第7章 確率

確率の基本(試行・事象・確率の定義)
─ 「偶然」を数値化する

サイコロを振ったとき、6の目が出る「確からしさ」はどれくらいでしょうか。
確率は、偶然の世界に数学のメスを入れ、「どれくらい起こりやすいか」を数値で表す道具です。
この記事では、確率の土台となる定義と基本法則を、原理から丁寧に学びます。

1試行と事象 ─ 確率の舞台を整える

確率を学ぶ前に、まず「言葉」を正確に定義しておく必要があります。 数学では、日常語をそのまま使うと曖昧さが残るので、専門用語を決めて議論の土台を固めます。

試行とは何か

試行とは、同じ条件のもとで何回でも繰り返すことができ、どの結果が起こるかが偶然に決まるような実験や観測のことです。 たとえば、「サイコロを1個振る」「コインを投げる」「袋から玉を取り出す」などが試行にあたります。

重要なのは「同じ条件で繰り返せる」という点です。 「明日、雨が降るかどうか」は日常的には確率の話をしますが、厳密には同じ条件を再現して繰り返すことが難しいため、高校数学で扱う確率の試行とは少し性質が異なります。

事象とは何か

事象とは、試行の結果として起こる事柄のことです。 たとえば「サイコロを1個振る」という試行において、「偶数の目が出る」「3以上の目が出る」などが事象です。

事象は集合で表すと整理しやすくなります。 サイコロの試行では、起こりうる結果の全体は $U = \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}$ です。 「偶数の目が出る」という事象は $A = \{2, 4, 6\}$ と書けます。

根元事象・全事象・空事象

事象にはいくつかの重要な種類があります。

  • 根元事象:それ以上分けることのできない、最も基本的な事象。サイコロなら $\{1\}, \{2\}, \{3\}, \{4\}, \{5\}, \{6\}$ のそれぞれ
  • 全事象:起こりうる結果の全体の集合 $U$。サイコロなら $U = \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}$
  • 空事象:決して起こらない事象。空集合 $\emptyset$ で表す

根元事象は確率の「最小単位」です。 どんな事象も、根元事象の集まり(集合)として表現できます。 「偶数の目が出る」= $\{2\} \cup \{4\} \cup \{6\}$ というように、根元事象を寄せ集めたものが一般の事象です。

💡 ここが本質:事象 = 集合、確率 = 集合の大きさの比

確率の理論では、事象を集合として扱うことが基本です。 第6章で学んだ「場合の数」と集合の知識が、確率の土台になっています。

「事象 $A$ が起こる」=「結果が集合 $A$ の要素である」。 和事象は和集合 $A \cup B$、積事象は共通部分 $A \cap B$、余事象は補集合 $\overline{A}$。 集合の言葉に翻訳すれば、確率の法則は集合の性質から自然に導かれます。

⚠️ 落とし穴:同じに見えるものを「区別しない」とミスする

確率では、見た目が同じものでも1つ1つを区別して考えるのが鉄則です。

✕ 誤:赤玉1個と白玉9個の袋から1個取り出すとき、「赤か白の2通りだから確率は $\dfrac{1}{2}$」

○ 正:白玉9個を白$_1$, 白$_2$, ..., 白$_9$ と区別する。全部で10通りの根元事象があり、赤玉が出るのは1通り。よって確率は $\dfrac{1}{10}$。

「赤が出る」と「白が出る」は同様に確からしくないのに、同様に確からしいと誤認したのが原因です。 根元事象を正しく設定するには、個々のものを区別して数える必要があります。

🔬 深掘り:「同様に確からしい」の数学的意味

「同様に確からしい」は英語で "equally likely" や "equally possible" と言います。 これは「各根元事象の起こる確率が等しい」という対称性の仮定です。

サイコロは6面が対称的に作られているから、各面が出ることは同程度に期待できます。 しかし、ペットボトルのキャップを投げたとき、「表」と「裏」が同程度に出るとは限りません。 形状が非対称だからです。

「同様に確からしい」は物理的な対称性に基づく前提条件であり、自動的に成り立つものではありません。 この前提が正しいかどうかを確認することが、確率を正しく求める第一歩です。

2確率の定義 ─ 「場合の数の比」で測る

いよいよ確率の定義です。 ここでは、根元事象がすべて同様に確からしい場合の確率を定義します。

全事象 $U$ に属する根元事象の個数を $n(U)$、事象 $A$ に属する根元事象の個数を $n(A)$ とするとき、 事象 $A$ の起こる確率 $P(A)$ を次のように定めます。

