第7章 確率

条件付き確率
─ 「条件が付くと確率が変わる」── 標本空間の縮小

「サイコロの出目が偶数だった」と聞いた瞬間、6が出ている確率はどう変わるでしょうか?
情報が加わることで確率が変化する -- この現象を数学的に扱うのが条件付き確率です。
医療検査の精度から犯罪捜査のDNA鑑定まで、現代社会に不可欠な概念を学びましょう。

1条件付き確率の定義 ─ $P_A(B)$ とは何か

ある試行で、2つの事象 $A$, $B$ を考えます。 事象 $A$ が起こったことがわかっているとき、事象 $B$ が起こる確率を 「$A$ が起こったときの $B$ の条件付き確率」と呼び、$P_A(B)$ で表します。

📐 条件付き確率の定義

$P(A) \neq 0$ のとき

$$P_A(B) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}$$
・$P(A \cap B)$:$A$ と $B$ が同時に起こる確率(積事象の確率)
・$P(A)$:$A$ が起こる確率
・$P_A(B)$ は「$P(B|A)$」とも書く(大学ではこちらが主流)

具体例:サイコロの条件付き確率

サイコロを1回振ります。出目が偶数(事象 $A$)であったことがわかったとき、 出目が6(事象 $B$)である確率を求めましょう。

$A = \{2, 4, 6\}$、$B = \{6\}$ なので $A \cap B = \{6\}$。

$$P_A(B) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)} = \frac{\frac{1}{6}}{\frac{3}{6}} = \frac{1}{3}$$

何の情報もなければ6が出る確率は $\frac{1}{6}$ ですが、「偶数だった」と聞いた瞬間、 確率は $\frac{1}{3}$ に上がりました。候補が $\{1, 2, 3, 4, 5, 6\}$ から $\{2, 4, 6\}$ の3つに絞られたからです。

💡 ここが本質:条件付き確率 = 標本空間の縮小

条件付き確率の本質は、全事象(標本空間)を $A$ に置き換えることです。

通常の確率では全事象 $U$ が「舞台」ですが、「$A$ が起こった」とわかった瞬間、考えるべき世界は $U$ 全体ではなく $A$ だけに縮小します。

その縮小された世界 $A$ の中で、$B$ が占める割合が $P_A(B)$ です。だから

$$P_A(B) = \frac{A \text{の中の}B\text{の割合}}{A\text{全体}} = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}$$

この「標本空間の縮小」こそが、条件付き確率の核心です。

⚠️ 落とし穴:$P(A \cap B)$ と $P_A(B)$ を混同する

これは条件付き確率で最も多い間違いです。

✕ 誤:「$A$ かつ $B$」の確率と「$A$ のもとでの $B$」の確率は同じ

○ 正:$P(A \cap B)$ は全体に対する割合、$P_A(B)$ は $A$ に対する割合。全く異なる。

上のサイコロの例で確認しましょう:

・$P(A \cap B) = P(\{6\}) = \frac{1}{6}$(全6通り中、偶数かつ6は1通り)

・$P_A(B) = \frac{1}{3}$(偶数3通り中、6は1通り)

分母が違います。$P(A \cap B)$ の分母は全事象、$P_A(B)$ の分母は事象 $A$。

⚠️ 落とし穴:「~であるとき」を見逃して普通の確率として計算する

問題文に「出目が偶数であるとき」「合格品であることがわかったとき」のような表現があれば、それは条件付き確率を求めよという指示です。

✕ 誤:「偶数であるとき、6が出る確率」を $P(B) = \frac{1}{6}$ と答える

○ 正:「であるとき」は条件付き確率の合図。$P_A(B) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)} = \frac{1}{3}$

🔬 深掘り:条件付き確率は「確率の公理」を満たす

大学の確率論では、条件付き確率 $P_A(\cdot)$ が通常の確率と同じ公理(非負性、正規化、加法性)を満たすことを証明します。つまり、$P_A(\cdot)$ は $A$ を全事象とした新しい確率測度です。

