「9人を3人ずつ3組に分ける」と「9人をA, B, Cの3組に分ける」は、似ているようで答えが6倍違います。
この違いの正体は「組に名前があるかないか」。原理を理解すれば、組分け問題は怖くありません。
組分け問題の出発点は、「分けるもの」と「分ける先」に区別があるかどうかです。 まずは最もシンプルなパターン、「区別あるものを、区別ある箱(組)に入れる」から始めましょう。
たとえば、「6枚のカードをA, Bの2つの箱に入れる方法は何通りか」を考えます。 カード1枚ごとに「Aに入れる」「Bに入れる」の2通りの選択肢があり、6枚それぞれ独立に選べます。 よって $2^6 = 64$ 通りです。
これは6-4で学んだ重複順列そのものです。 $n$ 個のものを $k$ 個の箱に入れる方法は $k^n$ 通り。 各カードにとって「どの箱に入るか」が $k$ 通りの選択で、それが $n$ 枚分あるからです。
区別ある $n$ 個のものを、区別ある $k$ 個の箱に入れる方法は $k^n$ 通り。
これは「各ものに対して $k$ 個の行き先を選ぶ」という見方です。 ものの視点で考えれば重複順列、箱の視点で考えれば分配問題。 同じ操作を2つの角度から見ているだけです。
「6枚のカードをA, Bの2つの箱に入れる。ただし各箱に少なくとも1枚は入れる」となると、 空箱を許さない条件がつきます。
全体の $2^6 = 64$ 通りから、「Aが空(全部Bに入れる)」と「Bが空(全部Aに入れる)」の2通りを引いて、 $64 - 2 = 62$ 通りです。
✕ 誤:「6枚を2つの箱に入れるから $2^6 = 64$ 通り」と即答する
○ 正:問題文に「少なくとも1枚」「空箱なし」の条件がないか確認する。条件があれば、空箱のパターンを引く
組分け問題では、0個になる組が許されるかどうかを最初に確認しましょう。 これを見落とすと、答えが微妙にズレます。
「9人をA組(3人)、B組(3人)、C組(3人)に分ける」のように、 各組の人数が決まっている場合は、順番に選んでいきます。
まず9人からA組の3人を選ぶ:${}_9\mathrm{C}_3$ 通り。 残り6人からB組の3人を選ぶ:${}_6\mathrm{C}_3$ 通り。 残り3人は自動的にC組:${}_3\mathrm{C}_3 = 1$ 通り。
$$\text{A, B, C の3組に分ける方法} = {}_9\mathrm{C}_3 \times {}_6\mathrm{C}_3 \times {}_3\mathrm{C}_3 = 84 \times 20 \times 1 = 1680 \text{ 通り}$$$n$ 人を $p$ 人、$q$ 人、$r$ 人($p + q + r = n$)の3つの区別ある組に分ける方法:
$${}_n\mathrm{C}_p \times {}_{n-p}\mathrm{C}_q \times {}_{n-p-q}\mathrm{C}_r = \frac{n!}{p!\,q!\,r!}$$
${}_9\mathrm{C}_3 \times {}_6\mathrm{C}_3 \times {}_3\mathrm{C}_3$ を計算してみましょう。
$$= \frac{9!}{3!\,6!} \times \frac{6!}{3!\,3!} \times \frac{3!}{3!\,0!}$$
分子・分母を整理すると、$6!$ や $3!$ が約分されて:
$$= \frac{9!}{3!\,3!\,3!}$$
一般に、$n$ 個を $p$ 個、$q$ 個、$r$ 個に分けるとき、順に選ぶ組合せの積は $\frac{n!}{p!\,q!\,r!}$ にきれいに整理されます。
$\frac{n!}{p!\,q!\,r!}$ は多項係数と呼ばれ、数学IIで学ぶ多項定理に登場します。 $(a + b + c)^n$ を展開したとき、$a^p b^q c^r$($p+q+r=n$)の係数がちょうどこの多項係数です。
「$n$ 個のものを3グループに分ける方法の数」と「多項式の展開の係数」が一致するのは偶然ではありません。 $(a+b+c)^n$ の展開は、$n$ 個の因子からそれぞれ $a, b, c$ のどれかを選ぶ操作に対応しているからです。
ここからが組分け問題の核心です。 「9人をA, B, Cの3組に分ける」と「9人を3人ずつ3組に分ける」は、何が違うのでしょうか。
違いは組に名前(区別)があるかないかです。 A, B, Cの名前がついている場合、たとえば「A組が{太郎, 花子, 次郎}、B組が{三郎, 四郎, 五郎}」と 「B組が{太郎, 花子, 次郎}、A組が{三郎, 四郎, 五郎}」は別の分け方です。
しかし「3人ずつ3組に分ける」(名前なし)の場合、この2つは同じ分け方として数えるべきです。 組に名前がないので、メンバーが同じならどの組を「第1組」と呼ぼうが区別できません。
名前付きのA, B, C 3組への分け方は $\frac{9!}{3!\,3!\,3!} = 1680$ 通りでした。
