第7章 確率

確率の総合問題
─ 確率の全技法を統合する ── 入試実戦演習

確率の入試問題は、場合の数・条件付き確率・反復試行など複数のテーマが融合して出題されます。
この記事では、第7章で学んだ全技法を統合し、入試レベルの問題に対応する力を養います。

1共通テスト型の確率問題 ─ 読解力と計算力のバランス

共通テスト(旧センター試験)の確率問題には、独特の特徴があります。 問題文が長く、日常的な文脈に確率の問題が埋め込まれていることが多いのです。 数学的には基本的な内容でも、「何を求めているか」を正確に読み取る力が問われます。

共通テスト型の特徴

  • 日常場面の設定:ゲーム、カード、袋から取り出す等の文脈
  • 誘導形式:小問の答えが次の小問のヒントになる
  • 計算量は控えめ:複雑な計算より「方針の選択」が重要
  • 条件の読み落とし注意:「もとに戻す」「戻さない」「少なくとも」等のキーワード
💡 ここが本質:共通テストは「方針決定力」を測っている

共通テストの確率問題で差がつくのは、計算スピードではなく方針決定力です。

「この問題は余事象で考えるべきか、直接数えるべきか」 「場合分けが必要か、対称性で簡略化できるか」 「条件付き確率を使うべきか」── こうした判断を素早く正確にできるかが問われます。

方針判断のフローチャート:

1. 「少なくとも」→ 余事象を検討

2. 「~のとき」「~が分かったとき」→ 条件付き確率

3. 同じ試行の繰返し → 反復試行または確率漸化式

4. 複雑な数え上げ → 場合の数(順列・組合せ)を先に処理

⚠️ 落とし穴:問題文の条件を読み飛ばす

共通テストの問題文は長いため、重要な条件を読み飛ばしがちです。

✕ 誤:「袋から玉を取り出す」→ 非復元と思い込む(実は「もとに戻す」と書いてある)

○ 正:問題文の条件を下線を引きながら読む。特に以下のキーワードに注意: 「もとに戻す/戻さない」「同時に/順番に」「少なくとも/ちょうど」「区別する/しない」

⚠️ 落とし穴:誘導を無視して独自路線で解こうとする

共通テストの問題は誘導形式です。(1) の結果を (2) で使うように設計されています。

✕ 誤:(1) を解かずに (2) を最初から独自に解こうとする → 時間のロス

○ 正:誘導に乗る。(1) で求めた値や (1) の考え方が (2) のヒントになっている。 誘導に乗ることが最短ルートです。

🔬 深掘り:確率的思考と意思決定理論

共通テストで問われる「日常場面での確率」は、 大学で学ぶ意思決定理論(decision theory)の入口です。 「期待値が最大になる選択肢を選ぶ」「リスクとリターンのバランスを考える」 といった思考は、経営学、医学、公共政策など幅広い分野の基盤になっています。

たとえば医学では「検査結果が陽性のとき、本当に病気である確率」を ベイズの定理で計算します。これはまさに条件付き確率の応用です。

2場合の数と確率の融合 ─ 「数え方」が確率を決める

確率を求めるには、まず場合の数を正確に数える必要があります。 第6章(場合の数)と第7章(確率)は、表裏一体の関係にあります。

「同様に確からしい」の確認

確率の計算で $P(A) = \dfrac{n(A)}{n(U)}$ を使えるのは、 全事象 $U$ の各根元事象が同様に確からしい(等確率)ときだけです。 場合の数の「数え方」を間違えると、この前提が崩れます。

💡 ここが本質:確率の問題は「全事象の設定」で9割決まる

確率の問題を解くとき、最初にすべきことは「全事象 $U$ を何にするか」を決めることです。 全事象の各要素が等確率にならなければ、$\dfrac{n(A)}{n(U)}$ は使えません。

2つのさいころを振る問題では、(1, 2) と (2, 1) を区別する $6 \times 6 = 36$ 通りの全事象を使います。 「区別しない」21通りを全事象にすると、各要素が等確率でなくなるため間違いです。