$P_A(A) = 1$($A$ の中で $A$ は確実に起こる)、$P_A(\emptyset) = 0$、排反な事象に対する加法性もすべて成り立ちます。条件付き確率は「世界を縮小した上で、通常の確率を考え直す」ことに他ならないのです。

2直感的理解 ─ 「全体を絞る」とはどういうことか

条件付き確率を直感的に理解するために、表を使った例で考えてみましょう。

具体例:生徒90人のバス分けデータ

ある学校の生徒90人が、定員45人のバスX, Yに分かれて乗ります。 男子・女子の人数は以下の通りです。

男子女子
バスX232245
バスY271845
504090

90人から無作為に1人を選ぶとき、以下を比較してみましょう。

問1:「選ばれた生徒が女子である確率」
→ $P(B) = \frac{40}{90} = \frac{4}{9}$(全体90人中、女子は40人)

問2:「選ばれた生徒がバスXに乗っていたとき、女子である確率」
→ $P_A(B) = \frac{22}{45}$(バスXの45人中、女子は22人)

問2では「バスXに乗っていた」という情報で、考える範囲が90人 → 45人に縮小しています。 $\frac{4}{9} \approx 0.444$ と $\frac{22}{45} \approx 0.489$ で、値が変わっています。

💡 ここが本質:分母を「全体」から「条件 $A$」に切り替える

条件付き確率の計算は、次の2つの方法のどちらでもできます。

方法1(定義式):$P_A(B) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(A)}$

方法2(場合の数):各根元事象が同様に確からしいとき、$P_A(B) = \dfrac{n(A \cap B)}{n(A)}$

方法2のほうが直感的です。$A$ の中にいくつの場合があり、そのうち $B$ に該当するのはいくつか。これが条件付き確率です。

時系列に注意 ── 「先に起きた」とは限らない

条件付き確率 $P_A(B)$ で、$A$ が $B$ より先に起きる必要はありません。

たとえば「不良品であった(事象 $B$)ことがわかったとき、それがA工場の製品である(事象 $A$)確率」では、 製造($A$)は検査($B$)より先に起きていますが、確率を求めるのは $P_B(A)$ です。

条件付き確率は「情報の順序」であって、「時間の順序」ではありません。 「何がわかっているか」=「何を全事象にするか」で考えましょう。

⚠️ 落とし穴:条件付き確率の「条件」と「求めるもの」を取り違える

「不良品だったとき、A工場の製品である確率」→ $P_{\text{不良}}(A)$ です。

✕ 誤:$P_A(\text{不良})$(A工場の製品のうち不良品の確率)と取り違える

○ 正:$P_{\text{不良}}(A)$(不良品のうちA工場の製品の確率)

「〜であるとき」の部分が条件(分母)、「〜である確率」の部分が求めるもの(分子の一部)です。 日本語の文章構造を正確に読み取りましょう。

3確率の乗法定理 ─ 「かつ」の確率を分解する

条件付き確率の定義式を変形すると、非常に重要な等式が得られます。

📐 確率の乗法定理
$$P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B)$$
・$A$ と $B$ が同時に起こる確率 = まず $A$ が起こる確率 $\times$ $A$ が起きたもとで $B$ が起こる確率
・同様に $P(A \cap B) = P(B) \cdot P_B(A)$ とも書ける
▷ 乗法定理の導出

条件付き確率の定義式 $P_A(B) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(A)}$ の両辺に $P(A)$ を掛けると

$$P(A) \cdot P_A(B) = P(A \cap B)$$

すなわち $P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B)$

これが乗法定理です。定義式そのものの変形なので、新しい定理というよりは「条件付き確率の定義を言い換えたもの」です。

💡 ここが本質:乗法定理は「段階を追って確率を計算する」技法

乗法定理 $P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B)$ は、複雑な事象の確率を2段階に分解して計算するための道具です。