この1680通りの中で、「同じメンバー構成なのに、名前の割り当てだけが違う」ものが何組あるかを考えます。
たとえば、グループ $\{1,2,3\}$, $\{4,5,6\}$, $\{7,8,9\}$ という分け方があるとき、 名前A, B, Cの割り当て方は $3! = 6$ 通りあります。 名前を外せば、この6通りは全部同じ分け方です。
つまり、名前なしの分け方1つに対して、名前ありの分け方が $3!$ 個ずつ対応しています。 だから $\div 3!$ すれば名前なしの数が求まるのです。
$$\frac{9!}{3!\,3!\,3!} \div 3! = \frac{1680}{6} = 280 \text{ 通り}$$
$n$ 人を $m$ 人ずつ $k$ 組に分ける方法($n = mk$、組に区別なし):
$$\frac{n!}{(m!)^k \cdot k!}$$
6人を3人ずつ2組に分ける問題を考えます。
✕ 誤:${}_6\mathrm{C}_3 \times {}_3\mathrm{C}_3 = 20 \times 1 = 20$ 通り
○ 正:${}_6\mathrm{C}_3 \times {}_3\mathrm{C}_3 \div 2! = 20 \div 2 = 10$ 通り
なぜ $\div 2!$ が必要なのか? ${}_6\mathrm{C}_3 = 20$ 通りの中で、「{1,2,3}を選ぶ → 残り{4,5,6}」と「{4,5,6}を選ぶ → 残り{1,2,3}」は、 名前なしの組分けでは同じ分け方です。
20通りの全てにこのようなペアが存在するので、$20 \div 2 = 10$ 通りが正解です。
「9人を5人、3人、1人の3組に分ける」場合はどうでしょうか。 この場合、5人の組と3人の組と1人の組は人数が異なるので自動的に区別できます。 5人の組を見れば「あれが5人組だ」とわかるので、名前がなくても混同しません。
よって $\frac{9!}{5!\,3!\,1!} = 504$ 通り。$\div k!$ は不要です。
✕ 誤:9人を5人、3人、1人に分ける → $\frac{9!}{5!\,3!\,1!} \div 3! = 84$ 通り
○ 正:人数が全て異なるので組は自動的に区別できる → $\frac{9!}{5!\,3!\,1!} = 504$ 通り
$\div k!$ が必要なのは「同じ人数の組が $k$ 個ある」場合のみです。 人数が違えば組は区別できるので割りません。
Section 2で $\div k!$ の理由を直感的に説明しましたが、 ここではもう少し厳密に、なぜ割り算で正しい答えが出るのかを理解しましょう。
区別なしの場合の数を直接数えるのは難しい。 そこで、次の2ステップで求めます:
Step 1:仮に名前をつけて数える(区別ありとして数える)
Step 2:同じ分け方が何回重複して数えられたかで割る
同じ人数 $m$ の組が $k$ 個あるとき、名前の入れ替えは $k!$ 通り。 だから $\div k!$ で重複を消せます。
これは6-3で学んだ「組合せ = 順列 $\div$ 並び順」と全く同じ考え方です。 $\mathrm{C}$ が $\mathrm{P}$ を $k!$ で割ったものであるように、 区別なしの組分けは区別ありの組分けを $k!$ で割ったものです。
「9人を4人、4人、1人の3組に分ける」場合を考えましょう。 3組のうち、同じ人数(4人)の組が2つあります。
まず区別ありとして数えます:$\frac{9!}{4!\,4!\,1!}$。 次に、同じ人数の2組だけについて $\div 2!$ します(1人の組は他と区別できるので割らない)。
$$\frac{9!}{4!\,4!\,1!} \div 2! = \frac{9!}{4!\,4!\,1! \cdot 2!} = \frac{362880}{24 \times 24 \times 1 \times 2} = 315 \text{ 通り}$$$\frac{9!}{4!\,4!\,1!} = 630$ 通りの中には、たとえば次の2つが含まれます:
・4人組A $= \{1,2,3,4\}$、4人組B $= \{5,6,7,8\}$、1人組 $= \{9\}$
・4人組A $= \{5,6,7,8\}$、4人組B $= \{1,2,3,4\}$、1人組 $= \{9\}$
この2つは名前A, Bを入れ替えただけで、組のメンバー構成は同じです。 1人組は $\{9\}$ で確定しているので入れ替わりません。
つまり、630通りの中で「同じ構成のペア」が $2! = 2$ 個ずつあるので、 $630 \div 2 = 315$ 通りが正解です。
9人を4人、4人、1人に分けるとき:
✕ 誤:3組あるから $\div 3!$ → $\frac{630}{6} = 105$ 通り
○ 正:同じ人数(4人)の組が2組だけなので $\div 2!$ → $\frac{630}{2} = 315$ 通り