全事象の選び方の原則:各根元事象が等確率になるように、できるだけ「区別する」方向で設定する。

組合せと確率の典型パターン

場合の数と確率の融合問題でよく使うパターンを整理します。

問題の型全事象事象 $A$ の数え方
$n$ 個から $r$ 個選ぶ$\binom{n}{r}$条件を満たす選び方の数
反復試行($n$ 回中 $k$ 回)$2^n$(各回2通り)$\binom{n}{k} p^k (1-p)^{n-k}$
カードの並べ方$n!$ or $\dfrac{n!}{重複!}$条件を満たす並べ方
区別ある玉を箱に分配$k^n$($n$ 個を $k$ 箱に)条件ごとに数え上げ
⚠️ 落とし穴:「区別あり」と「区別なし」を混同する

赤玉3個、白玉2個の5個の中から2個を取り出す問題で、よくある間違いです。

✕ 誤:全事象は $\binom{5}{2} = 10$。赤2個:$\binom{3}{2} = 3$。確率 $\dfrac{3}{10}$。→ これは正しい!

しかし、もし「赤玉に番号がついている(区別がある)」場合はどうでしょう。 赤1, 赤2, 赤3, 白1, 白2 と区別しても、「赤2個を選ぶ確率」は同じ $\dfrac{3}{10}$ になります。

○ 正:「区別ありで数えても区別なしで数えても、確率は同じ」になるのが正しい数え方の証拠。 もし2つの方法で異なる値が出たら、どちらかの数え方が「同様に確からしくない」全事象を使っています。

📐 確率の基本公式(まとめ)

加法定理:$A, B$ が排反のとき $P(A \cup B) = P(A) + P(B)$

余事象:$P(A) = 1 - P(\bar{A})$

乗法定理:$P(A \cap B) = P(A) \cdot P_A(B)$

反復試行:$P_n(k) = \binom{n}{k} p^k (1-p)^{n-k}$

条件付き確率:$P_A(B) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(A)}$

※ 全公式の根底にある考え方は「場合の数の比」。数え方を正確にすれば、公式は自然に導かれる。
🔬 深掘り:確率の公理的定義 ── コルモゴロフの3つの公理

高校では確率を「場合の数の比」として定義しますが、大学数学では コルモゴロフの3つの公理から確率を定義します。

(1) $P(A) \geq 0$ (2) $P(U) = 1$ (3) 排反な事象 $A, B$ に対して $P(A \cup B) = P(A) + P(B)$

この3つの公理さえ満たせば、全事象が無限でも、等確率でなくても、 確率を矛盾なく定義できます。高校で学ぶ加法定理や余事象の公式は、 すべてこの公理から導かれる定理です。

3条件付き確率の応用 ─ 「原因の推定」と「検査の信頼性」

条件付き確率は、入試で最も差がつくテーマの1つです。 特に「原因の確率」(ベイズの定理の応用)は、共通テスト・二次試験の両方で頻出です。

原因の確率とは

「結果がわかった後で、原因を推定する」問題を原因の確率(事後確率)の問題といいます。

典型例:工場 A は60%, 工場 B は40% の製品を出荷している。 工場 A の不良率は2%, 工場 B の不良率は5%。 ある製品が不良品だったとき、それが工場 A の製品である確率は?

▷ 原因の確率の計算手順

Step 1:事前確率を設定。$P(A) = 0.6$, $P(B) = 0.4$

Step 2:条件付き確率(尤度)を確認。$P_A(\text{不良}) = 0.02$, $P_B(\text{不良}) = 0.05$

Step 3:全確率の公式で「不良品が出る確率」を求める。

$$P(\text{不良}) = P(A) \cdot P_A(\text{不良}) + P(B) \cdot P_B(\text{不良})$$ $$= 0.6 \times 0.02 + 0.4 \times 0.05 = 0.012 + 0.020 = 0.032$$

Step 4:ベイズの定理で原因の確率を求める。

$$P_{\text{不良}}(A) = \frac{P(A) \cdot P_A(\text{不良})}{P(\text{不良})} = \frac{0.012}{0.032} = \frac{12}{32} = \frac{3}{8}$$

💡 ここが本質:ベイズの定理は「表を埋める」だけ

原因の確率の問題は、次の表を埋めるだけで解けます。

工場 A:出荷比率 $0.6$ × 不良率 $0.02$ = 寄与 $0.012$

工場 B:出荷比率 $0.4$ × 不良率 $0.05$ = 寄与 $0.020$

合計:$0.032$

工場 A の寄与 / 合計 = $\dfrac{0.012}{0.032} = \dfrac{3}{8}$

公式を暗記するより、「各原因からの寄与を計算して、その比をとる」と覚えた方が実践的です。

⚠️ 落とし穴:条件付き確率の向きを逆にする(確率の反転)