第1段階:まず $A$ が起こる(確率 $P(A)$)

第2段階:$A$ が起きたもとで $B$ が起こる(確率 $P_A(B)$)

この2段階の確率の積が「$A$ かつ $B$」の確率です。非復元抽出のように「前の結果で後の確率が変わる」場合に威力を発揮します。

具体例:くじ引きの公平性

10本のくじの中に当たり3本が入っています。a, b の2人がこの順に1本ずつ引きます(引いたくじは戻さない)。

問1:a が当たり、b も当たりを引く確率は?

a が当たりを引く事象を $A$、b が当たりを引く事象を $B$ とすると、乗法定理より

$$P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B) = \frac{3}{10} \times \frac{2}{9} = \frac{6}{90} = \frac{1}{15}$$

$P_A(B) = \frac{2}{9}$ の理由:a が当たりを引いた後は、残り9本中2本が当たり。

問2:b が当たりを引く確率は?(a の結果に関係なく)

$B = (A \cap B) \cup (\bar{A} \cap B)$ と分解すると

$$P(B) = P(A) \cdot P_A(B) + P(\bar{A}) \cdot P_{\bar{A}}(B) = \frac{3}{10} \times \frac{2}{9} + \frac{7}{10} \times \frac{3}{9} = \frac{6}{90} + \frac{21}{90} = \frac{27}{90} = \frac{3}{10}$$

驚くべきことに、b が当たりを引く確率は a と同じ $\frac{3}{10}$ です。 くじ引きは引く順番に関係なく公平 -- これは乗法定理から証明できる重要な事実です。

⚠️ 落とし穴:非復元抽出に独立な試行の公式を使う

✕ 誤:「a が当たり、b も当たり」の確率を $\frac{3}{10} \times \frac{3}{10}$ と計算する

○ 正:くじを戻さないので、b が引くときの条件は a の結果に依存する。$\frac{3}{10} \times \frac{2}{9}$

独立な試行なら $P(A \cap B) = P(A) \cdot P(B)$ ですが、非復元抽出は独立ではないため、乗法定理 $P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B)$ を使う必要があります。

🔬 深掘り:独立性の定義と乗法定理

大学の確率論では、2つの事象 $A, B$ が独立であることを $P(A \cap B) = P(A) \cdot P(B)$ と定義します(高校では「互いに影響しない」という直感的な説明)。

独立のとき $P_A(B) = P(B)$($A$ の情報は $B$ の確率を変えない)であり、乗法定理は $P(A \cap B) = P(A) \cdot P(B)$ に簡略化されます。

逆に言えば、$P_A(B) \neq P(B)$ のとき $A$ と $B$ は独立ではなく、$A$ の情報が $B$ の確率を変えている。条件付き確率は「独立からのずれ」を測る道具でもあるのです。

4ベイズの定理入門 ─ 「原因の確率」を逆算する

「不良品が見つかった。それはどの工場で作られたものか?」
「検査で陽性反応が出た。本当に感染しているのか?」
このように、結果から原因を推定する問題に使うのがベイズの定理です。

ベイズの定理の導出

事象 $B$ が起きたもとで、その「原因」が $A$ であった確率 $P_B(A)$ を求めたいとします。

$P(A \cap B)$ は2通りに分解できます。

  • $P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B)$(乗法定理・$A$ から $B$ へ)
  • $P(A \cap B) = P(B) \cdot P_B(A)$(乗法定理・$B$ から $A$ へ)

これらが等しいので $P(B) \cdot P_B(A) = P(A) \cdot P_A(B)$。両辺を $P(B)$ で割ると

📐 ベイズの定理
$$P_B(A) = \frac{P(A) \cdot P_A(B)}{P(B)}$$
・$P(A)$:事前確率(結果を知る前の $A$ の確率)
・$P_A(B)$:$A$ のもとで $B$ が起こる確率(尤度
・$P_B(A)$:事後確率(結果 $B$ を知った後の $A$ の確率)
・$P(B)$:$B$ が起こる確率(通常、全確率の公式で求める)
▷ $P(B)$ の計算 ── 全確率の公式

