第7章 確率

くじ引きの公平性
─ 「先に引いても後に引いても同じ」── なぜ公平なのか

くじ引きで「先に引いた方が有利」と感じたことはありませんか?
実は、先に引いても後に引いても当たる確率は同じです。この直感に反する事実を、数学的に証明します。

1くじ引きの公平性の証明 ─ なぜ順番は確率に影響しないのか

10本のくじの中に当たりが3本あるとしましょう。 $a$, $b$ の2人がこの順に1本ずつくじを引きます(引いたくじは戻しません)。 「先に引く $a$ の方が有利では?」── この疑問に答えるのがくじ引きの公平性です。

結論を先に述べると、$a$ が当たる確率も $b$ が当たる確率も、どちらも $\dfrac{3}{10}$ です。 順番に関係なく、全員の当たる確率は等しい。これがくじ引きの公平性です。

$a$(1番目)が当たる確率

$a$ が当たりくじを引く確率は明らかです。10本中3本が当たりなので、

$$P(a\text{ が当たり}) = \frac{3}{10}$$

$b$(2番目)が当たる確率

$b$ の確率を求めるには、$a$ の結果で場合分けする必要があります。 $b$ が引く時点では、$a$ がすでに1本引いた後なので、残りは9本です。

▷ $b$ が当たる確率の計算

場合1:$a$ が当たりだった場合

$a$ が当たりを引く確率:$\dfrac{3}{10}$

このとき残り9本中、当たりは2本。$b$ が当たる確率:$\dfrac{2}{9}$

場合2:$a$ がはずれだった場合

$a$ がはずれを引く確率:$\dfrac{7}{10}$

このとき残り9本中、当たりは3本。$b$ が当たる確率:$\dfrac{3}{9}$

$b$ が当たる確率(全確率の公式):

$$P(b\text{ が当たり}) = \frac{3}{10} \times \frac{2}{9} + \frac{7}{10} \times \frac{3}{9} = \frac{6}{90} + \frac{21}{90} = \frac{27}{90} = \frac{3}{10}$$

$a$ と全く同じ $\dfrac{3}{10}$ になりました。

💡 ここが本質:「場合分けして足すと、分母が共通になる」仕組み

なぜ $b$ の確率が $a$ と同じになるのでしょうか。計算のカラクリを見てみましょう。

$b$ が当たる確率は $\dfrac{3}{10} \cdot \dfrac{2}{9} + \dfrac{7}{10} \cdot \dfrac{3}{9}$ でした。 分子を展開すると $3 \times 2 + 7 \times 3 = 6 + 21 = 27$ です。

一方、10本から2本を順に引く全パターンは $10 \times 9 = 90$ 通り。 そのうち $b$ が当たりになるのは $3 \times 2 + 7 \times 3 = 27$ 通り。

実はこれは「10本のくじから $b$ の位置に当たりが来る並べ方」を数えているのと同じです。 10本のうち当たりは3本なので、$b$ の位置に当たりが来る確率は $\dfrac{3}{10}$。 順番に関係なく、各位置に当たりが来る確率は常に $\dfrac{3}{10}$ です。

💡 ここが本質:「並べ方」で考えれば一瞬でわかる

くじ引きの公平性を最も簡潔に理解する方法は、「全員分のくじをあらかじめ並べておく」という発想です。

10本のくじを横一列に並べる並べ方は $10!$ 通り。 このうち、$k$ 番目の位置に当たりくじが来る並べ方を数えると、 $k$ 番目に当たり3本のいずれかを置く方法が $3$ 通り、残り9本の並べ方が $9!$ 通りなので、$3 \times 9!$ 通り。

$$P(k\text{番目が当たり}) = \frac{3 \times 9!}{10!} = \frac{3}{10}$$

$k$ がどの番号でも同じ値になります。これが公平性の最も本質的な証明です。

⚠️ 落とし穴:「$a$ が当たりを引いたら、$b$ の当たる確率は下がる」と考えてしまう

✕ 誤:$a$ が当たりを引いたら残りの当たりが減るから、$b$ は不利

○ 正:$a$ が当たりを引いたとき $b$ の条件付き確率は確かに $\dfrac{2}{9}$ に下がります。 しかし、$a$ がはずれを引いたとき $b$ の条件付き確率は $\dfrac{3}{9}$ に上がります。 $a$ の結果を知らない段階では、この2つが加重平均されて $\dfrac{3}{10}$ になるのです。