📐 確率の定義(数学的確率)

根元事象がすべて同様に確からしい試行において、

$$P(A) = \frac{n(A)}{n(U)} = \frac{\text{事象 } A \text{ の起こる場合の数}}{\text{起こりうるすべての場合の数}}$$
※ $P$ は確率を意味する英語 probability の頭文字。$n(A)$ は事象 $A$ の要素の個数(場合の数)。

なぜこの定義が自然なのでしょうか。 根元事象が $n(U)$ 個あり、どれも同じ確率で起こるなら、各根元事象の確率は $\dfrac{1}{n(U)}$ です。 事象 $A$ は $n(A)$ 個の根元事象からなるので、$A$ が起こる確率は $\dfrac{n(A)}{n(U)}$ になります。 つまり、確率の定義は「対称性の仮定」から必然的に導かれる式なのです。

確率の基本性質

定義から直ちに、次の3つの性質が導かれます。

  • 性質1:任意の事象 $A$ に対して $0 \leq P(A) \leq 1$
  • 性質2:全事象の確率は $P(U) = 1$(何かは必ず起こる)
  • 性質3:空事象の確率は $P(\emptyset) = 0$(ありえないことは起こらない)
▷ 性質1の導出:$0 \leq P(A) \leq 1$ はなぜ成り立つか

事象 $A$ は全事象 $U$ の部分集合なので、$A$ の要素の個数は $U$ の要素の個数以下です。

$$0 \leq n(A) \leq n(U)$$

両辺を $n(U) > 0$ で割ると、

$$0 \leq \frac{n(A)}{n(U)} \leq 1$$

すなわち $0 \leq P(A) \leq 1$ が成り立ちます。 確率が0なら「絶対に起こらない」、1なら「必ず起こる」、その間の値なら「ある程度の確からしさで起こる」ことを意味します。

💡 ここが本質:確率の計算は「2つの場合の数」を求めるだけ

確率を求める手順は、突き詰めるとたった2ステップです。

Step 1:全事象 $U$ の場合の数 $n(U)$ を求める(分母)

Step 2:求めたい事象 $A$ の場合の数 $n(A)$ を求める(分子)

あとは $P(A) = \dfrac{n(A)}{n(U)}$ に代入するだけ。 第6章で学んだ「順列・組合せ」の技術は、まさにこの2つの場合の数を正確に数えるための道具です。

サイコロで確かめる

1個のサイコロを振る試行を考えましょう。 全事象は $U = \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}$ で $n(U) = 6$ です。

「偶数の目が出る」事象を $A = \{2, 4, 6\}$ とすると、$n(A) = 3$。

$$P(A) = \frac{n(A)}{n(U)} = \frac{3}{6} = \frac{1}{2}$$

「5以上の目が出る」事象を $B = \{5, 6\}$ とすると、$n(B) = 2$。

$$P(B) = \frac{2}{6} = \frac{1}{3}$$
⚠️ 落とし穴:2個のサイコロを「区別しない」と間違える

2個のサイコロを投げるとき、全事象の場合の数はいくつでしょうか。

✕ 誤:「目の組み合わせ」で考えて $(1,1), (1,2), \ldots, (6,6)$ の21通り

○ 正:2個のサイコロをA, Bと区別する。Aの目が6通り、Bの目が6通りで $6 \times 6 = 36$ 通り

$(1,2)$(Aが1, Bが2)と $(2,1)$(Aが2, Bが1)は別の根元事象です。 区別しないと、たとえば「目の和が7」の確率を正しく求められません。 同じ形のサイコロでも、必ず区別して数えるのが鉄則です。

⚠️ 落とし穴:「同様に確からしい」の前提を確認し忘れる

$P(A) = \dfrac{n(A)}{n(U)}$ が使えるのは、根元事象が同様に確からしいときに限ります。

✕ 誤:3枚のコインを投げるとき、「表3枚・表2裏1・表1裏2・裏3枚」の4通りだから、表3枚の確率は $\dfrac{1}{4}$

○ 正:3枚を区別すると全事象は $2^3 = 8$ 通り。表3枚は $(表, 表, 表)$ の1通りだけなので確率は $\dfrac{1}{8}$

上の4パターンは同様に確からしくありません。表2裏1は3通り、表3枚は1通りなので、同じ重みで数えてはいけないのです。

🔬 深掘り:コルモゴロフの公理 ── 現代確率論の出発点

高校で学ぶ確率の定義は「根元事象が同様に確からしい」場合に限定されています。 では、コインの表裏が等確率でない場合や、連続的な確率(たとえば「0から1の間のランダムな実数」)はどう扱うのでしょうか。