「原因」が $A$ か $\bar{A}$ のいずれかであるとき、$B$ が起こる確率は

$$P(B) = P(A) \cdot P_A(B) + P(\bar{A}) \cdot P_{\bar{A}}(B)$$

これを全確率の公式と呼びます。原因が $A_1, A_2, \ldots, A_m$ の $m$ 個に分かれる場合は

$$P(B) = \sum_{i=1}^{m} P(A_i) \cdot P_{A_i}(B)$$

この公式は「$B$ が起こる経路をすべて足し上げる」ものです。

具体例:工場の不良品問題

A工場の製品には2%、B工場の製品には6%の不良品が出ます。 A工場から50個、B工場から100個を混ぜて、1個を取り出したところ不良品でした。 それがA工場の製品である確率を求めましょう。

$A$:A工場の製品、$D$:不良品 とします。

$P(A) = \frac{50}{150} = \frac{1}{3}$、$P(\bar{A}) = \frac{100}{150} = \frac{2}{3}$

$P_A(D) = 0.02$(A工場の不良率)、$P_{\bar{A}}(D) = 0.06$(B工場の不良率)

全確率の公式で $P(D)$ を求めると

$$P(D) = \frac{1}{3} \times 0.02 + \frac{2}{3} \times 0.06 = \frac{0.02}{3} + \frac{0.12}{3} = \frac{0.14}{3}$$

ベイズの定理より

$$P_D(A) = \frac{P(A) \cdot P_A(D)}{P(D)} = \frac{\frac{1}{3} \times 0.02}{\frac{0.14}{3}} = \frac{0.02}{0.14} = \frac{1}{7}$$

A工場は全体の $\frac{1}{3}$ を占めていますが、不良率が低い(2%)ため、 不良品がA工場から来た確率は $\frac{1}{7} \approx 14.3\%$ と、元の $\frac{1}{3} \approx 33.3\%$ よりも低くなります。 「不良品だった」という情報が、A工場の可能性を下げたのです。

💡 ここが本質:ベイズの定理は「情報による確率の更新」

ベイズの定理の本質は、新しい情報を得たときに、確率を更新する仕組みです。

事前確率 $P(A) = \frac{1}{3}$(情報なしでの確率)

↓ 「不良品だった」という情報

事後確率 $P_D(A) = \frac{1}{7}$(情報を得た後の確率)

情報によって確率が変わる。これがベイズの定理の力です。

⚠️ 落とし穴:$P_A(B)$ と $P_B(A)$ を取り違える

「A工場の製品が不良品である確率 $P_A(D) = 0.02$」と「不良品がA工場の製品である確率 $P_D(A) = \frac{1}{7}$」は全く異なる値です。

✕ 誤:$P_A(D) = P_D(A)$ と思ってしまう

○ 正:一般に $P_A(B) \neq P_B(A)$。条件と結論を入れ替えると値が変わる

これを混同する誤りは「基準率の無視」とも呼ばれ、日常でも頻繁に起こります。医療検査で「検査の精度99%」と「陽性反応者が本当に感染している確率」は全くの別物です。

🔬 深掘り:ベイズ統計学 ── 現代のAIを支える理論

ベイズの定理を基礎としたベイズ統計学は、現代の人工知能(AI)や機械学習の重要な柱です。スパムメールの判定、音声認識、自動翻訳など、多くの技術がベイズの定理に基づいています。

ベイズ統計学では、データ(観測結果)が得られるたびに確率を更新し続けます。高校で学ぶ「原因の確率」は、この壮大な理論の入口に過ぎません。

なお、ベイズの定理はトーマス・ベイズ(1702-1761)というイギリスの牧師が発見したもので、彼の死後にラプラスが一般化しました。確率論の歴史の中でも最も影響力のある定理の1つです。