「条件付き確率が変わること」と「事前の確率が変わること」を混同しないようにしましょう。

🔬 深掘り:全確率の公式(Law of Total Probability)

上の計算で使った「場合分けして足す」手法は、大学数学では全確率の公式(全確率の法則)と呼ばれます。

事象 $B_1, B_2, \ldots, B_n$ が互いに排反で全体を覆うとき、任意の事象 $A$ に対して $P(A) = \displaystyle\sum_{i=1}^{n} P(B_i) P_{{B_i}}(A)$ が成り立ちます。

くじ引きでは $B_1$($a$ が当たり)と $B_2$($a$ がはずれ)で場合分けし、 $A$($b$ が当たり)の確率を求めたわけです。

2復元抽出 vs 非復元抽出 ─ 「戻す」と「戻さない」の違い

くじ引きの問題では、引いたくじをもとに戻すかどうかで確率が大きく変わります。 この条件は見落としやすいので、問題文を注意深く読む必要があります。

復元抽出(もとに戻す場合)

引いたくじをもとに戻す場合を復元抽出といいます。 このとき、各回の試行は完全に同じ条件で行われるため、各回の確率は常に一定です。

10本中3本が当たりのくじから、もとに戻して2回引く場合:

  • 1回目に当たる確率:$\dfrac{3}{10}$
  • 2回目に当たる確率:$\dfrac{3}{10}$(1回目の結果に関係なく)

復元抽出では、各回の試行は独立です。 前の結果が後の確率に一切影響しません。

非復元抽出(もとに戻さない場合)

引いたくじをもとに戻さない場合を非復元抽出といいます。 通常のくじ引きはこちらです。このとき、各回の条件付き確率は前の結果によって変わります。

しかし、Section 1で証明したように、事前の(条件なしの)確率は変わりません。 これが公平性の核心です。

📐 復元抽出と非復元抽出の比較

復元抽出(もとに戻す)

・各回の試行は独立

・$k$ 回目に当たる確率:$\dfrac{r}{n}$(常に一定)

非復元抽出(もとに戻さない)

・各回の試行は従属(前の結果に依存)

・$k$ 回目に当たる確率:$\dfrac{r}{n}$(事前確率は一定

・条件付き確率は変動するが、加重平均すると同じ値になる

※ $n$:くじの総数、$r$:当たりくじの本数
💡 ここが本質:非復元抽出でも公平なのは「情報がないから」

非復元抽出で $b$ が引くとき、残りのくじの構成は $a$ の結果によって変わります。 しかし、$b$ が引く前に $a$ の結果を知らなければ、 $b$ にとっての確率は $a$ の結果で場合分けした加重平均です。

公平性とは「事前に(他の人の結果を知る前に)確率が等しい」ということです。 これは「情報がない状態での確率」が等しいことを意味しています。

⚠️ 落とし穴:復元抽出と非復元抽出を取り違える

問題文に「もとに戻す」「もとに戻さない」のどちらが書かれているかは、確率計算の根幹に関わります。

✕ 誤:「くじ引き」とあるだけで、何も考えず非復元抽出として計算する

○ 正:問題文で「もとに戻す」と指定されていれば復元抽出。 特に指定がなく「くじ引き」とだけあれば、通常は非復元抽出(一般的なくじ引きはもとに戻さない)。

ただし問題によって異なるので、必ず問題文の条件を確認してください。

⚠️ 落とし穴:復元抽出で「公平性の証明」を使ってしまう

復元抽出の場合、各回の試行は独立なので、$k$ 番目の当たる確率は「場合分けして足す」までもなく $\dfrac{r}{n}$ です。

✕ 誤:復元抽出なのにわざわざ場合分けして全確率の公式を使う(無駄な計算)

○ 正:復元抽出では各回が独立なので、直接 $\dfrac{r}{n}$ と答えてよい。 場合分けが必要なのは非復元抽出のときです。

3条件付き確率による理解 ─ 「前の人の結果を知ったら?」

くじ引きの公平性は「事前の確率が等しい」ことを述べています。 しかし、もし $a$ の結果を知った後なら、$b$ の確率はどうなるでしょうか。 ここで条件付き確率の考え方が重要になります。