1933年、ロシアの数学者コルモゴロフは、確率を次の3つの公理で定義しました。

(1) 任意の事象 $A$ に対して $P(A) \geq 0$
(2) $P(U) = 1$
(3) 互いに排反な事象 $A_1, A_2, \ldots$ に対して $P(A_1 \cup A_2 \cup \cdots) = P(A_1) + P(A_2) + \cdots$

この3つの公理を満たすものを「確率」と呼ぶ、というのが現代数学の立場です。 高校で学ぶ $P(A) = \dfrac{n(A)}{n(U)}$ は、この公理を満たす「特別な場合」にすぎません。 公理的な定義により、天気予報の降水確率や量子力学の確率など、より広い世界を扱えるようになります。

3余事象の確率 ─ 「起こらない確率」の威力

事象 $A$ に対して、「$A$ が起こらない」という事象を $A$ の余事象といい、$\overline{A}$ で表します。 集合の言葉でいえば、$\overline{A}$ は $A$ の補集合です。

$A$ と $\overline{A}$ の関係を整理しましょう。

  • $A \cap \overline{A} = \emptyset$($A$ が起こるか起こらないかは同時には起こらない)
  • $A \cup \overline{A} = U$($A$ が起こるか起こらないかのどちらかは必ず起こる)

$A \cup \overline{A} = U$ の両辺の確率を考えると、$A$ と $\overline{A}$ は排反なので、

$$P(A) + P(\overline{A}) = P(U) = 1$$

したがって、

📐 余事象の確率
$$P(\overline{A}) = 1 - P(A)$$
※ 「$A$ が起こらない確率」=「1 − $A$ が起こる確率」

この公式は一見シンプルですが、実は非常に強力な武器です。 「少なくとも1つは〜」「すべてが〜でない」のように、直接数えると場合分けが面倒な事象は、 余事象を使うとスッキリ計算できることが多いのです。

💡 ここが本質:「少なくとも」が出たら余事象を疑え

「少なくとも1個は赤玉が出る」確率を直接求めようとすると、「赤1個」「赤2個」「赤3個」...と場合分けが必要になります。

しかし余事象「赤玉が1個も出ない(=すべて白玉)」は1パターンだけなので計算が簡単です。

$$P(\text{少なくとも1個は赤}) = 1 - P(\text{すべて白})$$

「少なくとも」「〜でない」「1つ以上」というキーワードが問題文に現れたら、余事象の出番です。

具体例:「少なくとも1個は偶数」

2個のサイコロを同時に投げるとき、少なくとも1個は偶数の目が出る確率を求めてみましょう。

全事象は $n(U) = 6 \times 6 = 36$ 通りです。

直接数えると、「1個だけ偶数」と「2個とも偶数」の場合分けが必要です。 余事象を使えば、「2個とも奇数」だけ数えればよいので簡単です。

2個とも奇数の目(1, 3, 5)が出る場合の数は $3 \times 3 = 9$ 通り。

$$P(\text{少なくとも1個は偶数}) = 1 - P(\text{2個とも奇数}) = 1 - \frac{9}{36} = 1 - \frac{1}{4} = \frac{3}{4}$$
⚠️ 落とし穴:余事象を使うべきか直接計算すべきかの判断

すべての問題で余事象が最善とは限りません。判断基準は「場合分けの数」です。

余事象が有利:「少なくとも1つは〜」→ 余事象は「1つも〜でない」の1パターン

直接計算が有利:「ちょうど2個が〜」→ 余事象は「0個」「1個」「3個」...と多くなる

余事象の方が場合分けが少なくなるかどうかを、手を動かす前に見極めましょう。

4和事象と加法定理 ─ 「または」の確率

2つの事象 $A$, $B$ に対して、「$A$ または $B$ が起こる」事象を和事象といい、$A \cup B$ で表します。 「$A$ と $B$ がともに起こる」事象は積事象で、$A \cap B$ と書きます。

和事象の確率は、集合の要素の個数の公式と同じ構造をしています。

📐 和事象の確率(加法定理)

一般の場合:

$$P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)$$

$A$ と $B$ が排反($A \cap B = \emptyset$)のとき:

$$P(A \cup B) = P(A) + P(B)$$
※ 排反 = 2つの事象が同時には起こらないこと。$A \cap B = \emptyset$ と同値。
💡 ここが本質:$P(A \cap B)$ を引くのは「重複」を除くため