割る数は「組の総数」ではなく、「同じ人数の組の数」の階乗です。 人数が異なる組は区別できるので、入れ替えの対象になりません。
$n$ 個の区別あるものを $k$ 個の区別のない空でないグループに分ける方法の数を、 大学数学では第二種スターリング数 $S(n, k)$ と呼びます。
たとえば $S(4, 2) = 7$ は、「4人を2つの空でないグループに分ける方法は7通り」を意味します。 高校数学では各組の人数を指定して解きますが、人数指定なしで「とにかく $k$ 組に分ける」問題の一般解がスターリング数です。
スターリング数は次の漸化式を満たします:$S(n, k) = k \cdot S(n-1, k) + S(n-1, k-1)$。 直感的には「$n$ 番目の人を既存の $k$ グループのどれかに入れる($k$ 通り)」か 「$n$ 番目の人だけで新しいグループを作る(1通り)」かで場合分けしています。
さらに、「名前の入れ替えで同じになるものを1つと数える」操作は、 大学数学の群論(対称群 $S_k$ の作用による軌道)で厳密に定式化されます。 高校数学の「$\div k!$」は、この壮大な理論の最もシンプルな特殊ケースです。
組分け問題は、「分けるもの(玉)に区別があるか」と「分ける先(箱)に区別があるか」の 2つの軸で4パターンに分類できます。 この分類を頭に入れておけば、問題を見た瞬間に「どのパターンか」が判断でき、解法の方針が立ちます。
| 箱に区別あり | 箱に区別なし | |
|---|---|---|
| 玉に区別あり | 重複順列 $k^n$ または組合せの積 (例:名前付き組への分配) |
組合せの積 $\div k!$ (例:名前なしグループ分け) |
| 玉に区別なし | 重複組合せ ${}_k\mathrm{H}_n$ (例:同じ玉を名前付き箱に配る) |
整数の分割 (例:$n$ を $k$ 個の和に分ける) |
組分け問題を解く最初の一手は、区別の有無を判定することです。
玉(分けるもの)の区別:「人」「異なるカード」→ 区別あり。「同じ玉」「同種のみかん」→ 区別なし。
箱(組)の区別:「A組, B組」「部屋1, 部屋2」→ 区別あり。「3人ずつ3組」「2つのグループ」→ 区別なし。 ただし、人数が異なれば名前がなくても区別できる。
この判定さえ正しくできれば、あとは対応する公式を適用するだけです。
パターン1:玉も箱も区別あり
「5人の生徒をA, B, Cの3つの部屋に入れる」→ 各生徒に3通りの選択肢があるので $3^5 = 243$ 通り。
パターン2:玉に区別あり、箱に区別なし
「6人を3人ずつ2組に分ける」→ ${}_6\mathrm{C}_3 \div 2! = 10$ 通り。
パターン3:玉に区別なし、箱に区別あり
「同じ玉10個をA, B, Cの3つの箱に入れる」→ 重複組合せ ${}_3\mathrm{H}_{10} = {}_{12}\mathrm{C}_{10} = 66$ 通り。
パターン4:玉も箱も区別なし
「10を3つの正の整数の和で表す方法」→ これは整数の分割と呼ばれ、 一般的な公式はなく、個別に数え上げます(高校範囲では出題頻度は低い)。
「9人を3つの部屋に入れる」と「9人を3つのグループに分ける」は、答えが全く違います。
✕ 誤:どちらも「3つに分ける」のだから同じ
○ 正: 「部屋」は部屋名で区別できる → 箱に区別あり($3^9$ 通りなど)。 「3つのグループ」は名前がなく区別できない → 箱に区別なし。 部屋に入れる問題は重複順列、グループ分けは組合せ $\div k!$。
問題文の「部屋」「班」「チーム名」は区別ありのサイン、 「グループ」「組」(名前なし)は区別なしのサインです。
「$n$ をいくつかの正の整数の和で表す方法の数」を分割数 $p(n)$といいます。 たとえば $p(4) = 5$($4 = 4 = 3+1 = 2+2 = 2+1+1 = 1+1+1+1$)。
分割数には簡潔な公式がなく、数論の深い研究対象です。 インドの天才数学者ラマヌジャンとハーディは、分割数の漸近公式を発見しました。 高校数学では「玉も箱も区別なし」のパターンは発展的ですが、 数え上げの練習としては面白い題材です。
ここまで学んだ組分け問題のパターンを整理し、他の単元とのつながりを確認しましょう。
| 確認事項 | 判定結果 | 解法 |
|---|---|---|
| 1. 玉に区別はあるか? | なし → パターン3 or 4 | 重複組合せ or 分割 |
| 2. 箱に区別はあるか? | あり → パターン1 | 重複順列 $k^n$ or 組合せの積 |
| 3. 同じ人数の組はあるか? | なし → 組合せの積で完了 | $\frac{n!}{p!\,q!\,r!}$ |
| 4. 同じ人数の組が $k$ 個 | $\div k!$ する | $\frac{n!}{(m!)^k \cdot k!}$ |
Q1. 「区別ある箱への分配」が重複順列と同じ構造になるのはなぜですか?