$a$ の結果を知ったときの $b$ の確率

10本中3本が当たりのくじで、$a$ が先に引いた後の $b$ の確率を考えましょう。

$a$ が当たりだったと知った場合:

$$P_{a\text{が当たり}}(b\text{ が当たり}) = \frac{2}{9}$$

$a$ がはずれだったと知った場合:

$$P_{a\text{がはずれ}}(b\text{ が当たり}) = \frac{3}{9} = \frac{1}{3}$$

このように、$a$ の結果を知れば、$b$ の条件付き確率は $\dfrac{3}{10}$ ではなくなります。 $a$ が当たりなら $b$ にとっては不利($\dfrac{2}{9} < \dfrac{3}{10}$)、 $a$ がはずれなら有利($\dfrac{1}{3} > \dfrac{3}{10}$)です。

💡 ここが本質:公平性は「情報がない状態」での話

くじ引きの公平性とは、「他の人の結果を知らない状態で各人の当たる確率が等しい」ということです。

情報を得れば確率は変わります。それは不公平ではなく、「新しい情報による確率の更新」です。 条件付き確率 $P_A(B)$ は「事象 $A$ という情報を得た後の $B$ の確率」であり、 情報がないときの $P(B)$ とは異なる量です。

公平性の議論では、全員が同じ情報量(=情報なし)の状態で比較することが前提です。

乗法定理と全確率の公式の関係

条件付き確率の定義 $P_A(B) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(A)}$ を変形すると、 確率の乗法定理が得られます。

$$P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B)$$

Section 1の計算を乗法定理で書き直してみましょう。 「$a$ が当たり かつ $b$ が当たり」の確率は:

$$P(a\text{当} \cap b\text{当}) = P(a\text{当}) \cdot P_{a\text{当}}(b\text{当}) = \frac{3}{10} \times \frac{2}{9} = \frac{6}{90}$$

「$a$ がはずれ かつ $b$ が当たり」の確率は:

$$P(a\text{外} \cap b\text{当}) = P(a\text{外}) \cdot P_{a\text{外}}(b\text{当}) = \frac{7}{10} \times \frac{3}{9} = \frac{21}{90}$$

$b$ が当たる確率はこの2つの和ですから:

$$P(b\text{当}) = \frac{6}{90} + \frac{21}{90} = \frac{27}{90} = \frac{3}{10}$$
⚠️ 落とし穴:乗法定理を使うとき条件付き確率の向きを間違える

$P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B)$ の右辺で、「$A$ の確率」と「$A$ が起きたときの $B$ の条件付き確率」を掛けます。

✕ 誤:$P(a\text{当} \cap b\text{当}) = P(b\text{当}) \times P(a\text{当})$(これは独立のときしか成り立たない)

○ 正:$P(a\text{当} \cap b\text{当}) = P(a\text{当}) \times P_{a\text{当}}(b\text{当}) = \dfrac{3}{10} \times \dfrac{2}{9}$

乗法定理は「先に起きる方の確率 $\times$ それが起きたときの条件付き確率」の積です。 時間順に沿って掛ければ間違えにくくなります。

🔬 深掘り:ベイズの定理 ── 結果から原因を推定する

$b$ が当たりくじを引いたと判明したとき、$a$ が当たりだった確率はいくらでしょうか。 これは「結果($b$ が当たり)から原因($a$ の結果)を推定する」問題で、 ベイズの定理を使って計算できます。

$$P_{b\text{当}}(a\text{当}) = \frac{P(a\text{当}) \cdot P_{a\text{当}}(b\text{当})}{P(b\text{当})} = \frac{\frac{3}{10} \times \frac{2}{9}}{\frac{3}{10}} = \frac{2}{9}$$

ベイズの定理は医学診断、スパムフィルタ、AI(機械学習)など、 あらゆる分野で「観測結果から原因の確率を更新する」基本ツールとして使われています。

4確率の独立性との関連 ─ 公平性と独立性は別物

くじ引きの公平性を学ぶと、「確率が等しいなら各回は独立ではないか」と思うかもしれません。 しかし、公平性と独立性は全く別の概念です。この区別は非常に重要です。

独立とは何か(復習)

2つの事象 $A$, $B$ が独立であるとは、 $P(A \cap B) = P(A) \cdot P(B)$ が成り立つことです。 これは「$A$ が起きても起きなくても、$B$ の確率は変わらない」ことを意味します。