$P(A) + P(B)$ をそのまま足すと、$A$ にも $B$ にも含まれる根元事象($A \cap B$ の部分)が2回数えられてしまいます

だから $P(A \cap B)$ を1回分引いて、ちょうど1回ずつ数えるようにします。 これは第6章で学んだ集合の要素の個数の公式 $n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B)$ と全く同じ原理です。

$A$ と $B$ が排反なら $A \cap B = \emptyset$ で $P(A \cap B) = 0$ なので、単純に足すだけで済みます。

▷ 加法定理の導出

集合の要素の個数について、$n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B)$ が成り立ちます。

両辺を $n(U)$ で割ると、

$$\frac{n(A \cup B)}{n(U)} = \frac{n(A)}{n(U)} + \frac{n(B)}{n(U)} - \frac{n(A \cap B)}{n(U)}$$

確率の定義 $P(X) = \dfrac{n(X)}{n(U)}$ を適用すると、

$$P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)$$

が得られます。確率の加法定理は、集合の個数の公式を $n(U)$ で割っただけなのです。

排反事象とは

2つの事象 $A$, $B$ が同時には起こらないとき、すなわち $A \cap B = \emptyset$ のとき、$A$ と $B$ は互いに排反であるといいます。

たとえば、サイコロを1個振るとき、「1の目が出る」と「6の目が出る」は排反です。 一方、「偶数の目が出る」と「3の倍数の目が出る」は排反ではありません。 なぜなら、6は偶数かつ3の倍数なので、両方が同時に起こりうるからです。

具体例:トランプの確率

52枚のトランプから1枚引くとき、「ハートまたは絵札」が出る確率を求めましょう。

$A$:ハートが出る → $P(A) = \dfrac{13}{52}$

$B$:絵札(J, Q, K)が出る → $P(B) = \dfrac{12}{52}$

$A \cap B$:ハートの絵札が出る → $P(A \cap B) = \dfrac{3}{52}$

$$P(A \cup B) = \frac{13}{52} + \frac{12}{52} - \frac{3}{52} = \frac{22}{52} = \frac{11}{26}$$
⚠️ 落とし穴:排反でない事象の和で $P(A \cap B)$ を引き忘れる

上の例で「ハート」と「絵札」は排反ではありません。ハートの絵札(J, Q, K)が両方に含まれます。

✕ 誤:$P(A \cup B) = \dfrac{13}{52} + \dfrac{12}{52} = \dfrac{25}{52}$($P(A \cap B)$ を引いていない)

○ 正:$P(A \cup B) = \dfrac{13}{52} + \dfrac{12}{52} - \dfrac{3}{52} = \dfrac{22}{52} = \dfrac{11}{26}$

「排反かどうか」を必ず確認してください。排反でなければ $P(A \cap B)$ を引く。 「排反 → そのまま足す」「排反でない → 重複を引く」を徹底しましょう。

3つ以上の事象の和

3つの事象 $A$, $B$, $C$ の和事象の確率は、集合の個数の公式を拡張して次のように表されます。

$$P(A \cup B \cup C) = P(A) + P(B) + P(C) - P(A \cap B) - P(B \cap C) - P(C \cap A) + P(A \cap B \cap C)$$

「足して、引いて、また足す」というパターンは、第6章の「包除原理」と全く同じです。 確率の問題で3つ以上の事象を扱う場合は少ないですが、集合の知識が基盤にあることを理解しておきましょう。

🔬 深掘り:確率と集合論 ── なぜ集合の言葉が使われるのか

確率の理論が集合の言葉で記述されるのには、深い理由があります。 事象を集合として扱うことで、和事象($\cup$)、積事象($\cap$)、余事象(補集合)といった操作を、 集合の演算として統一的に扱えるからです。

大学の測度論では、確率は「集合に数値を割り当てる関数」(測度)として定式化されます。 面積が「図形に数値(広さ)を割り当てる」のと同じ発想で、確率は「事象に数値(確からしさ)を割り当てる」のです。 高校で「事象 = 集合」と学ぶことは、この壮大な理論への入口にあたります。