Q2. 8人を4人ずつ2組に分ける方法は何通りですか?
Q3. 10人を5人、3人、2人の3組に分けるとき、$\div 3!$ は必要ですか?
Q4. 9人を3人、3人、3人の3組に分ける方法は何通りですか?
Q5. 「玉に区別なし、箱に区別あり」のパターンで使う公式は何ですか?
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
10人の生徒をA組(4人)、B組(3人)、C組(3人)に分ける方法は何通りか。
$4200$ 通り
方針:A, B, Cの名前がついた組(区別あり)への分配。組合せの積で求める。
$${}_{10}\mathrm{C}_4 \times {}_6\mathrm{C}_3 \times {}_3\mathrm{C}_3 = 210 \times 20 \times 1 = 4200 \text{ 通り}$$
別解として $\frac{10!}{4!\,3!\,3!} = 4200$ でも同じ。
A, B, Cの名前があるので $\div k!$ は不要。
12人を4人ずつ3組に分ける方法は何通りか。
$5775$ 通り
方針:同じ人数の3組で、組に名前がない → $\div 3!$ が必要。
$$\frac{{}_{12}\mathrm{C}_4 \times {}_8\mathrm{C}_4 \times {}_4\mathrm{C}_4}{3!} = \frac{495 \times 70 \times 1}{6} = \frac{34650}{6} = 5775 \text{ 通り}$$
確認:$\frac{12!}{(4!)^3 \cdot 3!} = \frac{479001600}{24^3 \times 6} = \frac{479001600}{82944} = 5775$。一致。
9人を次のように分ける方法はそれぞれ何通りか。
(1) 5人、2人、2人の3組に分ける。
(2) A組(5人)、B組(2人)、C組(2人)に分ける。
(1) $378$ 通り (2) $756$ 通り
方針:(1)と(2)で「組に名前があるか」が異なることに注目。
(2) 名前あり:$\frac{9!}{5!\,2!\,2!} = \frac{362880}{120 \times 2 \times 2} = 756$ 通り
(1) 名前なし:同じ人数(2人)の組が2つあるので $\div 2!$ する。 5人の組は他と人数が違うので区別できる。
$$\frac{9!}{5!\,2!\,2!} \div 2! = \frac{756}{2} = 378 \text{ 通り}$$
ポイント:(2)は(1)の2倍。名前をつけると2人組の入れ替えが区別されるため。
男子5人、女子4人の計9人を3人ずつ3組に分けるとき、どの組にも女子が少なくとも1人いるような分け方は何通りか。
$180$ 通り
方針:「名前をつけて数え、最後に $\div 3!$」で処理する。余事象を利用。
Step 1:仮に3組をX, Y, Zと名前をつける。名前付き全体は $\frac{9!}{3!\,3!\,3!} = 1680$ 通り。
Step 2:余事象(女子0人の組が存在する場合)を数える。
女子0人の組を1つ選ぶ:$3$ 通り(X, Y, Zのどれか)。 その組を男子3人で構成:${}_5\mathrm{C}_3 = 10$ 通り。 残り6人(男子2人+女子4人)を3人ずつ名前付き2組に分ける:${}_6\mathrm{C}_3 = 20$ 通り。
女子0人の組が2つ以上になるには男子6人以上が必要ですが、男子は5人しかいないので不可能。よって包除の補正は不要。
余事象:$3 \times 10 \times 20 = 600$ 通り。
Step 3:名前付きで条件を満たす場合の数 $= 1680 - 600 = 1080$ 通り。
Step 4:名前を外す。$1080 \div 3! = 1080 \div 6 = 180$ 通り。
検算:女子の各組への配分は $(2,1,1)$ のみが条件を満たす。名前付きで数えると、 女子2人の組の選び方 $3$ 通り $\times$ 女子の分け方 ${}_4\mathrm{C}_2 \cdot {}_2\mathrm{C}_1 = 12$ 通り $\times$ 男子の分け方 ${}_5\mathrm{C}_1 \cdot {}_4\mathrm{C}_2 = 30$ 通り $= 3 \times 12 \times 30 = 1080$。$\div 6 = 180$。一致。