非復元抽出のくじ引きは独立ではない

10本中3本が当たりのくじで、$a$ と $b$ がこの順に引く(非復元)とき:

  • $P(a\text{当}) = \dfrac{3}{10}$
  • $P(b\text{当}) = \dfrac{3}{10}$
  • $P(a\text{当} \cap b\text{当}) = \dfrac{3}{10} \times \dfrac{2}{9} = \dfrac{6}{90} = \dfrac{1}{15}$

もし独立なら $P(a\text{当}) \times P(b\text{当}) = \dfrac{3}{10} \times \dfrac{3}{10} = \dfrac{9}{100}$ のはずです。 しかし $P(a\text{当} \cap b\text{当}) = \dfrac{1}{15} = \dfrac{6}{90}$ であり、 $\dfrac{9}{100} \neq \dfrac{6}{90}$ なので、独立ではありません

📐 公平性と独立性の違い

公平性:各人の「事前の」確率が等しい

$P(a\text{ が当たり}) = P(b\text{ が当たり}) = \dfrac{r}{n}$

独立性:一方の結果が他方の確率に影響しない

$P(A \cap B) = P(A) \cdot P(B)$

※ 非復元抽出:公平性あり、独立性なし。復元抽出:公平性あり、独立性あり。
⚠️ 落とし穴:「公平=独立」と思い込む

✕ 誤:公平だから $P(a\text{当} \cap b\text{当}) = \dfrac{3}{10} \times \dfrac{3}{10}$ と計算する

○ 正:非復元抽出では $P(a\text{当} \cap b\text{当}) = \dfrac{3}{10} \times \dfrac{2}{9}$

公平性は「周辺確率が等しい」こと、独立性は「同時確率が周辺確率の積に等しい」こと。 非復元抽出では公平だが独立ではないので、同時確率を求めるときは乗法定理を使います。

復元抽出なら独立かつ公平

復元抽出(もとに戻す場合)では、各回の試行は独立です。 $a$ が何を引こうが、$b$ が引く時点ではくじは元通りだからです。 よって復元抽出では独立性も公平性も両方成り立ちます。

抽出方法公平性独立性同時確率の計算
復元抽出ありあり$P(A) \times P(B)$
非復元抽出ありなし$P(A) \times P_A(B)$(乗法定理)
🔬 深掘り:「交換可能性」── 大学確率論の視点

くじ引きの公平性を大学数学ではどう捉えるのでしょうか。 確率変数の列 $X_1, X_2, \ldots, X_n$ が交換可能(exchangeable)であるとは、 どのように順番を入れ替えても同時分布が変わらないことです。

非復元抽出でくじを引く順番は交換可能です。 だからこそ「順番を入れ替えても確率は同じ」、つまり公平性が成り立ちます。 交換可能性は独立性より弱い条件ですが、対称性に関する多くの結論を導ける強力な概念です。

5俯瞰マップ ─ くじ引きの公平性と確率全体のつながり

くじ引きの公平性は、確率の様々な概念が交差する重要なテーマです。 ここまで学んだ内容を整理し、他の単元とのつながりを見ましょう。

概念の関連図

概念くじ引きとの関係ポイント
全確率の公式場合分けして公平性を証明排反な場合に分けて確率を足す
条件付き確率前の人の結果で確率が変わる情報が入ると確率は更新される
乗法定理同時確率の計算$P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B)$
独立性公平性との違い非復元では従属だが公平
順列・組合せ並べ方による証明$k$ 番目に当たりが来る場合の数

つながりマップ

  • ← 7-3 条件付き確率:条件付き確率と乗法定理の知識が、くじ引きの確率計算の基盤。公式の意味を理解していれば、公平性の証明は自然に導ける。
  • ← 6-2 順列:「くじを1列に並べる」発想は順列の考え方そのもの。場合の数の知識が公平性の直感的証明を支えている。
  • → 7-9 確率漸化式:複数回のくじ引きを繰り返す問題では、条件付き確率と漸化式を組み合わせる手法が必要になる。
  • → 7-10 確率の総合問題:くじ引きの公平性の理解は、条件付き確率の応用問題や入試問題の基盤となる。
  • → 数学B 統計的推測:復元抽出・非復元抽出の区別は、標本調査や推定の基礎となる概念。母集団からの抽出方法として直接つながる。