5俯瞰マップ ─ 確率の基本法則の全体像

ここまで学んだ確率の基本法則を一覧にして、全体像を整理しましょう。

確率の基本公式一覧

法則公式使いどころ
確率の定義$P(A) = \dfrac{n(A)}{n(U)}$すべての確率計算の出発点
確率の範囲$0 \leq P(A) \leq 1$答えの検算に使う
加法定理(排反)$P(A \cup B) = P(A) + P(B)$$A$ と $B$ が同時に起こらないとき
加法定理(一般)$P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)$$A$ と $B$ に重複があるとき
余事象の確率$P(\overline{A}) = 1 - P(A)$「少なくとも」「〜でない」の問題

典型的な出題パターン

パターン問題の特徴解法のポイント
サイコロ1個: $n(U) = 6$、2個: $n(U) = 36$2個以上は必ず区別して表を書く
コイン$n$ 枚で $n(U) = 2^n$各コインを区別。樹形図が有効
カード・トランプ52枚から $r$ 枚引く組合せ ${}_nC_r$ で場合の数を求める
玉の取り出し色や番号で区別された玉「同時に取り出す」= 組合せ
余事象の利用「少なくとも」「1つ以上」$1 - P(\text{1つも〜でない})$ で計算

つながりマップ

  • ← 第6章 場合の数:順列・組合せは確率の分母と分子を求めるための道具。場合の数を正しく数えられなければ、確率は求められない。
  • ← 第3章 集合と命題:事象の操作(和・積・余事象)はすべて集合の演算(和集合・共通部分・補集合)。集合の知識が確率の土台。
  • → 7-2 いろいろな確率:独立試行・反復試行の確率。同じ試行を繰り返すとき、確率がどう計算されるかを学ぶ。
  • → 7-3 条件付き確率と期待値:「ある条件のもとでの確率」と「確率的な平均値」。確率の応用編。
  • → 数学B 統計的な推測:確率分布・正規分布・推定と検定。確率の理論が統計学の基盤になる。

📋まとめ

  • 試行:同じ条件で繰り返せる実験や観測。事象:試行の結果起こる事柄。事象は集合で表す
  • 根元事象は最小単位の事象。全事象 $U$ はすべての根元事象の集合。空事象 $\emptyset$ は決して起こらない事象
  • 根元事象が同様に確からしいとき、$P(A) = \dfrac{n(A)}{n(U)}$。分母は全場合の数、分子は事象の場合の数
  • 確率の範囲:$0 \leq P(A) \leq 1$。$P(U) = 1$、$P(\emptyset) = 0$
  • 余事象の確率:$P(\overline{A}) = 1 - P(A)$。「少なくとも」の問題で威力を発揮
  • 加法定理:$P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)$。排反なら $P(A \cup B) = P(A) + P(B)$

確認テスト

Q1. 1個のサイコロを振るとき、5以上の目が出る確率を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$A = \{5, 6\}$ で $n(A) = 2$、$n(U) = 6$。よって $P(A) = \dfrac{2}{6} = \dfrac{1}{3}$。

Q2. 2個のサイコロを同時に投げるとき、目の和が10以上になる確率を求めてください。

▶ クリックして解答を表示全事象は $36$ 通り。和が10: $(4,6),(5,5),(6,4)$ の3通り。和が11: $(5,6),(6,5)$ の2通り。和が12: $(6,6)$ の1通り。合計6通り。$P = \dfrac{6}{36} = \dfrac{1}{6}$。

Q3. 事象 $A$ の確率が $P(A) = 0.7$ のとき、$A$ が起こらない確率はいくつですか。

▶ クリックして解答を表示$P(\overline{A}) = 1 - P(A) = 1 - 0.7 = 0.3$。

Q4. 2つの事象 $A$, $B$ が排反であるとはどういう意味ですか。また、排反のとき $P(A \cup B)$ はどう計算しますか。

▶ クリックして解答を表示$A$ と $B$ が同時には起こらないこと($A \cap B = \emptyset$)。排反のとき $P(A \cup B) = P(A) + P(B)$(重複がないのでそのまま足せる)。

Q5. $P(A) = \dfrac{1}{3}$、$P(B) = \dfrac{1}{2}$、$P(A \cap B) = \dfrac{1}{6}$ のとき、$P(A \cup B)$ を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B) = \dfrac{1}{3} + \dfrac{1}{2} - \dfrac{1}{6} = \dfrac{2}{6} + \dfrac{3}{6} - \dfrac{1}{6} = \dfrac{4}{6} = \dfrac{2}{3}$。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

7-1-1 A 基礎 サイコロ 確率の定義

2個のサイコロを同時に投げるとき、次の確率を求めよ。

(1) 目の和が7になる確率

(2) 目の積が12になる確率

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\dfrac{1}{6}$  (2) $\dfrac{1}{9}$