$P_A(B)$ と $P_B(A)$ は全く異なる値です。

✕ 誤:「工場 A の不良率が2%だから、不良品が工場 A 製である確率も2%」

○ 正:$P_A(\text{不良}) = 0.02$ は「工場 A 製と知った上での不良率」。 $P_{\text{不良}}(A) = \dfrac{3}{8}$ は「不良品と知った上で工場 A 製である確率」。

$P_A(B) \neq P_B(A)$ が一般的です。この取り違えは最も多い間違いの1つです。

検査の信頼性 ─ 偽陽性と偽陰性

医学検査では、「病気の人が陽性になる確率」(感度)と 「陽性だった人が本当に病気である確率」(陽性的中率)は別の量です。 特に、希少な病気では陽性的中率が驚くほど低くなることがあります。

💡 ここが本質:希少な現象では「偽陽性」が支配的になる

有病率0.1%の病気を、感度99%・特異度95%の検査で調べるとしましょう。

1000人に1人が病気。検査陽性の人のうち、本当に病気の人は約2%しかいません。 なぜなら、999人の健康な人のうち5%(約50人)が偽陽性になり、 1人の病気の人の陽性と合わせて51人が陽性。病気は1人だけなので $\dfrac{1}{51} \approx 2\%$。

これは直感に反しますが、ベイズの定理から論理的に導かれる事実です。 事前確率(有病率)が低いと、検査精度が高くても陽性的中率は低くなるのです。

🔬 深掘り:ベイズ統計学 ── データから信念を更新する

ベイズの定理を繰り返し適用して、データが得られるたびに確率(信念の度合い)を 更新していく手法をベイズ統計学といいます。

機械学習のスパムフィルタ、自動運転の障害物認識、気象予報、 さらには裁判での証拠評価まで、ベイズ統計は現代社会のあらゆる場面で使われています。 高校で学ぶ条件付き確率は、この強力な理論の出発点です。

4確率の最大値問題 ─ 「$n$ を動かして確率が最大になる場合」

反復試行の確率 $P(X = k)$ が最大になる $k$ の値を求める問題は、 入試でよく出題されます。確率と数列の融合問題の1つです。

反復試行の最大確率

確率 $p$ の事象が $n$ 回中ちょうど $k$ 回起こる確率は:

$$P(X = k) = \binom{n}{k} p^k (1-p)^{n-k}$$

$k$ を1つ増やしたときの確率の比を考えます。

$$\frac{P(X = k+1)}{P(X = k)} = \frac{\binom{n}{k+1} p^{k+1} (1-p)^{n-k-1}}{\binom{n}{k} p^k (1-p)^{n-k}} = \frac{(n-k)p}{(k+1)(1-p)}$$

この比が1より大きいか小さいかで、$P(X = k)$ の増減がわかります。

📐 反復試行の確率 $P(X = k)$ が最大となる $k$

$\dfrac{P(X = k+1)}{P(X = k)} = \dfrac{(n-k)p}{(k+1)(1-p)} \geq 1$ ⇔ $k \leq (n+1)p - 1$

(i) $(n+1)p$ が整数でないとき

$P(X = k)$ は $k = \lfloor (n+1)p \rfloor$ で最大($\lfloor \cdot \rfloor$ はガウス記号)

(ii) $(n+1)p$ が整数のとき

$k = (n+1)p - 1$ と $k = (n+1)p$ の2つの値で $P(X = k)$ は最大

※ 比の値が1を超えるところから下回るところへ変わる境界が、最大値を与える $k$。
▷ 具体例:さいころを13回投げ、6の目が出る回数の確率が最大になる場合

$n = 13$, $p = \dfrac{1}{6}$。$(n+1)p = 14 \times \dfrac{1}{6} = \dfrac{7}{3} \approx 2.33$

整数ではないので、$k = \lfloor 2.33 \rfloor = 2$ で $P(X = k)$ が最大。

検算:$\dfrac{P(X = 3)}{P(X = 2)} = \dfrac{(13-2) \cdot \frac{1}{6}}{3 \cdot \frac{5}{6}} = \dfrac{\frac{11}{6}}{\frac{15}{6}} = \dfrac{11}{15} < 1$