📋まとめ

  • くじ引きの公平性:$n$ 本中 $r$ 本が当たりのくじを順に引くとき、何番目に引いても当たる確率は $\dfrac{r}{n}$
  • 「並べ方」で考える証明:$k$ 番目に当たりが来る確率 $= \dfrac{r \times (n-1)!}{n!} = \dfrac{r}{n}$($k$ に依存しない
  • 全確率の公式による証明:前の人の結果で場合分けし、条件付き確率の加重平均が $\dfrac{r}{n}$ になることを示す
  • 復元抽出:もとに戻す。各回は独立。非復元抽出:もとに戻さない。各回は従属だが公平
  • 公平性は「事前の確率が等しい」こと。独立性とは別概念。非復元抽出では公平だが独立ではない
  • 条件付き確率は情報を得た後の確率。情報がない状態では全員が同じ確率(=公平性)

確認テスト

Q1. 10本中2本が当たりのくじを、$a$, $b$, $c$ の3人がこの順に引く(非復元)。$c$ が当たる確率は?

▶ クリックして解答を表示くじ引きの公平性より、$c$ が当たる確率は $\dfrac{2}{10} = \dfrac{1}{5}$。何番目に引いても確率は同じ。

Q2. 復元抽出と非復元抽出の違いを、「独立性」と「公平性」の観点から説明してください。

▶ クリックして解答を表示復元抽出は独立かつ公平。非復元抽出は独立ではない(従属)が公平。どちらも各人の事前確率は等しい。

Q3. 非復元抽出で $a$ が当たりだったことを知った場合、$b$ が当たる確率はいくらか(10本中3本当たり)。

▶ クリックして解答を表示$P_{a\text{当}}(b\text{当}) = \dfrac{2}{9}$。$a$ が当たりを1本引いたので、残り9本中2本が当たり。

Q4. 「$a$ が当たりを引いたら $b$ は不利」は正しい表現ですか?

▶ クリックして解答を表示条件付き確率の意味では正しい($\dfrac{2}{9} < \dfrac{3}{10}$)。しかし「事前の確率」としては不正確。$a$ の結果を知らない段階では $b$ の確率は $\dfrac{3}{10}$ であり、不利ではない。

Q5. 5本中2本が当たりのくじで、$a$, $b$ が非復元で引くとき、$P(a\text{当} \cap b\text{当})$ を求めよ。

▶ クリックして解答を表示$P(a\text{当} \cap b\text{当}) = \dfrac{2}{5} \times \dfrac{1}{4} = \dfrac{2}{20} = \dfrac{1}{10}$。乗法定理を使う。独立ではないので $\dfrac{2}{5} \times \dfrac{2}{5}$ は誤り。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

7-8-1 A 基礎 くじ引きの公平性 場合分け

12本のくじの中に当たりが4本ある。$a$, $b$, $c$ の3人がこの順に1本ずつ引く(引いたくじは戻さない)。

(1) $a$ が当たりを引く確率を求めよ。

(2) $b$ が当たりを引く確率を求めよ。

(3) $c$ が当たりを引く確率を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\dfrac{4}{12} = \dfrac{1}{3}$ (2) $\dfrac{1}{3}$ (3) $\dfrac{1}{3}$

解説

方針:くじ引きの公平性より、何番目に引いても当たる確率は $\dfrac{4}{12} = \dfrac{1}{3}$。

(1) $P(a\text{当}) = \dfrac{4}{12} = \dfrac{1}{3}$

(2) 公平性より $P(b\text{当}) = \dfrac{4}{12} = \dfrac{1}{3}$

検算:$a$ の結果で場合分けすると、 $P(b\text{当}) = \dfrac{4}{12} \cdot \dfrac{3}{11} + \dfrac{8}{12} \cdot \dfrac{4}{11} = \dfrac{12}{132} + \dfrac{32}{132} = \dfrac{44}{132} = \dfrac{1}{3}$

