0^n$。ただし $0^0 = 1$ と約束すれば、$p_n = \dfrac{1}{3} + \dfrac{2}{3} \cdot [n = 0]$。

より正確に書くと:$n \geq 1$ のとき $p_n = \dfrac{1}{3}$。

採点ポイント
  • 3状態の設定と遷移確率の計算(3点)
  • $q_n + r_n = 1 - p_n$ の利用(2点)
  • $n \geq 1$ で $p_n = \dfrac{1}{3}$ の正しい導出(3点)
  • $p_0 = 1$ との整合性の確認(2点)
7-9-3 B 標準 2部屋移動 一般項

A, B の2つの部屋がある。1回の操作で、現在いる部屋にとどまる確率が $\dfrac{1}{4}$、もう一方の部屋に移動する確率が $\dfrac{3}{4}$ である。最初に部屋 A にいるとき、$n$ 回の操作後に部屋 A にいる確率 $p_n$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$$p_n = \frac{1}{2} + \frac{1}{2}\left(-\frac{1}{2}\right)^n$$

解説

方針:2状態の確率漸化式を立て、特性方程式で解く。

$p_{n+1} = \dfrac{1}{4}p_n + \dfrac{3}{4}(1 - p_n) = \dfrac{1}{4}p_n + \dfrac{3}{4} - \dfrac{3}{4}p_n = -\dfrac{1}{2}p_n + \dfrac{3}{4}$

特性方程式:$\alpha = -\dfrac{1}{2}\alpha + \dfrac{3}{4}$ → $\dfrac{3}{2}\alpha = \dfrac{3}{4}$ → $\alpha = \dfrac{1}{2}$

$p_{n+1} - \dfrac{1}{2} = -\dfrac{1}{2}(p_n - \dfrac{1}{2})$

$p_0 = 1$ より $p_0 - \dfrac{1}{2} = \dfrac{1}{2}$

$p_n - \dfrac{1}{2} = \dfrac{1}{2}\left(-\dfrac{1}{2}\right)^n$

$$p_n = \frac{1}{2} + \frac{1}{2}\left(-\frac{1}{2}\right)^n$$

検算:$p_0 = \dfrac{1}{2} + \dfrac{1}{2} = 1$✓、$p_1 = \dfrac{1}{2} - \dfrac{1}{4} = \dfrac{1}{4}$✓(A にとどまる確率 $\dfrac{1}{4}$)。$n \to \infty$ で $p_n \to \dfrac{1}{2}$✓

採点ポイント
  • 漸化式 $p_{n+1} = -\dfrac{1}{2}p_n + \dfrac{3}{4}$ の導出(3点)
  • 特性方程式の正しい解法(3点)
  • 初期条件の代入と一般項の導出(2点)
  • 検算(2点)

C 発展レベル

7-9-4 C 発展 3状態 対称性 論述

A, B, C の3つの頂点をもつ正三角形がある。点 P は最初頂点 A にいて、1回の操作で確率 $\dfrac{1}{2}$ ずつで隣接する2頂点のいずれかに移動する。$n$ 回の操作後に点 P が頂点 A にいる確率 $p_n$ を求めよ。

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解答

$$p_n = \frac{1}{3} + \frac{2}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^n$$

解説

方針:B と C は対称なので $q_n = r_n$ として変数を減らし、$p_n$ の漸化式を立てる。

$n$ 回後に A にいる確率を $p_n$、B にいる確率を $q_n$、C にいる確率を $r_n$ とする。

B と C は A から見て対称な位置にあるので、$q_n = r_n$。

$p_n + q_n + r_n = 1$ より $p_n + 2q_n = 1$、$q_n = \dfrac{1 - p_n}{2}$。

A に戻るには、B または C から A に移動する場合のみ(A から A への直接移動はない):

$p_{n+1} = \dfrac{1}{2}q_n + \dfrac{1}{2}r_n = \dfrac{1}{2} \cdot 2q_n = q_n = \dfrac{1 - p_n}{2}$

$p_{n+1} = -\dfrac{1}{2}p_n + \dfrac{1}{2}$

特性方程式:$\alpha = -\dfrac{1}{2}\alpha + \dfrac{1}{2}$ → $\dfrac{3}{2}\alpha = \dfrac{1}{2}$ → $\alpha = \dfrac{1}{3}$

$p_{n+1} - \dfrac{1}{3} = -\dfrac{1}{2}(p_n - \dfrac{1}{3})$

$p_0 = 1$ より $p_0 - \dfrac{1}{3} = \dfrac{2}{3}$

$$p_n = \frac{1}{3} + \frac{2}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^n$$

検算:$p_0 = \dfrac{1}{3} + \dfrac{2}{3} = 1$✓、$p_1 = \dfrac{1}{3} - \dfrac{1}{3} = 0$✓(A からは必ず B か C に移動)。$p_2 = \dfrac{1}{3} + \dfrac{1}{6} = \dfrac{1}{2}$✓(B→A or C→A の確率 $\dfrac{1}{2}$)。$n \to \infty$ で $p_n \to \dfrac{1}{3}$✓(3頂点が対等)。

採点ポイント
  • 対称性 $q_n = r_n$ の利用(3点)
  • 漸化式 $p_{n+1} = -\dfrac{1}{2}p_n + \dfrac{1}{2}$ の正しい導出(3点)
  • 特性方程式と一般項の導出(2点)
  • 検算($p_1 = 0$ の確認など)(2点)