$\dfrac{P(X = 2)}{P(X = 1)} = \dfrac{(13-1) \cdot \frac{1}{6}}{2 \cdot \frac{5}{6}} = \dfrac{\frac{12}{6}}{\frac{10}{6}} = \dfrac{12}{10} = \dfrac{6}{5} > 1$

確かに $P(X = 1) < P(X = 2) > P(X = 3)$ なので、$k = 2$ で最大。✓

⚠️ 落とし穴:比の不等式の向きを間違える

$\dfrac{P(X = k+1)}{P(X = k)} \geq 1$ は「$k$ を増やすと確率が増える(または変わらない)」という意味です。

✕ 誤:比が1以上のとき「$k$ で最大」と判断する

○ 正:比が1以上のとき「まだ $k$ を増やせる」。比が1未満に変わる直前の $k$ が最大値を与える。

つまり、$\dfrac{P(k+1)}{P(k)} \geq 1$ かつ $\dfrac{P(k+2)}{P(k+1)} < 1$ となる $k+1$ で最大、ではなく $k$ と $k+1$ の関係を丁寧に見る必要があります。

⚠️ 落とし穴:$(n+1)p$ が整数のときの処理

$(n+1)p$ がちょうど整数のとき、最大値を与える $k$ が2つあることを忘れがちです。

✕ 誤:$(n+1)p = 3$ のとき、$k = 3$ だけが答え

○ 正:$k = 2$ と $k = 3$ の両方で $P(X = k)$ が最大値をとる。 比 $\dfrac{P(X = 3)}{P(X = 2)} = 1$ となるため、2つの値が等しくなります。

🔬 深掘り:最頻値と期待値の関係

$P(X = k)$ が最大となる $k$ を最頻値(mode)といいます。 二項分布 $B(n, p)$ の場合、最頻値は $\lfloor (n+1)p \rfloor$ 付近にあり、 期待値 $np$ に近い値をとります。

$n$ が大きくなると、二項分布は正規分布(ガウス分布)に近づきます (中心極限定理)。正規分布では平均=最頻値=中央値が一致し、 美しい釣鐘型の曲線になります。確率の最大値問題は、この深い理論への入口です。

5第7章全体の俯瞰マップ ─ 確率の全技法を鳥瞰する

第7章で学んできた確率の全範囲を、1つの表にまとめます。 入試問題を見たとき、「どのテーマの知識が必要か」を瞬時に判断できるようになりましょう。

第7章の全体マップ

テーマ核心技法典型的な出題形式
7-1確率の基本性質同様に確からしい、加法定理基本計算、定義の確認
7-2いろいろな確率余事象、独立試行、反復試行「少なくとも」「ちょうど $k$ 回」
7-3条件付き確率と期待値$P_A(B)$、乗法定理、期待値「~のとき」の確率、有利不利
7-8くじ引きの公平性全確率の公式、対称性「何番目に引いても同じ」の証明
7-9確率漸化式状態定義、漸化式、特性方程式「$n$ 回後の確率」
7-10総合問題全技法の統合共通テスト、入試融合問題

問題の見分け方フローチャート

💡 ここが本質:入試問題を見たらまず「問題の型」を判定する

確率の問題を見たとき、以下の順番で型を判定しましょう。

1. 「~のとき」「~が分かった」がある → 条件付き確率(7-3)

2. 「$n$ 回後」「$n$ 回繰り返す」がある → 反復試行(7-2)or 確率漸化式(7-9)

3. 「少なくとも」がある → 余事象を検討(7-2)

4. 「確率が最大」「最も起こりやすい」がある → 比の計算(7-10)

5. 「順番に引く」がある → くじ引きの公平性を検討(7-8)

6. 複雑な数え上げが必要 → 場合の数に帰着(6章の知識)

つながりマップ(第7章全体)

  • ← 第6章 場合の数:順列・組合せの知識は確率計算の土台。場合の数が正確に数えられなければ、確率は求められない。
  • ← 数学B 数列:漸化式の解法(等比数列、特性方程式)が確率漸化式で直接使われる。
  • → 数学B 統計的推測:反復試行の確率は二項分布の基礎。正規分布による近似、区間推定へとつながる。
  • → 大学数学 確率論:コルモゴロフの公理、確率変数、分布関数、大数の法則、中心極限定理など、高校確率の厳密化・一般化。
  • → 応用分野:統計学(データサイエンス)、機械学習(AI)、金融工学、暗号理論、量子力学。確率は現代科学の共通言語。