(3) 公平性より $P(c\text{当}) = \dfrac{1}{3}$

B 標準レベル

7-8-2 B 標準 条件付き確率 乗法定理

8本のくじの中に当たりが3本ある。$a$, $b$ の2人がこの順に1本ずつ引く(引いたくじは戻さない)。

(1) $a$ と $b$ がともに当たりを引く確率を求めよ。

(2) $a$ が当たりを引き、$b$ がはずれを引く確率を求めよ。

(3) $b$ が当たりを引いたことがわかったとき、$a$ も当たりであった確率を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\dfrac{3}{28}$ (2) $\dfrac{15}{56}$ (3) $\dfrac{2}{7}$

解説

方針:乗法定理を用いて同時確率を求め、(3) はベイズの定理(条件付き確率の定義)で計算。

(1) $P(a\text{当} \cap b\text{当}) = \dfrac{3}{8} \times \dfrac{2}{7} = \dfrac{6}{56} = \dfrac{3}{28}$

(2) $P(a\text{当} \cap b\text{外}) = \dfrac{3}{8} \times \dfrac{5}{7} = \dfrac{15}{56}$

(3) $P_{b\text{当}}(a\text{当}) = \dfrac{P(a\text{当} \cap b\text{当})}{P(b\text{当})} = \dfrac{\frac{3}{28}}{\frac{3}{8}} = \dfrac{3}{28} \times \dfrac{8}{3} = \dfrac{8}{28} = \dfrac{2}{7}$

※ $P(b\text{当}) = \dfrac{3}{8}$(公平性より)

採点ポイント
  • 乗法定理の正しい適用(3点)
  • 条件付き確率の計算で公平性を活用(3点)
  • ベイズの定理の正確な適用(4点)
7-8-3 B 標準 一般の $n$ 人 論述

$n$ 本のくじの中に当たりが $r$ 本ある($1 \leq r \leq n$)。$n$ 人がこの順に1本ずつ引く(非復元)。$k$ 番目($1 \leq k \leq n$)に引く人が当たりくじを引く確率が $\dfrac{r}{n}$ であることを、順列を用いて証明せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$\dfrac{r}{n}$(証明は解説参照)

解説

方針:$n$ 本のくじを1列に並べ、$k$ 番目に当たりくじが来る場合を数える。

$n$ 本のくじを1列に並べる方法は $n!$ 通り。

$k$ 番目に当たりくじが来る場合を数える。$k$ 番目に当たり $r$ 本のうち1本を選ぶ方法が $r$ 通り、残り $(n-1)$ 本のくじを他の $(n-1)$ 箇所に並べる方法が $(n-1)!$ 通り。

よって $k$ 番目が当たりになる並べ方は $r \times (n-1)!$ 通り。

$$P(k\text{番目が当たり}) = \frac{r \times (n-1)!}{n!} = \frac{r}{n}$$

$k$ に依存しないので、何番目に引いても当たる確率は $\dfrac{r}{n}$ である。(証明終)

採点ポイント
  • 全パターン数 $n!$ の設定(2点)
  • $k$ 番目が当たりになるパターン数 $r \times (n-1)!$(4点)
  • $k$ に依存しないことの言及(2点)
  • 論理的な記述(2点)

C 発展レベル

7-8-4 C 発展 複数本引く 条件付き確率

10本のくじの中に当たりが3本ある。$a$ が先に2本引き、その後 $b$ が2本引く(引いたくじは戻さない)。

(1) $b$ が引いた2本のうち、ちょうど1本が当たりである確率を求めよ。

(2) $b$ が引いた2本のうち少なくとも1本が当たりであったとき、$a$ の2本が2本ともはずれであった確率を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\dfrac{7}{15}$ (2) $\dfrac{5}{8}$

解説

方針:(1) は $a$ の結果を無視して「10本から $b$ の位置2つに来る当たりの数」と考える。(2) は条件付き確率。

(1) $b$ が引く2本は10本中の3番目と4番目の位置。 公平性の一般化より、10本から2本を選んだとき当たりがちょうど1本含まれる確率と等しい。

$$P = \frac{\binom{3}{1}\binom{7}{1}}{\binom{10}{2}} = \frac{3 \times 7}{45} = \frac{21}{45} = \frac{7}{15}$$

(2) $B$:$b$ の2本に少なくとも1本当たり、$A$:$a$ の2本が2本ともはずれ。

$P(A) = \dfrac{\binom{7}{2}}{\binom{10}{2}} = \dfrac{21}{45} = \dfrac{7}{15}$

$A$ のとき当たり3本は全て $b$ 以降の位置にある。$b$ の2本にちょうど0本当たりの確率は $\dfrac{\binom{3}{0}\binom{5}{2}}{\binom{8}{2}} = \dfrac{10}{28} = \dfrac{5}{14}$