5俯瞰マップ ─ 条件付き確率の全体像

条件付き確率に関する問題パターンを整理しましょう。

パターン分類表

パターン問題の特徴解法のポイント
A:定義の直接適用$P_A(B)$ を直接求める$P_A(B) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}$ または $\frac{n(A \cap B)}{n(A)}$
B:乗法定理$P(A \cap B)$ を求める$P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B)$ で段階的に計算
C:非復元抽出くじを戻さない抽出乗法定理で段階的に確率を掛ける
D:原因の確率結果から原因を推定ベイズの定理。全確率の公式で分母を計算
E:検査の精度陽性反応の信頼性パターンDの応用。基準率に注意

つながりマップ

  • ← 7-1 確率の基本性質:確率の加法定理、積事象の概念が条件付き確率の定義の基礎。
  • ← 7-4 反復試行の確率:反復試行は各回が独立な試行。条件付き確率との対比で「独立とは何か」が深く理解できる。
  • → 仮説検定:「帰無仮説のもとで、この結果が起きる確率」は条件付き確率そのもの。仮説検定の論理はベイズ的推論と密接に関連する。
  • → 数学B 確率分布:条件付き確率と独立性の概念は、確率変数の独立性の定義に直結する。
  • → 大学数学 ベイズ統計学:ベイズの定理を反復適用し、データが得られるたびに確率を更新する理論。AI・機械学習の基盤。

📋まとめ

  • 条件付き確率 $P_A(B) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(A)}$ は、$A$ が起きたもとでの $B$ の確率。本質は標本空間を $A$ に縮小すること
  • $P(A \cap B)$(全体に対する割合)と $P_A(B)$($A$ に対する割合)は分母が異なる別の概念
  • 乗法定理 $P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B)$:「かつ」の確率を段階的に分解して計算する
  • 非復元抽出のように、前の結果で後の確率が変わる場合に乗法定理が必須
  • ベイズの定理 $P_B(A) = \dfrac{P(A) \cdot P_A(B)}{P(B)}$:結果から原因を推定する(事前確率 → 事後確率の更新)
  • 一般に $P_A(B) \neq P_B(A)$。条件と結論を入れ替えると確率は変わる

確認テスト

Q1. 条件付き確率 $P_A(B)$ を、$P(A)$ と $P(A \cap B)$ を用いた式で書いてください。また、この式の「本質的な意味」を一言で述べてください。

▶ クリックして解答を表示$P_A(B) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}$。本質的な意味は「標本空間を全体 $U$ から事象 $A$ に縮小したうえで、$B$ の占める割合を求める」こと。

Q2. $P(A \cap B)$ と $P_A(B)$ の違いを、サイコロの例を用いて説明してください。

▶ クリックして解答を表示$A$ = 偶数、$B$ = 6とすると、$P(A \cap B) = \frac{1}{6}$(全6通り中1通り)、$P_A(B) = \frac{1}{3}$(偶数3通り中1通り)。$P(A \cap B)$ は全体が分母、$P_A(B)$ は $A$ が分母。

Q3. 確率の乗法定理を書き、独立な試行の場合にどう簡略化されるか述べてください。

▶ クリックして解答を表示乗法定理:$P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B)$。$A$ と $B$ が独立のとき $P_A(B) = P(B)$ なので、$P(A \cap B) = P(A) \cdot P(B)$ に簡略化される。

Q4. ベイズの定理の式を書いてください。「事前確率」と「事後確率」はそれぞれどの部分ですか?

▶ クリックして解答を表示$P_B(A) = \frac{P(A) \cdot P_A(B)}{P(B)}$。事前確率は $P(A)$(結果を知る前の $A$ の確率)、事後確率は $P_B(A)$(結果 $B$ を知った後の $A$ の確率)。

Q5. 10本中3本が当たりのくじを、a, b がこの順に1本ずつ引く(戻さない)。b が当たりを引く確率はいくらですか?