📋まとめ

  • 共通テスト型:方針決定力が鍵。余事象、条件付き確率、反復試行のどれを使うか瞬時に判断する
  • 場合の数と確率:全事象の設定が最重要。各根元事象が等確率になるように「区別する」方向で設定する
  • 条件付き確率の応用:原因の確率は「各原因からの寄与を計算して比をとる」。$P_A(B) \neq P_B(A)$ に注意
  • 確率の最大値:$\dfrac{P(k+1)}{P(k)}$ の比が1を超えるか下回るかで増減を判定する
  • $(n+1)p$ が整数のとき、最大値を与える $k$ は2つある
  • 入試問題では問題の型を判定することが最初のステップ。条件付き確率、反復試行、余事象のどれか

確認テスト

Q1. 確率の問題で「少なくとも1つ」という条件が出たら、最初に検討すべき手法は?

▶ クリックして解答を表示余事象。「少なくとも1つ」の余事象は「1つもない」なので、$P = 1 - P(\text{1つもない})$ と計算する方が簡単なことが多い。

Q2. $P_A(B) = 0.8$ のとき、$P_B(A) = 0.8$ といえますか?

▶ クリックして解答を表示いえない。$P_A(B)$ と $P_B(A)$ は一般に異なる。ベイズの定理 $P_B(A) = \dfrac{P(A) \cdot P_A(B)}{P(B)}$ で計算する必要がある。

Q3. さいころを12回投げ、1の目が出る回数 $k$ について $P(X = k)$ が最大となる $k$ を求めよ。

▶ クリックして解答を表示$(n+1)p = 13 \times \dfrac{1}{6} = \dfrac{13}{6} \approx 2.17$。整数でないので $k = \lfloor 2.17 \rfloor = 2$ で最大。

Q4. 確率の問題で「全事象の設定」が重要な理由を説明してください。

▶ クリックして解答を表示$P(A) = \dfrac{n(A)}{n(U)}$ が使えるのは、全事象の各根元事象が同様に確からしい(等確率)ときだけ。全事象の設定を間違えると、等確率の前提が崩れ、確率の計算が根本的に間違う。

Q5. 入試問題で「$n$ 回後に状態 A にいる確率を求めよ」とあるとき、まず何をすべきですか?

▶ クリックして解答を表示状態を定義し、$n$ 回後に各状態にいる確率を文字でおく。そして $p_{n+1}$ と $p_n$ の関係式(確率漸化式)を立てる。直接数え上げるのではなく、1ステップの変化に着目する。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

7-10-1 A 基礎 余事象 反復試行

さいころを4回投げるとき、1の目が少なくとも1回出る確率を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$1 - \left(\dfrac{5}{6}\right)^4 = 1 - \dfrac{625}{1296} = \dfrac{671}{1296}$

解説

方針:「少なくとも1回」は余事象が有効。余事象は「1回も出ない」。

1の目が出ない確率は各回 $\dfrac{5}{6}$。4回とも出ない確率:$\left(\dfrac{5}{6}\right)^4 = \dfrac{625}{1296}$

よって少なくとも1回出る確率:$1 - \dfrac{625}{1296} = \dfrac{671}{1296}$

B 標準レベル

7-10-2 B 標準 条件付き確率 原因の確率

ある工場では、機械 A が全体の70%、機械 B が全体の30% の製品を製造している。機械 A の不良率は3%、機械 B の不良率は6% である。

(1) 製品全体の不良率を求めよ。

(2) ある製品が不良品であったとき、それが機械 A で製造された確率を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $3.9\%$ (2) $\dfrac{7}{13}$

解説

方針:(1) 全確率の公式、(2) ベイズの定理。

(1) $P(\text{不良}) = 0.7 \times 0.03 + 0.3 \times 0.06 = 0.021 + 0.018 = 0.039 = 3.9\%$

(2) $P_{\text{不良}}(A) = \dfrac{P(A) \cdot P_A(\text{不良})}{P(\text{不良})} = \dfrac{0.7 \times 0.03}{0.039} = \dfrac{0.021}{0.039} = \dfrac{21}{39} = \dfrac{7}{13}$

※ 機械 A は全体の70%を製造しているが、不良品中での比率は $\dfrac{7}{13} \approx 53.8\%$。 機械 B の不良率が高いため、不良品の中では機械 B の割合が相対的に上がる。