解説

方針:2個のサイコロを区別し、全事象 $n(U) = 36$ を確認。条件を満たす場合を書き出す。

(1) 目の和が7:$(1,6), (2,5), (3,4), (4,3), (5,2), (6,1)$ の6通り。

$P = \dfrac{6}{36} = \dfrac{1}{6}$

(2) 目の積が12:$12 = 2 \times 6 = 3 \times 4$ より、$(2,6), (6,2), (3,4), (4,3)$ の4通り。

$P = \dfrac{4}{36} = \dfrac{1}{9}$

7-1-2 A 基礎 余事象 玉の取り出し

赤玉5個と白玉4個が入っている袋から、同時に3個の玉を取り出す。少なくとも1個は赤玉が含まれる確率を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$\dfrac{20}{21}$

解説

方針:「少なくとも1個は赤」の余事象は「すべて白」。余事象で計算する。

全事象:9個から3個選ぶ → ${}_9C_3 = \dfrac{9 \cdot 8 \cdot 7}{3 \cdot 2 \cdot 1} = 84$ 通り

すべて白玉:4個から3個選ぶ → ${}_4C_3 = 4$ 通り

$P(\text{すべて白}) = \dfrac{4}{84} = \dfrac{1}{21}$

$P(\text{少なくとも1個は赤}) = 1 - \dfrac{1}{21} = \dfrac{20}{21}$

B 発展レベル

7-1-3 B 発展 加法定理 トランプ 論述

52枚のトランプから1枚引くとき、「スペードまたは7以下の数札(A, 2, 3, 4, 5, 6, 7)」が出る確率を求めよ。ただし、Aは1とみなす。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$\dfrac{34}{52} = \dfrac{17}{26}$

解説

方針:「スペード」と「7以下の数札」は排反ではない(スペードの7以下が重複)。加法定理を使う。

$A$:スペードが出る → $n(A) = 13$(スペードは13枚)

$B$:7以下の数札が出る → $n(B) = 7 \times 4 = 28$(A〜7が4スート)

$A \cap B$:スペードの7以下の数札 → $n(A \cap B) = 7$

$$P(A \cup B) = \frac{13}{52} + \frac{28}{52} - \frac{7}{52} = \frac{34}{52} = \frac{17}{26}$$

⚠️ 排反でないので $P(A \cap B)$ を忘れずに引く。

採点ポイント
  • 排反でないことを認識し、加法定理の一般形を使う(3点)
  • $n(A)$, $n(B)$, $n(A \cap B)$ を正しく求める(4点)
  • 最終的な確率を正しく約分する(3点)
7-1-4 B 発展 余事象 組合せ 論述

赤玉7個と青玉6個の合計13個の玉が入っている袋から、同時に4個取り出すとき、次の確率を求めよ。

(1) 赤玉が4個すべて取り出される確率

(2) 少なくとも1個は青玉が取り出される確率

(3) 4個とも同じ色である確率

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\dfrac{7}{143}$  (2) $\dfrac{136}{143}$  (3) $\dfrac{10}{143}$

解説

方針:全事象は13個から4個選ぶ組合せ。(2)は余事象を使う。(3)は排反事象の和。

全事象:${}_{13}C_4 = \dfrac{13 \cdot 12 \cdot 11 \cdot 10}{4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1} = 715$

(1) 赤玉7個から4個選ぶ:${}_7C_4 = {}_7C_3 = \dfrac{7 \cdot 6 \cdot 5}{3 \cdot 2 \cdot 1} = 35$

$P = \dfrac{35}{715} = \dfrac{7}{143}$

(2) 余事象「4個すべて赤玉」の確率が (1) の $\dfrac{7}{143}$。

$P(\text{少なくとも1個は青}) = 1 - \dfrac{7}{143} = \dfrac{136}{143}$

(3) 「4個とも同じ色」=「4個とも赤」または「4個とも青」。これらは排反。

4個とも赤:${}_7C_4 = 35$ 通り

4個とも青:${}_6C_4 = 15$ 通り

$P = \dfrac{35 + 15}{715} = \dfrac{50}{715} = \dfrac{10}{143}$

採点ポイント
  • 全事象 ${}_{13}C_4 = 715$ を正しく求める(2点)
  • (1) ${}_7C_4 = 35$ を正しく計算する(2点)
  • (2) 余事象を利用する方針を明示する(3点)
  • (3) 「4個とも赤」と「4個とも青」が排反であることを示す(3点)