▶ クリックして解答を表示$P(B) = P(A) \cdot P_A(B) + P(\bar{A}) \cdot P_{\bar{A}}(B) = \frac{3}{10} \times \frac{2}{9} + \frac{7}{10} \times \frac{3}{9} = \frac{6}{90} + \frac{21}{90} = \frac{27}{90} = \frac{3}{10}$。a と同じ $\frac{3}{10}$ であり、くじ引きは引く順番に関係なく公平。

8入試問題演習

条件付き確率に関する入試形式の問題で実力を確認しましょう。

A 基礎レベル

7-5-1 A 基礎 条件付き確率 定義

2個のサイコロを同時に振る。出る目の和が8であったとき、少なくとも一方が2である条件付き確率を求めよ。

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解答

$\dfrac{2}{5}$

解説

方針:条件付き確率の定義を適用する。場合の数で直接求めるのが簡単。

$A$:出目の和が8、$B$:少なくとも一方が2 とする。

$A = \{(2,6), (3,5), (4,4), (5,3), (6,2)\}$ より $n(A) = 5$

$A \cap B = \{(2,6), (6,2)\}$ より $n(A \cap B) = 2$

$P_A(B) = \frac{n(A \cap B)}{n(A)} = \frac{2}{5}$

B 標準レベル

7-5-2 B 標準 乗法定理 非復元抽出

袋Aには白球5個・黒球4個、袋Bには白球5個・黒球3個が入っている。袋Aから2個の球を同時に取り出して袋Bに入れた後、袋Bから2個の球を同時に取り出すとき、2個とも白球である確率を求めよ。

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解答

$\dfrac{43}{180}$

解説

方針:袋Aから取り出す白球の個数で場合分けし、各場合について乗法定理を使う。

袋Aから取り出す2個のうち白球の個数を $k$($k = 0, 1, 2$)とする。

$k = 0$(白0個・黒2個)のとき:

・袋Aから黒2個を取る確率:$\frac{{}_4C_2}{{}_9C_2} = \frac{6}{36} = \frac{1}{6}$

・袋B(白5・黒5の計10個)から白2個を取る確率:$\frac{{}_5C_2}{{_{10}C_2}} = \frac{10}{45} = \frac{2}{9}$

・この場合の確率:$\frac{1}{6} \times \frac{2}{9} = \frac{2}{54}$

$k = 1$(白1個・黒1個)のとき:

・確率:$\frac{{}_5C_1 \cdot {}_4C_1}{{}_9C_2} = \frac{20}{36} = \frac{5}{9}$

・袋B(白6・黒4の計10個)から白2個:$\frac{{}_6C_2}{{_{10}C_2}} = \frac{15}{45} = \frac{1}{3}$

・この場合の確率:$\frac{5}{9} \times \frac{1}{3} = \frac{5}{27}$

$k = 2$(白2個・黒0個)のとき:

・確率:$\frac{{}_5C_2}{{}_9C_2} = \frac{10}{36} = \frac{5}{18}$

・袋B(白7・黒3の計10個)から白2個:$\frac{{}_7C_2}{{_{10}C_2}} = \frac{21}{45} = \frac{7}{15}$

・この場合の確率:$\frac{5}{18} \times \frac{7}{15} = \frac{35}{270} = \frac{7}{54}$

合計:$\frac{2}{54} + \frac{5}{27} + \frac{7}{54} = \frac{2}{54} + \frac{10}{54} + \frac{7}{54} = \frac{19}{54}$

検算:通分して $\frac{2 + 10 + 7}{54} = \frac{19}{54}$

修正計算:$\frac{1}{6} \times \frac{2}{9} = \frac{2}{54}$、$\frac{5}{9} \times \frac{1}{3} = \frac{5}{27} = \frac{10}{54}$、$\frac{5}{18} \times \frac{7}{15} = \frac{7}{54}$