採点ポイント
  • 全確率の公式の正しい適用(3点)
  • ベイズの定理の正しい適用(4点)
  • 計算の正確さ(3点)
7-10-3 B 標準 最大確率 反復試行

1個のさいころを10回投げるとき、6の目がちょうど $k$ 回出る確率を $P(k)$ とする。$P(k)$ が最大となる $k$ の値を求めよ。

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解答

$k = 1$

解説

方針:$\dfrac{P(k+1)}{P(k)}$ の比を調べて増減を判定。

$\dfrac{P(k+1)}{P(k)} = \dfrac{(10-k) \cdot \frac{1}{6}}{(k+1) \cdot \frac{5}{6}} = \dfrac{10-k}{5(k+1)}$

この比が1以上 ⇔ $10 - k \geq 5(k+1)$ ⇔ $10 - k \geq 5k + 5$ ⇔ $5 \geq 6k$ ⇔ $k \leq \dfrac{5}{6}$

$k$ は非負整数なので、$k = 0$ のとき比 $> 1$($P(0) < P(1)$)。$k \geq 1$ のとき比 $< 1$($P(k) > P(k+1)$)。

検算:$(n+1)p = 11 \times \dfrac{1}{6} = \dfrac{11}{6} \approx 1.83$。$\lfloor 1.83 \rfloor = 1$。✓

よって $k = 1$ で $P(k)$ は最大。

採点ポイント
  • 比 $\dfrac{P(k+1)}{P(k)}$ の正しい計算(3点)
  • 比と1の大小関係から増減の判定(4点)
  • 最大値を与える $k$ の正確な特定(3点)

C 発展レベル

7-10-4 C 発展 場合の数と確率の融合 条件付き確率 論述

赤玉4個、白玉3個、青玉2個が入った袋がある。この袋から同時に3個の玉を取り出す。

(1) 取り出した3個がすべて異なる色である確率を求めよ。

(2) 取り出した3個のうち少なくとも1個が赤玉である確率を求めよ。

(3) 取り出した3個のうち赤玉が1個以上含まれていたとき、3個がすべて異なる色である条件付き確率を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\dfrac{2}{7}$ (2) $\dfrac{83}{84}$ (3) $\dfrac{24}{83}$

解説

方針:(1) 組合せの計算、(2) 余事象、(3) 条件付き確率。

全事象:$\binom{9}{3} = 84$ 通り

(1) 赤1個, 白1個, 青1個を選ぶ:$\binom{4}{1} \times \binom{3}{1} \times \binom{2}{1} = 4 \times 3 \times 2 = 24$ 通り

$P = \dfrac{24}{84} = \dfrac{2}{7}$

(2) 余事象:赤玉が0個、つまり白3個と青2個の計5個から3個選ぶ:$\binom{5}{3} = 10$ 通り

$P(\text{赤0個}) = \dfrac{10}{84} = \dfrac{5}{42}$

$P(\text{赤1個以上}) = 1 - \dfrac{5}{42} = \dfrac{37}{42}$

再計算:$\dfrac{10}{84} = \dfrac{5}{42}$。$1 - \dfrac{5}{42} = \dfrac{37}{42}$

検算:$84 - 10 = 74$。$\dfrac{74}{84} = \dfrac{37}{42}$。✓

(3) 条件付き確率 $P_{\text{赤1個以上}}(\text{3色}) = \dfrac{P(\text{3色} \cap \text{赤1個以上})}{P(\text{赤1個以上})}$

「3色すべて異なる」は赤1個・白1個・青1個なので、必ず赤が含まれる。よって

$P(\text{3色} \cap \text{赤1個以上}) = P(\text{3色}) = \dfrac{24}{84} = \dfrac{2}{7}$

$P_{\text{赤1個以上}}(\text{3色}) = \dfrac{2/7}{37/42} = \dfrac{2}{7} \times \dfrac{42}{37} = \dfrac{12}{37}$

答え:(1) $\dfrac{2}{7}$ (2) $\dfrac{37}{42}$ (3) $\dfrac{12}{37}$

採点ポイント
  • 全事象 $\binom{9}{3} = 84$ の設定(2点)
  • (1) 異なる色の組合せの正確な計算(2点)
  • (2) 余事象の活用(2点)
  • (3) 条件付き確率の定義の正しい適用(2点)
  • (3)「3色 ⊂ 赤1個以上」の認識(2点)