$P_A(B) = 1 - \dfrac{5}{14} = \dfrac{9}{14}$

$P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B) = \dfrac{7}{15} \times \dfrac{9}{14} = \dfrac{63}{210} = \dfrac{3}{10}$

$P(B)$:$b$ の2本に少なくとも1本当たり $= 1 - \dfrac{\binom{7}{2}}{\binom{10}{2}} \cdot \dfrac{\binom{3}{0}\binom{5}{2}}{\binom{8}{2}} \cdots$ これは $a$ の結果で場合分けが必要。

別解として直接計算:$P(B) = 1 - P(\bar{B})$。$\bar{B}$:$b$ の2本がともにはずれ。

$P(\bar{B}) = \dfrac{\binom{7}{2}}{\binom{10}{2}} = \dfrac{7}{15}$(公平性の一般化:$b$ の2本ともはずれ = 10本から2本選んで両方はずれの確率)

$P(B) = 1 - \dfrac{7}{15} = \dfrac{8}{15}$

よって $P_B(A) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(B)} = \dfrac{\frac{3}{10}}{\frac{8}{15}} = \dfrac{3}{10} \times \dfrac{15}{8} = \dfrac{45}{80} = \dfrac{9}{16}$

再計算:$A \cap B$ を直接求める。$a$ が2本ともはずれで $b$ に少なくとも1本当たり。

$a$ が2本ともはずれの選び方:$\binom{7}{2} = 21$ 通り。残り8本から $b$ が2本引いて少なくとも1本当たり:$\binom{8}{2} - \binom{5}{2} = 28 - 10 = 18$ 通り。

全体:$\binom{10}{2} \times \binom{8}{2} = 45 \times 28 = 1260$

$P(A \cap B) = \dfrac{21 \times 18}{1260} = \dfrac{378}{1260} = \dfrac{3}{10}$

$P_B(A) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(B)} = \dfrac{3/10}{8/15} = \dfrac{3}{10} \times \dfrac{15}{8} = \dfrac{9}{16}$

再検討。$P(\bar{B})$ を正確に計算。$b$ が2本引いてともにはずれ。$a$ の結果で場合分け:

$a$ が当たり0本:$P = \dfrac{\binom{7}{2}}{\binom{10}{2}} = \dfrac{21}{45}$、このとき $b$ 2本ともはずれ:$\dfrac{\binom{5}{2}}{\binom{8}{2}} = \dfrac{10}{28}$

$a$ が当たり1本:$P = \dfrac{\binom{3}{1}\binom{7}{1}}{\binom{10}{2}} = \dfrac{21}{45}$、このとき $b$ 2本ともはずれ:$\dfrac{\binom{5}{2}}{\binom{8}{2}} = \dfrac{\binom{6}{2}}{\binom{8}{2}} = \dfrac{15}{28}$

$a$ が当たり2本:$P = \dfrac{\binom{3}{2}}{\binom{10}{2}} = \dfrac{3}{45}$、このとき $b$ 2本ともはずれ:$\dfrac{\binom{7}{2}}{\binom{8}{2}} = \dfrac{21}{28}$

$P(\bar{B}) = \dfrac{21}{45} \cdot \dfrac{10}{28} + \dfrac{21}{45} \cdot \dfrac{15}{28} + \dfrac{3}{45} \cdot \dfrac{21}{28} = \dfrac{210 + 315 + 63}{1260} = \dfrac{588}{1260} = \dfrac{7}{15}$

よって $P(B) = 1 - \dfrac{7}{15} = \dfrac{8}{15}$(公平性の一般化で直接出せる)。

$P_B(A) = \dfrac{3/10}{8/15} = \dfrac{3}{10} \times \dfrac{15}{8} = \dfrac{45}{80} = \dfrac{9}{16}$

答え:(2) $\dfrac{9}{16}$

採点ポイント
  • 公平性の一般化(複数本引く場合)の正しい適用(3点)
  • 条件付き確率の式の設定(3点)
  • 同時確率の正確な計算(2点)
  • 最終答の正確な算出(2点)