合計 $\frac{19}{54}$

採点ポイント
  • 場合分けの設定が正しい(2点)
  • 各場合の袋Bの構成を正しく把握(3点)
  • 乗法定理を正しく適用(3点)
  • 最終的な加算が正しい(2点)
7-5-3 B 標準 原因の確率 ベイズ

3つの袋A, B, Cがある。袋Aには白球3個・赤球2個、袋Bには白球2個・赤球3個、袋Cには白球4個・赤球1個が入っている。3つの袋から無作為に1つの袋を選び、その袋から1個の球を取り出したところ白球であった。それが袋Aから取り出された確率を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$\dfrac{1}{3}$

解説

方針:ベイズの定理(原因の確率)。白球を取り出す経路を全確率の公式で求める。

$A, B, C$:それぞれの袋を選ぶ事象、$W$:白球を取り出す事象

$P(A) = P(B) = P(C) = \frac{1}{3}$

$P_A(W) = \frac{3}{5}$, $P_B(W) = \frac{2}{5}$, $P_C(W) = \frac{4}{5}$

全確率の公式より

$P(W) = \frac{1}{3} \times \frac{3}{5} + \frac{1}{3} \times \frac{2}{5} + \frac{1}{3} \times \frac{4}{5} = \frac{1}{3} \times \frac{9}{5} = \frac{3}{5}$

ベイズの定理より

$P_W(A) = \frac{P(A) \cdot P_A(W)}{P(W)} = \frac{\frac{1}{3} \times \frac{3}{5}}{\frac{3}{5}} = \frac{\frac{1}{5}}{\frac{3}{5}} = \frac{1}{3}$

採点ポイント
  • 事象の設定と各確率の特定(2点)
  • 全確率の公式で $P(W)$ を正しく計算(4点)
  • ベイズの定理で $P_W(A)$ を正しく計算(4点)

C 発展レベル

7-5-4 C 発展 検査の精度 ベイズ 論述

ある地域の住民のうち、ウイルスXに感染している人の割合は0.1%である。ウイルスXの検査について、次のことがわかっている。

  • ・感染者が検査で陽性と判定される確率は99%
  • ・非感染者が検査で陽性と判定される確率(偽陽性率)は2%

この地域の住民から無作為に1人を選んで検査したところ、陽性と判定された。この人が実際に感染している確率を求めよ。

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解答

$\dfrac{99}{2097} \approx 0.0472$(約4.7%)

解説

方針:ベイズの定理で事後確率を求める。

$I$:感染している事象、$T$:陽性と判定される事象

$P(I) = 0.001$, $P(\bar{I}) = 0.999$

$P_I(T) = 0.99$(感度), $P_{\bar{I}}(T) = 0.02$(偽陽性率)

全確率の公式より

$P(T) = P(I) \cdot P_I(T) + P(\bar{I}) \cdot P_{\bar{I}}(T)$

$= 0.001 \times 0.99 + 0.999 \times 0.02$

$= 0.00099 + 0.01998 = 0.02097$

ベイズの定理より

$P_T(I) = \frac{P(I) \cdot P_I(T)}{P(T)} = \frac{0.00099}{0.02097} = \frac{99}{2097} = \frac{33}{699} = \frac{11}{233}$

$\approx 0.0472$(約4.7%)

検査の精度(感度99%)にもかかわらず、陽性と判定された人が実際に感染している確率はわずか約4.7%です。これは感染率(基準率)が0.1%と非常に低いため、非感染者の偽陽性の人数が感染者の真陽性の人数を圧倒的に上回るからです。

採点ポイント
  • 事象と確率の正しい設定(2点)
  • 全確率の公式で $P(T)$ を計算(3点)
  • ベイズの定理で正しく計算(3点)
  • 結果の解釈(基準率の影響)を記述(2点)